さて、2000年という今世紀最後の年に、K-1はついにその世界戦略を明らかにした。
世界8カ所での予選トーナメントを開催し、まずそのそれぞれの大会優勝者8名を選抜。そこに去年のGPベスト8ファイター&事務局推薦によるトップファイター8名を加え、計24名参加が名古屋、横浜、福岡に別れて行われる予選トーナメントに参加、各大会の優勝、準優勝者だけが、12月に行われる東京ドームの本戦大会に進出できるという、壮大なプランだった。総勢100名近い選手が参加する三段階方式の巨大トーナメントである。
サッカーのワールドカップをモチーフにしたというこの構想は、実に素晴らしい。
大航海時代と名付られてはいても、それは何もない未開の土地を航海していく訳ではない。
イギリスにしても、ロシアにしても、ギリシャを含む南ヨーロッパ地域にしても、小規模ながらそれぞれにキックシーンが有り、すでにそこでローカルながら試合をしている選手たちが存在する。ただそれは点として散らばっているものであり、細々と選手達が独自のルートで行き来していただけの世界だったのだが、今、興行ノウハウと資金力、そして知名度を蓄えたK-1が太い線としてそれらを統合しようというのが、今回のWORLD GPの意義なのである。
それは同時に日本でのファンに新しい変革を求める試みでもある。これまでであれば、きっちりと作り上げられたK-1の世界観にどっかり腰を下ろして、ただそこに展開される素晴らしいKOの祭典を楽しんでいればよかったのだが、これからのWORLD GPはそうはいかない。世界で展開される各国のGPの情報に耳をそばだて、新しい選手の登場を常に追い掛けていなければならなくなってしまったからだ。
確かにこれまでのK-1が凄い世界だったことは言うまでもない。
目利きのシェフである石井館長が、日本のファンのためだけにトップクラスのプロフェッショナルを集めて豪快に作り上げてきた至極のメニューだったからだ。多少新しい選手が現れてかき回そうとしても、トップ陣の強力なメンバーがその異分子を叩き潰して、最終的にレギュラー陣はなかなか動かない。ファンはただ、その“ご贔屓の選手”に思い入れ、その闘いに一喜一憂していればよかった。非常に安定した、ファンには居心地のいい世界だったわけである。その観客達がいきなり世界規模のネットワークに成長したK-1世界を俯瞰するだけの視野を持てるだろうか? あまりの急激な視野の拡大に目まいを起してしまいはしないだろうか?それが今回の最大の懸念だったのである。
結論からいくと「WORLD GP」という目新しいコンセプトに対して、ここまでK-1の固定客層の反応は鈍い。“遠くの国で、知らない顔触れの選手が勝手にトーナメントをやっている”という感じで、いまいちそのイベントにまでエネルギーを注ぎきれないのだ。一般のファンの興味はあくまで日本の大会で、おなじみの選手どれだけ活躍するか?に 集中しており、K-1世界の広がりや、競技としての進化や広がりには目がいっていない。それどころかWORLD GP といったお膳立てがむしろ煩雑で分かりにくい猥雑物に映ってしまい、今年のGP全体に対する興味すらも薄れているように感じられる。
余りにもK-1が急速に進化しすぎたせいで、観客の理解が追い付いていっていないのだ。これは危機状況であるといってもいい。
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