島野の左ミドルから試合は始まった。同じライト級でも、二人の身長・リーチには大きな差がある。リーチの長い金沢に対して、島野はうまく得意のローキックを出せるのか?というのが試合前の注目点だった。そして最初から、その答はあった。
そこへ島野は飛び込んで、首相撲へ。金沢をロープに押し付け膝を入れる。金沢も負けずに体を入れ替え、長身を利して肘を打ち下ろす。今度は島野が入れ替えて、膝。金沢の、絶妙のタイミングで襲ってくるバックハンドブローや飛び膝蹴りは、これで封じられてしまった。
判定の結果は50-45,50-44,50-43。圧倒的なポイント差で、金沢の勝利がコールされる。悲願の初タイトル。金沢はその瞬間、いつもの誇らしげなガッツポーズをしなかった。その顔は、タイトルを手にした喜びというよりも、苦しい時間がやっと終わった安堵の表情に見えた。
(写真・文/薮本直美)