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Report


ニュージャパンキックボクシング連盟 "CHALLENGE TO MUAI-THAI 1"
2001年1月26日(金)東京・後楽園ホール

 

第9試合 メインイベント タイ・日国際戦 121lbs契約/5回戦 
タイ国Jフェザー級
デッカロン・ソー・スマリー
(タイ)
判定2-0

50-50,50-48,50-48
NJKFバンタム級王者
桜井洋平
(岩瀬)
×
※当初桜井と対戦予定だったソッド・ルークノンヤントーイは怪我のため欠場。

無敗でバンタム級王座まで駆け上がり、昨年のMVPに選ばれる活躍が認められ今回初のメインイベントに抜擢された桜井洋平だったが、当初予定されていたソッド・ルークノンヤントーイの代役、デッカロン・ソー・スマリーに全く持ち味を出すことなく完敗を喫した。

桜井は前回の昨年11月大会でコンキャット・シィトチュントーイに痛快なハイキックKO勝ち。バンタム級としては破格の長身から繰り出されるパンチコンビネーションとしなやかなハイキックを武器にセンスあふれる闘いぶりででここまで快進撃を続けてきた。鈴木秀明には敗れたがフェザー級王者中島稔倫を問題にせず完封したルンピニーの元三冠王者ソッドとの一戦は桜井のブレイクのきっかけとなるべく期待された試合だった。しかし、直前になってソッドが「事故(ケガ)で欠場」のアナウンス。ソッドが2月6日にはルンピニーのリングに上がっていることからソンチャイプロモーターとの決別というのがどうやら真相のようだが、ともかくも代打として2月大会で中島稔倫と対戦予定だったデッカロン・ソー・スマリーが出場。桜井がこれを聞かされたのは前日の夜のことだった。

21歳のデッカロンはここまで82戦51勝30敗1分の戦績。場内放送では「現ルンピニージュニアフェザー級王者のクンピニット・ギアッタワンに勝ったことがある」とのことだったが本人に聞くとどうやらこれは子供の頃の話らしい。しかしノーランカーながらルンピニーを主戦場としており、またソッドより階級も上のため桜井にとって試練なのは変わりない。

桜井は初回からロー、左右フック、肘とラッシュ。これをガードしたデッカロンは変則的に軌道を返るハイ、ミドルで反撃。
リーチで勝る桜井は打ち下ろし気味の右ストレートで試合を支配したいがそうはいかない。デッカロンは動じずローやミドルを打ち込み、桜井の圧力が通用しない。

2R以降、桜井は手数は出すのだがデッカロンにことごとくカットされる。そして即座にローやミドルが返ってくる。
デッカロンは桜井を首相撲に捕らえるとコロコロと転がしてしまう。技は軽そうなのだが、とにかく桜井の攻撃が通じない。桜井が前蹴りを出すと、逆に押されて尻餅を着く場面も見られた。3R中盤から、桜井は徐々に後退していく。それでもボディに的を絞り、それを起点にコンビネーションを仕掛ける桜井。だがデッカロンはあっさりとこれをあしらい、首相撲に捕らえては投げる。

後半は完全にただこなしているだけと言う感じだったが、しつこく食い下がる桜井に業を煮やしたか蹴り足をとって倒した直後に蹴りを入れるシーンも見られた(もちろん反則。ただし蹴り足をとられて倒されるほうが印象が悪いから、度が過ぎない限り減点はなし)。

桜井は最後まで手は出し続けたが、結局効果的なダメージを何一つ与えることは出来ず。ドローの判定を下したジャッジもいたが、観客の大半は ―桜井の応援団さえも― 桜井の完敗に異をとなえなかった。初黒星の桜井はこれで12戦9 勝(3KO)1敗2分。

「対戦相手の変更よりも、自分は気持ちで闘うタイプなのに、今回は気持ちが弱くて前に出られなかった」とショックを隠せない様子でうつむきながら話す桜井。

余裕の表情で控室へもどってきたデッカロンは「桜井の実力?別に。」とまるで問題にしていない様子だった。彼は2月の名古屋大会にも予定通り登場、中島稔倫と対戦する。

団体のエース候補の、いきなりの躓き。しかし桜井に今一番足りないものは経験だと考えれば、これ以上ないいい経験をしたと言える。
デッカロンは相手の攻撃をうまく吸収して、ごまかす狡さと試合運びの巧さを併せ持っていた。タイにはよくいるタイプだ。これまで通用していた攻撃が通用しなかったのなら、通用するようにパワーをつけ、精度やスピードをあげればいいことだ。そして桜井にはそれが出来るだけのポテンシャルと未開発の潜在能力が眠っている。
今回の試練を糧にもっと強くなって、デッカロンになどとケチなことを言わず、ムエタイそのものに今日の借りを熨斗をつけて返せるようになって欲しいものだ。

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レポート:新小田哲  写真:菊地奈々子,薮本直美

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