BoutReview Logo menu shop Click here to visit our sponsor
news

[大道塾]20歳・藤松がMVPに/世界空道選手権レポ&写真

2001北斗旗オープントーナメント 第1回 世界空道選手権大会
11月17日(土)東京・国立代々木競技場第2体育館

▼主催者の大道塾は、極真空手1977年第9回全日本大会優勝などの実績を誇る東孝(あずま・たかし)師範が、1981年2月に「安全性、実践性、大衆性を備えた格闘空手」を提唱し仙台で発足させた。同年9月に北斗旗全日本選手権を開催し、以降、岩崎弥太郎、長田賢一、西良典、市原海樹、加藤清尚、セーム・シュルト、秋山賢治、山崎進などといった選手が活躍してきた。北斗旗を知らない人でも、この中の1人や2人の名前ぐらいはご存知ではないだろうか?

 これまでも海外選手が多数参加していた北斗旗だが、今回初めて世界選手権を開催するにあたり、「空道」という競技名を掲げた。ルールが顔面プロテクター・道着着用の総合格闘技で、「従来の『突き・蹴り』のイメージが強い『空手』のみの大会ではない」のが主な理由。「空」という語の持つ「無常観」「相互依存」「開放・不偏・自由」といった意味が、大道塾の塾是「大道無門(“至高”にいたるには門を構えず、“人世”全てを修行の糧として積極的に生きる)」に通じることから名付けられたという。

 現在の総合格闘技は、PRIDEやUFCなどで採用されるいわゆる「ミックスド・マーシャル・アーツ(MMA)」ルールが主流となっている。「路上のケンカ」を想定し何でもありだった初期UFCを、ボクシング、ブラジリアン柔術、UWFルールなどの発想で制限し「エンターテイメントスポーツ」に洗練させたのがMMAなら、一方の北斗旗・空道は、同じ「路上のケンカ」を想定しつつも、全く異なる進化過程を経てきた。具体的には「顔面にプロテクターを付けて素手、素足で攻撃する(バンテージは使用可)」「寝技は1R2度まで各30秒まで」「相手の道着をつかんでの加撃は10秒まで」「マウントパンチは寸止め。4度で“効果”」など、護身術的要素や、派手なKOをいたずらに喜ばない傾向が強い。「社会体育」という理念をかかげた大道塾らしい武道的なアプローチといえる。

 北斗旗・空道は基本的にエンターテイメントを指向していないわけだが、「面白くない」と判断するのは大間違い。むしろ普段MMAばかりを見ている筆者にとっても非常に勉強になる大会だった。既にプロ修斗のパレストラ主催興行で3度ほど北斗旗ルールの試合を見ていたが、やはりロープに囲まれ面積が小さく、床の柔らかい修斗のリングで闘うよりも、空手の試合場のほうがこのルールに適していることが実感できた。今大会には旧ソ連各国、ヨーロッパ、東南アジアを中心に20を超える国々から、空手のみならずムエタイ、キックボクシング、テコンドー、散打、柔道、サンボなど様々なジャンルの格闘家が集結。組み合わせによってはMMAとはまた違った「異種格闘技戦」が実現した。選手達の運動能力も高く、激しくアグレッシブな攻防が続出。惜しまれるのはルールを完全に把握しておらず反則で不利になる外国人選手が多かったことだが、今回の経験を元に、徐々にルールの浸透が進めば、よりレベルの高い攻防が期待できそうだ。

 階級は身長と体重を足した「体力指数」で5階級に分ける「体力別制」を採用している。各階級で16人によるトーナメントが行われ、日本人が3階級を制した。なお超重量級に出場するために前日に来日したセーム・シュルトだが、PRIDEでの小路晃戦で痛め佐竹雅昭戦で悪化させた左拳の負傷が完治せず、今回は欠場した。(井原芳徳)

●軽量級(体力指数230未満)
優勝:小川英樹(日本)[決勝での決まり手:本戦/送り襟絞め]
2位:シニューチン・デニス(ロシア)
3位:土田真也(日本)、スピバコフ・セルゲイ(ロシア)

 今年の北斗旗軽量級優勝の小川の打撃が冴え渡る。決勝でも下段蹴りでデニスを崩すなど切れ味は衰えず。最後は横四方を制しての送り襟絞めで勝利。30歳の小川は「今回優勝できたので正直これで卒業だと思っている。今後はレスリングとかを選手としてではなく突き詰めようかとも思っている。とりあえず今日は終わってほっとしています」と語ったが、デニス、セルゲイら20歳ぐらいの若いロシア人の台頭には「4年後が不安ですね」と危機感をつのらせていた。

●中量級(体力指数230〜240未満)
優勝:高田久嗣(日本)[延長/旗判定4-0-0]
2位:ダシャエフ・ベスラン(ロシア)
3位:加藤清尚(日本)、佐野教明(日本)

 大道塾のベテラン、加藤清尚の活躍に期待の寄せられた中量級だったが、加藤は二回戦途中で拳を骨折、指も脱きゅうし準決勝を惜しくも棄権。期待のかかった高田は、二回戦で飯村健一を破ったロシアの23歳ベスランを決勝に迎え撃つ。激しい打撃戦となったが、延長終了前に高田が左上段を当てるなど優位に進め、旗判定で勝利した。高田は「加藤先輩と飯村先輩が負けてしまって、自分がやらないといけないという使命感がありました」と安堵の表情で語った。

●軽重量級(体力指数240〜250未満)
優勝:ハバヤン・ルドルフ(ロシア)[延長/本戦でのパンチによる有効ポイント]
2位:コノネンコ・アレクセイ(ロシア)
3位:小野亮(日本)、長野常道(日本)

 準決勝で小野亮にポイント差で勝利したルドルフと、日本在住6年のコノネンコの決勝。ルドルフは本戦、左右のワンツーでダウンを奪い有効ポイントを得る。延長も激しい打撃戦となり、観戦に訪れていた修斗前ミドル級王者・桜井“マッハ”速人も「凄げえ!」と感激し拍手を送っていた。結局本戦でポイントを得たルドルフが勝利。

●重量級(体力指数250〜260未満)
優勝:藤松泰通(日本)[本戦/腕ひしぎ十字固め]
2位:ステファン・タピラッツ(インドネシア)
3位:武山卓己(日本)、渡辺正明(日本)

 インドネシア出身のタピラッツは、現在オランダの強豪集団・ゴールデン・グローリーでトレーニングを積む29歳。セコンドには同僚・セーム・シュルトも付き、二回戦ではテコンドー仕込みの豪快な後ろ回し蹴り一撃で村田良成をノックアウトをするなど快進撃を続けた。決勝で対するは弱冠20歳の大道塾の寮生、藤松泰通。藤松は2回戦でロシアのゴルバチョク・イワンにパンチをもらい前歯3本を失うが、腕ひしぎ十字固めで勝利。決勝ではタピラッツの拳と蹴りをかいくぐり、倒れても落ち着いてマウントを取ると腕ひしぎ十字固めに極め完封。最優秀勝利者賞(MVP)に選ばれた。

●超重量級(体力指数260以上)
優勝:グリゴリエフ・デニス(ロシア/体力指数283)[延長/本戦でのパンチ、マウントパンチによる効果ポイント]
2位:稲垣拓一(日本/体力指数264)
3位:アリエフ・ビャセスラフ(ロシア/294)、アンドレア・ストッパ(イタリア/290)

 北斗旗ルールでは、体力指数に20以上の差がある場合はファウルカップを着用し、両者蹴りによる金的攻撃が認められる(30以上差があれば拳もしくは掌底による金的も可)。超重量級ではこのルールが試合内容を大きく左右することとなる。準決勝Aブロックでは稲垣拓一が体力指数30差のある巨漢・ビャセスラフに苦戦したが、前蹴りでの金的一発で形勢を逆転させ、マウントパンチで効果ポイントを獲得、終了間際には腕十字も狙い勝利した。Bブロックでは二回戦で大道塾のエース的存在・山崎進が身体指数34差のストッパに腕ひしぎ十字固めで敗れる波乱があったが、そのストッパは6カ月前の極真大会で痛めた右膝を悪化し準決勝を棄権。セーム・シュルトの欠場により前日に出場が決定したリザーバー(待機選手)のグリゴリエフ・デニスが決勝に残った。

 稲垣とデニスの体力指数差は19だが、激しい試合を勝ち上がった稲垣にとっては厳しい相手であることには違いない。デニスが道着をつかんでのアッパーで効果ポイントを獲得。稲垣も倒しに行ったが逆にマウントパンチで効果ポイントを奪われる。ポイント差が小さいため延長戦に。稲垣は組み倒してサイドポジションから腕十字に。大逆転のチャンスに大歓声が巻き起こるが、デニスは腕をがっちりフックし、寝技制限時間30秒を耐えきる。再び稲垣に腕十字のチャンスがあったがこれもデニスが凌ぎきる。結局本戦での効果2によりデニスが勝利。敗れたものの稲垣には観客には暖かい拍手が送られた。プロテクターをしていながらも鼻血を流していた稲垣の顔が、試合の激しさを物語っていた。

 稲垣は「今日は(北斗旗の)卒業式のつもりだったんで優勝したかったですけど、気持ちいい負け方でした。空手は続けますが、これで引退します。大きい連中に勝つには、やっぱり最後まであきらめないハートの強い選手を育てないと。(重量級の)藤松なんか若いし、いいのが出てきたと思いますね。決勝はできれば山崎に上がってほしかったですね」とコメント。

※この大会の模様はGAORAにて11月28日(水)23時〜深夜1時に放送される。

<関連記事>
大道塾が空道世界選手権を11/17開催。シュルトも出場か?(10/30掲載)

<関連サイト>
大道塾公式ウェブサイト

Last Update : 11/20 02:46

[ Back (前の画面に戻る)]



TOPPAGE | NEWS | REPORT | CALENDAR | REVIEW | XX | EXpress | BBS | POLL | TOP10 | SHOP | STAFF

Copyright(c) 1997-2001 MuscleBrain's. All right reserved
BoutReviewに掲載の記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。
著作権はマッスルブレインズに属します。

編集部メールアドレス: ed@boutreview.com