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Interview,Text & Camera : 井田英登
高田延彦の二連敗を経て、ヒクソン・グレイシーという名前は、一格闘家を越えて神話の領域へ達した観がある。東京ドームという祝祭的空間に君臨する、神格的な存在。
今やヒクソンの存在感は、そうした祭り上げられ方をしていると言っても過言ではない。
前号のヒクソンインタビュウでも触れたが、こうした背景には80年代を強烈に彩った「UWF神話」との対置がある。高田はその旧神話の代表として戦い、そして敗れた。敗れ去った神話の神は零落し、新たなる神話の「まつろわぬ反逆者」として貶められる。墮天使や悪鬼の存在は常に、宗教的闘争に敗れた敗者の末路である。
そして、ヒクソンは21世紀最後の対戦相手として、再び「UWF神話」の登場人物を選んだ。
桜庭和志でもなければ、マーク・ケァーでもない。
船木誠勝でなければならなかったのである。
この日本で、自分自身の存在を神格化してくれるのは、あくまで「UWF神話」の登場人物でなければならないと言うことを、ヒクソンは熟知している。船木を倒すことで彼の「UWF神話」殲滅は完結するわけである。しかし、船木誠勝は単に「UWF神話」の一登場人物であるにはとどまらない。
彼はかつて前田イズムに反旗を翻し、また「UWF神話」を過去に葬り去ることを出発点にしてPANCRASEを立ち上げた、いわば”神話内部の反逆者”でもあったのだ。
今回のキャンプに先立って、田村潔司がヘンゾ・グレイシーを破るという”事件”があった。その試合での入場曲に田村が「UWFのテーマ」を選んだのはまさに象徴的であるとしかいいようがない。そこでインタビュウの席では、船木にはこの”事件”に関する感想をぶつけてみたのだが、その答えは本編に譲ろう。
ただこれだけは言える。
船木を対戦相手に選んだことで、「UWF神話」を背負ってしまったのはむしろヒクソンの側になったのではないかということを。船木は、今ヒクソンを倒すことで「UWF神話」と一体になった”格闘技における最強神話”というもの自体を否定しようとしているのである。
その壮大なる意図は果たして成し遂げられるのであろうか?[→GO]
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