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トリプルメインイベント第1試合
第10代全日本ライト級王座決定戦/5R

全日本ライト級1位
金沢 久幸(富士魅)
全日本ライト級2位
島野 智広(不動館)

月17日の準決勝を勝ち上がった二人。本命の「怪鳥」金沢は、その準決勝をたった39秒で勝ち上がった。しかも相手はタフで有名な外智博(FA田無)。同じ日、判定で勝利をもぎ取った島野。試合後、KO勝利に沸き上がった金沢に対して、「俺は倒れねぇぞ!」と宣言した。

 この日、金沢の期待はすさまじかった。
このところの華麗なKOシーンに、観客の期待が高まる。金沢へ観客からの花束が次々と渡され、試合開始までちょっとした時間ができたほどだ。
 島野にももちろん花束が贈られたが、それを終わってもまだ金沢への贈呈は続いている。島野はグローブに額を当て静かな表情で、祈りながらその時間を、待った。

 お馴染みの、口を真一文字に結んだ金沢の表情。いつにも増してテンションは高まっている。王座決定戦の認定が行われ、ベルトが掲げられる。島野は、ひょうひょうとしたいつもの顔をしている。観客は待ち構えている。


 
 

ラウンド1

野の左ミドルから試合は始まった。同じライト級でも、二人の身長・リーチには大きな差がある。リーチの長い金沢に対して、島野はうまく得意のローキックを出せるのか?というのが試合前の注目点だった。そして最初から、その答はあった。
 島野の攻撃に対して、すかさず金沢は強烈なキックを返す。自分の距離で闘える金沢にはいくぶんかの余裕が見える。
  前へ出てくる島野に、金沢が襲いかかるタイミングを計る。

 そこへ島野は飛び込んで、首相撲へ。金沢をロープに押し付け膝を入れる。金沢も負けずに体を入れ替え、長身を利して肘を打ち下ろす。今度は島野が入れ替えて、膝。金沢の、絶妙のタイミングで襲ってくるバックハンドブローや飛び膝蹴りは、これで封じられてしまった。

ラウンド2 「首相撲だって俺は負けねぇぜ」とばかりに金沢は島野と組み合う。肘を上から横から入れ、膝のかわりにパンチを島野のアバラに入れる。島野はひたすら、膝。
 ブレイクがかかる。離れたあと島野が2度のスリップダウン。距離を置いてしまえば金沢はバックハンドブローなどの大きな動きをまじえて好きに動くことができる。


 金沢の右ストレートがヒットし、島野がダウン。だが島野はすぐに立ち上がる。長期戦を覚悟しているかのように、表情は揺るぎ無い。
 後半、金沢の飛び膝蹴りも出るが、クリーンヒットにはならず。
ラウンド3
沢ペースで試合は進む。中盤、首相撲のあと、島野がドクターチェック。どうやら金沢の肘によるものらしい。左側頭部(耳)をカット。
後半、金沢が島野をコーナーに詰めパンチのラッシュ。これで島野がダウン。それでも立ち上がる。島野のしぶとさに、観客が沸く。島野への応援コールが しだいに強くなる。この時間までに決着がつくという予想を裏切られた喜びの声だ。島野はダウンを再び奪われながらも、あくまでも前に出続ける。
 首相撲の展開では、金沢は島野を抱えて肘に狙いを定める。一度カットしているため、これでストップがかかるという可能性もおおいにある。終了直前、
金沢の飛び膝蹴りがヒット。くずれる島野。直後にゴングが鳴る。

ラウンド4

野の表情は揺るぐことなく、ローを出し続ける。
「カナザワ!カナザワ」「シマノ!シマノ!」
 交錯する観客の声援の中で、先に出続ける島野と返す金沢。ポイントでは金沢が圧倒的に優勢だが、そんな”余裕”は今や金沢の表情にはない。
 
 中盤、金沢がコーナーに島野を追い込み、パンチで島野からダウンを奪う。だが島野は立ち上がる。直後、再び組み付く。あくまで作戦通り。ダウンはな
かったかのように、前に出てくる島野は、神経戦ではまだ負けていない。
終。 再び島野の出血によりストップ。スキンヘッドの耳のあたりから顔にかけて
赤い線が流れる。「止めるなー!」という客席からの声。ここまで来てストップの決着など望んでいない。満員の観客は、金沢と島野のぶつかりあいをもっ と見せろ、と望んでいる。
 あと1分のところで島野が組みつく。ブレイクがかかる。直後、今まで後手だった金沢が、仕掛け始める。KOへの執念か。右ストレートがたびたび繰り出されるが、ついにダウンを取ることなく、このラウンドは終了した。試合終了のブザーが鳴る。

定の結果は50-45,50-44,50-43。圧倒的なポイント差で、金沢の勝利がコールされる。悲願の初タイトル。金沢はその瞬間、いつもの誇らしげなガッツポーズをしなかった。その顔は、タイトルを手にした喜びというよりも、苦しい時間がやっと終わった安堵の表情に見えた。

「関係者、ファン、マスコミの皆様。私は、チャンピオンにふさわしい選手になりましたでしょうか。これから、キックの看板を、ベルトの価値と一緒に高めていきたいと思います。どうもありがとうございました」
ベルトを巻いた金沢は、リング上でそう挨拶した。

  無冠の時代は終わり、全日本ライト級の看板としてまた始まった金沢の時代。
今後はベルトの価値を高めるべく、国際戦の舞台に飛び出していく。

(写真・文/薮本直美)    


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