BoutReview Logo menu shop   Fighting Forum
Report
shooto 99.12.11「VALE TUDO JAPAN'99」 東京ベイNKホール

セミファイナル 71kg契約 VTJルール(8分3R) 
和術慧舟会/ウエルター級王者
宇野薫
時間切れ
ドロー
ブラジル・ルイス&ペデネイラス柔術
アンドレ・ペデネイラス

”王子様”から”王者”への長い道


 

 半の三試合を鮮やかな連勝で飾った日本チーム。ここは終盤へ向けて一気に勝ち越して欲しい。ファンの声援が頂点に達するなか、宇野が迎え撃つはブラジル・ルイス&ペデネイラス柔術からアンドレ・ペデネイラス。‘98年のVTJでは佐藤ルミナをTKOで下している。佐藤ルミナ、ジョン・ルイスをチョークスリーパーで下している宇野に対して、「彼は礼儀正しく笑顔が明るい。そして物腰も柔らかいんだ。だから対戦する選手はちょっとした油断をしてしまうんだ。でももうその手には私はのらない。よく研究したよ。私は彼の弱点を攻める」と語った。
 一方、宇野にとってこの一戦は、ウエルター級チャンピオンの座を奪って以来二度目の試合となる。確かにこの勝利で宇野はチャンピオンベルトを捲いた。しかし、敗れたルミナの存在感を越えたかといえばさにあらず。あいかわらず”修斗不動のエ−ス=佐藤ルミナ”であり、宇野は”修斗の王子様”という感が強い。実績はともかく、ルミナの前で宇野の存在感はまだまだ”二番手”扱いである。世間の評価を「王子様」から「王者」に書き換えるには、まだ5月の勝利では足りない。あの試合がフロックでなかったことを証明する為には、ファンの意識から完全にルミナの影を吹き払ってしまう、インパクトの強い勝利を飾るしかないのだ。

 その相手として、今回のペデネ−ラス以上の相手は 存在しない。昨年のVTJでルミナを非情の血祭りに沈めたこの男を葬り去れば、頑固な世論も文句なく宇野の「戴冠」を認めるだろう。今回のVTJのマッチメイクには”対ブラジル”という表テ−マに対して、もう一つ、「先輩越え」という裏テ−マが騙し絵のように仕掛けられている。こうしたテ−マ設定の巧さは坂本プロデュサ−の真骨頂と言うべきものだ。朝日の背中を負う、巽・池田にそれぞれノ−ゲラ、ホ−キをぶつけて、その世代闘争的テ−マに仕立て上げたのもさることながら、今回の宇野のように、既にルミナを倒しながらまだその影響下から抜け出せない状況を見るや、昨年のルミナの敗戦が二重写しになるように、この舞台にペデネ−ラスをブッキングしてみせる。「この難問をクリアしてこそ、チャンピオンとして認める」と言わんばかりに。

 1R開始後、スタンドでの探り合いが2分以上続いた後、両者とも抱えあった状態でコーナーへ。追いつめたのは宇野、コーナーを背にペデネイラス。そのままの体勢で膠着状態が続く。宇野は、コーナー際で時折ヒザ蹴りをだし攻撃するがクリーンヒットはない。

 2R開始早々、スタンドでヒザ蹴りからのパンチ攻撃を仕掛けるペデネイラス。そのまま再びコーナーを背にしてペデネイラス、追いつめる宇野。コーナーでの体勢は入れ代わるものの、相変わらず膠着。ここまで一度もグラウンドに移行していない。6分を過ぎたあたりで宇野がこの試合初のテイクダウン。宇野が相手の背中に右腕でヒジうちを数発ヒットする。

 3Rのゴングで声援に沸く会場。なんとかグラウンドに移行しようとタックルを仕掛けていく宇野。5分を過ぎたあたりで宇野がテイクダウンをとる。ガードポジションのペデネイラスのバックに廻り、チョークスリーパーを狙うが惜しくもここは失敗。その後、マウントから宇野のパンチとヒジの連打攻撃を受けてペデネイラスが出血し、ドクターチェックのため、インターバルが入る。再開後まもなく終了のゴングが鳴った。


 なんとも膠着状態の長い試合だった。前回のディン・トーマスとの一戦と同じだ。2R6分まで、寝技での展開が全くないままの試合だったが、立技のテクニックを多いに試される運びとなった。宇野いわく「1Rから相手のスタミナを消耗し、アクを抜ききった後で攻める作戦」だったという。また試合を振り返って「研究されてました。僕は立技がダメでしたね。そんなに簡単に覚えられるものではないです。これからの課題が見つかり勉強になった試合でした」とコメント。さらに「総合格闘技なのでボクシングや関節、寝技の技術がすべて10点満点になるようにがんばりたいです」と語った。  

 試合終了直後の宇野の強張った表情を見ていただければわかるとおり、宇野はこの結果にまったく満足していないだろう。ルミナを完膚なきまでに葬ったペデネ−ラスを流血に追い込み、ドロ−以上の試合内容を残しながらである。それだけ宇野の目指す場所が高いということもあるだろう。そして前述したとおりこの試合ではまだ、ルミナのオ−ラを払拭しきれないというジレンマもあるはずだ。

 しかし、その影を振りきって完全なる「王位継承」を成し遂げた時こそ、王者として”挑戦者”ルミナと再度リングで向かい合う日でもあるにちがいない。


(藤間敦子)


▲ 結果一覧
← 6. 巽宇宙 vs ノゲーラ  8. 桜井“マッハ”速人 vs ビクトリアーノ →

カメラ:井田英登

TOP | REPORT | NEWS | CALENDAR | REVIEW | BACKNUMBER | STAFF | SHOP | FORUM


Copyright(c) MuscleBrain's All right reserved
BoutReviewに掲載の記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。
著作権はマッスルブレインズに属します。