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(レポ&写真) [UFC 50] 10.22 アメリカ:ヒューズ、王座返り咲き

Zuffa "Ultimate Fighting Championship 50 : The War of '04"
2004年10月22日(金) アメリカ・ニュージャージー州アトランティックシティ:ボードウォークホール

  レポート:シュウ・ヒラタ  写真:吉田みのり  【→カード紹介記事】 【→掲示板スレッド】

第7試合 メインイベント ライトヘビー級 5分3R
○ティト・オーティズ(アメリカ/チーム・パニッシュメント)
×パトリック・コート(カナダ/チーム・ユニオン)
判定3-0


「2回続けて負けているから、どんな勝ち方でもいいから勝たなくちゃいけなかった」記者会見で発したこのティト・オーティズの一言が、この試合の全てを物語っていた。
 試合開始早々、不用意に首相撲からの膝蹴りへいったときにコートの右フックをアゴにもらい、一瞬だけ膝をついてからのティトは、とにかくひとつのことしか頭になかったようだ。
 体重、身長、テイクダウン、そしてグラウンドでのポジショニングとコントロール。ティトにとっては、今回の相手と比較すると明らかに勝っているカテゴリーだ。これを有効に使った戦法に執着し、とにかく勝ち星を拾うしかなかったのだ。コートは自分の間合いを保ち、打撃のコンビネーションから強烈な右フックというパターンを狙うが、ティトの目的はただひとつ。とにかくグラウンドに持ち込んで上をとってからのパンチとエルボーだ。

 しかしコートもしっかりとティトをフルガードに捕まえ、試合は膠着状態 に陥る。2ラウンド、両者もつれるようにグラウンドに倒れたときにコートがうまく上になり横四方をとった場面もあったが、いかんせん体格差は埋められず。3ラウンドに入ると、ティトは両手でしっかりと顔面をガードし、コートのパンチに合わせてテイクダウンをとりグラウンドにもちこむという、一時の豪快さがすっかりとなりを潜めた保守的な闘いしかできなかった。結局3ラウンドまでコートのフルガードの中でティトがパンチとエルボーを繰り返す展開のまま試合終了。
 試合後、オクタゴンの中ですぐにマイクを取り「ファンの中には失望した人も多いと思うけど、今回は勝たなくちゃいけなかった」という弁解スピーチをするあたり、エンターテイナーとしての勘はまだまだ衰えていないが、メインイベンターらしい試合をするのがトッププロの最低条件であることを忘れたティトなんて,ファンは見たくないはずだ。

第5試合 セミファイナル ウェルター級王者決定戦 5分5R
○マット・ヒューズ(アメリカ/ミレティッチ・ファイティングシステム)
×ジョルジュ・サンピエール(カナダ/TKOマネージメント)
1R 4'59" 腕ひしぎ十字固め

※ヒューズが王座返り咲き

 今大会のタイトルが「War of 04」で、メインとこのタイトルマッチがアメリカ人選手対カナダ人選手ということもあり、2階席の一部はカナダの国旗とケベックの州旗を掲げた大勢の応援団が埋め尽くされている。
 そんな母国からのファンの大声援を背に果敢に仕掛けていくサンピエール。左のジャブでリズムを作り一気に片足タックルでテイクダウン。これはグラウンドで攻めきれずヒューズに立ち上がられるが、その後も左のハイキック、左のジャブと積極的に先手を打ってくる。
 しかしこの日のヒューズは、自分の得意のパターンに持ち込むことを忘れなかった。サンピエールをフェンスに押し込むと、片足を取りそこから強引な力任せのテイクダウン。3年前に本格的な総合の練習を始めたというサンピエールも、下からヒューズの腕を取りうまく防御すると、フェンスを使いスタンディングへ戻す。
 ただヒューズのパワーにやや圧倒されたか、この辺りから表情に焦りが見え始めるが、7歳の時に極真空手を始めたのが格闘技との出会いだというサンピエールの心はまだ折れていないようだ。ジャブだけでなく回転後回し蹴りまで繰り出し必死に試合のペースを握ろうとする。
 とはいえオクタゴンでの闘い方を熟知しているヒューズに捕まるのは時間の問題だった。再びサンピエールをフェンスに押し込みもつれるようにグラウンドへ。ここでも力で勝るヒューズは上になり残り10秒を切ったところでパンチの連打。慌てたサンピエールはヒューズの足を押さえずに下からアームロックにいったのが致命傷となった。ヒューズは素早く回り込みサンピエールの左手をとると腕十字。1ラウンド残り1秒のところでサンピエールはタップ。BJペンが離脱したことで空位となっていたUFCウエルター級のタイトルを奪還した。

 最近結婚しクリスチャンの洗礼を受けたヒューズ。
 試合後、会場のすぐそばにあるフードコートで奥さんや弟たちとピザを食べていた。お世辞にもきれいとは言えないあの店で、そしてどう公平な目で見てもガラがいいとは言えない連中がジロジロと好奇心丸出し目線を向ける中で、何ひとつ微妙だにせずに食べ物に手をつける前にちゃんとお祈りをしていたが、信じるものを得た人間はやはり強いのだろうか。宗教に疎い筆者には何となく分かる程度だが、今回のヒューズは,ただ単に自分がオクタゴンで勝つための方法論を理解していただけでなく、己への自信のようなものがみなぎっていた。
 いつもならヒューズは試合直前のオクタゴンの中で、自分自身を奮い立たせるために静かに右へ左へと数メートルのところを行ったり来たりしながら相手に鋭い眼光をむけるのだが、今回は仁王立ちして相手を見据えていることのが多かったのも、そんな違いの表れのようにも思える。精神的には一皮剥けたようだが、関節技で試合を決めたとはいえ、闘いのパターンに変わりはない。ということは、オクタゴンのジャッジ、そしてオクタゴンのルールとなると、この階級でヒューズに勝つには打撃で倒すか彼以上のパワーと圧力が必要になるような気がする。

第4試合 ウェルター級 5分3R
○フランク・トリッグ(アメリカ/RAWトレーニングアカデミー)
×へナート・べヒーシモ(アメリカ/BJペンMMA)
2R 2'11" TKO (レフェリーストップ:打撃)


 前回のオクタゴンではまさかの判定負けを喫し、試合後控え室で号泣したベヒーシモ。対するトリッグは、マット・ヒュームとモーリス・スミスの元で、アイヴァン・サラベリーらと徹底的な柔術対策をしてきた自信からか、一目で落ち着いているのがわかる。プロ選手として試合をするようになってから、初めて娘を試合会場に呼んでいることもあり、何か使命感のようなものまで漂わせている。

 試合はアグレッシブな展開で幕を開けた。左のフックからクリンチ、そして膝蹴りと、攻撃の手を休めないトリッグに対して、ベヒーシモも左右のパンチからタックル。トリッグは何とかそれを切ってスタンディングに戻すが、ベヒーシモは間髪入れずに右ストレートを放つ。
 とにかくベヒーシモに上を取らせない。そんなトリッグの戦法は先にテイクダウンを奪うことだった。ベヒーシモもすかさず下からオモプラッタを狙うが、トリッグはしっかりとバランスを保ち、フェンス際まで持っていくことでこれを防御。三角絞めも冷静にさばき、足関を狙うベヒーシモには上からパンチとエルボーを落として完璧に防御する。スタンドに戻ると、今度はベヒーシモがタックルに入るが、トリッグは足を取られてもがっぷり受けとめ、体重をうまくのせでしっかりと切る。パワーも数段アップしたようにみえる。
 ただしスタミナが切れてきたせいか、4分過ぎあたりからは、口が開きマウスピースが少しずつ見え始める。対するベヒーシモは下から足関狙いにいく度に、かなりのパンチやエルボーを頭部に浴びているように見えるも、全くダメージのようなものは感じられない。1ラウンド終了後のインターバルの時も、両手を膝にあて大きく肩で息をしているトリッグに対して、ベヒーシモはまだまだ大丈夫といった様子だった。
 しかし2ラウンドに入ると勝負はすぐに決まった。両足タックルを切ったトリッグが、下になったべヒーシモに左のパンチ2発。やや怯んだように見えたべヒーシモにトリッグはパンチの嵐。左エルボーの連打を打ち込むとレフェリーが試合をストップした。

 前日、トリッグはべヒーシモについて「まだ俺ほどアグレッシブで打撃の強い選手と闘ったことはない。今の俺の打撃はデンジャラスだぜ。ホールマン戦以来、打撃に練習に力を入れてきたからな」と豪語していたが、その通りの結末となった。
 そんなにべヒーシモにダメージがあるようには見えなかったが、あれだけ頭部に打撃が入ったら、厳しいニュージャージー州のアスレチックコミッションからの派遣スタッフの前では、試合をストップするのが妥当なところ。ただそれほどのダメージだったのだろうか?と思わせるとほど、負けた後のべヒーシモはケロッとしているようにも見えた。
「2月のUFCでまたタイトルに挑戦したい」と燃えているトリッグに対して、どこか淡々とした態度のべヒーシモ。叩きのめされた選手が放つ独特の虚脱感というものもなく、失望や怒りも何も全く感じさせないままロッカールームに戻ってしまった。聞くところによると、他の場所での闘いを望んでいるらしいが、このままオクタゴンから静かに消滅してしまうのだろうか?

 
第6試合 スイングバウト ミドル級 5分3R
×ホルヘ・リベラ(アメリカ/チーム・エリート)
○リッチ・フランクリン(アメリカ/ミレティッチ・ファイティングシステム)
3R 4'28" 腕ひしぎ十字固め

第3試合 ミドル級 5分3R
×ロビー・ローラー(アメリカ/ミレティッチ・ファイティングシステム)
○エヴァン・タナー(アメリカ/チーム・クエスト)
1R 2'22" 三角絞め

第2試合 ミドル級 5分3R
○アイヴァン・サラベリー(アメリカ/AMCパンクレイション)
×トニー・フリックランド(アメリカ/ミレティッチ・ファイティングシステム)
1R 1'36" 胴絞め

 サラベリーが胴絞めからスリーパーを狙おうとしたところで、突然フリックランドが痛みを訴え試合終了。

第1試合 ライトヘビー級 5分3R
×マービン・イーストマン(アメリカ/ルイス&ペデネイラス・バーリトゥード)
○トラビス・ルター(アメリカ/ライオンズ・デン)
2R 0'43" KO (パンチ)

 スタンドの間合いが続き、イーストマンがやや攻勢。だがルターはカウンターのストレート一撃でイーストマンを豪快KO。ワンチャンスをものにした。

Last Update : 11/18 22:13

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