日本人選手発掘を目的としたモンスターチャレンジ大会だが、2回目となる今回は舞台を正道会館の本拠地大阪に移して開催されることとなった。本部席には石井館長・角田師範代をはじめ、K-1
ジャパンの主力選手(武蔵・中迫剛・天田ヒロミ・宮本正明)の他、TV番組から関根勤・立川宣子と豪華な顔ぶれが並び、アマチュア大会とは思えない程華やかな雰囲気に包まれたが、それ以上に豪華な事に今大会はK-1出場への過程が一本の道でつながった。ベスト8に勝ち残った選手は5月5日の新空手全日本大会の出場権が与えられる。さらにその大会で優秀な成績を残した選手には、
K-1ジャパンGPトーナメント一回戦となる5月28日北海道大会への出場が約束されるという。まさに登竜門という言葉がぴったりのこの大会には全109人の挑戦者が集まった。
1〜3回戦2分1R(延長なし)
準々決勝/準決勝2分1R(1Rの延長あり)
決勝3分1R(2分2Rの延長あり)
軽量級(60kg未満)
スピードと技のきれが持ち味のこの階級。空手の動きを主体にする選手の多い中、ムエタイとキックボクシングを身に付けた”軽量モンスター”新宅の軽いフットワークと飛び込んでの蹴りが目を引いた。
- 準決勝
- 加門政志vs森安悟志(下段回し蹴りで加門の一本勝ち)
小柴尚也vs新宅正章(判定5ー0で新宅)
- 決勝
- 加門政志vs新宅正章
- ■ 加門は準々決勝、準決勝と着実な空手スタイルの攻めで一本勝ちで決勝へ新宅はムエタイのスタイルで相手を休まず攻め、準々決勝4ー0分け1、準決勝5ー0と勝ち進んできた。
新宅の飛び込んでの蹴りからパンチ、フックへとつなげるコンビネーションを巧みにかわしヒザをあわせたりパンチを入れていく加門。
組んだときは互いにひかないヒザの打ち合いとなり、決勝にふさわしい白熱した試合となった。本戦の判定は5者審判ともに引き分けで延長戦へ。
- 延長に入ってもスピードのある攻防が続く。新宅の蹴りからの攻めに対して、加門は攻撃をよく見てカウンターを入れていく。互いに譲らず再延長かとも思われた試合終了直前の15秒前、加門のパンチが新宅をとらえ、技あり。そして、判定は5ー0で加門。
- 軽量級ベスト8
- 加門政志・新宅正章・森安悟志・小柴尚也・池田幸平・和田修一・宮下晃・西村貴親
中量級(60〜70kg)
選手層のあつい階級だけにキャラクターもそろっていた。”超K-1賞”もこの階級から選ばれた。そんな中で確実に空手スタイルでコンビネーションをつなぎ勝っていく選手がいた。茶髪あり、勝って雄たけびをあげる選手ありと派手な選手の多い中、淡々と無表情で勝ちあがっていく”静かなるモンスター”北川が、決勝に向かった。
- 準決勝
- 八田塁vs北川雄一(判定 北川4、分1で北川)
- 久保坂左近vs竹村光一(判定 5ー0久保坂)
- 決勝
- 北川雄一vs久保坂左近
■ どちらも、空手を基本にした安定した攻め。北川は1回戦からきれいな蹴りからのコンビネーションで勝ってきた。一方の久保坂もパンチへとコンビネーションをつなぎ一本勝ちもしている。個性派の中量級の決勝は、巧みな業師の対決となった。
蹴りで様子を見ていく北川、パンチを合わせる久保坂と互いに隙を探り合うがチャンスが見つからない。途中、2分で終了の太鼓がなるというアクシデントがおこる。だが、石井館長の”あと1分あるでしょう。続けて!”の声で試合再開。この声が合図となり両者のファイティングスピリットに火がついたのか、一気に激しい攻防になるが、どちらも最後の決め手が無い。
勝負は判定に持ち込まれ、両者1づつに引き分けが3で延長戦へ。
- 北川が下段からパンチにつないで積極的に攻める。対する久保坂は組んでの膝を狙うが決定打がなく、じわじわとおされていく形に。
判定は、北川4引き分け1で、北川の優勝が決まった。
- 中量級ベスト8
- 北川雄一・久保坂左近・八田塁・竹村光一・辻丸泰永・岸宗慶・奥西啓実継・朴成泰
重量級(70kg〜)
”でかい”と言うのはこの階級のための言葉だろう。180cm、80kgクラスの選手でも小さく見えてしまう気がする。何と言っても注目はK-1戦士養成学校である”モンスターファクトリー”から参加の宮本健太郎、風間勇乃、山中政信の3選手だ。しかし、今回1回戦シードの宮本は3回戦で敗退。風間、山中もベスト8どまりに終わった。風間、山中らの敗因は、どちらも延長後の体重判定。勝つために作った”モンスターな体格”が負けを生む皮肉な結果となった。KOしなければ勝てないというK-1の鉄則はここでも健在であった。
この階級、注目は日によって身長が変わると言う不思議なキャラクターをもつ正道会館期待の”自然体のモンスター”吉川だろう。彼は身長を計測するたびに180前後で数センチは前後するという。
- 準決勝
- 吉川富美夫vs小宮大悟(30秒を待たずに右上段で一本勝ち)
- 梁弘樹vs朴光哲(判定5ー0で朴)
- 決勝
- 吉川富美夫vs朴光哲
■ 吉川は昨年12月に大阪総本部の寮に入ったばかり。キックボクシングの経験はあるものの空手の経験は浅い。準々決勝、準決勝と短時間の1本勝ちで決め、疲れを残さず勝ち上がることに成功。一方の朴は体重判定でようやくモンスターファクトリーの山中を下し、準決勝も判定勝ちとフルラウンドの攻防を経ての決勝進出。パワーと蹴りでおしていく吉川と。フットワークと巧みなカウンターを狙う朴の対照的なタイプの対決となった。並ぶと吉川の方が一回り大きくみえる。朴のセコンドには群馬支部長の宮本正明が付き吉川のセコンドには湊谷コーチが付く。”体重判定になったら負けや、攻めていけ”と叫ぶ湊谷コーチの声に他のK-1選手からは笑い声がおこる。どちらも決め手に欠き、判定は5審とも引き分けで延長。
- 延長に入り、吉川は蹴りを中心に下段、組んでのひざのラッシュ。朴は、組んだときにパンチをいれるなど、攻撃をかわしながらの攻め。どちらも引かないが、判定は吉川3、引き分け2で吉川に傾いた。
- 判定後、吉川が納得いかないように首をひねっていたのが印象に残っている。自分の中ですっきりしないものがあったのか?勝ちより、試合内容にこだわるところに、アマチュアのひたむきさが感じられる姿であった。
- 重量級ベスト8
- 吉川富美夫・朴光哲・小宮大悟・梁弘樹・中田太郎・松多俊一郎・・風間勇乃・山中政信
超K−1賞(プレゼンテーターは関根勉)竹村光一
黄緑色の髪もさることながら、空手スタイルの目立つ(中量級) 今大会で変則的な動きとフットワークが目を引いた。上段づきでベスト8いりを決めた時には、バク宙もとびだすなどキャラクター性も抜群。しかし一番印象に残ったのは2回戦でバッテイングし額をを切ったときの言葉かもしれない。”自分は目の上だから大丈夫です”と言い、相手選手を気づかって、判定後”また今度戦いましょう”と語るなど心・技・体の問われるアマチュアらしさが光った。
全試合終了後、ベスト8に残った選手達にとっては次なるターゲットとなる5月5日の”新空手全日本大会”のトーナメントの抽選会が行われた。すでに出場を決めている8人の選手がトーナメント表に注目する。
5月5日の大会は、16人トーナメントであり、今回の成績は一旦フラットになった形に戻されるため、次回の大会へは反映しない。今日の優勝者も3位6人も、まったく同じトーナメント1回戦からのスタートになる。新たな参加選手も加わり、より激しい”モンスター同士の戦い”が再び繰り広げられることになりそうだ。■■■