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Report

モンスターチャレンジ2000 ジャパンオープン

〜Kー1への道〜

2000年9月3日 東京体育館

レポート:仲村直  写真:井田英登

「見る格闘技から参加する格闘技」を目指して参加者も増えた今大会。セーフガード等防具着用を徹底した、よりアマチュアレベルのカテゴリーであるK−3トーナメントも同時開催されることになった。こうしたカテゴリー設定はそもそも母体となった新空手で採用されてきた物だが、プロフェッショナルであるK−1を頂点とする、アマチュアの裾野の広がりを確立した意味で、こうした展開は意義深い。今回このカテゴリーには日本テレビアナウンサーのラルフ鈴木氏が出場。そのラルフ氏がいきなり初参戦で中量級で優勝。(セコンドには武蔵、宮本正明がついた。)主催となった日本テレビの番組、超K−1宣言でも大きく話題となるなど、うれしいおまけがついた大会となった。

本戦にあたるK−2トーナメントでは、すでにK−1フレッシュマンファイトでデビューした藤本をはじめ、全日本キックのリングに上がっている選手も出場している。そうしたプロの選手の参加もあり、素人の強い人のどつきあいとは違った、全体にしまった大会となった。それだけに、勝ち抜くことはより厳しいものであり、勝利の意味も大きくなったと言えるだろう。


K−2トーナメント軽量級

参加選手68名と激戦区。“すごい喧嘩慣れしてるなぁ”“違うって、あれはプロだって”そんな会話が出てくる軽量級。セコンドについた前回のモンスターチャレンジのメンバーが11月に新日本キックでデビューするという話も聞こえてくる。ここでの勝利を次のフィールドへつないでいる選手が確実にいる。

準決勝

大西広之vs薮曲伸
試合は場慣れした大西のペースで進み、ノーガードで相手をあおる余裕さえ見せる。試合は大西がフックでKO勝ち。

小林茂男vs稗田健晴
どちらも攻めきれず、延長戦へ。終了の太鼓と同時に稗田は倒れこんだ。小林のローがたまっていたのか?体重判定で小林の優勢勝ち。

決勝

大西広之vs小林茂男
大西は既に全日本キックフェザー級の三回戦選手として活躍するプロ選手(リングネームは大月晴明)。その余裕もあってか、ここまでの試合をトリッキーな動き、相手を挑発するような華麗なノーガード戦法などを駆使し、勝ち進んできた。道着のヒザには“常勝”の文字があり、その意気込みを感じさせる。(準決勝以降は、“晴明”のリングネーム入りトランクスに着替えていたが。)
開始直後に小林が真っすぐに突っ込んで、奇襲攻撃で自分のペースを作ろうとする。しかし大西はつきあわず、ローと前蹴りで距離をとっていく。そのまま大西のペースで試合は進む。蹴りで相手を振り回しておいてパンチを入れ、ノーガードで相手を誘っておいて前蹴りをあわす。仕上げはミドルキックの2連発と多彩なコンビネーションで小林を幻惑。まさに、好き放題という言葉が頭をよぎる。
判定は、5−0。大西の優勝。
“常勝”の文字は伊達ではない。全日本キックのリング同様、イキの良さをみせた大西が余裕の勝利を飾った。



K−2トーナメント軽中量級

前2回には無かったクラスとして、今回設けられたのがこの階級。61名の参加で争われた。選手のバランスの良さ、技の華麗さが目立っていた。

準決勝

松本俊太郎vs明石武山
パンチから蹴りへの綺麗なコンビネーションが光る両者の攻防。延長に入って松本のカウンターパンチが決まり、松本の一本勝ち

佐々秀幸vs小田宏樹
ミドルとパンチで相手を押し続ける佐々。相手に反撃のいとまを与えず攻め続ける。判定で佐々の勝利

決勝

松本俊太郎vs佐々秀幸
準決勝と同じで前へ前へと出てくる佐々。前蹴り、ミドル、前蹴り、ミドル、と休まず前へ前へと出てくる。蹴りで相手の動きを止め、パンチで仕留めようといったところか?松本もローで佐々の攻めを止めようとするが、前へ前へと出てくるリズムは止められない。
判定0−3で佐々の優勝。


K−2トーナメント中量級

前回重量級で参戦したモンスターファクトリーの宮本は一階級下げての出場。”短期間で成長した”と湊矢コーチの言葉もあり期待が出来る。
また、前回超K−1賞をとった竹村をセコンドに参戦した誠ジムの加藤誠は、元パンクラスの練習生で、プロへの道は断念したもののその後も誠ジム所属選手として今年のネオブラッドトーナメントにも出場した経験を持つ。トリッキーな戦法は総合格闘技選手ならではのもの。持ち前のパワーで打撃系専門の選手達をかき回し、準決勝まですすんで見せた。32名と他に比べ出場選手は少ないが内容はひけをとらないものとなった。

準決勝

宮本健太郎vs関口忠良
宮本がパンチのラッシュで関口の動きを封じ右ローを放つ。関口はガードしきれずそのまま貰ってしまう。宮本の一本勝ち。

加藤誠vs酒井亮
試合開始すぐに加藤の胴回し蹴り。延長に入ってからは、その場飛びのドロップキックまで飛び出し、期待どうりのトリッキーな攻めを見せる。しかし、酒井はこうした撹乱戦法に一切付き合わず、パンチから蹴り、ストレートへつなぐ攻めに徹した。
延長戦、判定0−5で酒井の勝ち。

決勝

宮本健太郎vs酒井亮
宮本は試合ごとに調子を上げてきている。右ローからパンチへ、右に回り込んでミドルキック、パンチ、ヒザ蹴りとリズムよく攻めていく。酒井も攻撃をよく見てローを合わせていくが、自分のリズムが作れず、単調な攻めになる。
判定は4−0で宮本。 手数を出し、リズムを作った宮本の優勝。


K−2トーナメント重量級

モンスターファクトリーの藤本、山中、風間を含む60名の参加。この階級の特徴は一撃の重さ。ローキックで、パンチで、相手が倒れこむ一本勝ちも多かった。

準決勝

藤本祐介vs百瀬竜徳
藤本は既にK−1本戦大会でもフレッシュマンファイトに出場、日進会館の中井一成をやぶるなど、既にアマチュアを1歩抜け出したポジションに居る選手。今回の出場はまさにモンスターファクトリーの卒業検定ともいうべきものであり、遅れをとることは許されない。大きく差をつけて、プロとしての存在感を見せたいところだ。その藤本、1回戦途中に右の肩が外れるというアクシデントにも動じることなく(試合中に元に戻っていたというから驚く)圧倒的なパワーで勝ち進んできた。
百瀬は右のパンチを武器に風間、小宮と正道会館勢を倒しての準決勝進出。
しかし、ここでは藤本のパワーが勝り、パンチから蹴りまでつなぎ右へ回り込む。マットの端から的確に戦法を指示する湊屋コーチのコンビネーションが図に当たり、左ミドルキックで一本勝ち。

山中政信vs秋山泰幸
一方、モンスターファクトリーもう一人の看板選手でありながら、藤本には1歩遅れをとった形の山中は、今回こそその存在を刻み付けておきたいところ。パンチを中心に攻撃のリズムを作り、危なげなくトーナメントを勝ち進んできた。
湊矢コーチの“右に回って、頭を前に出さない”という指示も良く聞けており、集中力を維持できているのがよくわかる。
ローろ出したい秋山だが、山中はスピードのあるジャブでけん制しながら蹴りへとつなぎ、最後は右ローキックで一本勝ち。

決勝

藤本祐介vs山中政信
モンスターファクトリー同士のライバル決勝となった。とはいうもののお互い一緒に練習をしてきているだけに、手の内もわかりきっており、やりにくいところ。だが、出世争いもあって、どちらも譲れない。ここまで、場内に響き渡っていた湊矢コーチの声も同門対決ということで消えた。張り詰めた空気の中での決勝戦となった。
山中はパンチで前へと出ていくが蹴りまでつなげない、出せないのか?
静寂のなかに藤本のローキックを蹴る重い音がひびく。じわりじわりと藤本がローをパンチを効かせていく。山中も流れを変えようとバックブローを出すがかわされる。
判定は4−0で藤本。
藤本は山中に3連勝し、連勝記録をのばした。


大会総評

大会自体を振り返ってみると、角田師範代の総評にあったように、モンスターチャレンジも今回で三回目。回を重ねるごとに出場選手達も着実にレベルが上げていることを感じさせる大会だった。

今大会で、モンスターファクトリー勢は中量級、重量級共に優勝者を出し、結果を残すことが出来たといえるだろう。
この日最も忙しかった人間である湊矢コーチも、今日の結果に“みんなよくやった”と合格点を出している。

ただ気になるのは今回、本家である正道会館勢の参加が少ない事だ。全日本大会を目前とした空手系の選手がそちらに専念したことと故障者が多かった事が原因らしい。事実、今回の参加した選手も、アバラや足を痛めているといったケースが多く、万全とは言えない状態で出てきている。試合に出る迄のコンディションを作るところから、戦いは始まっているわけであり、ケガやアクシデントに負けないことが、ここでの勝利を次のフィールドへつなげる要素になる。ますますのレベルアップと、今後の展開を期待する意味でも、選手達の一層の奮起を促したい。(写真:会場にはアンディ・フグの遺影も飾られていた)

レポート:仲村直  写真:井田英登

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