アレクセイ・イグナショフ インタビュー

「初めてムエタイを見たとき、一発で感動してしまったんです」

イグナショフを初めて見たとき、巨大な体格に似合わない、非常にナイーブで夢見がちそうな目をしているのが印象的だった。

聞けばまだかれは学生で、ベラルーシからわざわざムエタイの練習のためにタイに修業にでかけていたこともあるという。“サソリの一撃”と呼ばれて、今回のロシア地域予選でも話題になった強烈なヒザ蹴りも、そうした練習経験で身に付けたもののようだ。士道館の支部などがあり、空手を経由するかたちでアマチュアのキックが盛んであるというベラルーシではあるが、基本的にキックのプロ興行などはほとんどないという。そんな地域で暮らしながら、ムエタイに魅せられ地元のジムに入門、本場タイでも住み込みで練習に励むなど自分で黙々と情報を集め、練習を積んできたという16歳の青年を想像してみるととても不思議な気がする。憧れと信念は人一倍あるものの、周囲の人間がだれ一人理解できない事に必死に打ち込むような若者の青春。そう聞くと奇妙に屈折した自閉的な“オタク青年”を思い浮かべがちだが、それは情報が異常に肥大して、どうでもいい瑣末な事にこだわるようになった現代日本の社会の特殊現象に過ぎない。

むしろ情報はほとんど皆無な状況にあって、一人、世界で今起きている事に敏感に反応しているタイプの人間は、高感度なディレッタント(好事家)と呼ぶべきである。口を開けていれば、水道水を流し込むホースのように際限なくメディアの情報を胎内に収め続けるオタクくんとはモノが違う。微弱な外界からの情報に耳を澄ませ、鋭い感性で反応し、自らも海を越えてそのシーンに参戦していこうとするロマンがなければ、あんな目はしていない。

実際、幕末の日本にはこんな青年がたくさん居たに違いない。
彼らもまた西欧の進歩した文明に驚き、心震わせたロマンチストであり、ディレッタントだったのだから。
東から来たこの大きな若者が、いずれベラルーシに、そしてロシア全域にK-1という全く新しいスポーツの革命を伝え、その鎖国状態を打ち破る志士になるのかもしれない。→GO


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