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Report
 
パンクラス 99.9.18 東京ベイNKホール
"1999 BREAKTHROUGH TOUR KING OF PANCRASE TITLE MATCH"
第3試合(10分1本勝負) 
横浜
窪田幸生
 
10'00"
判定3-0
大道塾総本部
山崎 進
 
×
 

それぞれのリベンジマッチ


  この四月、山崎進は大道塾主催のWARS4で美濃輪育久と対戦した。パンクラチオン・ルールで行われたこの一戦、結果はドロ−に終ったものの、グラウンドでは終始上のポジションを支配、流血しながら頭突きまで敢行、血まみれで20分を闘い抜いた美濃輪は一機に知名度をあげ、その後のネオブラッド制覇へ至る出世街道の第一歩を踏みだした。一方、ホ−ムグラウンドで外敵を迎え撃った山崎は、試合後まるで敗れたかのように意気消沈した。大道塾の日本人エースとして看板を背負った山崎が、総合という迷路に踏み迷った瞬間であった。

 それから半年、この借りを返すべく山崎は再度パンクラシストと対戦する道を選んだ。それも今度は敵地のどまんなか、パンクラスルールによる試合をに挑んだのである。この選択が選手にとってどれだけのプレッシャーになるかは、想像に難くない。リングアナにコールされた時のガッツポーズが固く感じられたのも無理はない。

 
  一方、窪田は対外戦三連戦目。

 ネオブラッドト−ナメント一回戦で須藤元気に敗れた屈辱は、未だ拭いきれてはいないだろう。今や、東京道場に仮住まいしながら、パンクラシストと寝起きを共にする須藤とはいえ、頭にサイレンを載せてパンクラスマットを闊歩した男にあえなく敗れた事実は消えない。仙台の片瀬戦が雪辱の序曲であったとするなら、この山崎戦はその本番である。

 右掌底を側頭部にヒットさせた窪田が、山崎の右足にタックル。尻餅をつきながらも山崎は掌底を出す。窪田もつられて上から掌底を出すが、その間に山崎はしっかりとクローズガード。大道塾入門以前には柔道をやっていた山崎。寝技での足さばきも背中でのバランスの取り方も、所謂空手家のそれではない。完全なる総合格闘家の動きである。


  序盤から中盤、窪田が上から掌底を打ちながらサイドチョーク、片固めなどを狙い、7分頃にはチキンウィング・アームロックを極めかける。山崎はこれを頭のほうに背中で這って行くことで凌いだが、危ないシーンだった。その後も上になった窪田の攻勢が続くが、カメになった山崎に、追いかけた窪田が覆い被さったところでアウトサイドブレイク。

 残り時間2分で低いタックルに行った窪田。それを潰してバックに回る山崎。バックマウントからチョークを狙う。これは窪田が反転したため極まらず。極まらないならと立ちあがる山崎を、素早く起きて追う窪田。窪田は後ろから組みついて脇を差し、コーナーに追い詰める。徐々に山崎が態勢を整えてコーナーから脱出し、離れて互いに掌底を交えたところで試合終了。


  30−29、30−28、30−29、3者共窪田に付けての判定勝利。試合の大半グラウンドで上を制したことと、極めかけたアームロックが評価されての勝利だろう。一方敗れた山崎だが、初参戦にしてはけっして悪い展開ではなかったと思う。大道塾にはない長時間のグラウンドにも十分対応していたし、今後噂されているオープン・フィンガー・グローブの導入が現実のものとなれば、打撃でももっと持ち味を発揮する選手だろう。そう言った意味では今回は『早過ぎる参戦』であったのかもしれない。試合後のインタビュウでも「このままでは終れない。もっと経験を積みたいです」と語った。自分自身への、そしてパンクラシストへのリベンジマッチはまだまだ続くと見ていいだろう。

 一方、勝者の窪田は四方に拳を挙げて、勝利をアピール。団体の所属選手として、パンクラスの看板を守ったことは評価されるべきだろう。しかし、完全なる道場破り撃退劇であったかと言えば、そうとは言いがたい試合内容であった。まだ、窪田の夏休みの宿題は終っていない。



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レポート:誉田徹也・井田英登 カメラ:井田英登