セミファイナル 全日本キック・ＭＡ対抗戦
スーパーフライ級／５R

　

入場時から盛り上がった。三度笠スタイルの田中、『モンキー・マジック』をテーマ曲に登場した山田。ハイキックを得意とし、ＫＯ率の高い山田。田中は国際式ボクシングからの転向選手でベテランのハードパンチャー。だが戦績は山田の方が多い。

	山田はミドル、ローで序盤から前に出て、押す。対して田中は山田の蹴 りに合わせながら引き、タイミングを見ながら重い左フックを出していく。田中が中盤ラッシュに出かけたが、田中のパンチを警戒したか、”見”の様相。
	前半は１Ｒと同じく静かに過ぎた。中盤から田中がパンチを中心にして前に出始める。それまで山田が先に仕掛けていたペースが変わってくる。田中は無表情にペースを探る。このラウンドでは両者とも爆発までは至らず。
	田中がじわじわとパンチのペースを作っていく。 　だがそれを断ち切るように中盤山田のラッシュ。キックからのコンビネーションで田中からダウンを奪う。 　 田中はすぐに立ち上がったが、その後は山田が前に出続け、攻めの主導権は山田に戻った。
	山田はまわりながら、ミドル・ローを先に出して当て続ける。３Ｒで握ったペースを維持。無表情な田中だが、やや疲れたか、後手にまわる。 　 後半山田の右ストレートがヒット。田中のお株を奪うパンチだったが、ダウンには至らず。田中は返しに見舞うフックは相変わらず力強いものの、あくまでもパンチ主体のため、相手のペースを崩す「きっかけ」がつかめない。
	田中は山田の返しではなく、自らパンチを前へ前へと繰り出しはじめる。４Ｒまでとはうってかわってためらいもなく出てくる田中に山田は合せさせられる。田中の左フックがクリーンヒットして、山田はダウン。 ８で立ち上がったものの、相当効いたか、田中の表情が「鈍く」変化した。そこへ再び左フックが襲う。またしても山田がダウン。やっと立ち上がった山田はもう田中の餌食状態。３度目のダウンを喫し、田中のＫＯ勝利がコールされた。

田中は着地がちょっとおぼつかないバック転を２度してみせた。途中まで山田に攻められながらも、華麗で多彩なコンビネーションを持たない彼が最後にＫＯを取った。あくまでも左フックにこだわる、というよりも、左フックに賭けることを迷わなかった試合の運びかただった。
　山田はＫＯを狙うがゆえに、田中のワナにかかったのかもしれない。

（写真・文/薮本直美）