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魔裟斗、ロックファンをKO !?/8.23 Black List 010

Black List 010 meets Wolf Revolution
2001年8月23日(木)千葉・東京ベイNKホール

キックボクシングルール(肘あり) 3分5R
○魔裟斗(シルバーウルフ)
×ベン・バートン(オーストラリア)
4R 1'10" KO

 前回のWR自主興業では、ZEEBRAとの共演を果たしストリートカルチャーとの融合を見せた魔裟斗だが、今回はホームグラウンドを離れ、ロック系イベントである“Black List”のステージにゲストとして招かれる形となった。出演バンドはGUITAR WOLF、 THE HIGH LOWS、Thee Michelle Gun Elephantと単独ライブで十分NKを満員に出来るトップ中のトップのロックンロールバンドが揃った。チケットの争奪戦も激しく、発売即売り切れ状況となったという。ジャンルは違うとは言え本物がその実力をぶつけあうその舞台で試合を披露するということは、魔裟斗にとって格闘技界の中での人気者にとどまらない高い知名度が認められたという事を意味する。それだけに、格闘技の知識を持たない観客を十分に満足させる試合を求められ、自主興行以上にインパクトのある展開を見せなければならない。

 GUITAR WOLFがロックンロールのイコンを最大に活かした破天荒な轟音ショーを繰り広げたかと思えば、THE HIGH LOWSは後半に初期の黄金ナンバーを並べるイベント必勝体制でファンのツボをくすぐる。幕間には金髪のダンサーが花道で、トップレスのセクシーなダンスを繰り広げる。盛りだくさんのプログラムが続き、すでにファンの興奮はピークに達した感がある。ここで魔裟斗がぬるい試合を見せれば、イベントのボルテージを下げかねない。タイトルにもある通り、ここでの魔裟斗の存在はセミ前というより、ダブルメインイベントの第一段といった意味合いがある。魔裟斗自身「ロックファンの中で試合をやって、会場がシーンとしてたらヤだなと思って、普段より堅くなった」と語る通り、この重責を本人が一番意識していた節がある。幸い最近のマスコミ露出が功を奏してか、客席は好意的に魔裟斗の登場を迎えていた。右手を挙げ得意のポーズで観客の歓声に答える魔裟斗。肌艶もよく「掴みはオッケー」の展開だ。

 試合は魔裟斗が最近一番自信があるという右ロー中心に、単発の攻撃が目立つ滑り出しとなった。対するベン・バートンはWMTCライトウェルター級オセアニアチャンピオンという触れ込みの選手で、これまでにも二回にわたって一カ月程のタイキャンプを張り、ラジャダムナンスタジアムでも戦った経験があるという。当然スタイルは完全にムエタイスタイル。ミドルキックと右パンチの伸びがあり、顔面が開き気味の魔裟斗にそのフックをヒットさせる展開もみられたが、基本的に倒せるパンチを持った選手ではない。序盤から魔裟斗の繰り出す右ローをガード出来ず、腿を赤く染めながら踏みこたえる姿が目についた。事実、ラウンド終了間際には、魔裟斗の右のショートフックでぐらつき、コーナーに詰められて勝負あったかという気配になったが、ここはゴングに救われた。ところが、ここからがオーストラリア人選手らしいタフネスの見せどころだった。2R以降鼻血を流し、嵐のように魔裟斗のローを浴びつつ、ハーパーはリングに立ち続ける。ミドルにはミドルを、また魔裟斗得意の左フックにも右のクロスを返そうとするなど、いまいちコンビネーションに冴えの見られない魔裟斗の出来を差し引いても、結構な粘りを見せて頑張るのである。

 勝負が動いたのは4Rだった。得意の左をジャブに使って、リズムを変えた魔裟斗の右ストレートがハーパーの顔面を打ち抜いたのだ。選手生活初だという右でのダウンを奪い、傘にかかった魔裟斗は続いて右ミドルを使って注意を上に反らし、そこに効果的な右ローを畳み込んで二つ目のダウンを導いたのだった。ここまで我慢に我慢を重ねたハーパーだが、ついにここで力尽きた形となりマットに四つんばいになった状態での10カウントを聞くことになった。

 会場には魔裟斗コールが鳴り響き、感極まった魔裟斗は客席にダイビングを敢行する。ロックファン、格闘技ファンの関係なく場内を盛り上げた魔裟斗は、ダブルメインの重役を果たし、トリに待ち受けるThee Michelle Gun Elephantに最良の形でバトンを渡した。相手が格闘技に特化した知識を持っていなくても、すっきりした形で試合を見せれば、小手先の話題づくりなどしなくてもきちんと客席に思いは通じる。魔裟斗のこの日の試合が客席に与えたカタルシスは、観客論の点で無法地帯化しつつある現在の格闘技界の在り方に、ある種のアンチテーゼを提出した形になったのではないだろうか。

 今後、自主興行は一旦休み、秋以降開催予定と言われるK-1 J-MAXへと照準を絞っているという魔裟斗。ケビン山崎氏とのトレーニングでこれまで以上に一発の破壊力が増し、これまでなかった右のパンチでのダウンを奪うなど好材料も見えた反面、それに頼るあまり一発狙いが増え、コンビネーションがいまいちだったのも事実である。今後、どういう形でその技術的課題を修正してくるかが注目されるところだろう。(レポート&写真:井田英登)

「Black List 010 meets Wolf Revolution」放映スケジュール
9/15(土)<予定>27:45〜28:45フジテレビ地上波
9/30(日)<予定>22:00〜25:00フジテレビ721


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