9月に越谷で行われた興行で、ともに豪快なKO勝利をおさめた両者。武田選手の、鍛造されたかのような強烈な肉体は、既に多くのファンの知るところだろう。しかし、相対するパヤクレック選手も、尋常な体躯ではない。視覚的な破壊力という点では、両者互角といったところだろう。 武田選手は、この試合で今年7戦目。疲労やダメージも蓄積されている頃ではないだろうか。しかし、武田選手にとって今年最後の締めくくりの試合だけに、強敵相手に、今年獲得した力の全てをぶつけて欲しい。 一方、パヤクレック選手については、前回の試合が、まさに一発で決まってしまっただけに、その実力は把握しきれていない。しかし、280戦を超える戦績。元ラジャダムナンJrウェルター級王者の肩書。これだけ見ても、半端な選手であるはずがない。武田選手といえども、苦戦は必死か。 両者の攻撃力を考えると、一発のパンチで決することも考えられる。一瞬も目が離せない試合となるのではないだろうか。
今度は左ストレート
パヤックレックのテンカオ
最後にはバックブローも見せたパヤックレック
剛腕、不発。 武田選手にとっては、痛い一敗になってしまった。殴り合って負けたわけでもなく、封じ込まれて自分の距離に入れず、入っても維持できないもどかしさ。闘う本人のストレスは、見ている我々のそれとは比べようもなかったことだろう。 パヤックレック選手は前回の試合の豪快さや、その重厚な肉体とは裏腹に、さすがに百戦錬磨の巧さを兼ね備えた、まさにムエタイの選手だった。前半は、ローやパンチで前に出て、後半はややバテたか組みついては倒し、体力を奪いながら武田選手の攻撃を封じ込める巧さ。さらに、要所々々でミドルやハイを狙ってポイントを押さえる老獪さ。完全に武田選手を丸め込んでしまった。 武田選手は、もう少しパンチの打ち合いになることを予想していたのかも知れないが、5ラウンド通じて、自らの攻め手を巧く修正することが出来ずに完封されてしまった。終盤まで積極的に前に出ようとする意思はうかがえたが、真っ直ぐ出ては捕まってしまうという展開に終始した感は否めない。老練なパヤクレック選手相手には、今少し出入りや崩しに工夫が必要だったのかも知れない。 とはいえ、この試合を含め、今年の武田選手の頑張りは、十分評価に値するものであると思う。こなした試合数、試合ごとに成長するスタイル、アグレッシブな試合態度・・・。結果的に有終は飾れなかったが、ウェルター級に武田アリ、という印象は、ファンの心の中に刻まれたはずだ。 来年もさらなる成長を遂げて、ムエタイ越えのみならず、欧米を視野に入れた真のトップクラスを目指して邁進して欲しい。 文 片岡