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(レポ&写真) [UFC 45] 11.21 コネチカット:ヒューズが5度目の防衛

Ultimate Fighting Championship "UFC 45 -REVOLUTION-"
2003年11月21日(金) 米国コネチカット州アンカスビル:モヒガン・サン・アリーナ

  レポート:井原芳徳,シュウ・ヒラタ  写真:吉田みのり  【→大会前のカード紹介記事】 [→掲示板スレッド]

メインイベント UFCウェルター級タイトルマッチ 5分5R
○マット・ヒューズ(米国/ミレティッチ・ファイティング・システム/王者)
×フランク・トリッグ(米国/RAWチーム/挑戦者)
1R 3'54" チョークスリーパー

※ヒューズが5度目の防衛に成功

 UFC王者とWFA王者の頂上対決は、両者のレスリングテクニックが存分に発揮される好勝負に。
 いきなりタックルでテイクダウンに成功したトリッグに対し、ヒューズはギロチン。トリッグが外すとヒューズはすぐさまトリッグの左足を捕まえる。トリッグが逃げようとするとヒューズは左足を捕まえたまましつこくタックル。トリッグは時計回りでディフェンスし、なかなか倒れない。
 1分近いタックルの攻防の末、ヒューズはトリッグを肩で抱え上げ、10歩ほど歩き、腰から豪快にマットに叩き付ける。会場は大歓声。ヒューズはハーフガードで押さえ込もうとするも、トリッグはアームロックを狙いつつ脱出。タックルで逆襲し、今度は上になることに成功する。

 攻勢となったトリッグは腰を上げてパウンド。だがトリッグの押さえ込みが甘くなった隙を突き、ヒューズはすかさず低空の弾丸タックル。尻餅をついたトリッグはまたもアームロックを狙うが、固執し過ぎたあまり防御が甘くなり、ヒューズにバックマウントを許してしまう。トリッグは立ち上がり振り落とそうとするが、ヒューズは両足でトリッグの胴に絡み付きオンブの状態からスリーパー。これががっちりと極まり、トリッグは背後に倒れながらタップアウト。ヒューズがUFCでは初の関節技か絞め技での一本勝ちで、5度目の防衛に成功した。

 勝利者インタビューでヒューズは「チョークは同僚のジェレミー・ホーンから習ったんだ」と笑顔。ライト級のBJペンが階級を上げてヒューズとの対戦を希望していると聞くと、歓迎する意向を示し、大会後、次回1.31のUFC 46でBJがヒューズに挑戦する事が正式に発表された。(井原)


第3試合 ヘビー級 5分3R
×リコ・ロドリゲス(米国/チーム・パニッシュメント)
○ペドロ・ヒーゾ(ブラジル/ファス・バーリトゥード)
判定0-3


 今年2月に行われたヘビー級王座初防衛戦で、ティム・シルビアの右ストレートに吹っ飛ばされた前王者リコ・ロドリゲスのUFC復帰戦は、なんと前座戦。試合前、会場に流れた紹介ビデオでも「たった半年の間にこんなに変わるなんて。とにかく今はヒーゾに勝つことしか考えていない」と、いつもの陽気なオーラはすっかりと鳴りを潜め、悲愴感漂うファイターに変身(?)してオクタゴンに挑んだが完敗に終った。

 試合開始早々何度かタックルに入るが、スピードが鈍くヒーゾにことごとく切られてしまう。それ以後は、時折ジャンプしての膝蹴りをみせる以外はこれといった攻撃の糸口を見出せない。反対に、いつもは相手との距離を置きカウンターパンチを狙う闘いを好むヒーゾが、リコとの間合いをどんどんと詰めて強烈な左ジャブを何度かヒット。
 3ラウンド中盤、リコが差し合いの状態に入ろうと近づいた所、後ろに下がりながらパンチで応戦したヒーゾの指がリコの眼に入るアクシデント。3分以上に渡るドクターチェックの後試合は再開されたが、この中断で集中力を欠いたのか、リコは最後まで精彩を欠きヒーゾの懐に入ることもできず、そのまま試合終了。

 判定アナウンスの前に、眼の負傷のチェックのためにロッカーに戻ってしまったリコに会場は大ブーイングの嵐。前王者の不甲斐ないファイトに期待を裏切られたリコ・ファンの怒りが爆発した。リコは判定アナウンスの前にちゃんとオクタゴンに戻り、判定を聞き自分の敗北を認め勝者ヒーゾを称えたが、ファンは「ロドリゲス・サックス!(ロドリゲス最悪!)」の大合唱。
 8月のPRIDEグランプリ開幕戦で行われた対ノゲイラ戦は「絶対にリコが勝っていた!判定がおかしい!」というメールがPRIDEの英語版ホームページに殺到し、DSEが英語圏内のファンに向けて異例の「判定についての説明」まで発表する事態にまで発展したほど、アメリカ、そして英語圏内にリコ・ロドリゲス・ファンは多い(ADCC Newsに載った説明文)。しかし、何か内なる「迷い」を感じさせるほどの動きの鈍さ、そしてタックルを切られた後の戸惑いようは、今までみせたことのない「陰気なリコ・ロドリゲス」。
「王者に返り咲くには、2、3年は掛かると覚悟している」と試合前に語っていたリコだが、今の精神状態のままではベルト奪還までの道のりはかなり厳しいと言わざるを得ない。(シュウ)


第7試合 ミドル級 5分3R
○マット・リンドランド(米国/チーム・クエスト)
×ファラニコ・バイタレ(米国/グラップリング・アンリミテッド)
3R 4'23" KO (マウントパンチ)


 1R、右ローでバランスを崩したニコに、リンドランドはすぐさま突進。上を制しパンチを狙うが、ニコも腕十字を狙い攻めさせない。2Rはリンドランドがニコを金網に押し込み続け、ペースを握る。
 3R、今度はニコがハーフガードとなるが膠着。終盤に差し掛かったところ、ニコがパスガードを狙うも、リンドランドはタックルに近い動きでリバーサルに成功。ハーフガードから肘を落としマウントを奪取するとパンチを連打。最後はニコがタップし、リンドランドが念願のリベンジに成功した。

第6試合 ヘビー級 5分3R
×タンク・アボット(米国/フリー)
○キャベージ・コレイラ(米国/グラップリング・アンリミテッド)
1R 2'14" TKO (ドクターストップ:額のカット)


 アボットがパンチで突進。金網を背にしたキャベージは落ち着いて首相撲につかまえ、強烈な膝蹴りを連打する。アボットは額をカット。いったん離れパンチの打ち合いとなるも、再びキャベージは膝連打。あまり傷が深そうに見えなかったが、ドクターチェック後ストップがかかった。
 観客のブーイングの中、完勝のキャベージはフラダンスの後、どうやら中指を立てたようで、両陣営に警官も入り乱れての乱闘騒ぎとなった。

第5試合 ミドル級 5分3R
×フィル・バローニ(米国/ラスベガス・コンバットクラブ)
○エヴァン・タナー(米国/チーム・クエスト)
1R 4'42" TKO (レフェリーストップ:マウント肘連打)


 タナーが脇の差し合いに持ち込もうとしたところで、バローニの右ショートフックが炸裂。この攻防が2度あり、タナーは左目の下をカット。大量に出血し、ドクターチェックを受けることに。
 だがこの間にタナーは態勢を立て直し、再開後、首相撲から膝蹴りを連打。バローニの右フックを見切り、金網に追い詰めテイクダウンに成功する。ハーフガードからパンチを落とし、1R残り30秒にマウントを奪取。左右のパンチと肘打ちの雨を振らし、見事逆転勝ちをおさめた。
 だがバローニはレフェリーストップ直後、寝転んだままレフェリーにパンチを振り、「何で止めるんだ!」と激怒。VTRでよく見ると、バローニはタナーの攻撃をかわしてしており、クリーンヒットはほとんどもらっていない。試合後タナーが目の下の傷の治療を受けていたのに対し、バローニの顔は無傷で「まだやれる」とばかり元気一杯。どっちが勝者かわからない光景が繰り広げられていた。

 大会後、ラリー・ランドレス・レフェリーはストップの経緯を説明。「バローニに『もうやめたいか?』と繰り返し聞いたところ、『イエス』と答えたので試合をストップした。が、すぐにバローニはまだ戦える状態であった事に気付いたので、もしも彼が『(怒りを)爆発』させなければ、試合続行を宣言していたかもしれない」。一方バローニは「オレはまだまだやれるという意味で『イエス』と言っただけ。それなのに試合がストップになってしまったんだ」と怒りが収まらなかった。だが記者会見では一転謙虚に。「悪い事だと分かっているけど、抑えきれない時があるんです。試合中は集中しているし。でもレフェリーに手をあげた私が悪かった。言い訳できません。すみませんでした」と何度も謝っていた。
 モヒガン・サン小部族警察は、バローニの暴行に対して被害届けを出すかランドレス・レフェリーに確認した所、レフェリーは被害届けを出すことを拒否。バローニは、裁判所が開き保釈金が確定する月曜日の朝まで、拘置所で過ごさなくてはいけない所を救われた形となった。

第4試合 ウェルター級 5分3R
○ロビー・ローラー(米国/ミレティッチ・ファイティング・システム)
×クリス・ライトル(米国/インテグレイテッド・ファイティング・アカデミー)
判定3-0 (29-28,29-28,29-28)


 1R、テイクダウンに成功したローラーは上からパンチを落とすなどやや優位に試合を運ぶ。だがライトルはパスガードをさせず、下からローラーの顔を蹴り上げるなど、決定打を与えない。
 ライトルの寝技を警戒してか?ローラーは2Rからスタンド勝負。今度はライトルが左フックを当てるなどやや優勢に。後ろに下がり気味で積極性に欠くローラーに対し、観客からブーイングが起こる。
 ここまでほぼ互角だったが、パンチ合戦の続いた3Rの中盤、右フックの相討ちでライトルがダウン気味に尻餅。ライトルはすぐ拍手のジェスチャーをしてダメージをごまかすが、このローラーの攻撃が決定打となり、ローラーが僅差の判定勝ちをおさめた。ライトルも終了間際にバックドロップからスリーパー狙いで反撃したが、時間が足りず。

第2試合 ミドル級 5分3R
○キース・ロックウェル(米国/チーム・エリート)
×クリス・リゴウリ(米国)
1R 3'29" ギロチンチョーク


 二十歳の若僧には負けられない。36歳のロックウェル自信とプライドだけが印象に残った試合だった。
 開催会場となったモヒガン・サンのあるコネチカット州は、ロックウェルの本拠地マサチューセッツ州と同じニューイングランド地方。つまりロックウェルにとっては地元での試合だ。しかも相手は総合戦績2勝1敗のルーキーだとくれば、一気に畳み込むような試合運びで相手に何もさせない勝ち方をしなくては。素早いスピードと絶妙のタイミングですぐに相手の懐に飛び込み脇の差し合いからグラウンドに持ち込む一連のロックウェルの動きにはそんな意気込みが感じられた。下になったリゴウリも、冷静にハーフガードからフルガードに持って行き確かなディフェンス技術をみせたが、やはりまだロックウェルの方が一枚も二枚も上だった。立ち上がろうとするリゴウリの一瞬の隙を見逃さずフロントチョークで勝負を決めた。
 こういった一方的な負け方を表現する時に英語では「彼は学校に連れていかれた(He was taken to a school)」という言い方をするが「ロックウェル先生から学んだリゴウリくん」という試合であった。余りにも一方的だったので、今後UFCミドル級戦線でロックウェルがどれだけいけるかはまだまだ判らないが、UFC 35でのユージン・ジャクソン戦も、敗れはしたがフロントチョークに捕まるまでは圧倒的に優位だったので、かなりの実力者である事は間違いない。(シュウ)

第1試合 ライト級 5分3R
○イーブス・エドワース(米国/サード・コラム)
×ニック・アガラー(米国/フリースタイル・アカデミー)
2R 2'14" TKO (レフェリーストップ:グラウンドパンチ)


 手の骨折により欠場となったディン・トーマスに替わって出場のニック・アガラーは、今回がUFCデビュー戦。1ラウンド序盤は、打撃の得意なイーブスに全く怯まずに立ち技で対抗し五分五分の勝負をみせた。しかし打撃、そしてオクタゴンでの経験で優るイーブスは、冷静にアガラーの打撃を見切ると、1ラウンド終盤、フェンス脇での差し合いからグラウンドに巧く持ち込み、ハーフマウントの状態からパンチの連打。2ラウンド、強烈な左ストレートでアガラーに尻餅をつかすとそのままニー・オン・ザ・ベリーの状態に移行しパンチと肘打ちを連打し勝利をもぎ取った。
 試合後の記者会見では、B.J.ペンがウェルター級に転向するので、ダナ・ホワイトZUFFA社長はイーブスを「UFCライト級トップ3か4の選手だ」と称えていた。だが、ペン対宇野のライト級トーナメント決勝戦がドローになって以来、空位のまま明確な方向性を打ち出されていないUFCライト級王座に対して、米国のファンの反応はかなり鈍い。
 このところ、PPV放送開始前、会場がまだ3分の1も埋まっていない状態で行われがちなライト級の試合に着目しているファンの数は、どんどん減っていくばかりのようだ。宇野薫にノックアウト勝ちしたエルメス・フランカが、次回のベガス大会でジョシュ・トンプソンと対戦することが発表された。この組み合わせとイーブス、トーマス、ラドウィック、セラ、須藤元気、そして宇野など他のUFCライト級勢らがどのような位置関係になるのか、そろそろハッキリとさせて欲しい所だ。(シュウ)

Last Update : 11/24

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