修斗の興行形態が変わった。従来は、プロフェッショナル修斗の興行は、ワールド修斗が主催し、各ジムはそこに選手を提供する、という役割分担であった。しかし、今年からは、各オフィシャル・ジムが持ち回りで興行を主催する。既に大宮では主催興行を一回行った。そして、今回は、草柳が代表をつとめるK'z FACTORYが興行主となることになった。

　修斗がブームのさなかにいることに、もはや、疑念を呈する人は いないだろう。
　ボテーリョを足関節で下したルミナの快挙。修斗の快進撃はあそこから具体的なものになった。バーリ・トゥードというグローバル・スタンダードの世界に打って出、「日本最弱」の状況から、ルミナ、マッハ、エンセンというスターを生み出し、世界の修斗へと駆け上がっていく。
　この戦略の成功が修斗をここまで大きくしたのであり、その背景に、ワールド修斗の優れた企画力、マッチメイクがあったことは疑いを入れない。

　世界を相手にした戦いの中で、修斗は、総力戦を行っていた。バーリ・トゥード・ジャパンにおける修斗勢vs外国人バーリ・トゥーダーの対決。無論、修斗勢の中での闘いも、また、熾烈なものであったし、特に世代交代に伴う新たなヒーローの誕生は、競技の幅、ファン層を大きく広げるものであった。だが、やはり、頂点としてＶＴＪでの「世界との勝負」があったことは確かだ。
　いささか極論になるが、こうした流れの中で、修斗内における「ジム間の差」というものは、ともすれば見落とされがちであったのではないか。

　ここででてきたのがジムによる興行主催という動きである。
　ジムが主催すれば、当然、マッチメイクにそのジムの方針が反映されることになる。今回、K'zは、主催興行の５試合とも、K'z対「よそ者」との対抗戦という絵を描いた。サイド・ストーリー・・・というと些か微妙な響きになるが、いずれにせよ、ジム対抗という構図が明らかになることにより、観衆は、今までとは違った目で試合を見ることができるようになる。
　それは、修斗の外との闘いへの興味から、修斗の中における闘いの興味への移行、といってもいいかもしれない。

　そして、K'z FACTORYは、今回の主催興行で所属選手、植松直哉を、修斗の新しいスターとして「プロモートする」ことに成功した。その植松は、試合後のインタビューで、「修斗は、もう、流派ではなくて競技です」と語っている。
　競技であるならば外敵は必要ない。
　その競技の中の闘いだけで、耳目を引きつけ、観衆を魅了するのが本道だ。
　ジム主催興行は、そうしたプロフェッショナル競技としての実質を作っていくための大きな一歩なのである。

（山名尚志）

［第１試合］戸井田×勝田

［第２試合］西澤×勝村

［第３試合］竹内×鶴巻

［第４試合］秋本×廣野

［第５試合］植松×ペイン

＜全試合結果＞