DAGEKIトップへ 試合結果一覧へ


 [第11試合 NJKF・日本キック連盟交流戦 55.5kg契約]
楠本勝也 vs 村上信次
本キック連盟のバンタム級王者村上選手が、敵地NJKFのリングに立つ。村上選手といえば、さながら国際式ボクシングの選手のようなシャープなパンチのコンビネーションが要注目だろう。非常にスピードのあるジャブ、そこから続くストレート、ボディブロー、どのパンチも鋭く、そして強力な威力を持っている。前王者川島選手を1ラウンドで沈めた切れ味は、楠本選手にとっても驚異だろう。

 一方、その楠本選手は前NJKFバンタム級王者。フェザー転向を狙って王座を返上したが、事実上のNJKFバンタム級最強戦士といえるだろう。今年最初の試合は、やはり他団体のトップ選手である貝沼選手にダウンを奪われ、かろうじて引き分けている。それだけに、再び巡ってきたトップ対決を落とすわけにはいかないだろう。同じくパンチの得意な選手だが、こちらは破壊力が図抜けている。

 タイプは違うが、同じくパンチの得意な選手同士の対決。スリリングな展開が期待できよう。



ラウンド1 やかなステップから、素早い左ジャブを繰り出す村上選手。それに対して、重量感ある左フックを見舞う楠本選手。しばらくの見合いを挟んで、楠本選手は、ジャブからロー、ジャブからワンツーと、積極的に手を出す。村上選手もシャープなジャブを出すが、楠本選手の打ち抜くパンチにガードを強いられ、連打に続かない。楠本選手が左ロングフックから距離を詰めて右を返し、さらにショートパンチを振り抜く。

ラウンド2 本選手は、遠目から仕掛ける。村上選手も、ロングフックに合わせてシャープなストレート、さらにワンツーを返す。楠本選手は、多少打たれてもひるまず、パンチで村上選手を押し込み、右ハイ。村上選手もミドルを出すが、これをキャッチして楠本選手はコーナーに押しつける。楠本選手のワンツー、ローの重い攻撃に、村上選手もうまいボディワークからミドルを返す。楠本選手はなおも前に出て速いジャブとうなるようなストレートを打ち込む。

ラウンド3 に回りながら両者の速いパンチが交錯。楠本選手がローを放てば、村上選手はジャブから体を沈めてボディストレート。じりじりと前に出ながら左フックを放つ楠本選手。村上選手もフック系のパンチはきちんとガードしている。しかし、ガードにかまわずジャブの連打からストレート、フックとパンチをまとめる楠本選手。ロープに追い込んで真っ直ぐ打ち抜くストレートが顔を突き上げる。村上選手もボディワークを駆使してパンチを返すが、やや後手を踏む。

ラウンド4 上選手が左ジャブからローにつなぐと、楠本選手がキャッチして逆にローを入れる。さらに、ワンツーで上を叩いてローを蹴る楠本選手。村上選手もワンツーで応じる。村上選手のジャブが楠本選手の顔を突き上げるが、ひるまずジャブを打つ楠本選手。ジャブ連打からロー、またジャブと手を休めない。切れのあるジャブからのワンツーと、重いワンツーが交わされる。切れのあるジャブを打つ村上選手だが、重い楠本選手のパンチに止められてしまう。

ラウンド5 ャブ、ワンツーで先手をとる村上選手。ロングレンジからもストレートを放ち、パンチで勝負に出る。楠本選手もワンツーで応じると、互いにジャブで探り合う。村上選手のワンツーに、体を沈めてローを合わせる楠本選手。村上選手は前に出るが、楠本選手は前蹴りでストップしてワンツー。村上選手はカウンターで右ストレートを入れるが、楠本選手の動きは落ちず、ワンツーからロー。両者ほとんどパンチの距離で戦い、組み付いたところでゴング。


ながらボクシングのような試合になったが、重いパンチにローを交えた楠本選手が、自分のペースで攻めきった。村上選手のウィービングやスウェイからスピードあるパンチは見事というほかないが、それを重いパンチで封じ込んでしまう。異質なパンチャー同士の対決は、破壊力に優る楠本選手が優位に進めたといえるだろう。
 村上選手の動きとパンチはキックボクサー離れしていたが、逆にパンチの比率が高すぎて、局面打開の点ではかえって不利に働いてしまったかもしれない。あまりに正直な勝負に出て後手に回り、せっかくのパンチが活かしきれなかったのではないだろうか。
 村上選手にとって大ブレイクのチャンスだったが、残念ながら結果が出なかった。しかし、NJKFのファンに、そのハイレベルなパンチ技術を印象づけることはできたと思う。フェザー転向を打ち出している楠本選手とともに、来年以降に期待したい。

文 片岡


DAGEKIトップへ