エリクソン、35歳の岐路に立つ
修斗のVTJ97で、暴力的なタックル、そしてグラウンド・パンチでエド・デ・クライフをぼこぼこにしたエリクソン。その余りに一方的な勝ち方と、フリー・スタイル130kg級での実績(97年世界選手権4位、98年ワールドカップ2位)から、VTで最強なのは実はこの選手ではないか、という声も聞かれたほどだ。rAwの中核選手でもあり、コンテンダーズでは高阪剛から判定勝ちを奪ってもいる(打撃なしルール)。
迎え撃つのは、先の小川戦も含め、いつの間にかPRIDEのポリスマン的な役割を担いつつあるゲーリー・グッドリッジ。トム・エリクソンのPRIDEにおける評価は、ここをどういう結果でくぐり抜けるかによって測られることになる。
開始早々からグッドリッジの剛腕をものともせずに突っ込むエリクソン。あっという間に間合いを詰め、組み付きながら上に下に殴りまくる。プロの打撃というより、田舎の喧嘩自慢状態である。そしてそのまま、これも胴タックルというより、押し倒しというか浴びせ倒しというか、ロープに押し込んで力任せにグッドリッジをマットに押しつける。そのままマウントに入り、グラウンド・パンチを落としていく。
しかし、ここから勢いが止まってしまった。
グッドリッジも伊達に何年もVTをやってきていない。
顔面を完璧にガードし、また、ずり下がって密着してグラウンド・パンチの脅威を防いでいく。そうしてどうにかガード・ポジションに入れて密着。エリクソンも、足を畳み、あるいは、オープン・ガードになったところで立ち上がって上からパスを試みるが、ハーフにまでいくのが精一杯。しかも、そこから足を抜きに行こうとすると、グッドリッジがまたガードに戻す。
中途、腕絡みにいきかけたが、それも極められず、がちがちに顔面をガードするグッドリッジの側面に何度かパンチを振り下ろすのが席の山という結果になってしまった。
VTが世界に広がって既に6年。もはやインサイド・ガードやマウントを取られても、そのまま無防備に殴られるような甘い選手はいなくなっている。判定勝ちを狙うのでないのならば、立ち技での打撃や、グラウンドでのパスガード、そしてサブミッションの技術を磨いていかなければいけない。
試合後、エリクソンは、エド・デ・クライフ戦のようにすっきりと勝てなかったことを悔やんでいた。もっとサブミッションの技術も学びたいと言う。
かつての怪物も、常に一線の技術を取り入れていかなければ、普通の選手に成り下がってしまう。エリクソン、35歳。次の段階に進んでいけるのだろうか。
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