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kick 新日本キックボクシング協会 "THE TITLE " 5月5日 後楽園ホール

第11試合 メインイベント ラジャダムナン・スタジアム認定ウェルター級タイトルマッチ/5回戦 
※ラジャダムナン・スタジアムルールによりインターバル2分
ラジャダムナン・スタジアム認定ウェルター級王者
チャラームダム・シットラトラガーン
(タイ)
判定0-0

48-48
48-48
48-48
ラジャダムナン・スタジアム認定ウェルター級3位
日本ウェルター級王者
武田幸三
(治政館)

※チャラームダムが初防衛に成功

 タイのメジャー・スタジアムのタイトル戦が「挑戦者側の」日本で行われるこの日まで、状況には二転三転の変更があった。当初4月に現地でタイトル決定戦を行う予定であった武田だったが、昨年11月以来ラジャダムナンで試合をしていないことを理由に挑戦者の資格を取り消される。急遽3月に挑戦者資格を得るためのランキングマッチを行うことになった。この試合で豪快なKO勝利を見せ文句なしに挑戦者の資格を得た武田がついに王者に王手をかける試合。成功すれば史上二人目の日本人チャンピオンである。日本の大相撲を想像してもらえばわかるように「国技」と呼ばれる競技で外国人がトップを取るのは容易ではない。
その容易ではない場面が、これから始まる。会場は満員。セミファイナルの試合を終えて、かすかにざわつく中でメインイベント開始のコールが響き渡った。
5Rチャラーダムのパンチ 王者チャラームダムは敵地の防衛戦にただならぬ気配を感じ取っていただろう。会場のほとんどすべては武田の王座獲得を期待しているのだから。そして、敵地で自国のベルトを奪われるなど、考えたくもない事態である。
この試合のインターバルは2分。ジャッジ、レフェリーはタイ人。試合前にワイクーが踊られる。いよいよ、である。

開始のゴング。ローを入れながら試合は始まる。静かに過ぎた最初のラウンドを終えて2R、チャラーダムの蹴り足を取った武田が右フックを当てる。武田のパンチの音が響き、すかさず会場からかけ声が上がる。ムエタイではパンチよりもキック(及び膝)、特にミドルキックのポイントが高く取られるが、武田の攻め手はパンチ。一気に距離を詰めての右フックがたびたびヒットし優位に立つように見えた。
しかしチャラーダムも詰められてからミドルできっちりと反撃していく。ロープ際に詰められ連打となりそうな場面でも、自分の距離を持ち直す。フックのクリーンヒットをもらっても表情ひとつ変わらないチャラームダム。このタフさが、戦歴の豊富さに裏付けられた王者の実力の一端か。
 中盤から試合終盤まで武田のアッパーとフック、 チャラーダムのミドルと膝がいずれもクリーンヒットする激しい打撃戦となる。途中、チャラームダムがローキックを受けて体をよじる場面も見られたがあくまでパンチで倒しにかかる武田。最後まで一進一退の攻防が続いたが、お互いダウンを奪うまでに至らなかった。そして試合終了まで攻撃ごとに激しく反応する観客の声援が交錯した。そして終了のゴング。

判定はイーブン。2、5Rを武田が、3、4Rをチャンピオンが取り、1Rはドロー。王者の防衛である。
22年ぶり2度目の悲願はならなかった。

「もう一度チャンスを」
リング上で伊原代表が声を上げる。容易ではない道を、再び辿り出す宣言だ。

つかみかけた手先をかすめていったラジャダムナンのベルトはタイへ還っていった。
タイトルへの最短距離と思われた武田の今日の闘いぶりは、挑戦者として、日本のチャンピオンとして決して悪いものではなかった。ただ、チャンピオンがさらに強かったというだけのことだ。
昨年に引き続き今年もラジャダムナン・スタジアムの自主興行に立つ予定のチャンピオンたちのなかから、再びタイトルに手をかける選手は出てくるだろうか。その中に武田幸三がいるとすれば・・・おそらくそうだろうが・・・今日離された距離をどれだけ詰めることができているか、再び歴史の証人となる日まで、しばらく待たなければならない。

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レポート:新小田哲 カメラ:薮本直美


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