[コンバットレスリング] 3.24 全日本選手権 (レポ&写真):MVPはトイカツ!
アフガニスタン支援プログラム 第8回全日本コンバットレスリング選手権大会 2002年3月24日(日) 東京・町田市総合体育館サブアリーナ
写真:井原芳徳(試合),石動龍(表彰式)
▼(4/17 up)レスリングを基礎とし、絞め技・関節技などの要素も加えた組技格闘技・コンバットレスリング。毎年この大会で活躍する佐藤ルミナ(留美奈)は、-74kg級にエントリーしながらも怪我のため欠場した。それでも同級は大会史上最多の48名がエントリーする大激戦区となり、修斗ウェルター級王者の五味隆典が圧倒的な強さで優勝した。 また-66kg級では修斗ライト級2位の戸井田カツヤ(克也)が初出場ながら決勝までの全5試合をヒールホールドで決める偉業を成し遂げ、優勝だけでなく最優秀選手賞(MVP)と最多一本賞までをも獲得した。-60kg級では現役プロシューターの高橋大児が、元プロシューターで優勝候補の大河内衛を破り優勝。-84kg級では竹内出が、98年・01年の-85kg級優勝に続き3度目の優勝を成し遂げた。
今大会の優秀選手には「Close encounter of 木口道場」(4月25日北沢タウンホール)への出場のチャンスが与えられた。また、今回上位入賞できなかった選手のために、4月29日には「コンバットレスリング・ビギナーズ選手権」が開催される。 来年は協会設立10周年を記念して、選手権大会を町田市総合体育館のメインアリーナで行う予定だ。(井原芳徳)
<各賞受賞者> 最優秀選手賞 戸井田克也(和術慧舟會) 最多一本勝ち賞 戸井田克也(和術慧舟會)(5本) 最短一本勝ち賞 伊藤彰男(養生館) (11秒 ヒールホールド:-60kg級一回戦・杉本エイジ戦)
● -60kg級(26名エントリー) 1位 高橋 大児(K'z FACTORY) 2位 大河内 衛(ガッツマン修斗道場) 3位 喜多 浩樹(パレストラ東京) 3位 村田 卓美(A3-GYM)
決勝は現役プロシューターの高橋大児と元プロ修斗ランカーの大河内衛の対戦となった。高橋は準決勝では同じプロシューターの喜多浩樹を判定2-0で下して、決勝へ。大河内も準決勝で村田卓美に判定2-0で無難に勝利し、決勝へ進んだ。 試合は大河内が序盤からタックルで仕掛けたが、高橋はきっちりがぶってそのままバックポジションを取り1ポイント。そのままバックからチョークスリーパーに移行するも、大河内はこれをしのいでスタンドでの再開。その後時間一杯まで大河内は果敢にタックルに行くも、高橋はしっかりこれを切って終了。判定1-0のきわどい展開であった。 なお、優勝候補の一角だった実原隆浩(チーム品川)はエントリーするも負傷のため欠場した。(打上裕之)
◆ 高橋のコメント 「意外とリラックスして戦えました。今日は最初から勉強のつもりでした。特に勝ち負けとかにはこだわらず楽しんでやれたので、良い成績が残せたと思います。(決勝で対戦した)大河内さんは自分が木口道場にいた時の大先輩なんで、うまさを感じました。最後はちょっと必死になっちゃって、勝ち負けにこだわってしまったんですけど。(今後は)レスリングとボクシングをもっと練習して、修斗で上をめざしていきたいです。」
◆ 大河内のコメント 「いやぁ、こんなもんでしょ。最初から勝負考えないで、一戦一戦を大事にやってたんで。決勝で先輩の意地を見せようかと思ったんだけど、逆にやられちゃったね(笑)。高橋がまだ3ヶ月位の初心者の頃、木口で一緒だったんだけど、8年の歳月を経て決勝で戦うとはね。でもやってて楽しめました。(コンテンダーズのような組み技の大会への出場は?)まぁオファーがあればね。(来年の選手権は?)気分次第ですね(笑)」
● -66kg級(26名) 1位 戸井田克也(和術慧舟會) 2位 上田 将勝(パレストラ東京) 3位 石田 純一(クリナップ) 3位 柳澤 雅樹(パレストラ東京)
66kg級は歴代チャンピオンの小西良徳(SAW)、尾藤広光(京都東山レスリング)、佐藤克仁(木口道場レスリング教室)、五味隆典の兄で準優勝経験もある五味靖典(木口道場レスリング教室:左写真)が相次いで敗れ、決勝は上田将勝と戸井田克也のノーシード選手同士の対決となった。
上田は国体3位の実績を持つレスリングをベースに、一回戦から見事な投げを連発。準々決勝で小西を延長戦の末に破り、準決勝では同じレスリング出身の石田純一をがっちり押さえ込んで5-2で勝利し、決勝へと駒を進めた。
戸井田もプロ修斗ライト級2位の実力者。準決勝までなんと全試合ヒールホールドで勝ち上がった。しかも一回戦47秒、二回戦46秒、準々決勝41秒、準決勝42秒と、まるで判を押したかのような試合タイムである。
戸井田の関節マジックが上田のレスリングにどこまで通用するか注目の集まった決勝戦。試合は組み手の攻防から始まった。この展開ならレスラーの上田が一枚上手。上田は片足タックルで突進。戸井田は上田に背後から覆いかぶさるように体重をあずけたが、そのまま上田は戸井田を持ち上げ倒し1ポイントを先取した。 ポイントを取り落ち着いた上田は、続いて戸井田からパッシーブを奪う。スタンドの攻防から再開すると、戸井田が前へ出た力を利用した一本背負いで上田が2ポイントを取る。戸井田はゾーンぎりぎりでバックにまわり1ポイントを取った。 ポイントでは変わらず劣勢の戸井田。場外に出たためセンターから試合が再開すると一気に勝負に出る。戸井田は序盤と違って組み合わず、一瞬の隙を突き上田を下から引き込む形で足をキャッチ。上田は必死に逃げようとするが、しっかりロックされていたため間もなくタップ。決勝こそ3分12秒の時間がかかってしまったが、戸井田は全試合ヒールホールドによる一本勝ちという偉業をなしとげ、優勝だけでなく最多一本賞と最優秀選手賞(MVP)まで獲得した。
準決勝まで全てヒールホールドで勝ち進んできたということで、決勝の相手・上田には足関節に対して警戒されていたことだろう。しかしそんな状況下でも、戸井田はしっかりと同じ技で一本勝ちし、プロの実力とハートの強さを見せつけた。(鈴木 伸幸)
◆ 戸井田のコメント 「(ヒールホールドは狙っていた?)狙ってなかったです。足を取りにいったわけじゃなくて、あったものを取りにいったので、たまたま今日はそれが足だったんで。(決勝は?)最後の試合はちょっと反則ばかりでした(注釈:「反則」というのは、相手のレスリングに付き合わなかったというニュアンス)。(レスリングの練習は?)レスリングの技術というよりも今の(技術の)まま強くなりたいです。」
● -74kg級(48名) 1位 五味隆典(木口道場レスリング教室) 2位 小谷宏明(RODEO STYLE) 3位 小島弘之(フリー) 3位 西野 聡(和術慧舟會東京本部)
全日本選手権史上最多の48名がエントリー。コンバットレスリングの顔とも言える佐藤留美奈(ルミナ)は欠場したが、五味隆典、大内敬、大杉勇、小島弘之、中山巧、今成正和と強豪がひしめく激戦区となった。それを示すように、歴代覇者の大内敬と大杉勇、プロ修斗クラスAの中山巧が初戦で敗退。昨年-76kg級の決勝でルミナと好勝負を演じた今成正和(Team Roken)もベスト16止まりだった。
だが今成が敗退した三回戦の花井岳文(養正館)戦は、今大会のベストバウトとの呼び声も高い。両者は去年対戦し花井が敗れている。開始時に花井が「ッシャー!」と吠え気合いを見せつけ、それを受けるかのように互いが一本を狙いに行くアグレッシブな試合となる。今成が「足関十段」の異名通り足を狙えば、同じく足関を得意とする花井も足を取りにいく。後半に花井がタックルで1ポイントを先取。しかし今成は「ルールは意識してない。一本を取れなければ(判定勝ちでも)負け」というポリシーを貫き、ファイトスタイルを変えない。最後今成が腕十字を狙う場面もあったが、結局花井が虎の子の1ポイントを守り抜き勝利。花井は時間切れと同時に「俺が足関十段だ!」と吠え、勝利の喜びをあらわした。
そんな個性的な面々の中、町田に多数駆け付けた格闘技ファンの一番のお目当ては、やはり五味隆典だ。ルミナの欠場にも「モチベーションは下がらなかった」という五味。木口道場のちびっこレスリング教室の生徒達の「五味コーチガンバレー!」の声援が響く中、二回戦は衣川匡司(B-CLUB)相手にわずか42秒・腕十字固めで完勝(五味の一回戦はシード)。三回戦は99年インカレ・グレコ3位の実績を誇る土田樹史(フリー)を押さえ込んでポイントを稼ぎ、最後はヒールホールドで一本。「レスリングで実績のある選手を乗り越えられて後が楽になった」という五味は、準々決勝で金井日出紀、準決勝で小島弘之をポイント差で撃破。決勝でも小谷宏明を相手に危なげない試合運びを見せ、サイドからのアームロックであっさりと試合をフィニッシュ、優勝を勝ち取った。
「5試合中3試合で一本取れたからいいかなと。生き方そのものが危ない橋渡ってるんだから、試合は安全でも許してほしいですよね」と語った五味。「パルヴァーの次の防衛戦に行きたいですね。日本人が通用する階級だと思ってますんで。いよいよ出番かな」とUFC参戦に改めて意欲を示した。(井原 芳徳)
● -84kg級(17名) 1位 竹内 出(K'z FACTORY) 2位 米澤 重隆(RJW) 3位 井上 克也(RJW) 3位 山本 知史(山梨学院大)
-84kg級は地味な印象が強いが、実力者が揃っており、個別の試合では見どころの多いトーナメントとなった。 須藤元気率いるGGG 2ndからはレスリング高校西日本選手権優勝の宮本優太朗、元パンクラスの松永裕央がエントリー。初戦で松永は0-11と完敗したものの、宮本のほうは奈良谷洋一郎(RODEO STYLE)相手に12-0のポイント大差を付け圧勝した。次の試合では準優勝の米澤に敗れたものの、差があったのはコーション2点だけという健闘ぶりだった。
優勝した竹内は、98年・01年の85kg級でも優勝しているだけあり、試合運びも慣れたもの。初戦は鬼木貴典(Team Roken)をヒールホールドで破り、準々決勝ではDEEP2001にも出場している木村仁要(誠ジム)をアームロックで下した。準決勝で対戦した山本知史(山梨学院大)は、一回戦で鶴巻伸洋(フリー)、二回戦で甲斐俊光(養正館/昨年全日本オープン2位)をポイント差で下した実力者だったが、竹内は2分過ぎにチョークで一本勝ち。決勝では99年-85kg級優勝の米澤をこの日自己最短記録の26秒・ヒールホールドで極め、危なげなく優勝と勝ち取った。(井原 芳徳)
● +84kg級(13名) 1位 相沢 純(中央大学レスリング部) 2位 石井 淳(超人クラブ) 3位 ANTHONY HUSS(PUREBRED大宮) 3位 宮沢 誠(総合格闘技 荒武者)
優勝の相沢は中央大学レスリング部在籍で、東日本新人戦グレコ1位の強豪だ。タイタンファイトや修斗などで活躍する石井と決勝で対戦し、テイクダウンで1ポイントを先取。後半はグレコの選手らしく、スタンドのレスリングで時間いっぱいまで逃げ切り、優勝を勝ち取った。
◆ 相沢のコメント 「(絞め・関節の練習は)かじる程度なので全然やってないのと同じです。今日はレスリングだけで勝ちました。(今後、絞め・関節の練習はするのか)これからまだまだレスリングに専念していかないと。レスリングは総合とかの基盤になりますから。レスリングの技術に関してもまだまだいまいちなんで、レスリングをもっと極めて基盤をしっかりしてから絞め・関節は覚えたいです。」
Last Update : 04/17
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