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(レポ&写真) [ROMANEX] 5.22 さいたま:藤田、サップをKO

FEG "FieLDS 格闘技世界一決定戦 ROMANEX "
2004年5月22日(土) 埼玉・さいたまスーパーアリーナ  観衆:14,918人(満員札止め)

  レポート:井原芳徳  写真:井田英登  コメント編集:若葉り子
  【→谷川貞治プロデューサーの大会総括】  【→大会前のカード紹介記事】  [→掲示板スレッド]

第9試合 5分3R
×ボブ・サップ(アメリカ/チームビースト)
○藤田和之(日本/猪木事務所)
1R 2'15" 一本 (タップアウト:グラウンドパンチ)


 藤田が開始早々タックルでテイクダウンに成功。猪木アリ状態の後、サップが足関を狙う場面もあったが、藤田は脱出するとサイドへ回り込み、立ち上ってサップの後頭部へサッカーボールキックの連打。サップが苦しそうな表情を見せると、藤田はさらにサッカーボールキック、後頭部へのパンチと膝蹴りを畳み掛け、最後はサイドから鉄槌を落としたところでサップはタップした。
 筋骨隆々のサップとはいえ、鍛えられないのは頭。さらにサップのファイターとしてのハートの弱さを突いた、お見事な藤田の作戦勝ちといえよう。藤田は15kg以上体重が軽いため、グラウンド状態の頭部への蹴り無しのルールを選ぶことができたが、有りを選んだことを有効に勝利に結びつけることができた。藤田の強さを讃えたい。
 だが、ルールの反則条項に「後頭部・延髄・脊髄への打撃攻撃」があるにも関わらず、藤田が蹴り続け、平レフェリーも全く注意しなかったことにはあえて物言いを付けておく。

◆藤田「(完勝だったが?)コーチのマルコ・ファスの言う通りに、トレーニングでやってきたことが試合で出せました。(サッカーボールキックも作戦通り?)そうですね。ああいった攻撃も有効だなとコーチと相談していたので。(テイクダウンまでが難関だったと思うが?)イヤというほど練習しましたので。色々な相手と。(サップの印象は?)ものすごい力だった。素晴らしいファイター。自分と戦ってくれたことに対してリスペクトの気持ちでいっぱいです。
(次の試合は?)オファーをいただければ、このROMANEXに限らず、素晴らしいリングがあればぜひ出していただきたいと思います。(新日本系の全勝だったが?)そうですね。新日本の選手すごい頑張ってましたし。モニターで全部見ていましたので、自分の試合までにパワーをいただきました。それも勝因の一つだと思います。」

※サップはノーコメント

第8試合 5分3R
×アレクセイ・イグナショフ(ベラルーシ/チヌックジム)
○中邑真輔(日本/新日本プロレス)
2R 1'51" 一本 (タップアウト:前腕チョーク)


 中邑は前回の対戦では片足タックルを多用したが、ゴング早々見せたのは胴タックル。これはイグナショフに突き飛ばされたものの、今度は胴タックルではなく片足タックルを敢行し、見事テイクダウンに成功する。攻めにバリエーションができた意義は大きい。中邑はハーフガードからパンチを狙い、ノルキヤ戦でもフィニッシュに使った前腕チョークも出す。膠着ブレイクがかからない範囲で、ここでも攻めにバリエーションを見せる。自軍の青コーナー付近でセコンドのアドバイスを聞きながら試合ができたことも良かったようだ。イグナショフも下からギロチンを狙うが、腕を余計に巻き込んでしまい極めの形からはほど遠い。コーナーが邪魔になり、中邑はサイドに回り込むことはできなかったが、上から攻め主導権を握り続け1R終了。
 2Rも中邑は低空タックルでテイクダウンに成功するとハーフガードに。これはイグナショフにガードに戻されるが、いったん立ち上がって猪木アリ状態になると、素早く横に回り込んでサイドポジションを奪取することに成功する。前回の対戦も含め、最大のチャンスが巡ってきた。さてこれから中邑がどうフィニッシュに持ち込むか?と期待が高まる。だが嫌がらせ程度にしか見えなかった前腕チョークで、イグナショフはまさかのタップ。ノルキヤもそうだが、MMA慣れしていないストライカーには、こういうシンプルな攻めでも有効なのだろうか。
 やや拍子抜けするようなフィニッシュだったが、ともあれプロレスラーとしての威信を守り通すことに成功し、プレッシャーから解放された中邑は、爽やかな笑顔で勝利を喜んだ。

◆中邑マイク「今日の試合のテーマは笑顔でした。今日はいい風が吹いていたんで勝つことができたんで勝つことができました。プロレスラーは強いんです」

◆中邑バックステージ「(相手に何もさせなかったが?)そうですかね? 試合前に言っていた通り、緊張はなく緊迫感だけを感じながら試合に臨めたので。思っていた通りの展開ではありませんでしたが、少しも危なげなく、練習の成果や経験が試合に出たんだなぁと。良かったです。(大晦日の試合と比べて)ルールの不備うんぬんは抜きにして、自分自身がかなりテンパってしまっていてメンタル的に雲泥の差だったので、その違いだろうと。今日の清々しい気持ちを思うと、大晦日からの練習や辛い思いや悔しさは必然であり、今日の為にお膳立てされた試合だったのかな、と思います。
(試合内容について)1Rで終わると思っていました。予想外のフィニッシュでしたが、2Rも危なげなく進んで・・・結果オーライですね。これでやっと本業のプロレスに邁進することができます。実は前回と違った種類のタックルを狙っていて…。“玄米ドライバー”って技を狙っていたんですが。次回の楽しみにってことで。危険な技なのでプロレスでは使えませんね(笑)。今回はセコンドの指示通り、試合展開の位置をコントロールすることもできました。(今日のレフェリングならば大晦日の勝敗は変わっていた?)色々な要因があると思うので、一概には言えないですね。
(プロレス勢の全勝という結果については?)大変満足しています。これが“プロレスの逆襲”なんだろうな、と。今日のようなことがあるとプロレスファンは元気になると思うので。何時とは言えませんが、また次は違う形で戻って来たい。プロレスラーは強いんです。
(IWGPのサップ選手の敗戦については?)明日考えます(笑)。今日の試合にあたって協力してくれた皆さんにありがとう、と言いたいです。(『今日のテーマは笑顔』とのことだったが?)笑顔を作ると頬の筋肉が働いて、全身の筋肉を緩める効果があるんです。緊張した時には、無理にでも笑顔を作るもしくはガムを噛むと緊張がほぐれるんです。特にガムを噛むと脳幹が刺激されて。皆さんもガム食べてください(笑)」

◆イグナショフ「(笑顔で席に着きながら)試合のことは聞かないでくださいね。(負けたのに悔しくないような印象を受けるが?)もちろん悔しいです。でも前向きにとらえなくては。日本に来てすぐに試合だったので。今夜、眠る時になったら悔しさがこみ上げて来るのでしょうね。はっきり言って、強くない人に負けたと思っています。でも今日は彼のほうが強かったということですね。
(来日は何時頃?)今日の10:00か11:00頃かな。(どうしてこのような無理なスケジュールの試合を?)中邑戦の前にウォーミングアップが必要だったので。(今日の試合への影響は?)影響は無かったと思います。(総合の試合の前にキックでウォームアップは不思議に思うが?)仕方が無いですね。こういう結果になってしまったから。
(大晦日の試合と比べて中邑選手は?)前回は自分の方が準備期間があったというだけで特に違いはないです。彼に新しいテクニックや動きはあったのは確かですが。…でも彼のほうが弱いんですけれどね。(次は?)ぜひ中邑選手と再戦したいです。(今回キックを出さなかったのは?)中邑選手をあれ以上傷つけちゃいけないと思ったんで…。って、それは冗談だけど、皆さんがお気付きになった通り、なんの動きも出せず、見せることもできず…。今日は中邑選手にとっての祝日になってしまいました。彼はいい選手だし、戦士としての精神力も持っている。でも自分の方が強いですよ。(何もできなかったことを恥じている?)ええ。凄く恥ずかしいです。今夜は枕に顔を埋めて泣くだろうな、と思っていますよ。みなさん、どうもありがとうございました」
 
 

第6試合 5分3R
○BJペン(アメリカ/BJペンMMA)
×ドゥエイン・ラドウィック(アメリカ/3-Dマーシャルアーツ)
1R 1'45" 一本 (タップアウト:肩固め)


 BJの試合はいつも、ゴングの前から始まっている。両腕を上げて構え、足をステップさせ、いつでも獲物に飛びかかる事ができるよう、ゴングが鳴る瞬間を待ち構えている。レフェリーが「ステイ・コーナー」と叫んでニラんでも、BJはちょっと下がるだけで、レフェリーが相手選手の方に目をそむけた隙にすぐまた前の位置に戻る。
 ゴングが鳴った瞬間、パンチを振ってからの弾丸タックルで一気にテイクダウン。ここまで1秒。もう試合は終ったも同然だった。既にポジションはハーフガード。あっさり足を抜くと、もうマウントポジションになっている。ラドウィックはBJの胴に腕を巻き付けるしか為す術がない。体重はBJが76.3kg、ラドウィックは76.5kg。ラドウィックも無理して増やした体重では無いのだが、BJの体幹の太さと柔術で世界の頂点を取った寝技の前ではまるでかなわない。BJはパンチでラドウィックを痛めつけ、ラドウィックの片腕をラドウィックの頭に巻き付けるイヤらしい攻めをしつつ、首の下に腕を忍ばせて一気に肩固めへ。パーフェクトな内容だった。直前にUFCウェルター級ベルトをはく奪されたことも、BJにとってはいいプレッシャーになっていたのかもしれない。

◆BJペン「コンニチハ。勝ててうれしいです。思ったよりも早く終わったのでとてもハッピーです。(日本での初めての試合だったが?)初めての場所での試合というのは、初めて試合をするのと同じくらい意味深いものなので、不思議な感じがしました。(須藤選手との対戦については?)どうしてみんなが僕にゲンキ、ゲンキと聞くの? 実際に今回は、須藤元気選手と試合がしたかったし、そのつもりでいた。なのに須藤選手がその試合を受けなかった。だから、何故皆さんが須藤選手の名前を挙げ続けるのか不思議です。だからといって、他の選手を無視している訳でも須藤選手を揶揄するつもりはないですが、須藤選手が自分との対戦を受けなかったという点だけは理解してもらいたいです。(次はどのベルトを巻きたい?)もちろんROMANEXのベルトです。(モニターでのフライVS中尾戦のノーコンテストの結果を見て) フライは僕の子供の頃から知ってる。ファンだから、勝てなくて悔しいね(笑)(※UFCとの契約問題についてはノーコメント)」

◆ラドウィック「(ペンの印象)とても強かった。自分のスタンドに付き合わずにグラウンドに持っていくという、スマートな試合展開をしたと思います。(今後について)最後の総合の試合は1年以上前の対須藤元気戦だったので、できれば総合でもっと戦いたいですね。今回は3週間前に決まって、相手はBJペン選手ということで厳しい試合になると思ったのですが、ROMANEXという大舞台だったのでオファーを受け、短い期間で出来る限りのことをしました。次回はもう少し余裕を持って、総合で試合をしたいです。」
 
 

第5試合 5分3R
○須藤元気(日本/ビバリーヒルズ柔術クラブ)
×ホイラー・グレイシー(ブラジル/グレイシー・ウマイタ)
1R 3'40" TKO (レフェリーストップ:グラウンドパンチ)


 ホイスをセコンドに付け試合に臨んだホイラー。試合でも吉田戦のホイスばりに、下から足をつかむ攻めを見せるが、足関慣れした須藤は難無く防御し、バックを奪うなど優勢。場内からは元気コールが鳴り響く。須藤は失敗に終ったものの側転パスガードを試みるなど見せ場を作り、最後はタックルを潰しての顔面膝蹴り。たまらず倒れたホイラーにパンチを連打したところで梅木レフェリーが試合をストップした。
 須藤が70kgだったのに対し、ホイラーは67.4kg。体重差はほとんど無いが、本来1.5階級ほど違う選手同士で、数字以上の体格・パワー差が感じられた。あとホイラーが下からの攻めに固執し、今の時代のMMA用の寝技を研究しきれていないようにも思えた。とはいえ一時代を築いたグレイシー一族の一人を、KOという形で葬った須藤にはお見事という他無い。

◆須藤「(試合の感想)組み立て的は完璧にできたと。あからさまに打撃VS寝技という図式があったので、そこをあえて寝技で付き合ってどこまで対応できるか?自分の実力を試してみたかった。結果、対等にできたので自信になりました。
(ホイラーの足関節は?)足関節を狙っているのは解ったので、冷静に対処できました。(心がけていたことは?)寝技の技術においてホイラー選手がどれだけ自分より勝っているのかを意識していました。その辺は自信を持ってやれば対処できないことはないだろうな、と思っていたので。
(手ごたえはどの辺で?)ずーっとネチネチとしつこくこられて。そこで根負けして倒れずに耐え抜いたところから、だんだんと膝が顔面に入ったり。膝蹴りは前回のUFCの時に凄く練習していたので、今回の試合でも活きたのかな、と。打撃の一発一発が全て的確に当たったという感覚がありました。組んでからの打撃を上手く活用できたのが勝利に繋がったのでは?と思います。
(憧れていたホイラー選手は強かった?弱かった?)というより、自分自身が人事を尽くしましたし、時期的にも油が乗って来ている中で試合できたので。相手の強さ、というよりも自分が強くなったなぁと。パンチ、膝の的確さ、そしてグラウンドでの攻防も対等にできたと思っています。
(ホイラーに勝って、次はホイスと?)セコンドにホイス選手が着いていたので。『プロモーターが組んでくれたらいいよ』という事でした。ぜひホイス選手に勝って、ヒクソン選手にも挑戦したいです。僕自身がブラジリアン柔術の強さを知ってから渡米して学んで、プロデビューしているので尊敬していますし、敢えて尊敬している中で、出藍の誉れじゃないですけれど、ブラジリアン柔術のトップの人たちに勝っていくことを寝技のゴール、としたいです。
(ホイスとは体重差があるが?)今日のように戦略を練っていけば無理なことではないと思います。吉田(秀彦)選手と練習していても、あれだけ強い吉田選手が抑え込まれている場面もありましたから、その力を自分自身も体感してみたいですね。また、自分は切り口が違うので、噛み合わせ的には面白い試合をする自信はあります。
(BJペンの試合は見た?)強かったですね。いずれ闘う時期は来ると思いますし、UFCチャンピオンですから、いつか手を合わせてしっかり勝利に導きたいと言う気持ちはありますが、まずは打倒グレイシーで…。打倒というより、グレイシー一族の選手をどんどん越えて行きたいです。
(UFCでの対戦経験のあるラドウィック選手については?)UFCでもう一回。判定について少し納得行かない部分もあったので。ラドウィック選手にやられた打撃をバネに今回のように打撃を強化することができたので。自分は成長していますし、もし次があるならば、勝たせてもらう自信があります。
(入場のコンセプトは?)対戦相手が決まったのが遅かったので…。ブラジルのミュージシャンのセパルトゥラの曲を使って、民族っぽい感じに仕上げました。」
※ホイラーは検査の為、病院へ。ノーコメント。
 
 

第4試合 5分3R
○ジョシュ・バーネット(アメリカ/新日本プロレスリング)
×レネ・ローゼ(オランダ/チーム・ピーター)
1R 2'15" TKO (レフェリーストップ:マウントパンチ)


 ジョシュがローゼをコーナーに詰め、グラウンドに持ち込もうとすると、ローゼはロープを再三つかむ反則を犯し、岡林レフェリーがイエローカードを提示する。再開後すぐテイクダウンに成功したジョシュは、まもなくマウントポジションに。ロープにもつれ攻めにくいかにも思われたが、百戦錬磨のジョシュは着実にパンチを当て続け見事ノックアウト勝ちをおさめた。
 敗れたローゼ陣営は、ロープ際の攻防でドントムーブがかかると聞いていたにも関わらず、かからなかったことに不満を示した。今回のROMANEXには各団体で裁いている有能なレフェリー陣が集まっていた。彼ら同士は顔なじみで、チームワークも十分あったはずなのだが、ROMANEXルールに関する意思統一は不十分だったようだ。次回大会では改善されることを望みたい。

◆ローゼのセコンドについたピーター・アーツ「今は彼(ローゼ)が喋りたがらないので僕が喋るよ(笑)(判定の結果について)昨日のルールミーティングの段階では、試合位置がロープ際になった場合はリング中央から試合を再開するとのことだった。今日の試合ではローゼの身体がロープ外に出てしまって不安定な体勢だったのに、レフェリーは試合を止めなかった。ルールが違うのはどういうことなのか、きちんと説明をしてもらいたい。話し合いを持ちたいと思っているが、残念な結果になってしまった。」

◆ローゼ「2週間前に決まった急なオファーだったが、アメリカのトップ選手と試合ができるということでトレーニングをして臨んだ。だが、残念な結果に終わってしまった。ロープ際の不安定な体勢でパンチを貰う前に、レフェリーが試合を止めて、中央から再開してくれれば…。再戦の希望はもちろんある。その時は2ヶ月以上の練習期間ときちんとしたレフェリーをお願いしたいです。」

◆ジョシュ「(試合の感想)ザンネンダ。バックドロップ ダセナカッタ。ロープ際での攻防になってしまい、自分の極め技がなかなか出せなかった。彼は僕をカッとさせたからね。今度はプロレス技できっちり勝ちたいね。ファンの声援はいつも自分の背中を押してくれるし、僕のエネルギー源になっているんだ。日本のファンはサイコウだ。日本の全てのオタクのために戦うよ。(公約のバックドロップは出なかったが?)プロレス技であるバックドロップを出せばお客様がびっくりして盛り上がると思ったので決めたかったんだけれど、試合を早く終わらせたくてカッとなってしまい、出せなかった。ゴメンナサイ。
(次の対戦相手は?)今回K-1ファイターとして試合を受けてくれたレネ・ローゼ選手には感謝している。次どんな選手と試合を組んでくれるのか楽しみ。どんな選手であっても僕と闘おうという勇気のある相手であれば、どこのリングででも戦います。カカッテコイ。
(ファンへのメッセージ)キョウハ ホント ゴメンナサイ バックドロップ ナイ。デモ ネクスト シアイ パワーボム デス。ガンバリマス。プロレス ハ ムテキダ! アリガトウゴザイマシタ。」


第7試合 5分3R
−ドン・フライ(アメリカ/フリー)
−中尾芳広(日本/フリー)
1R 1'21" ノーコンテスト


 ゴング前、互いにガンを飛ばし頭をこつき合う両者。ベテランのフライはともかく、プロ2戦目の中尾がここまでプロ選手らしいパフォーマンスを繰り広げたことに驚かされた。だが試合は非情にもノーコンテストに。中尾のタックルをバックステップでかわそうとしたフライが、前のめりにバランスを崩し、中尾の頭にバッティング。中尾が上になったところでドクターチェックが入る。フライの頭の傷が骨膜に達していると角田信朗競技統括プロデューサーが説明し、試合終了。2試合目も不完全燃焼に終った中尾。プロとしての気構えは感じられるだけに、次回こそ真価が示されることを期待したい。

◆フライ「(試合の感想)非常に速く終わってしまった。あんな形で終わってしまってとても恥ずかしいと思っている。(中尾選手の印象)非常に素晴らしい選手だった。スピードもパワーもある。これから一生懸命練習していけば男としても、素晴らしいファイターになる素質を充分に感じた。」

◆中尾「(試合の感想)フライはミスター格闘技!という雰囲気を持っていましたね。殺気、気迫がありましたね。結果はああいった形に終わりましたけれど、悔いは無いです。次に向けて出発しているので今日はこれで良かったと思っています。アグレッシブさという点が課題だったのですが、その点はクリアできたのではと自分では思っています。(再戦は?)谷川さんにお任せしているので。自分はどんどん上を目指して行きたいので…。でも再戦はしたいですね。」

第3試合 5分3R
○ゲーリー・グッドリッジ(トリニダード・トバコ/フリー)
×ザ・プレデター(アメリカ/UPW)
1R 1'22" TKO (レフェリーストップ:左フック)


 プレデターの伸びのあるパンチとローで、序盤バランスを崩しがちだったグッドリッジだが、左フック一発で形勢逆転。後ろにふらついたプレデターにもう1発左フックを叩き込み、豪快なKO勝利をおさめた。

第2試合 5分3R
×サム・グレコ(オーストラリア/正道会館)
○LYOTO(ブラジル/猪木事務所)
判定1-2 (グレコ:磯野/LYOTO:芹澤・山崎)


 LYOTOがマウントからの腕十字を3度狙うなど優位に試合を運び続け完勝した。グレコの腕十字の防御も既にK-1ファイターの域を越えた巧さだった。LYOTOは攻めのバリエーションやズルさを身に付けていくことがこれからの課題だろう。磯野ジャッジがグレコに点を付けたのは、グレコの右ローを有効と判断したためと思われる。ルールではダメージ、アグレッシブさ等が判定基準に上げられているが、優先順位は無く、曖昧なものとなっている。

◆ LYOTO「非常に厳しい試合でしたが、おかげ様で勝つことができました。(猪木会長にはなんと報告をしますか?)最終的にはKOで倒せなかったことについて申し訳なかったと報告したいです。(厳しかったのはどんな点?)2Rで強いアタックをかけられて、それに抵抗してエネルギーを消耗してしまった点です。今まで5連勝してきましたが、一番難しい相手でした」

第1試合 5分3R
○ブルーウルフ(モンゴル/新日本プロレスリング)
×トム・ハワード(アメリカ/UPW)
2R 4'44" TKO (タオル投入:4点膝連打)


 ブルーウルフが序盤にテイクダウンを奪うと、ハワードが頭部から出血。ドクターチェックの後、試合が再開するが、岡林レフェリーがスタンドから再開させようとすると、サブレフェリーからグラウンド状態から再開するよう指示する。このあたりからもレフェリー間の意思統一の不十分さが感じられる。試合はハワードがほとんど何もできない状態で、ブルーウルフがサイドポジションからのアームロック、四点ポジションからの膝蹴りで優位に試合を運び続け、最後は四点膝でタオル投入で終了となった。

オープニングファイト 5分2R
○グラディエーター(ブラジル/ブラジリアン・インパクト・チーム)
×アントニー・ハードンク(オランダ/ボスジム)
判定3-0 (グラディエーター:松本・磯野・芹澤)


 グラディエーターはボクシング、空手、ムエタイを50戦近く経験し、MMAも5戦5勝の24歳。試合はグラディエーターがテイクダウンを奪い、上からパンチを落とすが、キックボクサーのハードンクがクロスガードでガッチリ防御して膠着する展開が続く。判定はマストシステムのため、グラディエーターに軍配が上がった。


◆谷川貞治イベントプロデューサーの大会総括

「ROMANEXをK-1の新シリーズとして初めて開催させていただいたのですが、マッチメイクも試合内容も非常に良かったのではと思っています。敢えて言うと、オープニングファイトがいわゆる普通の総合格闘技、世界中で行われている試合内容だったというか。ですが、ROMANEXは『格闘技世界一決定戦』というか、『プロの試合』というか、ただ勝つだけ、身を守るだけ、といった競技的な事ではなく、試合内容はどうか?というプラスアルファが問われる大会です。そういった意味では、第1試合のブルーウルフ選手から、メインの藤田選手に至るまで、単に競技としての総合格闘技ではなく、それぞれのかける人生観や、バックグラウンドなどを全部背負って、そして何かを見せようというプロ意識をそれぞれの選手が持っていて、いい試合だったのではと思っています。
 今、パーティー会場で選手、関係者のみなさんと会って話しをしてきたんですけど、皆さん『本当に面白かった』『これは世界中から色々なファイターが集まるんじゃないか』と。ROMANEXに上がるためには、ただ強いだけではなく、プラスアルファが必要なんだけれど、『ヒーローになれる場所なんじゃないか』と皆さんからお褒めの言葉をいただきましたので非常に良かったんでは、と思っています。
 ただ、K-1側からというと、めちゃくちゃ悔しい気持ちでいっぱいだったな、と。言い訳することは無いんですが、K-1のリングで、『新日本プロレスの皆さん、おめでとうございます』という感じで(笑)。試合内容もですが、全勝ですよね? 全員が、ブルーウルフも、ジョシュも中邑選手も藤田選手も本当に良かったなと。ROMANEX、この大会にかける一人一人の選手の意気込みが感じられました。世界中から色々なファイターが集まってきたんですが、気持ちが飛び抜けていたのは、その新日本プロレスの人たちと藤田選手を含めて新日本の関係者、そして須藤元気君だけだったんじゃないかと。その差がみんな出たなぁと感じます。

 イグナショフは体調が悪かった部分もあるのですが、サップ、イグナショフに関しては、一からやり直して、本当に真剣に考えて『K-1も総合格闘技も両方できるんじゃないか?』と簡単に考えずに、これはこれで本気に考えないと、これだけのメンバーが集まっている中で生き残れないと思うので、そこは練習体系も含めて反省して、明日からの一歩につなげたいなと思っています。
 本当に大会自体は面白かったと思うのですが、ただ残念なことにK-1系のお客さんが今日は多かったので、試合の内容とお客さんの地熱の差があったと思います。が、これは2回、3回、一年やっていけば、あっという間に、ウワァ〜っという大会に。…まぁ、敢えて言うとPRIDEさんなんかはお客さんの熱が高いんですが、そういったお客さんが育つと思います。試合内容、マッチメイクに関しては非常に自信を持っていますので。これを2回、3回と続けて。まだ総合格闘技に関して、慣れていないお客さんが非常に多かったんで、『これはK-1の試合なんじゃないかな?』とキョトンとした感じできた人達もいると思うんですが、そういった人たちが、『これは面白い!』と思って、また勉強してくる、学習してくるような気がします。ちょうど、K-1と総合格闘技と新日本プロレスと入り乱れたファンが、2回、3回とやっていくうちに、ROMANEXのファンになって爆発するんではないかと、と。とにかく今は、マッチメイク、試合内容を一生懸命やっていくのが大切だと思うので。
 本当に、『上井さん(=新日本プロレス執行役員)、おめでとうございます。金沢さん(週刊ゴング編集長)、おめでとうございます』ってことで。私は滅茶苦茶ムカついているんですけれども。感想は以上です。

(ベストバウトは?)「試合内容としては須藤元気VSホイラー戦が良かったなぁ、と。中邑選手、藤田選手ももちろん良かったですけれども。ボブ・サップについては、今日は決して良くなかったので。ちょっと仕切りなおして、もう一回藤田選手に挑戦してもらうような気持ちでやらないとダメだなぁ、と思っています。
(元気 vs. ホイスについて)是非実現させたいと思います。ホイス選手の契約内容は解らないんですけれども、本人も是非このリングに上がりたいと言ってくれたので。ヒクソン選手だろうが、ホイス選手だろうが。個人的な趣味で申し訳ありませんが、僕はグレイシー大好きなんで(笑)みんな上がっていただきたいと思います。須藤選手だけじゃなく、ホイス選手との夢のカードを実現できる選手は、このROMANEXに沢山いると思うので、機会があったら話をしてみようかな、と思っています。」
(BJペンについて)良かったですねぇ。BJペンはいいですねぇ。極める力もしっかり持っているし、スターとしてのオーラもあるし。彼は何故かK-1に対してすごく好意的にリスペクトしてくれて、UFCも素晴らしいリングなんですが、こっちで是非頑張りたいと言ってくれたので。BJと須藤元気選手の試合も、(ファンの期待を)溜めながらやりたいなぁと思っています。BJがこのROMANEXのリングに上がったことによって、UFCの人たちも興味を持って来ると思うので。その意味では凄く色々なメンバーが集まるのかなと。これはK-1の大会ではないので、僕はメインイベントは藤田選手 vs. K-1と全く関係ない選手、という組合せでもいいと思いますし、或いはBJペン vs. 誰々、という組合せでもいいと思いますし。
 今、立ち技もそうなんですけれども、70キロのクラスは本当に面白いですね、試合が。ヘビー級にありがちな膠着ってもんが全然ないので、あのクラスの総合は面白いなぁという風に思いました。改めて
(アメリカなどでのPPVについて)今回は放送されていないですが、今後はもちろん考えています。タイソン戦も含めて、FEGが主催する格闘技イベントをトータルにPPVで、ヨーロッパからアジアも含めて、放送戦略を練って行きたいと思っていますし、着々と進んでいます。

(大会タイトルが『格闘技世界一決定戦』となっている以上、ランキングやタイトル戦が必要では?)そういうイメージではなくて、どちらかというと猪木さんの『異種格闘技戦・世界一決定戦』のようなイメージを持っているんです。これは永遠に答えが出ないので。今回はプロレス vs. K-1があり。まぁ、ボブ・サップに関してはプロレスもK-1も総合も、という突然変異のような選手なんですけれども。柔道 vs. ボクシングだったり、その時その時の旬の対決という意味での『格闘技世界一決定戦』という。当然、チャンピオンは決めていきますし、GPもやっていくとは思いますが、イメージとしては、異種格闘技決定戦、というか。解り易く言うと、他のスポーツでは、テニスとサッカーが戦うことは無いんですが、格闘技は空手 vs. 柔道もあるし、ボクシング vs. レスリングもあるんだよ、というところを見せて行きたいなと思っています。
(次回大会は?)次回は、早くやりたい気持ちもあるんですが。興行が多くなってきているんで。本来ならば、タイソンの試合にこういった総合格闘技の試合をミックスして行きたいと思っているんですが、その辺はまだ確定していないので。まぁ、今年はダイナマイトも含めてあと2回、3回。最低でも2回はやりたいと思っています。北朝鮮の問題で今日の放送がどうなるのかよく解らないんですが。そこも悔しいんですけれどね。どういう放送対応になるのか。明日にしてくれればいいのに、って感じですけれどね(苦笑)
(サップの6月5日のIWGP防衛戦は?)まだ会っていないんですが。あとで直接話します。根本的に、サップ選手は今の自分を見つめなおさなくちゃいけないと思うので、1回話し合います。非常にハングリーで勢いのあった時期から、今変わりつつあるのでそういった中で、今後どうしていくのか話さないとダメだと思います。怪我とかは聞いてないんですが、かなり顔が腫れていたんで…。
(イグナショフは2日前の試合が体調不良に響いたのでは?)それはいい訳には出来ないんですが・・・。実は1年前からの契約がどうしても取れなくて。調整がつかなかったという。申し訳ないな、と思っていますが。僕らの方が、後から日にちを決めたので。ただ、これは全然、言い訳ではないのですが。
(イグナショフ vs. 中邑の3回目は?)3回目はゼッタイありますね。ただ、中邑選手は新日本を背負う選手だと思いますし、イグナショフもK-1を背負う選手だと思うんで。今は、二人ともパッ!と出た、失礼かも知れないですけれど、今とても期待されている二人、ということで対決しているんですけれども。今後、イグナショフも総合の方でかなりの大物になると思いますし、K-1でもチャンピオンになると思うんで。中邑選手も新日本を自他共に背負うチャンピオンになると思うので。今後やるとしたら、期が熟してからやればいいかな、と。イグナショフもギロチンチョークで負けないようなレベルに達してからやらないとダメだなぁ、ということです。」

Last Update : 05/26

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