「ボブチャンチンの頂上作戦、一歩後退」
レポート:井田英登 写真:飯島美奈子
ヘビー級最強を賭けて、当初マーク・コールマンとの対戦を噂されていたボブチャンチン。PRIDE開始以来、連続参戦を続け破竹の連勝街道をひた走るボブチャンチンの評価はそれほどまでに高い。特に、ケァー撃破後は、GPチャンピオンであるコールマンぐらいしか、その強さを測定しうる物差しがないところまで来ていたわけだ。
今回の試合は、コールマンとの頂上対決への前哨戦とでもいう意味合いで、既にひと時代前のオールドネームになりつつあったケン・シャムロックの首級をボブチャンチンに持たせようといった意味合いで組まれたカードだったのかもしれない。
だがそのケン・シャムロックは、練習中に両腕に「頸椎神経根症(けいついしんけいこんしょう)」を負って欠場。彼の率いるライオンズ・デンの番頭格のトレイ・テリグマンに急きょ、代打の指名が下ったのであるが、本来消化試合であったこの一戦でボブチャンチンがコケるとは誰が予想しただろうか?
試合前にPRIDEとの提携が噂されるUFCのエースであり、桜庭との対戦を噂されるミドル級王者、ティト・オーティスが登場、両選手に花束贈呈を行う。しかし、青コーナーに陣どったライオンズ・デン勢にすれば、かつて総帥ケン・シャムロックが当のティトに「糞ジジイ!」とののしられた過去を持つ。花束を片手ににやにや近づいてくるティトを目の前に、テリグマンもためらいを隠せない。結局、一度は拒否したそれを受け取ったものの、内心かなり複雑なものがあっただろう。
今回テリグマンは、急きょその代打として出場をオファーされたが、4月に新設されるESPN(アメリカのスポーツ専門TV局)のボクシング大会に出場が決まっていたために調整はほぼ十分だったという。一方、ケンとの対戦を想定して関節技を中心に練習を組み立てていたというボブチャンチンの方は、得意の打撃に精彩を欠き、ローと大振りなフック中心の攻めとなった。
勝負は、シュアなパンチとリーチ差を活かして攻め込んでくるテリグマンがスタンドファイトで要所要所を優勢に進め、1Rと2Rの2回に渡って得意の左ショートフックでボブチャンチンの顎を捕らえることに成功する。このクリーンヒットがダウンにはつながらなかったものの、ボブチャンチンの動きを止めたことは明白であった。ボブチャンチンはグラウンドでも引き込んでのクロスガードに終始したため、いつものアグレッシブなパンチは見られず、結局判定で破れる波乱となった。
かくてコールマン戦への期待感が若干薄れた観のあるボブチャンチンではあるが、打たれ強いのがこの人の身上であり、いずれまたじわじわと頂上作戦の駒を進めてくることだろう。カメのようにじれったいまでの着実さこそが、北の大地に生まれたコの男の最大の武器なのだから。
<ボブチャンチン×テリグマン
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