
Text : 矢作祐輔
VTや修斗といった最先端の総合格闘技をずっと見て来て、どうしても気になってしかたがない事があった。
それは勝利を掴むための方程式が基本的に一つしかないということだ。
テイクダウンして、押さえこんで、極める(もしくは殴る)。
これは特集の総論の部分でも書いたことだが、この方程式しか勝利への道が無いとすれば、ストライカーはいつまでもVTシーンで浮上する材料がない。個人の努力としてグラップリングの対応力を学んで、コンプリートファイターに近づくことは理想的だが、現実問題としてそれまで身に付けた技術を活かすことができず、本業でない組技を一から学ぶというのは、どこか転倒した発想に思えてならない。山の頂点は常にたった一つだが、そこに至るルートがいくつもあるからこそ登山というものには幅が生まれてくる。格闘技も同じだ。勝利という結果はただ一つでも、そこに至るバリエーションが豊富であればあるほど、そこにいくつもの展開が生まれドラマが生まれる。極端なことを言えば、ストライカーがストライカーであるままで勝利を掴む方法論が見つからない限り、真の意味での総合格闘技は生まれてこないのではないかと言ってもいいのではないだろうか。
だから、掣圏道があのルールで旗揚げすると聞いた時は、非常に多くの可能性が詰まっていると感じたものだ。ヴァーリトゥードの打撃局面をだけを抽出してスポーツ化するというアイディアは、まさにそうした“勝利へのルート開発”の実験室となる可能性が高いからだ。
しかし、実際の掣圏道の興行スタイルは、理念面での前衛的な実験性とは裏腹に、短期間の集中した日程の中で地方を回り、招聘した選手を組み合わせてカードをとにかく消化していくというものだった。本来こうした実験的なスタイルの格闘技を興行として行う場合、まずその理念を体現できる選手とカードを厳選し、ある程度見る目の肥えた首都圏、大都市の会場でまず基礎作りをしていくのが常道ではあると思う。だが掣圏道は見切り発車的にスタートした団体であったため、マッチメイクや興行自体の設定に割く時間や人員がなく、そうした恵まれた環境でのスタートは切れなかったようだ。その結果、旗揚げツアーとして地方各地で行われた試合は、高い理想に対してリングの上で行われる試合にその理念が十分行き渡っていない感が否めなかった。また集客のために佐山自身がタイガーマスクとして行うプロレスの試合も組み込まれたために、その理念はいよいよ見えにくくなったということもあるだろう。その後半年近い沈黙を破って、再度掣圏道は活動を再開した。
しかし、前回のツアー同様地方興行が多く、事前にはカードの詳細はおろか参加選手すら不明確な状態で行われたため、実際に本誌が取材できたのは、後楽園大会と、その直後の京都大会だけであったのだが、この段階では、やはり前回ツアー同様、眼高手低のそしりを免れえない部分を感じたのは事実である。
だが、今回の横浜アリーナ大会では、大会運営とマッチメイクの上でPRIDEシリーズを運営するDSEが全面協力、いわばプロデュース部分をアウトソーシングで行い、佐山聡はリングの上だけの事に集中すればいいという、願ってもない環境が整うことになったのである。参加選手も、これまでのロシア・アブソリュート系の選手だけではなく、佐竹雅昭やブラジルのストライカー系VT選手、あるいは元リングスのベテラン、ディック・フライなど、多彩な顔触れが揃うこととなり、これまで興行的現実によって十分発揮することができなかった、掣圏道の理念的な斬新さを浮かび上がらせるチャンスがようやく訪れたわけである。PRIDE-GP決勝、あるいはPRIDE9からの日程が近かった事もあって、DSEとしてもベストのラインナップを貸し出すという訳にはいかなかったようだが、それでも興味深いカードが並ぶことになった。今回のレポートでは特に通常のVTとの比較において、ストライカーの技術が際立つ展開が見られた試合を特にピックアップしていこうと思う。
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- TABLE OF CONTENTS
- ■掣圏道に適応したブラジリアンファイター
- ■掣圏道の理念は落合×イゴリ戦で証明された
- ■リングスKOKルールとの意外な共通点
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