稲垣復帰戦は秒殺負け/8.25パンクラス大阪大会(写真付)
▼このところのパンクラスは菊田、郷野、美濃輪ら外様の活躍ばかりが目立つ。しかしこの日の大阪大会はメインを高橋と稲垣の旗揚げ第一世代対決が占め、セミでも鈴木と山宮の世代間対決が久々に実現した。加えて、対外戦のポリスマン的存在になりつつある渡辺大介がフリーの鶴巻を相手に打撃を炸裂させるワンサイドゲームを展開。また久々の打撃有りの試合に挑んだ伊藤も、柴田のアマレステクニックに苦しみながら、一発逆転のサブミッション勝負で勝利をつかんだ。そして第一試合ではパンクラス東京と横浜の生え抜き新世代の北岡と宮川がそれぞれのバックボーンにあたる柔術とレスリングを活かした攻防で客席を沸かせるなど、近年にない純血パンクラス色の濃い興業となった。 パンクラスはエース船木が引退後いろいろな試行錯誤を繰り返しながら、そろそろ昨年あたりからの伏線が色々な形で結実しつつある。9月の旗揚げ8周年大会では、現在もっとも脂の乗りきった菊田VS美濃輪を投入。再び団体としての浮上を果たしたいところだ。ここでこうした純血度の濃い興業を行うことによって再び足下を固め、第2のピークへ向かおうとする姿勢と底力を見せたことの意義は極めて大きい。久々のビッグマッチとなる横浜文体で、その備蓄がどこまで爆発するかに注目したい。(レポート&写真:井田英登)
Sammy Presents PANCRASE 2001 PROOF TOUR 8月25日(土) OPEN 17:30 START 18:30 大阪・梅田ステラホール(梅田スカイビル タワーウエスト3F)
メインイベント 無差別級戦(5分3ラウンド) ○高橋 義生(パンクラス東京/無差別級2位) ×稲垣 克臣(パンクラス大阪) 1R 1'38" レフェリーストップ
高橋が序盤からパンチでラッシュを仕掛け、タックルでテイクダウン。ガードの足を取って逆エビを仕掛けようとするなど余裕の展開。最後はブリッジでの脱出を狙う稲垣を肩固めで斬って捨てた。今回が一年六カ月ぶりの復帰戦となる稲垣は「俺はまだまだ燃え尽きていません。これからももっともっと戦いたいと思います」とマイクを取った。現在はP'S LAB大阪の責任者。大阪に暮らす選手として、“地元”のファンにその存在をアピールしていた。
セミファイナル キャッチレスリング(5分1ラウンド) △鈴木 みのる(パンクラス横浜) △KEI 山宮(パンクラス東京) 判定0-0 (10-10,10-10,10-10)
金髪に染めた鈴木の姿に歓声がわき起こったが、試合はスタンドレスリングの攻防に終始した地味な内容に終ってしまった。山宮が一回のタックルでテイクダウンに成功したものの、積極的な攻撃はないまま。終了直前、鈴木は自ら引き込みを狙うなど攻めの姿勢を見せたが山宮は応じず、無念のゴングを聞いた。試合後鈴木は話題となった田村との対戦要求に関しては語らず。ただ次回大会へも出場すること、外部選手や菊田とのキャッチレスリング戦などのプランを語り、体調のよさをアピールするにとどまった。
第4試合 ライトヘビー級戦(5分3ラウンド) ○渡辺 大介(パンクラス横浜) ×鶴巻 伸洋(フリー) 2R 0'17" KO
思い切りのいい打撃とコーナーに詰めての攻めで1Rを押しまくった渡辺が、2R開始早々の右フックをヒットさせ、鶴巻に尻もちを突かせる。レフェリーがダウン宣告をしなかったので、そのままのしかかってパンチの雨を降らせノックアウト勝利を奪った。
第3試合 ミドル級戦(5分3ラウンド) ○伊藤 崇文(パンクラス横浜) ×柴田 寛(RJW/CENTRAL) 2R 1'22" アンクルホールド
こちらも久々の打撃有りルールとなった伊藤だが、この日柴田は打撃への対応が素晴らしく、スタンドで畳み込んでくる伊藤に一歩もひかずにパンチで向かい合い、自ら前に出ていく。スタンドでバックを奪うと得意のレスリングテクニックで背中に張り付き、逃れようとする伊藤を一切のがさない。背後からすき間なくパンチのあめを降らせる柴田の攻撃に、バックマウントを奪われるなど防戦一方となった伊藤だが、なんとかゴングにすくわれる。2Rは逆にタックルを潰し、バックを狙う伊藤だったが、急場に足関節を狙ってきた柴田に、モチはモチ屋の意地で呼応しアンクルで勝負を決めた。
第2試合 65kg以下契約戦(5分2ラウンド) △吉信(四王塾) △矢野 卓見(烏合破門会) 判定0-1(20-20,19-20,20-20)
現役修斗ランカーと希代の寝業師の対決が実現。矢野は久々の打撃有りの試合となったが、実は骨法時代の2戦のうち、1勝の勝因はKO勝ちだったという過去も持つ。そんな過去も手伝ってか矢野はブルース・リーばりの半身の構えで意表をついたサイドキックや側転、スライディングキックなどを繰り出し、怪人ぶりを見せ付ける。だが対する吉信は、この心理作戦に動じる気配を見せず、落ち着いてローキックをたたきこんでいく。逆に不安定なキックの隙を突かれて吉信に抱きつかれた矢野は、コーナー下でパンチをもらう。2Rもまったく同じ展開となり、ようやく矢野が蹴りはなしたところでゴング。飄々とした持ち味を崩さず、奇妙なユーモアを漂わせた矢野の試合はプロ興業でも“いい味”を出し続けたが、バックキックが二度も股間に当たるなど、若干打撃ありの試合ではそのスタイルを修正すべき部分もあるようだ。
第1試合 ミドル級戦(5分2ラウンド) △北岡 悟(パンクラス東京) △宮川 順也(パンクラス横浜) 判定0-0(20-20,20-20,20-20)
東横純血対決となった二人は、北岡がパレストラ出身、宮川がアニマル浜口道場出身とそれぞれに異なったルーツを背負いながら、同じ日にパンクラス入門テストを受けた運命的な組み合わせ。プロデビューは北岡が先んじたものの、宮川もネオブラッドトーナメント予選を経て、この日正式にプロデビューし、同じラインの上に立つことになった。思い切りのいい蹴りや首投げで豪快に試合を進める宮川と、下に成りながらじわじわトラップを仕掛ける北岡の攻防はなかなかの見ごたえのある試合になった。序盤のアリ猪木状態での宮川の蹴りで足を故障したという北岡の動きが受け一方となったため、全体には宮川の活きのいい動きの引き立て役になった感はあるが、グラウンドでは二度のバックマウントを奪うなど北岡のペースであったことも否めない。
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