K-1 3.12 代々木第一体育館(レポ/Part1):KANA、KO勝ちで王座防衛。菅原美優、パヤーフォンとの混戦制す。石井一成、ヨーシラーに疑惑のダウン奪われ判定負け
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K-1 WORLD GP 2023 ~K’FESTA.6~
2023年3月12日(日)東京・国立代々木競技場 第一体育館
レポート&写真:井原芳徳
(KANA・石井一成ら登場の第1~8試合はPart1、軍司×ヴュー・金子×コンペットやRISEとの対抗戦が並ぶ第9~15試合はPart2、朝久泰央×与座や野杁・ジョムトーンら登場の第16~21試合はPart3と、3ページに分けてお伝えします)
「K-1年間最大のビッグマッチ」と銘打たれ年度末の恒例行事となりつつK’FESTA(ケーズフェスタ)は今回6回目。今年も本戦全21試合というボリューミーなラインナップで、タイトルマッチ7試合、RISEとの対抗戦3試合が組まれ、さらにコロナ禍の渡航規制緩和により海外勢も多数参加するようになり、「WORLD GP」らしさも強まった大会となる。
なお、今大会の名称は開催直前になり「K-1 WORLD GP 2023 JAPAN」から「K-1 WORLD GP 2023」に変更され、今後のK-1も後者の大会名となる。K-1の大会を運営しているM-1スポーツメディアは、14年の新生K-1旗揚げ時から、海外の権利所有者より日本でのK-1のライセンス使用の許可を得て活動していたが、M-1が全世界のK-1ライセンスを取得したことが理由だ。これを機に新たに「K-1国際連盟」というライセンス管理組織を設け、日本だけでなく海外でのK-1の産業化も推進していくという。3月に入ってK-1の公式サイトがリニューアルしたのと同時に、ライセンスのページも設けられ、詳細が説明されていた。Krush・K-1アマチュア・K-1ジム等も含めた「K-1 JAPAN GROUP」という総称も、「JAPAN」の文字が外れた「K-1 GROUP」に変わる。今回のK’FESTAは世界的組織に移行しての初の大会にもなる。
KANA、世界3冠アルカイエスを圧倒KOし2度目の王座防衛
第8試合 K-1 WORLD GP女子フライ級(52kg)タイトルマッチ 3分3R(延長1R)
○KANA(K-1ジム三軒茶屋シルバーウルフ/王者、元Krush同級王者)
×フンダ・アルカイエス[Funda Alkayis](トルコ/アルカイエスジム/挑戦者、WBCムエタイ・WAKO・FEA世界女子フライ級王者、WMC&WBCムエタイ欧州同級王者)
2R 1’31” KO (パンチ連打)
※KANAが2度目の防衛
KANAは昨年6月の代々木第二でのK-1初の女子大会でスーリ・マンフレディをKOし初防衛に成功して以来2度目となる防衛戦。12月のK-1大阪大会ではオロール・ドス・サントスにもKO勝ちした。挑戦者のフアルカイエスンダは初来日。KANAが対戦を熱望するONEのアニッサ・メクセンとも2度対戦し、メクセンがアルカイエスに3R0分17秒でTKO勝ちしている。そのためKANAは「それよりも早い段階でKOしたい」と意気込んでいたが、その通りの時間で仕留めることに成功する。
1R、KANAが序盤から圧をかけ、右のカーフキック、左インローを的確に当て続ける。中盤には右フック、左ミドルも絡め主導権を維持。終盤、右カーフを強打し足を止めさせてから、コーナーに詰めてのパンチ連打でスタンディングダウンを奪う。
2RもKANAが攻め続け、中盤に右のカーフを効かせ、パンチの連打でまたもスタンディングダウンを奪う。アルカイエスは岡田レフェリーのカウント中に首を横に振り試合を放棄し、KANAのKO勝ちとなった。
2度目の防衛を果たしたKANAは「しっかり1部のメインでKOで倒すことができてうれしいです。今年世界最強のアニッサ・メクセン、実現させます。このK-1が世界最強と証明します。K-1最高!」とアピールした。
菅原美優、パヤーフォンとの再戦はクリンチ多発で混戦も勝利しベルト巻く
第7試合 K-1 WORLD GP女子アトム級(45kg)タイトルマッチ 3分3R(延長1R)
×パヤーフォン・アユタヤファイトジム(タイ/アユタヤファイトジム/王者、WPMF世界女子ピン級王者)※初防衛戦
○菅原美優(K-1ジム三軒茶屋シルバーウルフ/挑戦者、Krush同級王者、K-1初代同級王座決定トーナメント’22準優勝)
判定0-2 (梅木29-29/伊藤28-30/箱崎28-30)
※菅原が王者に
両者は昨年6月の代々木第二大会の初代女子アトム級王座決定トーナメント決勝で対戦し、延長判定2-1でパヤーフォン勝利し王者となっていた。
1R、パヤーフォンが序盤から右ストレート、左ミドルを当て続け先手を取る。だがつかんで組む場面が多いと岡田レフェリーから判断され警告を受ける。終盤、菅原もパンチと膝と右カーフを返すようになり巻き返す。記者採点はパヤーフォンとしたがイーブンとなる可能性もある。
2R、お互いクリンチが多く、その際に膝を両者当てるがその先にはつながらず、なかなかかみ合わない展開に。やや組みの多い菅原に警告1が出される。最後、パヤーフォンが右のバックハンドブローを当てるがその先には持ち込めない。記者採点はイーブン。
3R、パヤーフォンが右ボディ、左ミドルのヒットを増やすが、組み付く場面も増えてしまい、レフェリーからの注意の累積で減点1となってしまう。菅原も攻撃がなかなか返せない。記者採点はイーブンだが減点分で菅原。記者採点は29-29でイーブン。ジャッジは1者が同様にイーブンとしたが、2者は2点差で菅原につけ、菅原が判定勝ちで悲願のK-1のベルトを巻いた。パヤーフォン陣営は不満げにリングを降りた。
石井一成、ヨーシラーに疑惑のダウン奪われ判定負け
第6試合 バンタム級(53kg) 3分3R(延長1R)
×石井一成(ウォーワンチャイ・プロモーション/BOM・WBCムエタイ・WPMF世界スーパーフライ級王者、IBFムエタイ世界フライ級王者、元WPMF世界・True4U・KNOCK OUT同級王者、元プンパンムアン・ミニフライ級王者)
○ヨーシラー・チョーハーパヤック(タイ/チョーハーパヤックジム/オムノーイ認定バンタム級王者)
判定0-3 (箱崎28-29/伊藤28-29/梅木27-29)
※当初は上記の裁定だったが、審議の結果、2Rの石井の喫したダウンは無効となり、テクニカル判定ドローに変更となっている。
2R 0’12” テクニカル判定0-1 (箱崎20-20/伊藤20-20/梅木19-20) (関連記事)
両者とも昨年12月のK-1大阪大会の初代K-1バンタム級王座決定トーナメントに出場。石井は決勝で黒田斗真に敗れ、ヨーシラーは一回戦で黒田に延長判定負けしたが、ミドルで黒田の右腕を破壊し実力の高さを印象付けていた。ムエタイのベルトも多数持つ石井がK-1ルールの枠の中でタイ人とどう戦うか。
1R、サウスポーのヨーシラーが回って距離を取りつつ、左ミドル、ローを的確に当て続ける。中盤以降、石井がロープにヨーシラーを詰める時間が長くなり、右ストレート、フックを当てる。だがヨーシラーも打ち合いで左ストレートを当て返し、パンチの攻防でも巧さを見せる。記者採点はヨーシラー。
すると2R、前に出て右ミドルを当てた石井に対し、ヨーシラーが蹴り足をすくってから左ストレートを当ててダウンを奪う。蹴り足をつかむ行為は反則だが豊永レフェリーは続行する。その後、石井はパンチのヒットを増やすがダウンを奪うほどにはならない。記者採点は8-10でヨーシラー。
3R、石井は必死に前に出て左ボディ、右ハイ等を効かせる。だがヨーシラーはクリンチやステップで巧く攻撃を寸断し逃げ切る。記者採点は石井。合計27-29でヨーシラー。ヨーシラーがダウン分の点差を守り切り判定勝ちしたが、ダウンを奪う直前の蹴り足キャッチの扱いについては審議が必要のように思えた。
第5試合 スーパー・フェザー級(60kg) 3分3R(延長1R)
○江川優生(POWER OF DREAM/元K-1&Krushフェザー級(57.5kg)王者)
×カン・ユンソン[Kang Yun-Seong](韓国/モッポ・スタージム/韓国キックボクシング連盟フェザー級王者)
1R 1’50” KO (パンチ連打)
ユンソンはアダム・ブアフフの負傷欠場で緊急参戦した選手。1R、開始すぐから江川が圧力をかけ続け、左ボディ、左フックの連打を序盤から決める。すると中盤過ぎ、コーナーに詰めてのパンチ連打でユンソンをマットに沈めた。
第4試合 62kg契約 3分3R(延長1R)
○大岩龍矢(K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST/Bigbangライト級王者)
×國枝悠太(Never mind/9+ nine plus lab./AJKNフェザー級王者)※Never mindから所属表記変更
2R 1’37” KO (右フック)
國枝も小澤海斗の負傷欠場で緊急出場した。1R、中盤まで五分だったが、終盤、大岩が右ボディを絡めつつ、右フックのヒットを増やし、最後は右フックで追い詰め印象を残す。2R、大岩が右ローを効かせ、中盤に右フックをクリーンヒット。國枝がダウンすると、すぐにレフェリーがストップした。
第3試合 スーパー・ライト級(65kg) 3分3R(延長1R)
×鈴木勇人(K-1ジム五反田チームキングス/元Krushスーパー・ライト級王者)
○パコーン・P.K.センチャイムエタイジム(タイ/P.K.センチャイムエタイジム/元ルンピニー&プロムエタイ協会ライト級王者、元ラジャダムナン認定スーパーフライ級王者)
判定0-2 (箱崎29-29/山根29-30/梅木29-30)
1R、鈴木がサウスポーからの左ミドルを積極的に当てるが、パコーンも少しずつ右ミドルとローを返すようになり、ほぼ五分の状態にする。2R、パコーンは度々右のテンカオを当てるようになり優位に。鈴木は攻撃が減る。3R、中盤から鈴木が前に出て右ストレートのヒットを増やしやや優位に。ジャッジはパコーンの蹴りをきっちり評価し、パコーンの判定勝ちとなった。
第2試合 ミドル級(75kg) 3分3R(延長1R)
○松倉信太郎(team VASILEUS/WPMF世界スーパーミドル級王者、元KNOCK OUT-BLACKスーパーミドル級(75kg)王者、Krush YOUTH GP 2012 -70kg優勝、K-1甲子園2009 -70kg優勝)
×イゴール・シウバ(ブラジル/ブラジリアン・タイ)
2R 2’25” KO (右ストレート)
大会冒頭には新たに設立されたミドル級(75kg)の2試合が組まれた。松倉のセコンドには武尊と松倉のTRY HARD GYM時代のトレーナーだったノッパデッソーン氏がつく。
1R、シウバが序盤からラッシュを仕掛け先手を取る。松倉は耐え、終盤は左ミドルと右カーフを増やすが、印象はやや薄いか。シウバがポイントを取るラウンドに。
2R、松倉が左ミドル、右カーフを的確に当て続ける。シウバは苦痛の表情を浮かべるようになり、セコンドの武尊が松倉に「相手下効いてるから上も入るぞ」とアドバイスを送ると、松倉が右ストレートをクリーンヒットし、見事KO勝ちした。
第1試合 ミドル級(75kg) 3分3R(延長1R)
×神保克哉(K-1ジム目黒TEAM TIGER)
○ヴィニシウス・ディオニツィオ[Vinicius Dionizio](ブラジル/ブラジリアン・タイ・FIGHT DRAGON -80kg王者)
判定0-3 (岡田27-28/西村27-28/島村27-28)
1R、神保から序盤から右ストレート、アッパー等のパンチで追い詰めてダウンを奪う。だが終盤、ディオニツィオが右ストレートでダウンを奪い返す。神保はダメージが大きく、2Rもディオニツィオが手数多く攻め優勢。両者膝蹴りは出すものの、顔面へのパンチ一辺倒で、ローやボディが出ないのが気になるところ。3R、神保も手数を上げるがディオニツィオも攻撃を返し続け五分で終了する。判定の結果、2Rに差をつけたディオニツィオが判定勝ちした。
プレリミナリーファイト第3試合 スーパー・バンタム級(55kg) 3分3R
○愛瑠斗[えると](健成會)
×光佑(ウィラサクレック・フェアテックス三ノ輪)
2R 2’58” KO
プレリミナリーファイト第2試合 フェザー級(57.5kg) 3分3R
△橋本雷汰(BFA-SEED/K-1甲子園2022 -60kg優勝)
△山本 陸(K-1ジム総本部チームペガサス)
判定1-1 (29-30/30-30-30-29)
プレリミナリーファイト第1試合 64.5kg契約 3分3R
×竜義(VAINQUEUR GYM/Dream Gateウェルター級王者) ※buck wild crewから所属変更
○上野空大[くうと](K-1ジム大宮チームレオン)
判定0-3 (29-30/29-30/28-29)
K-1 3.12 代々木第一体育館(レポ/Part2):玖村将史、志朗に続き鈴木真彦からもダウン奪い判定勝ちし対RISE 2連勝。金子晃大&軍司泰斗、タイ勢に判定勝ちし王座防衛