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パンクラス 99.9.18 東京ベイNKホール
"1999 BREAKTHROUGH TOUR KING OF PANCRASE TITLE MATCH"
第4試合(パンクラチオンマッチ 15分1本勝負) 
P's LAB
菊田早苗
 
1'57"
ギブアップ
アメリカ
エディ・ミリス
 
×
 

風は順風


  菊田は遅れてきた「さまよえる格闘家」と言っていいだろう。

 平や本間、佐竹といった格闘家たちが団体の枠を超えて格闘技交流を繰り広げた90年代序盤、マスコミは彼らをそう評して持ち上げた。しかし、菊田はその世代より一つ下の格闘家である。すでに各団体が地盤固めに入った端境期に頭角を現してしまったために、なかなか自分の主張と合致する舞台を得られず、フリ−の格闘家として、ヴァリジャパ、ト−ナメントオブ・J、リングス、PRIDE、修斗と歴戦を繰り広げてきた。時には暴風雨にさらされ、また時には凪に進路を阻まれ、多くの辛酸も舐めてきた。練習場所もいわゆる道場ではない。仲間達と新宿スポ−ツセンタ−を借りての間借りげいこ。それでも後進の面倒を見、時には國奥、山田といったパンクラス勢も交えながら練習の音頭を取り「菊田軍団」と言われるまでに育て上げた姿勢はまさに彼の格闘技に対する信念を良く現している。


  そして最後の活躍の場所と思い定めてパンクラスマットを選んだ菊田だったが、この決断さえも決していいようには言われなかった。口さがない人間は菊田の選択を「格闘就職」と悪し様にいい、修斗でのランキングも抹消扱いを受けた。UWFの流れを汲み”プロレス団体”を標榜するパンクラスに入団することは、狭義の”格闘畑”には受け入れられない物だったのかも知れない。またもや風はアゲンスト。

 しかし、菊田はその声にファイトで答えた。

 パンクラスデビュ−戦では、いきなりドロップキックを披露する破天荒ぶりで周囲の声を笑い飛ばし、入団以来圧倒的な試合内容で雑音を封殺。三戦目にして、得意のノ−ル−ルファイトに抜擢を受けるまでになった。不遇に追いやられていた孤高の格闘家に、再度スポットライトが当たろうとしている。


  ほとんどゴングと同時にタックルに行く菊田。カウンターを合わせることも出来ず、タックルを潰すことも出来ず、ミリスはテイクダウンを奪われてしまう。ガードは取られたものの、菊田は落ち着いてミリスを引きずって動きながら、足を1本抜く。時計回りに回りながらもう1本と、あっという間に両足の自由を取り戻す。これでサイドポジションをゲット。
 ミリスは菊田の頭部を固定しての膝蹴りを狙うが、菊田は逆に蹴り足が下がったところを見定めてにマウントへ。迷うことなく殴りつける菊田。5〜6発目だったろうか?ミリスはマットをタップする。実際、早すぎてこのプロセスをみのがしてしまった観客も多かっただろう。レフェリーも見落としていたのか、リング下からのホイッスルが鳴ったほどである。それほど早いタップ・・・というか、ミリスの諦めだった。


  ミリスは、結局寝ても立っても良い所なし。
 教科書のようなVTのセオリ−をパンクラスファンの目の前で披露した菊田だが、ヘンゾ・グレイシ−と50分に渡る死闘をくり広げた男にこの相手は余りにお粗末過ぎた。

 ともあれ今後グロ−ブ着用ル−ル採用で、いよいよ菊田がパンクラスル−ル内で活躍する領域は広がった。状況的にも、かつて初代王者決定ト−ナメント決勝まで勝ち上がり、外様ながら一機に認知度を高めた山田学が歩んだ過程を彷彿とさせる。ト−ナメント・オブJ、PRIDEとライバル視されてきた小路もまたパンクラスマットを踏んだ今、風は確実に菊田向きになってきている。

 彼が、今後どこまでパンクラスマットを震撼させるかに注目しよう。



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レポート:誉田徹也・井田英登 カメラ:井田英登