[K-1] 波乱を予感せよ! GP直前出場選手インタビュー集
アルゼ K-1 WORLD GP 2001 決勝戦 2001年12月8日(土) 東京ドーム
<グランプリ一回戦組み合わせ> アーネスト・ホースト vs. ステファン・レコ マーク・ハント vs. ジェロム・レ・バンナ ニコラス・ペタス vs. アレクセイ・イグナショフ フランシスコ・フィリォ vs. ピーター・アーツ
<リザーブマッチ> アダム・ワット vs. マイク・ベルナルド
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第1試合 <アーネスト・ホースト> 「すべての答えは勝つことで証明できる」
−−体調は? ホースト● ベリーベリーベリーグッドコンディションだよ(笑)
−−三連覇が掛かっているというプレッシャーはありますか? ホースト● NO。私は戦うこと、そして勝つことだけに専念している。すべての答えは勝つことで証明できると思う。敵は記録ではなくて、対戦相手だからね。
−−今回はトーナメントですが、対戦相手によって作戦は変えるのですか。 ホースト● 常に考えていることは、何をやるべきであって、何をやるべきではないかということだけ。相手の出方によってそれは変わるし、その都度考えるようにしているよ。
−−抽選会でこの枠を選択されたのは、対戦相手がレコだったからですか?それとも第一試合なので次の試合まで休憩が長くとれるからですか? ホースト● まあ一番早い試合だったというのも当然ある。それに以前レコとは戦って勝っているので、彼に対する戦い方がわかっているんだ。それに私は誰が対戦相手であっても、恐れるということはないんだ。それが理由だよ。
−−優勝賞金の使い道は? ホースト● フム、カジノで使おうか(笑)まあ、今はまだ考えてないよ。
−−事前にベルギーでキャンプを張られたそうですが。 ホースト● まあ、キャンプ以降、すごく充実してるんでね、きっとその影響はあるんだと思うよ。多分、土曜日の試合でその結果はわかるんじゃないかな。
−−特にボスジムを離れたことで見つかった事はありますか? ホースト● 基本的には大きな違いはないけどね。まあ、他のことに煩わされずに練習に集中できたことが一番の成果だろうと思う。
−−三連覇を達成したら、その後何か新しいプランはありますか? ホースト● 勝ってからだね。今は何もその後のことは考えてないよ。なにより、今は勝つことに集中したいんで、そういうことを考える時間がないんだ。勝ってからなら、改めてそういうことを考える時間を割くこともできるだろうけどね。
−−この二年で唯一の黒星がバンナ戦(2000年7月30日名古屋GP決勝)なんですが、今回彼のへのリベンジを意識していますか? ホースト● NOだね。あの試合の段階で僕は怪我をしていた訳で、試合内容で負けたというわけじゃない。負けたという意識はないよ。
【A POINT OF VIEW】 冷静沈着なプロフェッサーも、このところ加熱する一方のバンナフィーバーにはかなりピリピリしているというのが実情である。メルボルン大会でも、大会そっちのけでバンナとのライバル関係に質問が集中したことで、「バンナとの決着はもう付いているじゃないか。私は彼に二回も勝っているんだ。それで何か不足なのか?」と過敏な言葉をはいた事もある。今回東京ドーム決勝大会のポスターにバンナのワンショットポスターが採用されたことで、また気分を害しているという情報もあり、ドームでの対戦が実現した場合、ホーストは死力を尽くしてバンナを壊滅させる覚悟を決めているはずだ。 [目次に戻る]
<ステファン・レコ> 「トップに食い込んだだけで満足してるわけじゃない」
−−非常にシェイプされた感じですが レコ● 今、体重は96キロ。ドームに向けていい練習ができたので、体調もいいよ。ここ二年ぐらいオーバーウェイトで動きが自分でも良くない気がしてたんでね、ラスベガスの時に94キロに絞って出たんだけど、あの時の動きが自分でも理想的に思えたんでね、それを維持する形でトレーニングしたんだ。
−−髪を金髪に染めたのは? レコ● まあちょっと気分を変えたかったんだ。
−−ドームに向けて、緊張されてますか? レコ● まあいつの試合でも緊張はするけど、堅くなるのではなくて、いい意味で身体が締まるような感じだね。
−−これまではグランプリの度にアクシデントが起こるというジンクスがありましたが、その辺今回はどうでしょう? レコ● 不安から来る緊張はほとんど無いな。
−−ホースト選手は以前に勝っているので、あなたに対する勝ち方はわかっていると言っていますが、この発言に関してはどう思いますか? レコ● まあ、土曜の試合を見てもらうだけだね。 (同席したコーチが割り込んで)確かに四年前にステファンは負けているが(97年9月7日2RKO負け)、まだ彼は当時新人だった。この四年の成長を証明するには、逆にいい試合だと思う。新世代の台頭というのはファンにとっても楽しみだと思うよ。
−−同じ選手に連敗はできませんね。 レコ● もちろん。
−−準決勝にはバンナとハントどっちが上がってくると思いますか? レコ● 第一試合を一番大事に思ってるんで、どっちが上がってきても同じだね。
−−ピーターに勝ったことはあなたにとって特別な勝利だったのでしょうか? レコ● そうだね。これでトップクラスに食い込むことができたと思う。ただいつも僕はその上を目指しているからね。それで満足してるわけじゃない。
【A POINT OF VIEW】 クールビューティーと呼びたくなるような。端正な表情。今回、体重を96キロに絞り、一層すごみの増した冷徹な表情は、どこか殺し屋を思わせるようになった。これまで丸坊主だった頭を、短く伸ばし金髪にしたことも、そうした色気を感じさせる要因の一つかもしれない。ラスベガスでは、アーツをノックアウトに仕留め、一気に去年のセフォーのようにブライテストホープに飛び出したレコだが、今回、スタイルの酷似したベテランホーストを攻略できれば、その輝きは本物に変わる。ほぼ同期のライバルセフォーが炎の爆発力を持つように、レコは氷の鋭さをもつ。セフォーが去年一年で完全に地盤を固めた今、K-1第3世代のバンナとベルナルドのような存在になれるかどうかは、すべてこの一戦に懸かっていると言ってもいい。 [目次に戻る]
第二試合 <マーク・ハント> 「バスとジェロムのパンチなら、バスの方が強いよ(笑)」
−−抽選会でジェロムを対戦相手に選んだ理由に「強い相手と戦いたかったから」とおっしゃっていましたが、何か勝算はありますか? ハント● 確かにジェロムを選んだのは彼に挑戦したかったからだけどさ、とにかくリマッチをしたかったからなんだよね。あれから、俺も強くなったはずだし、他のみんなと一緒で、彼に勝つチャンスはあると思うんだけど。
−−前回の対戦を経験して、なにか勝てるという手ごたえはありましたか? ハント● 前の時はちょろちょろ足を使って神経質に出たり入ったりしてたんだけど、今度はもう下がったりしないよ。
−−ジェロムをノックアウトできる自信はありますか? ハント● もちろん!
−−逆に倒されない自信は? ハント● されないよ。前だってダウンさせられてないんだぜ(笑)
−−前に気を失ったのはマイクロバスに轢かれた時だけだとおっしゃってましたが、バンナのパンチとどっちがすごいですか? ハント● そりゃバスだよね(笑)
−−今回の試合に向けて何か特別に身に付けたものはありますか? ハント● まー、気持ちの部分かな。いままで、ドームみたいなところで大勢の客に見られて試合した事がないわけだからさ、その辺びびらないようにって。
−−トーメント対策としてはは何か考えていますか? ハント● ま、一秒も早く相手をノックアウトしちまって、次行くこと考えるってぐらいかな(笑)
−−福岡ではセフォーとノーガードで撃合いながら、微妙にポイントをずらしていたのでは?という意見もあるんですが、実際意識してそういうテクニックを使っていたんですか? ハント● へ?どのパンチのことかな、あんまり殴られたんでよくわかんないよ(笑)まあ、殴られた時にはこっちが遅いわけで、次は除けてやるべって思ってはいたけどさ(笑)
−−あの時、レイにキスのポーズを見せたということで話題になりましたが ハント● やあ、レイがしてきたんだよ。俺はやってないよ!(笑)
−−もしチャンスがあったらジェロムにキス作戦で幻惑してやろうととは思いませんか? ハント● さあ?奴が俺にキスしたいんじゃないのー?アハ(笑)
−−準決勝、決勝と誰か戦いたい相手はいますか? ハント● なるようになれ、だね(笑)
−−ホーストへのリベンジというテーマもあると思うんですが? ハント● ま、彼が勝ったらだよね。
−−優勝賞金の使い道は考えてますか? ハント● あー、家が買いたいなあ(笑)
−−ところでK-1で活躍しているということで、周りの人の反応は変わってきましたか? ハント● いやー、全然だね。
−−アレクセイ・イグナショフとあなたはこの決勝大会に勝ち上がるうえで最も短いキャリアでそれを成し遂げたんですが、自分では何が変化した結果こうなったと思いますか? ハント● いーや、なにも変わってないんじゃない?俺はK-1を始めた時とまったく一緒だよ。
【A POINT OF VIEW】 南洋の気候のようにおおらかで、さっぱりとしたハントの受け答えは巧まぬユーモアを感じさせる。いつもにやにや笑いを浮かべた、一切緊張感と無縁に見える好漢にマスコミ人気が集まるのも無理はない。ただ、彼はそうした茫洋とした印象とは裏腹に、レイ・セフォーとのド突きあいで見せたサモア人ならではの“ど根性”がある。今回の短い受け答えの中にも、そうした反骨精神はきらりと輝いて見えた。このガッツが、難攻不落のターミネーターにも見えるバンナの心奥深くに隠されている、意外な脆さを突き崩す事が無いとも言えない。キス対決ふたたびなどと面白おかしくもてはやすマスコミを他所に、南洋の怪人はひそかに大金星を確信していると感じた。 [目次に戻る]
<ジェロム・レ・バンナ> 「包囲網?まあ、気にしないさ」
−−すごく今日は表情が柔和なんですが、何かいいことがありましたか? バンナ● 夕べはよく眠れたし、すごくリラックスできてるんだ。日本に着いてから、ずっとハッピーな状態さ。すべてを楽しめてる。
−−今回のグランプリの三試合はどういう展開になると予想されていますか? バンナ● 一試合目のことはとりあえず考えてるけど、その先のことはあまり考えてないな。
−−対戦相手のハントに対する印象を伺いたいのですが バンナ● 彼はグッドファイターだし、タフだな。打たれ強いし、突進型なんで、好きだな。いいんじゃないか?
−−具体的な戦法としてはやはりKO狙いになりますか? バンナ● いや、KOなんかねらってできるもんじゃないし、いつもそう思って戦ってるわけでもない。たまたま結果はそうなってるがね。今回はスピード持って動けるところを見せたいと思ってるんだ。
−−チャンピオンになるために特別にやって来たことは何かありますか? バンナ● トレーニングを増やしたこと、そしてそれに集中したこと。
−−今回は「バンナ包囲網」というような言い方もされていますが。 バンナ● そうだな。マスコミがそうやって盛り上げてくれてるのはうれしいな。ただ八人のトップ選手が集まっての試合なんで、俺にとってはすこしきついプレッシャーになってるのも事実だよ。まあ、気にしないようにしてるけどね。
−−決勝には誰が上がってくると思いますか? バンナ● 誰でもいいんじゃないか。ベストのやつが上がってくるだけだろう。
−−フィリォ選手がさっきのインタビュウで、決勝ではバンナと戦ってリベンジしたいと発言していましたが バンナ● ハハハ(笑)フィリォがそう言ったなら、大歓迎さ。でもトーナメントとワンマッチは違うからな。みんな勝つために戦ってるわけで、試合の中身も違う。まあ、フランシスコがリベンジだと言うなら、是非やってやろうじゃないかって気分だけどね。
−−去年はグランプリに出場できなかった事で二年ぶりの決勝大会になりますが、なにか心理的に変わったものはありますか? バンナ● 変化?そんなものは無いさ。俺の仕事はファイターだ。「あの時こうだったら〜」みたいな考え方はしないんだ。
−−優勝の確率は何パーセントでしょう? バンナ● 100パーセントさ。一回戦の後も、一個一個の試合を楽しんでいくだけさ。
−−トランクスを新調したと聞いていますが? バンナ● いや、変えたわけじゃないんだ。二年前の奴を引っ張り出して来ただけでね。俺は縁起担ぎはしないからさ。体重を絞ったせいで、二年前の奴がちょうど具合いよくなったってだけのことさ。
−−体重を絞ったと言うと? バンナ● スピード重視の試合をやるために絞ったというのはあるんだが、まあ無理なダイエットをやったってわけじゃない。普通にトレーニングをしたら、落ちたってだけなんだ。まあトレーニングとしては今までで一番やったと言ってもいいだろうな。まあ他の連中もすごくコンディションはよさそうだし。
【A POINT OF VIEW】 いつもやんちゃ小僧のようなバンナの気性には、大会関係者もマスコミも結構振り回される事もあって、周辺はVIP待遇を固めている。そのことがが非常にお気に召した様子で、この日のバンナはご機嫌でマスコミの前に姿を現した。普段は専任で横に付くお気に入りの母国語フランス語担当通訳女性がこの日は居らず、英語でのインタビュウとなった事も、いつもの虚勢を引き出さなかった原因かもしれない。(普段のバンナの暴走発言は、案外それを通訳する彼女のリアクション見たさといったフランス人らしい茶目っ気の部分が多々感じられる。)ただ、ご機嫌で優等生発言に終始したバンナの満足そうな表情が、逆に試合の二日前という状況を考えると気にかからないでもない。サバイバルとなるトーナメントを前に、すでに王座を手にしたようなこの落ち着きぶりは、逆にハングリー精神で売ってきたバンナにプラスになるとは思えない。大本命視され、マスコミからも関係者からもちやほやと王子様扱いを受けている彼の背中には、すでに七匹の餓えた狼がぴったりと迫っているということを、忘れないでいなければいいのだが。 [目次に戻る]
第三試合 <ニコラス・ペタス> 「ジャパン優勝が茶帯なら、ドームは黒帯昇進試験です」
−−通訳はいりませんね(笑) ペタス● はい(笑)よろしくおねがいします、押忍。
−−ジャパンGPが終わってからドームまでのスケジュールを立てられたそうですが、順調に消化できましたか? ペタス● そうっすね、怪我の方も順調に治って。まあ、そのスケジュールを組み立ててもらって、その通りにやってきたんで、今は不安がなく、自分の体の調子っつうか、コンディションがいいんで、今は戦う事だけを頭に入れて頑張ればいいと思ってます。今回は、こないだは怪我とかいろいろあったんですけど、そういう余計なことは少しずつ消してきたんで、今回は結構自分としてはいいコンディションで戦えると思ってます。
(続く)
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<アレクセイ・イグナショフ> 「8時間トレーニング?嘘だよ。僕は8時間寝てただけさ(笑)」
−−前回来日の時は、飛行機のエンジンが一時止まったりしたそうですが、今回は大丈夫でしたか? イグナショフ● 大丈夫だったと思うよ。前回だって、僕は寝てたんでそんなことがあったとも知らなかったんだけどね(笑)
−−体重は今どれぐらいでしょう? イグナショフ● 実はよく知らないんだ。50キロよりは重いと思うよ(笑)
−−身体がすごく出来上がってる感じがしたんですが イグナショフ● 今年で僕も24歳になるんで、もう大人だよね(笑)
−−特に上半身に厚みが出た感じがしましたが イグナショフ● 大分トレーニングも積んだからね。成果が出てるんだね。それに名古屋で優勝したおかげで賞金が入ったんで、ご飯もたくさん食べたしね(笑)
−−名古屋の後オランダで試合をしたそうですが イグナショフ● 残念ながらベネチアンとの試合は2R判定で負けちゃったんだ。でも負けっていうのも僕みたいな若い選手にはいい御灸になるんだよ(笑)また勝たなきゃって気にならせてくれるからね。実はあんまり練習してない状況で、試合をしちゃったのさ。あの試合ではなんかダランとして、モチベーションが低かった気がするよ。いい勉強になったと思うよ。ご飯がおいしかったのと、寝過ぎたのが敗因だね(笑)
−−対戦相手のペタス選手の印象は? イグナショフ● ペタスがチェスの選手でないことは知ってるよ(笑)面白い試合になるんじゃないかな。
−−作戦は何か? イグナショフ● うーん、特にないなあ。トレーニングをやったとだけ言っとくよ。特別な作戦も何もないね。ただ相手を倒す、それだけさ。なまじ作戦なんか立てると、それを読まれたらおしまいだからね。だから作戦を立てないことが、僕の作戦なんだ(笑)
−−身長差があるのでひざ蹴りを出しやすい相手だと思いますが イグナショフ● ひざだけじゃなくてパンチもね。
−−何か特に強化したものはありますか? イグナショフ● 油断をしない。太らない。殴る練習をする。どんな試合でも、さぼらずにちゃんと気合を入れるってぐらいかな(笑)相手が誰であろうとね
−−一日8時間のスーパーとレーニングを積んでいるというのがTVで紹介されて、選手の間でも話題になっていて、それは効果がないんじゃないかとペタス選手も言っていましたが イグナショフ● 誰がそんなこと言ったのかしらないけど、僕は一日8時間寝てるんだ(笑)毎日の練習は三時間ぐらいだよ。
−−ジェロムはそれを聞いて、「じゃあ来年は16時間やればいい」と言ったそうですが(笑) イグナショフ● 16時間は無理だよ(笑)まあ二三時間でいいんじゃないかな、僕は三時間でも多いぐらいだよ(笑)僕だって他にやりたいこともあるんだしさ。まあ、でも、これで十分だと思ったことは一度もないんだ。そうなったらみんなに言うよ。
−−自分の最大の武器はなんでしょう? イグナショフ● 僕はボクシングは芸術だと思ってる。
−−ドーム初出場の選手はどうしても舞台の大きさに気圧されてしまうと言いますが、大丈夫ですか? イグナショフ● ホントにそんなでかいところでやるなら、僕はサッカーやりたいな(笑)
−−今回要注意選手にあなたの名前をあげる選手が多いですが。 イグナショフ● どの選手にも注意すべきじゃないかなあ。チャンスは誰にでもあると思うよ。まあ誰が人気があるってのはべつだけどね(笑)
−−空手家は苦手だとおっしゃっていたと聞きましたが イグナショフ● 空手は技術的に完成したスポーツだからね。僕はボクシング出身なんだけど、空手のことをきちんと研究しなきゃいけないからさ。
−−前回、先輩のイヴァノビッチ選手がフィリォ選手と戦った試合は参考にされましたか? イグナショフ● フィリォの試合はビデオで見たけど、まあそれぞれの選手は結局自分で戦い方を考えなきゃ仕方ないからね。
−−優勝したら賞金はどう使いますか? イグナショフ● 優勝しても、僕はもらえないだろうと思うんだ。マネージャーが全部持ってっちゃうだろうからさ(笑)いや、ホント冗談抜きでね(笑)
【A POINT OF VIEW】 笑いが堪えない。ほとんどの質問はのらりくらりと冗談で受け流される。バックステージで見る普段のイグナショフには、気のいい冗談好きの少年といった印象しかない。髪の毛も下ろして、目も眠たげで、本当につかみ所が無い。リングの上のクールなスコーピオンはどこへやらといった風情には、いっそ「昼あんどん」と呼びたくなるような飄々とした感じがする。だが、同じ呼び名で呼ばれた、江戸の殺し屋が夜になるとさっそうとした表情を見せて華麗な殺陣を披露するように、髪の毛を立て鋭い視線にスイッチを切り替えたイグナショフは、まるで別人のようになる。果たして、今宵何人の相手がその刃に倒れる事になるだろうか? [目次に戻る]
第四試合 <フランシスコ・フィリォ> 「バンナはこっちのブロックに入っても同じことを言ったでしょう」
−−日本にはいつ? フィリォ● 三週間前ですね。
−−トレーニングのほうは? フィリォ● 福岡の前から行ってきたトレーニングの続きで、とてもいい、安定したトレーニングができたと思います。
−−今回のトーナメントは自分にとってチャンスでしょうか?それとも崖っぷちという意識で向かわれてるんでしょうか? フィリォ● まあどちらでもあるんですが、私にとってこの試合はとにかく落ち着いて、諸々のストレスを感じないで、いつもの力量を100パーセント発揮できるような試合をしたいと思っています。
−−三年ぶりのアーツ戦になりますが フィリォ● 非常にいい経験になると思います。というのも、この三年間で、自分でもどこが進歩したか感じ取れる試合になると思いますから。
−−アーツ選手は三年前の全盛期と比べると、少し実力が落ちたのではという声もありますが フィリォ● そうは言っても、各選手全員に言えると思うのですが、いい日もあれば、その日のコンディションによるというのはどの選手にも言えると思います。彼の場合は技術面や体力面というよりも、経験がすごくあるので、そういう意味で、注意をおこたってはいけない選手である事は変わりません。
−−具体的にはどういうポイントを警戒しますか? フィリォ● 左右のジャブとリズムがいいので、相手のペースに乗せられないように気をつけたいと思います。
−−三週間前の来日というのはなにか理由があってのことですか? フィリォ● 今までは試合の四五日前に来日するのが通常だったのですが、前回福岡の時は、ニューヨークでのテロ事件の影響もあって、初めて三週間前に日本に入って準備をしたところ、自分には非常にいいコンディション作りができたので、今回もそうすることにしました。
−−今回のグランプリに向けて強化した部分はなにかありますか? フィリォ● さっき申し上げたとおり、福岡にむけてやってきたトレーニングの延長線上で調整をしてきたんですが、今回は精神面での向上をトレーニングに取り入れたつもりです。
−−具体的にはどういう部分で? フィリォ● 試合では想像もつかないアクシデントというものが起こり、選手は往々にしてそういうものにひじょうに動揺します。そういうことが起きても集中が切れないように、自分の中であらゆる事態を想定しながら、練習をするように心掛けたつもりです。
−−バンナ選手が10月の抽選会の時に、「Aブロックの方がきつい」と言った発言に対して、フィリォ選手は不愉快な表情をしておられたように見えたのですが フィリォ● バンナ選手の発言というのは、彼が仮にこちらのブロックに居ても同じことを言ったのではないかと思うので、あまり自分としては気にはしていません。
−−準決勝ではペタス選手との同門対決があるのでは?と話題になっていますが、ご自分ではどう考えておられますか? フィリォ● そういうふうになったら、その時に考えたいと思います。
−−日本に三週間おられたわけですが、ペタス選手の練習とかは気になったりはしませんでしたか? フィリォ● 道場ではたくさんの選手が練習していますので、彼だけが気になるということはないですね。それぞれがそれぞれの練習をしていました。
−−ペタス選手とのスパーリングなどは? フィリォ● 以前はやっていましたが、今回は無いですね。
−−ペタス選手とは戦ってみたいですか?それとも避けたいですか? フィリォ● もし、避けられるものであるなら、避けたいと思いますけど(笑)
−−今回優勝に向けての手ごたえはどれぐらいでしょう? フィリォ● 自分にとってはそれが目標なので、それがすべてですね。100パーセントと言っても構わないと思います。去年に比べても、強い選手がそろったと思っていますが、それなりに自分も経験を積んだと思うので、そういう意味では昨年より優勝できる可能性は高くなったと感じています。
−−優勝した場合、次の目標はどこに設定していますか? フィリォ● 今現在考えていることはグランプリ優勝で、その先に何をするかということは何も考えていません。ただ、グランプリで優勝をすれば、いろんな形でのドアが開けられていると思いますので、そういう意味では、その中で自分が何をするべきか、何をしたいのかという事を真剣に考えて、目標に向かいたいと思います。
−−このところ試合に影響するような、私生活での変化などはありましたか? フィリォ● やはり私にとっては95年に極真の世界大会で優勝できた事ですね。それが、人生での最大の転機になったと思います。これを契機にいろんなことにチャレンジしてみようと言う気持ちを与えてくれたのですから。
−−決勝進出ができたと仮定して、戦いたい相手は誰ですか? フィリォ● バンナですね。
−−理由は? フィリォ● リベンジです。
【A POINT OF VIEW】 大会前日になって、某夕刊紙に「フィリォ引退」という見出しが踊ったが、おそらくは「グランプリで優勝をすれば、いろんな形でのドアが開けられていると思います」というフィリォのこの発言と昨年末のK-1 引退騒動をかなり婉曲に解釈しての記事だったと思われる。しかし、本誌独自の取材では、フィリオの進路に関して、ラスベガス大会後磯部師範が「もう一度2003年の世界大会を狙わせたい」と語っていることや、1998年に開催されたUFCブラジル大会を見たフィリォが総合格闘技にもかなり興味を示している事などを当人の口からも確認している。したがって、格闘技選手としての活動停止はまずないと考えていい。来年には極真選手を中心に立ち技、そして総合へも挑戦していくという趣旨のK-ネットワークがスタートすることもあり、K-1にとどまらず「いろいろなドアが開いている」という発言はむしろ、格闘家として可能性を広げたいという意欲の現れであると判断すべきだろう。 そのためにも、バンナへの屈辱を雪ぎ、グランプリ優勝を果たす事は、彼にとって必然の条件となった。 [目次に戻る]
<ピーター・アーツ> 「この一年のどん底が俺を強くしてくれた」
−−体調はどうですか? アーツ● いいよ。かなりきついトレーニングを積んできたからね。腰は大分良くなったと思うよ。試合でも大丈夫であって欲しいとおもうけどね。ちょっとひじの手術とかがあって、準備期間が短かったのは気にかかるね。まあ、日本に来る前にタイで二週間ばかりトレーニングをやって来たんだけどね。
−−タイにはいつから? アーツ● 先月で、結局18日ぐらい居たのかな。二週間よりちょっと長いくらいだな。コンバット・ジーヨと毎日死ぬかと思うようなトレーニングをこなしてきた。それから日本に来たのさ。
−−98年に優勝したときのトレーニングもかなりストイックだったと聞いていますがあの時と比べて今回はどうでしたか? アーツ● あの時と内容的には変わらないと思う。ただ期間が短かったけどね。まあ、それでもコンディションがいいんで、よしとしいないとね。
−−双子の赤ちゃんが生まれたばかりだそうですが、子供の夜泣きとかに悩まされませんでしたか? アーツ● タイには子供は連れていってないんで大丈夫さ。ただもう三、四週間子供の顔を見てないのは寂しいね。早くオランダに帰りたいよ(笑)
−−今回、アーネストもGP四勝目が懸かっていますが、あなたも優勝すればそれと同じなんですよね アーツ● まあ、トーナメントなんで記録をどうこういうより、試合に全力を尽くすべきだろうな。
−−今回のドームは非常に遠回りをしてようやくたどり着いたという印象があるんですが アーツ● 今はいいコンディションに仕上げることができたんで、ベストをつくすだけさ。
−−今年一年はご自分にとってかなり不本意だったと思うんですが、メンタルな部分では今年という年を振り返ってはどう感じておられますか? アーツ● いや、この経験は俺を強くしてくれたと思う。ラスベガスの時はメンタルは上々だったにもかかわらず、パンチが思うように出せなかった。身体が付いてこないときの苦しさというのを思い知ったね。
−−ファン投票での出場という形になったことはどうですか? アーツ● 選んでくれたファンには感謝の気持ちでいっぱいだ。俺の精神的に強くなった部分をファンには見せたいし、試合内容でも俺の強さをちゃんと見せたいね。
−−対戦相手のフィリォ選手ということになりましたが アーツ● 彼は強い選手だが、俺に触れちゃいけないな(笑)まあいつも通りタフな試合になるだろうね。まあ、前やったときと比べればコンビネーションも出るようになったし、よりいい選手にになったとは思うけどね。
−−決勝でやってみたい選手はいますか? アーツ● 誰でもいいよ。
【A POINT OF VIEW】 アーツにとって、この2年は本当に怪我との戦いだった。一昨年ドームでバンナに敗れて以来、天敵となったアビディとの三連戦を経てようやく逆襲を果たしたものの、宿痾の腰痛は結局完治せず、再起を賭けた今年のラスベガス予選ではレコに10カウント級のノックアウトを喫した。トレーナーのアンドレ・マナートは一年間の完全休業を宣言し、右ひじの手術に踏み切った。しかし、それでもファンのアーツを求める声は高かった。結局、ラスベガスから三カ月、傷だらけの闘将はドームのリングに戻ってきた。果たしてこの執念が実るのか、それとも、20世紀最後の暴君と呼ばれた男に、新世紀の判決が下ってしまうのだろうか。 [目次に戻る]
リザーバーマッチ <アダム・ワット> 「ボクシングはノーチャンスだ。来年もK-1で闘いたい」
ワット● 前回同様体調はいいよ。彼は確かに強い選手だけど、ジャンプキックやバックブローを使うような選手じゃないからね。僕のパンチが当たれば前回同様、KOで勝てるはずだと思ってる。多分彼は急にスタイルを変えるような選手じゃないしね(笑)確かに僕もボクシングでいろんな選手と闘ったし、彼のパンチのハードさは認めるけどね。この競技はそれだけのものじゃないからね。もっと彼はキックを使うべきじゃないかとは思うね。パンチだけに頼って勝負しようとするのはどうかな。まあ、僕に対しては絶対序盤から倒しに来るだろうと思うよ。彼はどうしてもリベンジしたいだろうしね。
−−10月以降はどう過ごしてました? ワット● 僕はあれから試合はしてなくて、魚釣りに行ってたよ。大漁だったよ(笑)
−−来年以降もK-1には参戦するつもりですか? ワット● そうだね。ボクシングのヘビー級では体の大きな選手が多くて、僕にはチャンスが余りないだろうとと思うんでね。頭部へのダメージも大きいんで、K-1に専念したいと思ってる。それにキックやK-1の方が芸術性も高いしね。やっぱりボクシングの練習をしてるよりキックの練習をしてるほう楽しいよ(笑)日本とK-1は僕の原点だからね。そこで選手のキャリアを終えたいと思ってるんだ。
【A POINT OF VIEW】 K-1初期を支えた名物選手のワットだが、レトロにとどまらないシブトさを身に付けての復帰。今年のグランプリ戦線を底支えとなる活躍を見せてくれた。母国オーストラリアでのボクシング経験が、そのまま活かされた形で、いぶし銀の輝きを見せてくれる。今回のリザーバー抜てきにも気負った部分は全く無く、リベンジに悲壮な覚悟を固めているベルナルドとの対象の妙が、逆に“いい味”となっている。年齢的にも、トップランカーとしての大活躍は期待できないかもしれないが、目の話せないベテランとして、福岡でのベルナルド撃破のような劇的なシーンをまだまだ見せてくれるかもしれない。 [目次に戻る]
<マイク・ベルナルド> 「僕はまだ闘える。そのことを証明したい」
ミナサン、コニチワ(日本語で)
−−痩せましたか? ベルナルド● そうですね、112キロあったのが105キロぐらいに落ちました。トレーニングをハードにやってきたんで、その結果だと思います。準備万端です。
−−福岡での敗戦後、気持ちの切り替えはうまく行きましたか? ベルナルド● 負けたあとやはり長い時間、K-1ファイターとして戦うべきかどうかかなりかんがえました。その結果、自分にとってこれは宿命であると覚悟して練習に戻ったのですが、やはり敗北から立ち上がって練習するのはすごく難しい事でした。それを克服して戦えることを証明したいと思っています。
−−今K-1ファイターには総合格闘技やボクシングの道を進むという選択肢も与えられています。あえてK-1に戻ろうと思った理由はなんですか? ベルナルド● キックが好きな競技なんです。日本でK-1で戦えることは大きな喜びです。それに私は少年時代にブルース・リーにあこがれてこの世界に入ってきたんです。だからどうしてもキックに戻りたかった。
−−今トーナメントの中に自分の名前が無いことをどう考えていますか? ベルナルド● ファイターとしてK-1選手としてみなさんにちやほやされることで、私は自分の本来の姿を忘れてしまっていたのかもしれません。だからファイターとしての本質を見失わずに、地に足をつけているためにはこういう体験も必要なのかもしれません。あたまでっかちにならずにいるためには、これで良かった気がします。
−−今回の試合はどうなると思いますか? ベルナルド● 6年のピーター・アーツとの試合を覚えてらっしゃいますか?あの五十倍もいい試合になると思います。
−−アダムとの試合はどうでしたか? ベルナルド● いい試合だったと思いますが、自分としてはてこずりすぎましたね。リズムや距離感がつかめなくて、時間を浪費してしまった結果、ああいう形になってしまいました。彼のパンチはけっしていいものでは無かったかもしれませんが、あれが当たってしまったということで、試合にはどんなことでも起こりうるということを改めて思い知りました。
−−アダムはキックを使うべきだと言っていましたが ベルナルド● そうですね。まだまだ勉強すべき材料があるということですね。
−−福岡の試合後、マイクは油断していたのではないかとおっしゃっていましたがどう思いますか?彼は緊張感を取り戻すために、総合格闘技のような他流試合に出ていくのもいいんじゃないかという意見もあったんですが。 ベルナルド● 多分そのとおりでしょうね。
−−今回作戦は考えていますか? ベルナルド● 密着して、彼の目の前で戦おうと思っています。
−−リザーバーということで、トーナメントに参戦できるチャンスもあると思うんですが ベルナルド● そのことは十分意識していますし、その準備もできています。
【A POINT OF VIEW】 いつもにこやかなベルナルドの目が今回は据わった感じになっていた。やはり名古屋でのリタイア、そして福岡での敗退はベルナルドの心に大きな傷を刻んだに違いない。バンナとの正面激突に事実上完全勝利を収めながら、結局二年連続でトーナメントの蚊帳の外。猪木軍との抗争に加わるでもなく、孤高をまもるベルナルドは、このリベンジマッチにやはり「証明」という言葉を使った。かつてボクシングキャリアを積み始めた時にも、“K-1ファイターとしての強さを証明したい”という言葉を使ったベルナルド。本来なら人を殴る事に情熱を燃やすような粗暴な男ではない。心優しい穏やかな男が、今、己の拳に自己証明を賭けてしまったという皮肉な選択を、間違いではなかったと証明するためには、やはり目の前の戦いを勝ち抜く以外にはない。もし、石井館長の言うように、“カオスの奇跡”というものが起こるなら、本来すべてのチャンスを失ったベルナルドにすら、まだドームの頂点に立つ一厘のチャンスは残されている。舞台装置はそろった。そのチャンスをつかみ取れるかどうかは、彼の魂と拳だけが知っている。 [目次に戻る]
(取材:井田英登)
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Last Update : 12/08 20:04
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