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Report


バーサスエンターテイメント主催 "Club Fight OSAKA"
1月27日(土)大阪/MOTHER HALL
Battle-3 クラブファイト公式ルール 10分1R 
UFC-J初代チャンピオン
山本喧一
(パワーオブドリーム)
時間切れ

ドロー
秋山賢治
(総合格闘技空手道禅道会総本部)

 年末のUFCライト級王座挑戦に失敗、ホームグラウンドのクラブファイトに戻って捲土重来を期したヤマケン。だが今回登場した秋山賢治は、「日本中に眠る“未知の強豪”を発掘する」というコンセプトぴったりの強豪。かつて総合格闘技のパイオニアである大道塾の日本人エースとして95・96「全日本北斗旗空手道選手権大会」重量級2連覇の後、大道塾を離脱。自らの道場である禅道会を発足させ、オープントーナメントである99、2000の「リアルファイティング空手道選手権大会」82.5L以下級2連覇している。プロとしての活動はないため、知名度は高いとはいえないが、格闘空手をベースに積み上げてきた総合格闘家としての潜在能力は侮ることが出来ない。まさに二回目にして早くも、ヤマケンは最強の挑戦者を迎えてしまったといえるだろう。

 上半身だけ胴着をまとい気力満々に入場した秋山に対し、ヤマケンは今回も同志であり先輩でもある安生洋二、そして弟子の市川直人を従えて、前回同様半ズボンスタイルで登場した。UFC-Jのパット・ミレティッチ戦ではあえて77キロまで絞り込んだせいで肉が落ちた印象を感じさせた身体も今回は87キロまで戻ったという。それでもどっしりとした秋山と較べると、まだ若干線の細さを感じさせなくもない。

 盤から強力なローキックで押し込んでくる秋山に対して、ヤマケンは思いきりのいいハイキックを返す。続いて両者の放ったローが同時にぶつかり合い、思わずバランスを崩した秋山がリングにスリップダウンする。しかし、被いかぶさろうとするヤマケンを寄せ付けず、すばやく立ち上がる秋山。両者の意地が感じられ、ぴんとした緊張感がリングを支配する。

 組みあった両者の差し合いは秋山がパワーで押しきり、足払いで倒して上になる。ヤマケンはガードから身をよじって半身になり秋山の左手を取り、ワキで秋山の頭を抱え込むようにして上下を入れ換える。すかさずインサイドからのパンチを打ちこんでバックを奪い、カメになった秋山に腕十字をしかけて秒殺を狙う。しかし、秋山のクラッチは堅く、逆に押し込んで再度上を取り戻すことに成功する。
 カメになって下から逃れようとするヤマケンの頭に、容赦なくヒザをぶちこんでいく秋山。そのデンジャラスな攻撃にためらいが無いあたりが、かつての格闘空手を制した喧嘩強さをうかがわせる。必死にふんばって四つに戻したヤマケンは、そのまま上手投げ風に秋山を転がし、上になる。
 このあたりのヤマケンの粘りに「若さを感じた」という秋山だが、下になればなったですかさず三角締めを狙っていくあたりに老練さを覗かせる。押し込んで転がし、バックを取ったヤマケンはそのままバックマウントからスリーパーへ。完全に足をフックしてカメを潰し、勝負あったかと見られた展開だったが、秋山はなんとこれをしのいで、身体を起こしターンすることに成功する。

 これで位置関係は、ヤマケンのガードポジションとなった。

 ンサイドから果敢にパンチを放っていく秋山。ヤマケンはまたも下からの半身でのターンを狙うが、このあたりでかなり体力が尽きた印象があり、秋山の押さえ込みを返すことが出来ない。パンチが振り下ろされるたびに、キック会場ででもあるかのように観客が「オーイ!オーイ!」と歓声を送る。一般的には無名な秋山が、クラブファイトの盟主であるヤマケンを追い込んでいる事に、観客は素直に反応しているようだった。
 下になったヤマケンは腰をずらし、かつてUFC-Jで藤井から逆転の一本を奪ったスイープを狙う。しかし、これが裏目に出て秋山はパスガードに成功。マウントを奪った秋山はパンチを振っていくが、ヤマケンは腕を伸ばして秋山のパンチの照準を避ける。残り時間はわずかにあと一分。客席からは期せずしてビジターの秋山に向けて、大きな「アキヤマ!アキヤマ!」というコールが巻き起こる。
 この時、「なんとか時間ぎれ引き分けを狙ってやろうという、セコイ思いが頭をよぎってしまいました」と試合後、苦笑交じりに振り返ったヤマケンだが、判定がなく10分1Rで時間切れとなるルールを考えれば、この判断は致し方あるまい。ロープの最下段に頭くぐらせてパンチを打ちにくくしながら、なんとか最悪の状況を逃げ切った。先日のタイタンファイトでは他団体の選手にまんまと賞金を奪われた悔しさもあったのだろう、今回50万円に上乗せされた賞金を辛くも守りきった。健闘を称えあい、リング中央でマットに頭をつけ礼を交わしあった両者であった。

 き分け判定ながら、なかなかに緊迫した攻防を繰り広げたこの試合だが、判定があれば間違えなく秋山の勝利。観客のアキヤマコールはそのことを支持する意志の表明だろう。まるで勝者のように観客のエールに答える秋山に対して、本来の主役のヤマケンはがっくりとうなだれて安生の手渡すペットボトルの水を被り、そそくさとリングを後にした。
 「今回はスパッと勝って、これまで“プロレスラー”と呼ばれてきたヤマケンが、ばっちり総合格闘家であることを証明したかったんですけどね。まあ世代交代を旗印にやってきて、今回は始めて日本人の先輩の世代とやって手ごたえがあったというか、やってて楽しかったですわ。まあクラブファイトのコンセプトどおり、日本中を巡って、本当に強い格闘家が居ることをみんなに判ってもらって、その強い選手達が揃ってきた所で一番強い奴を決める闘いをやりたいと思ってますんで、次、秋山さんとはそこでまた対決したいですね」と悪びれず語るヤマケン。年明けタイに渡って修業を積んできたというが、逆に東京に戻ってからの寒さで風邪を引き、三日前には高熱を出して寝込んでしまい、今日の試合では全くスタミナがなかったことも明かした。

 しかし、このホームグラウンドでの、果てしなく負けに等しいと言えるような引き分けは、ヤマケンの心に描く“総合格闘技界の世直し計画”実現のためには、黄色信号が点灯したものだと言えるだろう。パット・ミレティッチへの雪辱を期して再度 UFCライト級に出陣していきたいという希望も語ったヤマケンだが、やはり選手として10〜15キロ近い体重の増減を繰り返すというスタイルは、むしろその選手生活を短くしかねない。今回のスタミナ切れも、風邪という予測不可能な事態だけのせいとは限らないと思えてならない。こうして彼に集まる期待が日々大きくなっている今、そうした腰の定まらない肉体改造を繰り返しているのでは、理想への道は遠いと言うしかない。パットへの雪辱はひとまず置いて、パワーとスピードのバランスがとれた安定した肉体を作るべきだろう。ファンはクラブファイトではまずすっきり勝つヤマケンを見たがっているのだ。今回、巻き起こったアキヤマコールは、揺れ動くヤマケンに発せられた意義申し立てだと受け取って欲しい。

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レポート&写真:井田英登

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