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[K-1] 5.11 武道館 (レポ&写真):魔裟斗&コヒに波乱。本命タイ人までも?

K-1 "K-1 WORLD MAX 2002 〜世界一決定戦〜" 5月11日(土) 日本武道館 入場者/8,450人(超満員)

1回戦 魔裟斗×ラドウィック 小比類巻×マリノ
    クラウス×チャップマン ガオラン×ジャン
準決勝 魔裟斗×クラウス 小比類巻×ガオラン
決勝  クラウス×ガオラン

レポート:高田敏洋(決勝・準決・リザーブ戦)
     石動龍(一回戦)
写真:井原芳徳(試合),石動龍(インタビュー)
選手コメント編集:BOX-T

【出場選手紹介&大会前の記者会見】
【2月の日本代表決定トーナメントの記事】

(試合はすべて2ノックダウン制。70kg契約。体重は前日午後2時計量時のもの)

第1試合 リザーブマッチ 3分3R
○チャンプア・ウィラサクレック(タイ/ウィラサクレック・ムエタイジム/176cm,69kg)
×大野崇(日本/BENEC/180cm,69.5kg)
1R 1'48" KO(2ノックダウン)
※0'42"右ストレートで大野がダウン。1'48"左ストレートで大野がダウン

 2月の日本代表決定戦における小比類巻との激闘が評価され、リザーバーの権利を与えられた大野だが、一昨年11月の伊藤隆戦以降、注目度の高い試合においてなかなか結果を出せないでいる。来年以降のK-1出場への足場を固めるためにも、この1戦はきっちりとした形を出しておきたいところだったが…。
 開始早々、大野の得意技である至近距離からの左ハイがチャンプアの頸動脈を捉える。チャンプアの腰がガクリと沈みかけるが、勢い込んで前に出る大野の顔面にチャンプアの右ストレートがヒット。逆に大野がダウンを喫する。

 立ち上がった大野は余裕を見せるためか? 自らを鼓舞するためか? 両腕を下げノーガードに。しかし相手のパンチが充分見えているとは言い難い状況で、この戦術は自らの墓穴を掘ることにつながる。今度は左で顔面を射抜かれ、リングに大の字に倒れ込む。レフェリーはすぐにチャンプアのKO勝ちを宣言した。

◆チャンプアのコメント
「最初は(会場の)雰囲気に呑まれて酔っ払ってるような感じだった。本戦に出場したかった。来年は本戦に参戦したい。(倒れなかったのはファイトマネーが高かったから?)そうです(笑)。(大野の印象は?)とてもパンチの強い選手だった。」

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第2試合 トーナメント1回戦 第1試合 3分3R
○魔裟斗(日本/シルバーウルフ/日本代表/174cm,70kg)
×ドゥエイン・ラドウィック(アメリカ/3-Dマーシャルアーツ/アメリカ大陸代表/178cm,70kg)
判定3-0 (30-28,30-27,30-28)
※3R 0'24" 左フックでラドウィックがダウン

 身長差はわずか4センチながら、手足の長いラドウィックとのリーチ差に魔裟斗は苦しめられる。3Rに左フックでダウンを奪い判定勝ちを収めたものの、ラドウィックのしぶとさに手を焼いた試合だった。

◆ラドウィックのコメント
「今回アメリカ代表として出場できてとても良かった。マサトはフックが速くとてもパワーのあるいい選手だったが、自分にも勝つチャンスはあったと思う。また日本で戦いたいね。(魔裟斗の欠点は?)彼は左ローを打つ時に踏み込む癖があったので、そこをカウンターで合わせるべきだったが、 試合後に気づいてしまったよ(笑)。(日本で総合格闘技等で戦う気はあるか?)アメリカのファンに比べて日本のファンは格闘技の事を良く知ってるので、キックでも K-1でもバーリトゥードでも、チャンスがあれば何でも出場したい。」

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第3試合 トーナメント1回戦 第2試合 3分3R
○アルバート・クラウス(オランダ/リング・ホー・ジム/ヨーロッパ・ロシア代表A/175cm,69.1kg)
×シェイン・チャップマン(ニュージーランド/フィリップ・ラム・リーガージム/オセアニア代表/183cm,69.4kg)
判定3-0 (30-29,30-29,30-29)

 パンチで突進するクラウスを、チャップマンは前蹴りでいなして距離を保とうとする。クラウスはチャップマンをコーナーに詰めてパンチを連打。チャップマンはローとミドルで反撃。手数ではチャップマンが勝ったが、ダメージが大きかったことが判定に響き、クラウスに軍配が上がった。

◆チャップマンのコメント
「自分が勝ったと思っている。攻められているように見えただろうが、自分の方が全てを出せたと思っている。思っていた程クラウスのパンチは強くなかった。1, 2ラウンドは判定で勝っていたと思ったので、2試合目の為に体力を温存しようと気にし過ぎたことが敗因かもしれない。(再戦があれば?)必ず叩きのめして自分の方が強い事を証明したい」

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第4試合 トーナメント1回戦 第3試合 3分3R
○小比類巻 貴之(日本/黒崎道場/主催者推薦/180cm,70kg)
×マリノ・デフローリン(スイス/ダイヤモンドジム/ヨーロッパ・ロシア代表B/165cm,69.3kg)
1R 1'12" KO(左膝蹴り)

 小比類巻はかつてマリノにダウンを奪われ敗北を喫している。小比類巻にとってこの試合はトーナメント一回戦であるとともにリベンジ戦の舞台でもある。
 開始直後からパワフルなパンチでマリノが前に出る。だが小比類巻も膝を合わせて対抗。ややパンチが交錯した後、小比類巻のカウンターの左膝がマリノのレバーに突き刺さる。マリノは悶絶して崩れ落ち、倒れたまま10カウントを聞いた。小比類巻はリベンジと余裕の一回戦突破の両方を果たした。

◆デフローリンのコメント
「日本で戦える事が決まって嬉しかった。勝てればもっと良かったのに。ヨーロッパでもまだまだ試合が決まっているので続けて行きたい。(コヒの印象は?)とても強かった。モチベーションが高かったようだ。素晴らしい勝ち方だったと思う。(一番効いた攻撃は?)ヒザに驚いた。前回(の対戦時)はローばかりだったのに。2〜3回ヒザを入れられて息ができなくなってしまった。身長差がかなりあるのでヒザを使うとは思ったけど、最初はローを打ってくると思っていた。(前回と今回のコヒの印象の違いは?)今回あまりに早く終わってしまったのでよく分からないが、かなりアグレッシブだった。前回は彼の方が待っている感じだった」

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第5試合 トーナメント1回戦 第4試合 3分3R
○ガオラン・カウイチット(タイ/ペッチンディー・ボクシング・プロモーション/タイ代表)
×ジャン・ジャポー(中国/武漢体育学院/中国代表)
判定3-0 (30-28,30-27,30-27)
※2R、3R、クリンチによりジャンに警告1ずつ。

 出会い頭のガオランの前蹴りがジャンの顔に直撃。満員の客席からは驚きの声が巻き起こる。ジャンも大振りのフックとサイドキックで攻めるが、ガオランのプレッシャーの前にクリンチが多くなってしまう。組みつかれたガオランは膝で着実にダメージを与え、試合を優位に進める。
 2R以降ジャンのクリンチに再三警告が与えられるが、展開は変わることなく試合終了。最後まで両者が噛み合わず、“ムエタイのヒクソン”と評された男は実力を神秘のベールに包んだまま一回戦を突破。ジャンの“手から稲妻”も見られなかった。

◆ジャンのコメント
「ルールに慣れてなくて技術が出せなかったので、日本のファンには申し訳ない。ガオランは非常に強かったが、散打ルールなら勝てたと思う。(相手の効いた攻撃は?)ヒザが効いた。国内の散打選手権ではヒザが禁止なのです。散打の基礎的な技術しか試合で出せず(得意の)パンチも出せなかった。(自分の攻撃で効いたのは?)サイドキック。」

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第6試合 トーナメント準決勝 第1試合 3分3R
×魔裟斗(日本/シルバーウルフ)
○アルバート・クラウス(オランダ/リング・ホー・ジム)
判定0-3 (28-29,28-29,28-30)
※1R 2'31" 左ストレートで魔裟斗がダウン

 体格的にも攻撃的なスタイルにおいても(またルックス面でも)共通点が感じられる部分の多い両者の対決は、内容的にも噛み合った白熱の好勝負となった。
 ボクシング出身のクラウスはあまり蹴り技を使わない。この点ではオールマイティな魔裟斗に一日の長があるように見えた。だが魔裟斗は「パンチ技術では自分が若干負けていた」とクラウスのポテンシャルの高さを振り返った。左を見切ることが出来ず、再三ジャブやフックを顔面に受けてしまう。「外人選手相手に自分が下がっちゃったのはコレが初めて(魔裟斗)」
 そして1ラウンド残り30秒、出会い頭のジャブの打ち合いで、相手のパンチを顎に貰った魔裟斗が膝からマットに崩れ落ちる。軽いパンチにも見えたが「効いていた。あんな痛いパンチを持った選手は初めて」。その後クラウスの猛攻をしのぎきり2度目のダウンは免れたが、魔裟斗は序盤から大きなポイント・ロスを被ってしまった。魔裟斗の鼻から早くも出血が見える。(1Rジャッジ:魔裟斗−クラウス:8-10,8-10,8-10)

 2ラウンド、開始と同時にクラウスがパンチ・ラッシュで決めに来る。だが元々スロースターター気味の魔裟斗はこのラウンドからようやくエンジンが掛かり、スタンスの広いクラウスの前脚にローを集めダメージを蓄積させる。確かに5R制のワンマッチならこの方法で徐々に相手の動きを殺し、1ラウンドのダウンの失点を取り戻しつつ追い込んでいく戦法もある。だが3つしかラウンドがない以上、魔裟斗は多少危険を冒してもパンチの打ち合いで一気に挽回を図らざるをえない。
 しかしショートレンジでのクラウスのパンチ力はやはり危険。そこで魔裟斗はやや遠間から速いジャブを飛ばすなど非凡な技術を見せる。「ボクシングを取り入れた技術を使ったり、魔裟斗は攻撃が多彩な選手でした。(クラウス)」
 全体的にプレッシャーをかけているのは魔裟斗の方だ。しかしそこから決定打を撃とうと踏み込むと、クラウスの左が魔裟斗の顔面を捉える。魔裟斗の大振りのパンチが空を切る。「2Rで倒さなきゃ自分の負けだと思った」という魔裟斗の顔から、焦りの色が見え始める。(2Rジャッジ:魔裟斗−クラウス:9.5-10,10-10,10-10)

 最終ラウンド。「魔裟斗」コールの中、最後の挽回に掛ける魔裟斗。クラウスがローを嫌がっているのは客席からも感じられるが「(クラウスは)根性のある選手。あの程度では倒れないと思った(魔裟斗)」「確かに多少効いていたが、我慢できないほどではなかった(クラウス)」。
 2ラウンドから徐々に強まってきたプレッシャーで、このラウンドで主導権を握っていたのは完全に魔裟斗の方だった。だがタフなクラウスはパンチにせよ蹴りにせよ貰っても怯む様子を見せない。「あれだけ顔を腫らして、普通の外人選手なら投げてるところですよ(魔裟斗)」
 だが終盤に来て、初めてそのクラウスを捕まえかけるシーンが出てきた。守勢に回る相手をロープ際に詰め、魔裟斗のパンチがクラウスの顎を捉え、その体がガクリと揺らぐ。しかし背後のロープのリバウンドに助けられ、クラウスは回り込んでダウンを免れた。最後のチャンスに掛け一気に詰めに出る魔裟斗と、必死に凌ぐクラウス。大歓声に包まれたリング上に、魔裟斗には非情の、クラウスには救いの、試合終了を告げるゴングが響いた。(3Rジャッジ:魔裟斗−クラウス:10-9,10-9,10-10)

 結果を聞いた魔娑斗は目に涙を浮かべ、頭にタオルを被ったままリングをあとにした。

◆魔裟斗のコメント
「(1回戦は)向かい合った途端に力の差がわかったんで、1Rは遊びのつもりでやって、最後までズルズル行っちゃいました。(準決勝は)2Rで倒さなきゃ自分の負けだと思った。あんなに痛いパンチは初めて貰いましたね。向こうの方がジャブが上手くて、自分のは当たらなかった。本当にパンチは強かった…。
(クラウスの感想は?)根性ありましたね。普通の外人だったらあんなに顔が腫れたら途中で止めてたと思いますよ。クラウス選手は子供がいるので、その差が出たかなあ…。俺も子供作ろっかな。(笑)

 1R目に(腫れ上がった目の周りを指差しながら)この辺りにパンチを貰って目の前がぼやけました。(右ローはクラウスに効いてると思った?)セコンドは『効いてる』って言ってましたけど、割と倒れないと思った。
(トーナメントによる疲れは?)前回経験したので疲れはないです。(泣いた事に関して?)試合で泣いたのなんて初めてじゃないスか。悔しくて涙が出たんで、痛くて泣いてるんじゃないです。(笑)
(魔裟斗コールは聴こえたか?)(観客は)優しかったですね。(賞金は何に使うつもりだった?)ベンツのSL(笑)(次の目標は?)今は考えられないです。自分に期待してくれてたファンの人には、期待を裏切ってごめんなさい」

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第7試合 トーナメント準決勝 第2試合 3分3R
×小比類巻 貴之(日本/黒崎道場)
○ガオラン・カウイチット(タイ/ペッチンディー・ボクシング・プロモーション)
2R 2'42" KO(右膝蹴り)
※2Rクリンチにより小比類巻に警告1。2'24" 左膝蹴りで小比類巻がダウン。小比類巻にアバラのダメージがありドクターチェック。2'42" 右膝蹴りで小比類巻がダウン。

 1回戦を理想的なKO勝利で突破し、戦前から強く対抗意識を持っていたガオランとの闘いを迎えた小比類巻。黒崎道場で「タイ人に勝つこと」を考えつづけてきたという小比類巻にとっては、正念場ともいえる一戦であった。しかしそこで小比類巻は地獄を見ることになった。

 ガオランが左ミドルを中心に組み立てているのに対し、小比類巻は徹底した右ロー狙い。独特のリズムからシャープな蹴りを繰り出していく。かつて黒崎健時氏の薫陶を受け、史上初の外国人ムエタイ・チャンプの座を射止めた藤原敏男は、対ムエタイ戦略として徹底した変則ステップを使い、ムエタイ独特のリズムをかく乱した。この試合の小比類巻の戦法にはそれに似た変則性が感じられ、少なくともこのラウンドではある程度功を奏していたように見えた。事実2名のジャッジが、僅差ながら小比類巻にポイントを与えている。

 だがムエタイでは通常1Rは相手を探るのを常道とする。無論3R制のK-1トーナメントにおいてムエタイ同様の戦略を用いることはできないが、このラウンドのガオランがまだまだフル・スロットルでなかったことは、次のラウンドで明らかになった。(1Rジャッジ:小比類巻−ガオラン:10-9.5,10-9.5,10-10)

 2R、上背のある小比類巻をガオランが首相撲に捉えてコントロールする光景に、場内はどよめく。ある時は相手を振り回し、また次の瞬間には自らがバネ仕掛けのように伸びあがって、相手の死角に回りこんで膝を飛ばす。そのプレッシャーに徐々に小比類巻が圧され始め、離れ際相手に背を向けたところに背後からフックを浴びる。これはレフェリーのブレイク後ということで難を逃れたが、さらに厳しかったのは、再び組み合った両者がもつれてスリップダウンした瞬間であった。
 このスリップも、ガオランのプレッシャーに圧された小比類巻が自ら相手を引き込みながら倒れていったように見えた。だがその時にガオランの膝が小比類巻のボディに突き刺さる恰好になってしまった。あるいはこうしたアクシデントさえ戦略的に利用するしたたかさがムエタイの強さと言えるかもしれない。この時にアバラを傷めた小比類巻は、ドクターチェック後に試合が再開されたときには既に完全に動きが止まってしまっていた。

 再び首相撲を仕掛けてくるガオランに対し、小比類巻はボディを庇おうとして腰を引き、頭を下げてしまう。首相撲に対する基本的なタブーを小比類巻が知らない筈はない。それだけボディのダメージが厳しかったのだろう。以後は相手に背を向けるような仕草を再三見せ、レフェリーからは警告のカードを提示される。
 既に戦えるような状態ではなかったのかもしれないが、それでも「ミスターストイック」は勝利をあきらめない。だがその先に待受けていたのは、残酷なムエタイの処刑儀式であった。密着したガオランの膝攻撃に晒され、ついにリングに崩れる小比類巻。かろうじて立ち上がったものの追撃は容赦ない。最後はセカンド・ロープから上体をリング外に放り出されるような屈辱的な姿勢で、2度目のダウンを奪われた。
 小比類巻はアバラを痛めたため共同インタビューには応じなかったが、大会終了後のセレモニーには登場し気丈さを見せつけた。大会後の検査の結果、アバラの軟骨にヒビが入っていたことが判明した。

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第8試合 トーナメント決勝戦 3分3R
○アルバート・クラウス(オランダ/リング・ホー・ジム)
×ガオラン・カウイチット(タイ/ペッチンディー・ボクシング・プロモーション)
1R 1'00" KO(ボディへのパンチ連打)

 世界中から選りすぐられた中量級ファイターの頂点を決める闘いが、まさかこのような形で決着すると誰が予想しただろう?
 上背に勝るガオランが牽制気味の蹴りを放つと、クラウスはこれまで同様パンチを振るいながら前へ前へと出る。「ガオランはボクシング的なパンチ技術にあまり慣れていないと思っていた。背が高く顔面を意識したガードだったのでボディを狙っていった」というクラウスのアグレッシブなパンチラッシュである。
 しかし、一回戦・準決勝ともにフルラウンドの消耗戦を乗り越えてきたクラウスは疲労の蓄積を感じさせ、それまでに比べるとパンチの切れやスピードに欠けた。かたやガオランは中量級以下のクラスでは世界最強の名を欲しいままにするムエタイのチャンプ。前2戦においては下馬評通り憎々しいばかりの強さを見せつけている。ここは堅実に凌いで反撃のチャンスを伺うかと思われた。ところが!

 クラウスのボディパンチの連打で、あれよあれよという間にガオランの動きが止まり、ガードを固めた上体がくの字に折れ曲がる。その刹那、クラウスの右が緩んだガードの隙間からガオランの顎を完璧に捉えた。崩れ落ちたガオランは10カウントを聞くまで、ファイティング・ポーズはおろか立ち上がることすら出来なかった。試合時間僅か1分。クラウス、文句なしの完璧なKO勝利である。

 振り返ってみればクラウスに準決勝で敗れた魔裟斗の「あんな痛いパンチは食らったことがない」という言葉が、この結果を暗示するものとなっていた。リング上でインタビュアーの差し出すマイクに「何を喋っていいのか分からない」と喜びを爆発させるクラウス。しかしその言葉は同じく、傍らに呆然と立ちつくす敗者ガオランの心境とも一致していたことだろう。10年間の歴史においてしばしば語られた「Kのリングに棲む魔物」は、この中量級の舞台においても最後の最後に最大級の生け贄を屠って見せた。

 これでヘビー級に続きこのミドル級においても、K-1戦線はオランダを中心に回っていくことになるのだろうか? しかし表彰を受ける「ヨーロッパ最強の貴公子」の両まぶたは紫色に腫れ上がり、その端正なマスクにも激闘の痕がハッキリと刻まれていた。僅差の判定で敗北した初戦のチャップマン、3Rにクラウスをダウン寸前まで追い込んだ魔裟斗、そして決勝で当たったガオランとて、このまま引き下がる筈はない。最も選手層が厚いと言われるこのクラス。今回出場しなかった強豪もこれからK-1参戦に名乗りをあげることだろう。サバイバル・ロードは、ヘビー級以上に熾烈さを極めること必至である。

◆優勝したクラウスのコメント
「世界中で今一番幸せなのは僕だと思う。(今日一番の山場は?)みな強いファイターだったので、誰が一番強かったとかは言えない。(一回戦の判定は?)攻撃は激しかったけど、ちゃんと防御したから大丈夫だと思った。(目の周りが腫れ上がっているが?)最初に受けた傷に何度も攻撃を受けた為にこうなったが、数週間すれば治ると思う。
(準決勝の魔裟斗の印象は?)とてもいい青年であり、ファイターだった。ボクシング的な攻撃が良かった。パンチがとても強かった。 (魔裟斗のローは効いたか?)少しは効いたけど、大した事はなかった。
(決勝のガオランの印象は?)とても強い選手。でも今日は僕にツキがあった。(ガオランの弱点は?)ボクシング的な部分。ヒザやキックはそれなりの物を持っていた。(ボディーは狙ってた?)背が高かったし頭をガードしてたので下目を狙った。
([魔裟斗が指摘したように]家族がいる事が優勝に繋がった?)そう言えると思う。家で待ってる家族に良い結果を伝えたいと思った。(練習仲間のピーター・アーツへのメッセージは?)細かい事まで面倒を見てくれて感謝しています。オランダはK-1大国でピーターも輩出してる国なので、自分もその一員に入れて嬉しいです。」

◆準優勝のガオランのコメント
「(決勝の敗因は?)パンチを受けた事。(クラウスのパンチはどうだった?)とても強い良い選手だった。(ヒジなしルールに関しては?)その事は自分にとって特に問題ない。(試合後「信じられない」という顔をしていたが?)負けた選手がショックを受けるのは、普通の事だと思う。(効いたパンチは何だった?)わからなかった。
(準決勝の小比類巻の印象は?)とても力のある選手だったけど、僕のヒザを沢山受けてしまったので彼は負けたと思う。(決勝の作戦は?)特になかった。(散打の選手に関しては?)トーナメントの1回戦でもあったし、中国の選手はどういう選手かわからなかったので、やり辛かった。(クラウスと再戦したいか?)是非。ムエタイでやりたい。(ヒジありで?)ムエタイであればヒジありで。K-1であればヒジなしで。タイでやるならムエタイルールでやりたい。(日本のファンへのメッセージ)今回温かく迎え入れてくれてありがとう。」

(写真左:決勝戦の前に行なわれたテコンドーの演舞 右:リングアナウンサーを務めた俳優の渡辺いっけい氏)

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Last Update : 05/14

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