中迫 剛 インタビュー

「見せたいものですか?普段やってることです」

まさに歯ぎしりのようなインタビュウとなった。
実際のところ、今の中迫に聞くべきことは何もないと言えば何もない。
K-1 JAPANという舞台はまさに中迫をスターにすべく準備された場所であった。
すでにWORLD GPシリーズでそれなりに戦績を上げている武蔵と違い、中迫にはまだK-1の第一線で戦っているクラスに対しての実績がない。年齢、体格、キャリアからいって、第二グループトップでくすぶっている器ではないはずだ、という思いが関係者はもちろん、マスコミ、ファン、全ての人の思いであろう。

もちろん本人もその気は満々であり、後は結果だけという状態まで来ておきながら、その後一押しができない。昨年のGPを体調不良で終えあたりから、中迫の迷走状態が始まった。今年、大いなる飛躍を期して組まれたスタン・ザ・マン戦もクリアできず、今年のJAPAN GP ではよもやのアクシデントで、安虎に前途を阻まれた。

もう後が無い。
しかし、何が悪いのかわからない。単なる時の運の問題なのか、それともファイトスタイルなのか、あるいはメンタルの問題なのだろうか? 何を原因と考えてもしっくり来ない泥沼のような状態の中で、今回のWORLD GP への敗者復活戦が組まれた。

中迫ならずとも首をかしげるような抜擢であるが、石井館長にすれば、我が子を千尋の谷から突き落とすようなショック療法の結果を期待してのことであろう。勝ってこいとは言わない、とにかく一皮むけるためのヒントをこのピンチから拾ってこい。そうした親心からのマッチメイクであることは火を見るより明らかだ。

今の中迫はそうした状態にある。
その人間が口を開けば、言い訳にしかならないわけで、本来ならば何も語らずリングの上にただ登りたい心境であろう。しかし、ファイターが敗けるつもりでリングに上がる訳には行かない。空手家である中迫にすれば、自己弁護はしたくない、しかし弱気もみせたくない。そうしたダブルバインドが言葉をとがらせていくだけのインタビュウだったのである。

だが、それさえもプロファイターの宿命として越えていくしかないないのである。
この逆境にあってさえ、自分の言葉に説得力を持たせられるようになる何かを掴むこと、それがリングの上でも結果を出す事につながっていくはずだからだ。

その端正なルックスから、中迫を“JAPAN のプリンス”と呼ぶ人も多い。だが、本来野中迫は、泥まみれになりながら誰にも頼らず、自力で苦境を乗り切っていく苦労人タイプなのかもしれない。
中迫の苦闘はまだ始まったばかりである。→GO


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