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ロニ−、K-1の熱い洗礼に沈む

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　昨年のK-1大阪開幕戦以来、今ひとつ精彩に欠ける最近のベルナルド。モーリス・スミスのインサイドワークに苦しみ、決勝大会ではF・フィリョを戦慄のKOで葬ったまでは良かったが、直後に復調したピーター・アーツにＲ１KO負け。更にかつてKOで退けた佐竹に今年４月の再戦では判定まで粘られ、福岡ではＲ１にKO寸前のダウンを与えたサム・グレコにまさかの逆転判定負け。スランプとまでは言えないにしても、決してこの１年あまりのベルナルドは順風満帆とは言い難かった。

　そのベルナルドが今年のK-1開幕戦の40日前に迎えた対戦相手は、あのレイ・セフォーの弟ロニー・セフォー。ファイトスタイルや実力は不明だが、ひょっとするとひょっとする大物の可能性を秘めた危険な対戦相手である。

　

　やはりロニー・セフォーは兄譲りの完成度の高いスタイルを持った一流選手だった。所属ジムも同じということで、闘い方はますます似通っている。どちらかというと兄の力強さに比べると上体の使い方などはより柔らかい感じだが、決してレイ・セフォーと比較しても見劣りしない。

　一方ベルナルドはこのラウンド自分から手を出さずカウンター狙いの戦法を選んだ。これまでのベルナルドはＲ１から積極的に仕掛けて倒せるところでは遠慮なく倒してしまうという闘い方だったが、「最近マスコミから『ベルナルドは前半は強いが後半になると落ちる』というようなことを言われるので、今回はじっくり相手を見ながら闘うスタイルを見せようと思った。」

（ベルナルド-セフォー：10-10、10-10、10-10）

　

　Ｒ１の静かな立ち上がりから一変して、両者激しいパンチの交錯が始まった。若いというか怖いもの知らずというか、あのベルナルドのラッシュに正面からパンチの打ち合いで対抗するセフォー。ベルナルドのあの速くて重い連打が始まれば、大抵の選手は怯むかクリンチで凌ごうとするのだが、セフォーは全くそういう様子を見せない。しかもそのセフォーのパンチも、パワーでは劣ってもスピードではほぼ互角に近く、どちらのパンチが当たるか判らない緊迫した打ち合いになった。

　ベルナルドのパンチがヒットしても「うんうん」と頷いて「もっと打ってこい」と挑発する辺り、これまたセフォー兄弟血は争えないといった感じだ。

（ベルナルド-セフォー：10-9、10-10、10-9）

　

　最近ではパンチ同様ベルナルドの強力な武器となりつつあるローキック。この日は右のアウトローだけでなく、左脚で相手の左脚の内側を狙うインローも見せたが、いずれも速くて重いパンチ同様、非常にシャープだ。

　徐々にプレッシャーを掛けて前に出るベルナルドに、セフォーはロープ際に詰まらされるシーンが増えるが、体力で押されているだけで精神的なプレッシャーで後退している印象ではない。だがベルナルドの破壊力に対抗しようという無意識の気負いはパンチを外側から振り回すような大振りなものにしてしまう。ベルナルドのパンチは破壊力はあるが非常にコンパクトでシャープなものだから、このセフォーの大きいフォームは危険に思えた。

（ベルナルド-セフォー：10-9、10-9、10-9）

　

　ベルナルドがコーナー際で遂にセフォーを捉えた。高速回転のパンチラッシュがセフォーを襲う。しかしセフォーのスピリットも見上げたもので、あのベルナルドのパンチを貰って顔をのけぞらせながら自分の方からも手を出して反撃する。

　しかし破壊力の差はいかんともしがたく、再度始まったベルナルドのラッシュにセフォーがぐらついたところで猪狩レフェリーはスタンディングのままダウンを取った。一度はファイティングポーズを取るかに見えたセフォーだが、「レフェリーのカウントが良く聞こえず、一旦膝をついて休もうと思った」ということでマットにニーダウンしてしゃがみ込む。ところが実際にはこの時点でカウントは既に８を数えていたから、このタイミングで膝をついたセフォーを見てレフェリーは最早続行不可能と判断、ベルナルドのKO勝ちを宣することとなった。

（1：24 KO）

　

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「疲れるまでは、それなりに動けてたんだけどね。」とやや残念な表情のセフォー。彼にとっては不運なKOだったが、あの状況ではレフェリーの判断はやむを得ない。この試合を含めてまだ14戦とキャリアが浅いことを考えれば、彼が経験を積めば兄に勝るとも劣らない重要な選手に成長する可能性は充分だ。「K-1本戦への出場？出来ればやってみたいね。」その場合兄のレイとぶつかる可能性もあるわけですが？「出来ればそんなことは考えたくないよ。お互い仲のいい兄弟だから。」

　さてベルナルドの方だが、既に書いたように試合全体を通して組立を考えたり、ローキックを主体に蹴り技にも磨きをかけるなど、真面目な彼らしい研究や努力の跡は随所に発揮されていた。これであとはインサイド・ワークが伴うようになれば無敵だろう。相手の裏をかき、あるいは裏をかこうとするその更に先に回って退路を塞ぐような、ある種の狡知。

　しかしそういう狡さがないからこそ、日頃のベルちゃんは心優しい好青年であるのかも知れない。

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