BoutReview: 99.9.5 修斗後楽園大会 ---- 8. 朝日昇×アレクサンドレ・フランサ・ノゲーラ

99･9･5“IV 修斗 the Renaxis 1999”後楽園ホール
renaxis

第八試合　ライト級チャンピオンシップ３回戦
× 朝日昇ｖｓアレクサンドレ・フランサ・ノゲーラ ○
［大宮］　　　　　［トップ・ファイティング・センター］
２Ｒ３分29秒　フロント・スリーパー・ホールド

　修斗の中核、というか、日本の格闘技の中核といえば、やはり、ライトやウェルターといった軽量級であろう。ヘビーのような「最強幻想」はないかもしれない。しかし、厚い選手層の中で勝ち上がって来たトップクラスの選手たちの凌ぎ合いは、まさに、格闘スポーツの醍醐味を感じさせるものだ。
　技の切れ。スピード。
　一旦その魅力にはまってしまうと、重量級の試合にどこかしら物足りなさを覚えることも多い。無論、そのナチュラルな迫力は圧倒的であったりもするのだが。
　今回、修斗は、ウェルターを上限に、ライト、フェザーと軽量級のマッチメイクを揃えて来た。中でも中心はライトである。超新星、植松。東大卒シューター、巽。そして、勿論、奇人・朝日。今のライトには、実に役者が揃っている。

　そして、「外敵」も。言わずとしれたノゲーラである。
　先のタイトル戦で、巽に対し、ドローで防衛を果たした朝日。いよいよ、昨年のダブルクロス（シュートボクシングとの合同興行）での「失神負け」に対するけじめの一戦に挑む。
　激動のライト級戦線の台風の目となるのは誰か。
　それはこの一戦が決めることになる。

　
　
　昨年の横浜アリーナの悪夢。
　ジャブ気味のパンチで簡単にダウンを取られ、タックルをがぶられてアッという間に失神。ノンタイトルとはいえ、チャンピオンには許されない無様な姿を曝した。
　まさに雪辱戦である。
　試合前、両国国歌が流れ、全選手、スタッフ、客席が、国旗の前に起立する。だが、その情景は、まったく朝日の目に入っていないようだ。一人でリング上を歩き回り、時折、セコンドを呼びつける朝日。それは認定宣言の間も変わらない。
　いつもの奇人ぶり・・・とは受け取れなかった。
　明らかに精神に余裕を欠く。徹底的に追いつめられている。

　牽制の打撃を打ち合う両者。流石に朝日は慎重だ。間合いを保って、へたにパンチを受けないように気を付けている。そして組み合う両者。上を取る朝日。そのまま押さえにいくのではなく、躊躇なく足首を極めにいく。
　だが、ノゲーラは動じない。自分も朝日の足首を取る。両者でヒール、アンクル、アキレスと形を変えながら攻めるが、きまらない。隙を見て立つノゲーラ。覆い被さってくるノゲーラの足首を下から取る朝日。対抗するノゲーラ。そして再び立つ。
　今度は、足首を取りに来る朝日を交わし、うまく上にのる。パスして、朝日のハーフガード。ここで１Ｒが終了した。

　足関節は通じない。
　ならば、と２Ｒに入って、朝日は、ノゲーラのパンチをすかして組み付き、ノゲーラを倒し上に載る。しかし、パスの隙をつかれて立ち上がられてしまう。逆に上に載ってくるノゲーラ。それを体を反転させて返す朝日。更にポジションを返していくノゲーラ。
　いつの間にか、両者がグラウンドで正対している。
　朝日の首がノゲーラの腕が届くところにある。
　悪夢の再来。
　がぶり、フロント・スリーパーに持ち込むノゲーラ。朝日はピクリとも動かない。時間が過ぎていく・・・
　レフェリーがストップした後も、朝日が意識を取り戻すまでには、かなりの時間が経っていた。

　完敗を認めながらも現役引退は否定した朝日。
　だが、ノゲーラへの挑戦権は、他の選手に譲らざるを得ないだろう。
　巽か。それとも一足飛びに植松か。
　アレクサンドレ・フランサ・ノゲーラ、２２歳。この甘いマスクの若者を中心に、修斗のライト戦線は、回っていく。

　

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レポート：山名尚志　カメラ：井田英登