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[File 0001] 勝村周一朗「Wanna Shooto , Go ZST」


今回から開催前の大会の注目カードに、ばうれび的こだわりの角度から焦点をあてたインタビューコーナーをスタートしようと思う。記念すべき第一回は、11月3日のZSTに出場するシューター勝村周一朗。

勝村が地元鎌倉の児童養護施設「鎌倉児童ホーム」に勤めながらシューターとして戦ってきたことは、少し修斗に詳しいファンなら周知のことだろう。

“施設職員との二足のわらじを履きながら、きちんと戦えることを証明したい”というのが彼のテーマであった。だが2004年4月、勝村は突如その片方のわらじを脱ぎ捨てて、周囲を驚かせた。ファイター専業宣言である。ちょうど、それはマルコ・ロウロに敗れた直後のこと。彼の中でいかなる葛藤と決断があったのかが知りたくなった僕は、勝村の声を聞くべくアプローチをかけたが、直後練習中の怪我もあってそのラブコールには答えてもらえなかった。

だが、それから半年。勝村は “専業”のファイターとして最初に上るリングとして、修斗ではなくZSTを選んだというメールをくれた。これは、ぜひその真意を聞かねばなるまい。


■11月の修斗後楽園のオファーもあったが

Q、まず、なぜこの時期に、ZSTなのか?という核心から聞きたいんですが

「まあそうなるでしょうね(笑)実は先に11月の修斗の後楽園大会のほうで先にオファーをもらってたんですよ。相手がはっきり決まった話ではなかったんですけど、大体、この辺の選手とやってほしいんだけれども、とりあえず出れるかどうかって話で。その話をいただいてから、ほんの二、三日してからですかね。坂本さん(修斗プロモーター・サステイン代表)から『ZSTから話がきてるけどどうする?』って言われて。」

Q、じゃあ話は全部修斗というか、サステイン経由だったんですね。

「ええ、坂本さんは『どっちに出てもいいよ』って言ってくれて。仕事やめた段階では修斗以外の選択肢はないと思ってましたし。だから、こういう形で声をかけてもらえることがあるんだー、って驚きましたけど」

Q、仕事をやめてまで専業ファイターの道を選んだにもかかわらず、半年間まったく試合が出来ないということになって、焦りとかもあったと思うんですけど。

「いや、相当焦ってましたよ。7月に怪我して、すぐ9月の後楽園に出たい出たいとか言ってたんですけど、出れる状態じゃなかったですよね。でも出たかったし。仕事やめてたって言うのが拍車をかけてましたね。しょうがないやって開き直ってるときもあれば、ボーンと落ちてるときもあって。…落ちてるときの方が多かったかなぁ。足の怪我ですから、上半身のトレーニングとか出来ることもいっぱいあるんだけど、それすらやれなかった感じで。特に試合のチャンスを逃したってことが大きかったですねぇ」


■さらに上を目指すためのZST出場なのかもしれない

Q、今までシューターが他のイベントに出るって事は、ある意味修斗でのキャリアに一区切りついた人とか、もう修斗の中で闘うつもりがなくなった選手がライセンスを返上して出ていくとかがほとんどだったと思うんですけど。勝村選手にとってのZST出場ってどうなんですか?

「自分の中で、絶対に修斗に戻るって決めてのZST出場です。まだ修斗のなかで上を目指してますし…さらに上を目指すためのZST出場なのかもしれない。それはZSTを舐めてるとか、甘く見てるとかじゃないんですよ。ZSTもきちんと確立された競技だし、そこで上を取ることにも興味はあるんです」

Q、特に今回はGPなんで。でも、優勝しちゃったら、また生き方変わっちゃいません?(笑)

「いや、それでも修斗戻りますけどね(笑)ルールの違う競技を経験することで、自分のスタイルを確立したいんですよね…ぶっちゃけた話、僕はパウンドが得意でもないので(笑)スタイルとしてはアリだと思うんですけど、まあ…好きではないんですね。いや、すごいと思いますよ…KIDくんとか、五味もそうですし、それで沸かせられるとか、試合を決められる人は凄いと思います。全然否定もしないし。でも今の修斗って誰でも彼でもみんなパウンドパウンドみたいな流れが大きくあって」

Q、修斗もかつては「極めてこそシューター」みたいな風潮があったけど、だんだんそうでもなくなってきましたもんね。

「世界的にもUFCとか見ても、今の流れはそのスタイルが一番勝ちに近いんだろうなとは思いますけどね。それでいいのかなと。格闘技が好きな人は何とも思わないだろうけど、一般の人が見てみんながあれをやってたら、競技としてどう見られるのかな?っていうのがありますよね。スポーツとして、今後の発展を考えたときに」

Q、大事なポイントですね、それは

「僕も子供達を会場に呼んでて、これを子供に見せていいのかって思う事もありますし。スタイルの一つとしては当然あってもいいと思うんだけど、みんながみんなって言うのはどうなんだろうと」

Q,、確かにパウンドオンリーみたいなスタイルに収束してしまうと、スポーツとしても面白くなくなっちゃうと思いますね。

「そうなんですよ! で、11月の後楽園のオファーがあったときに、自分が上のランカーと戦うのをイメージしたときに、一本勝ちは難しいんじゃないかと。じゃあスタンドの打撃と、グラウンドで上とって殴っていく作戦だなって…でもそれって自分の好きなスタイルじゃないんですよね。でも勝つためにはそれしかないんだなと。うーん、と考えてしまって。そんなときにちょうどZSTさんからのオファーがあって。じゃあ、ZSTの動いて一本取るっていうスタイルでやってみて、それを究められたら、修斗の中でもパウンドに頼らずに一本を極めて、上を狙えるんじゃないかって」

Q、なるほどねー。わかるなー。ここで告白しちゃいますけど、僕のZSTというかKOKルールの理解ってすごく単純で、“要するに修斗のゼネラルルールじゃん”って思ってるんですよ(笑)

「なつかしいですねー(笑)」

Q、同じリーグというか、同じ文脈なんですよね。だからすごく勝村選手の言うことは理に適ってると思ったし、極端な話、KOKルールで戦ったら佐藤ルミナが世界一じゃないかと(笑)

「あー、世界一輝きますね。まちがいないスね(笑)」

Q、でも対戦相手の所選手も、多分あのルールなら佐藤ルミナと並んで持ち味の出る選手だと思うんですね。対戦相手としての所英男という選手をどう思います?

「今回GPだとかはあんまり思ってないんですよ。ZSTの会場には、大石さんの関係で何回か行ってて。出れるものなら出たいなって思ってたんですけどね。もちろんGPとか65キロでとか全然なかったし。できれば…やる人いないかもしれないけど60キロで、とか思いますよね(笑)。でも、所さんとやれるってで光栄ですよ」

Q、キャリア的に言ったら全然勝村選手の方が先輩じゃないですか(笑)

「いや、修斗のルールでやるなら僕の方が先だって言えるかもしれませんけど、ZSTのルールでやるなら全然向こうの方が先輩ですよ。大石さんにも勝ってるし、GT-Fも取ってるし、やっぱあのルールでは向こうが上だと思ってますね。自分が吸収したいと思ってるZSTのスタイルで結果を残してる選手だから…」

Q、先輩だと

「ええ、先輩です。光栄です(笑)」


■大石真丈と佐藤ルミナは本当に強いっす

Q、逆にZSTで今、所選手を食えばオイシイですよね。

「そうですねー。あのルールでもし所選手に一本勝ちできれば自分の中でも相当自信になると思います」

Q、そうなってくると、ミイラ取りがミイラになるじゃないですけどZSTのスタイルが完全に面白くなってしまって、修斗に戻れなくなったりしません? 余計なお世話ですけど(笑)。

「どうなんだろ…やってみなきゃわかんないですけど、僕はやっぱりグラウンドパンチのありの中で、殴ってくる相手から一本極めて勝ちたいんで。ZSTのルールの中でも勝てて、修斗でも勝てる、そういうスタイルを作りたいのかもしれませんね。欲張りですけど(笑)理想は…GPで優勝して、修斗に戻って。そこであえて下北でやりたいです(笑)」

Q、あーいいですねえ。「Wanna Shooto※」で

「もう一回ね(笑)かっこいいじゃないですか。そのぐらいの気持ちですよ、修斗に対しては」

Q、そしてZSTの観客を修斗に持って帰って

「ええ。それに選手も」

Q、あー、それは凄いな。一つの共栄圏みたいになっていくといいですね。じゃ、修斗からZSTへの親善大使みたいなもんですね。

「いやホントそうですよ。ウチの若手にも続いて欲しいですし」


大石vs所
またの名をヂャッカル大石。植松直哉をはじめ、彼を師と仰ぐ若手は多い。Musician's MusicianならぬFighter's Fighter。昨年のZST-GPでの所戦敗北は、今回の勝村参戦への伏線ともいえる衝撃的“事件”であった。



Q、大石選手は「修斗背負わずに闘いたい」とか言ってましたけど、ベクトル全く逆ですね(笑)

「いや、もうあの人はわが道を往くですから(笑)今回練習でも、同じトーナメント出るのかなーって思うぐらい打撃もやるし、寝技も一緒にやるしって感じで。僕が出ようかどうか悩んでたときも、“出ればいいじゃん”って逆に薦めてくれるんですよ(笑)」

Q、あの調子で?(笑)

「あの調子で(笑)」

Q、実際同門対決になることも、十分ありうると思うんですけどねえ

「人にはそういわれるんですけど、僕の中では大石さんとは当たらないと思ってるんですよ(笑)僕が勝ち上がらない、とか(笑)」

Q、優勝目指してるっていってませんでしたっけ?(笑)

「いやー、僕は優勝は目指してるんですけど…でも僕の中で優勝予想は大石さんなんですよ(笑)」

Q、なんじゃそりゃ(笑)

「でも当たったら、勝てないすよ。どのスタイルでも勝てないスもん(笑)ほんっとに強いっすよ。びっくりするぐらいに。大石真丈と佐藤ルミナは本当に強いっす。でも、大石さんも俺が勝ちあがってくるって思ってないんじゃないですか?(笑)」

Q、そのリスペクトは捨てないとダメっすよー。

「いやー、もう一回戦だけでいいっすわ(笑)大石さんには勝てないし、レミーガなんか死んでも嫌だし(笑)」

Q、なんでオファー受けたんだ、この男は(笑)

「ホントですね、なんでだろ(笑)ただ、僕は弱いんだけど…試合になるとスゴイっすよ(笑)でも、真面目な話、この一戦越えたらいろんなことが変わってるかもしれませんね。今言ってたことが、全部変わってるかもしれないし。僕も楽しみですよ」 
 
(2004.10.29渋谷)

「WANNA SHOOTO」2001年4月下北沢タウンホールで初めて行われた、若手と未発掘の海外選手で構成された実験的興行。第一部のメインを務めた勝村はライアン・ディアスに圧勝。当時から船木誠勝ばりの長髪で、イケメンシューターとしてのフェロモンを撒き散らしていた。11月12日(金) 後楽園ホールでもWANNA SHOOTO 2004が開催される。


【AFTER WORD】
読んでいただければ判るとおり、今回の勝村のZST出場には、単なる“シューターの他団体出場”という構図を越えた深い意図があった。元来、他流試合とはそうあるべきものだし、またそうしたテーマを見据えた上で、ZSTのリングにあがる彼の今回の戦いにはぜひ注目したいと思う。
インタビューで覗いた彼の“修斗LOVE”発言の数々は、今回記事の性格上泣く泣く削った部分があるし、ファイター専業を選んだ経緯や心理面についてはさらに掘り下げた声も聞いてみたいと思った。だがファイターである限り、その“発言権”を勝ち取るのはあくまでリングの上での結果次第。こんどは彼の地元鎌倉で、あの人懐っこい笑顔に再会できることを、僕はひそかに期待している。(井田英登)


ZST-GP2 オープニングステージ 11月3日(水/祝) 東京・Zepp Tokyo


■勝村周一朗オフィシャルHP
http://procland.com//katsumuracom/

Last Update : 11/02 17:02

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