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PANCRASE 2000 TRANS TOUR KING OF PANCRASE TITLE MATCH
9月24日(日) 横浜文化体育館

第8試合 ライトヘビー級ランキングトーナメント/初代王座決定戦(10分一本勝負) 
KEI 山宮
(パンクラス東京:無差別級3位)
延長(3分)判定3-0

30-29,30-28,30-28
美濃輪育久
(パンクラス横浜)
×

※本戦判定0-0 (30-30,30-30,30-30)


「KEI山宮のメタモルフォーゼ」

Text by 石渡知子


初代ライトヘビー級の王座を決定するこの一戦が、日本人対決・KEI山宮vs美濃輪育久のカードになるだろうと誰が予想しただろうか?

美濃輪は今までどおりの打撃やタックルで積極的に攻めていく。その美濃輪のタックルをうまくこらえて山宮はブレイクに持ち込む。または美濃輪の仕掛けたタックルを捉えてフロントチョークの姿勢に持ち込んでいく。後半には、山宮が美濃輪の上を取り、関節の取り合いという静かな展開になったが、お互いの手の内を知り尽くしているからだろうか、それとも実力が拮抗しているからだろうか。

そんな静かな展開から打って変わって、延長戦は劇的な開始であった。

山宮はいきなり飛び膝蹴りを繰り出した。試合後、山宮は「あれは近藤がやっていたのを思い出したから」とちょっとした思いつきのようなことを話していたが、思いつきで飛び膝蹴りをだせるところに、山宮の中で何かがスパークしたのだろう。

その飛び膝蹴りに圧されたのか、美濃輪は山宮からさらに膝蹴りを食らい、上を取られてしまう。しかし、美濃輪も意地を見せ、下から山宮の腕を狙っていくが惜しくもブレイクがかかってしまう。
やられたらやり返す。今度は山宮が美濃輪の首を捕まえてフロントネックの姿勢に入る。ここで延長時間切れになり、終始積極的に攻めていった山宮が判定勝利を収め、ライトヘビー級の初代王者を手にした。

「これが結果です。まずは満足しています。」
と、まだ山宮になじんでいないベルトを軽く叩いて、
「でも相手はこんな結果では満足していないでしょうけど」
とぼそぼそと早口に言葉を繋いだ。 

誰もが山宮の優勝には多少なりとも驚きを隠せないだろう。事実、船木でさえ「山宮の優勝は絶対無い」とまで公言し、優勝したら1万円を進呈すると約束をしたという。

山宮は腰に巻かれたライトヘビー級のベルトの裏に手を入れてまさぐるとそこから、汗でぐしゃぐしゃになった1万円札が出てきた。「これがその1万円です。船木さんには大変お世話になっていますが正直、船木さんに山宮の優勝は絶対無いといわれたときはむかつきました。見返してやろうと思いました。船木さんのおかげで優勝できたのかもしれません。」と語った。

さらにこの日、優勝決定直後にリング上でマイクを掴むと、朴訥としたイメージのある山宮らしくない言葉が飛び出してきた。

「石沢さんの仇がとりたいです。」

8月に西武ドームで開催されたPRIDE.10での石沢常光のセコンドについた山宮が、口惜しそうに語り、リングサイドで見守っていた船木に直談判した。
これまでは山宮の優しさが、今ひとつ肝心なところで踏み込めず、試合ではネックになっていたところが多かった。かつて鈴木みのる戦で怪我をしている足を蹴ってみろと鈴木に怒鳴られたときも躊躇し、再び鈴木に怪我をしている足を差し出され、「おら!蹴ってみろ!」と罵声を浴びせられても、軽くちょこんと蹴る振りをした山宮。
そんな山宮がKEI山宮と改名し、さらに内面からもメタモルフォーゼを遂げようとしている。

「この一万円札はますは乾かして、この気持ちを忘れないようにとって置きます。」
と相変わらず、ぼそりと山宮はいつものようにつぶやいた。
そんなKEI山宮がどんな変化を遂げるのか、あの鈴木戦から待っていたのだ。
この日が来るのを。

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レポート:石渡知子  写真:大場和正,石渡知子


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