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PANCRASE 1999 BREAKTHROUGH TOUR 99.9.4 仙台市泉総合体育館
第2試合(10分1本勝負)
○ 伊藤崇文  vs  渡辺大介 ×
(横浜)       (横浜)
判定3−0

「“元天才”は今」
 
 「昔天才、今ただの人」という言葉がある。

 かつてはフランク・シャムロックと並ぶ「天才パンクラシスト」と謳われながらすっかり中堅の位置になじんでしまった伊藤。今の彼にこの言葉を当てはめるのが正しいかどうかは判らない。なぜこの停滞が彼を襲ったのか? 外野にいる我々が推測をもってそれを語るのはたやすい。だが、現役の格闘技選手としては結果が全てである。できれば安易な論評で、選手の価値を貶めることは慎みたい。がしかし、伊藤の今のポジションは彼本来のポテンシャルを思えば思うほど、奇妙に低い。もちろん結果がでないから、伊藤はこのポジションにくすぶっているわけだが。

 試合は終始グラウンドの展開となった。ポジション争いにも見ごたえがあり、常に動き続ける技量は全く衰えてはいない。(この試合では見られなかったものの、伊藤のタックルのスピ−ドやタイミングには定評がある。)しかし、その技量を最後の「極め」に結び付けることが出来ない。結果として、今の伊藤のくすぶりを象徴するような試合がまた一つ重ねられてしまった。

 技術面を言うならばいくらポジションを奪っても、同じ道場の選手ということで、動きが読まれて関節技を極めるところまでは行けないと言う事もできるだろう。しかし、前回後楽園でも伊藤は、全く技術体系の違う菊田を前にいいようにコントロ−ルされて終った。マウント掌底を好き放題たたき込まれた揚げ句、「もっとがんがん来てくれるかと思ったら、全然来てくれませんでしたね」と言われる始末だった。菊田戦はともかく、現在の伊藤を一言で言うなら試合をフィニッシュさせる武器がない。一本勝ちを飾ったのは昨年の3月の金宗王戦以来無い。以降一年半で11戦して3勝4敗4分、内判定で終った試合が9試合にも登る。(今回を含まず)試合結果自体が伊藤の現状を物語っている。

 この試合ではグラウンドで有利なポジションを取っていた伊藤が判定勝ちを手にしたものの、このままではランキングはおろか、選手としての評価も落ちる一方だ。キャリアでは遥か後方に居た美濃輪が、今ちょうど伊藤の横を擦り抜けてランキング戦に挑もうとしている今、伊藤は「元天才」で終ってしまうのだろうか?


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次の試合 :3. 石井×金宗王

レポート:慈村弓太