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[新日本キック] 5.26 後楽園 (全試合レポ&写真):武田、58秒で散る

新日本キックボクシング協会 "LOCK ON!〜奪還〜"  2002年5月26日(日)東京・後楽園ホール

 レポート:井原芳徳  写真:薮本直美

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第12試合 メインイベント 泰国ラジャダムナンスタジアム認定ジュニアミドル級タイトルマッチ 5回戦
○サゲッダーオ・ギャットプートン(タイ/チャンピオン)
×武田 幸三(治政館/3位)
1R 0'58" KO (左ストレート)

 開始早々、武田はジャブで飛び込む。離れると、オーソドックスのはずのサゲッダーオがいきなりサウスポーの構えに。武田のセコンドについた深津飛成(第10試合出場)は、今大会前にサゲッダーオと同じジムで練習しており、その時サゲッターオからこのサウスポー作戦を耳にしていたという。だが深津は「まさかほんとにやるとは思わなかったんですよ。遊びながら言ってたから」と試合後語り、驚きを隠せなかった。サゲッダーオはサウスポーの体勢で左ローを放ち武田をけん制する。武田のセコンドからは「はじめだけサウスポーだから」という声が飛び、武田を落ち着かせようとする。

 しばらく距離を取った後、武田は蹴り足をつかんで突進。両者組み合って互いに膝をボディに叩き込むと、離れ際にパンチの応酬となる。そこでサゲッダーオのカウンターの右ストレートが武田の顔面にヒット。武田はマットに崩れ、足下がふらついて立ち上がれない。そしてそのままマットに倒れ、テンカウントゴングを聞いた。
 大会開始からこの試合が始まるまで約4時間半。しかし試合は1分足らず。あまりにもあっけない幕切れに、武田の王座奪取を確信していた超満員の観客はただ呆然とするのみだった。歩いて控え室に戻った武田は既にダメージはなく、「ごめんなさい」「申し訳ない」「(僕は)A級戦犯ですね」と自嘲気味に試合を振り返った。次は7月27日の後楽園大会でのタイ人との対戦が決まっており、それにも出場する意向だ。師匠の長江館長の「タイでベルトを取ってこい!」という檄を受けた武田は、7月大会の後にタイに乗り込むことになりそうだ。

◆サゲッダーオのコメント

「疲れなかったのでとても嬉しい。武田がテンカオ(膝)を打ってきたので、こっちは肘を合わせてガードを下げさせ、右フックを入れました。今日はパンチでKOを狙ってました。緊張はしていませんでした。
(武田の印象は?)なかなかやる選手だと思っていました。しかし、自分がやるとなったら、自分が勝つと思ってました。早く終わってしまったので細かいことは何とも言えませんが。
(K-1ワールドMAXでのガオランの負けについて?)あんな形で負けるのは考えられない。オランダ人(クラウス)のパンチは重いと思いましたが、そんなに凄い選手とは思いませんし、自分がやってみたいと思いました。もし今日もムエタイが負けていたら、もっともっとムエタイの名誉が下がってしまうので、それを思いながら試合しました。これからはタイだけでなく日本の英雄にもなりたいです。」

<お詫びと訂正> サゲッダーオ選手のコメントの中の、アルバート・クラウス戦についての部分に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。(5月28日:編集部)
 誤:「自分がやってみたいとも思いません」→ 正:「自分がやってみたいと思いました」

◆タイのプロモーターのコメント
「K-1のチャンピオンと戦わせたい。K-1のルールででも構いません。」

◆武田のコメント(+武田のバンテ−ジを外す深津飛成のコメント)

武田「(しばしの沈黙の後)あー、ごめんなさい。やっちゃったァ…。」

−−最後のサゲッダーオのパンチは『効いた』という感触はあった?
武田「僕がラッシュしたら右が当たるんで、『ちょっとラッキー』と思ったんですけど。一発目、向こうのよけ方がぎこちなかったんで、『当たるな』って行ったら、ちょっと(相手が)クラクラって来たんですよ。肘も合わせやすかったし。そしたら、全然見えなかったですね、倒れたパンチは。」

−−相手がクラクラって来たパンチはどの辺に当たった?
武田「覚えてないですね。ちょっと(相手の)首がクラっと来たんで『ラッキー』と思って。というか、こだわってしまって。気合い入ってたんでね(苦笑)。」

−−戦い方はいつも通り?
武田「まあ、いつもの通りですね。やるかやられるか。リスクはつきもので。」

深津「僕が(サゲッダーオと)同じジムで練習してて、(サゲッダーオは)『タケダはサウスポーに勝ったことがないから、1、2ラウンドサウスポーで、離して戦って、でもアイツは来るだろうから、来たら肘とか、ちっちゃいの当ててやるよ』って(話していたけど)、まさかほんとにやるとは思わなかったんですよ。遊びながら言ってたから。」

−−深津さんが試合中声を出してたのですか?
深津「いや、それを(試合中一緒にセコンドについていた)長江館長に言って。(自分が声を出したのは)最初だけですよ。あとは(サゲッダーオは)『1、2ラウンド離したら、でもタケダは無理になって来るだろうから、そこでオーソドックスもらって、すげえミドル入れてやるよ』って言ってたんで。まさかほんとにサウスポーにするとは思わなかったっすね。」

武田「調子良かったんでね。パンチは全然見えてないんですよ。倒れたパンチは。いやー、もう本当に、(僕は)A級戦犯ですよ〜。」

−−試合前は結構落ち着いてましたよね?

武田「全然(落ち着いていました)。こんなに気合が入って落ち着いていたのは初めてですね。やってやるって。ほんとに申し訳ないですね」

−−リングに上がる前に長江先生と話していた時、すごく明るい顔をしてたんですよ。あれは何を言われたんですか?

武田「『大丈夫か?』っていうんで『大丈夫だ』って。『落ち着け』って。先生が落ち着いてなかったから(笑)」

−−(ダメージの)痛みはありますか?

武田「何にも…。ほんと申し訳ねぇ〜」

−−(ダウンから)起き上がった時には『何があったの?』って顔をしてたんだけど、打たれた瞬間はどうだったんですか?

武田「うーん、もう覚えてないですね…。僕のパンチ効きました?。(相手は)クラっと来てました?」

−−下がってましたよ。

深津「(サゲッダーオは)『タケダはこうやって入ってくるから、肘を合わせてやる。サウスポーの時は右に行ってやる』って。まさかホントに右でくるとは思わなかったなぁ…」

武田「…うーん。申し訳ないです」

−−このままでは終われないですよね?

武田「また、タイに行こうかな。」

−−(長江)先生も『タイ行って取ってこい』って言ってましたから。

武田「また、相当先生気合が入ってるから(笑)。ちょっとタイ、行ってきますよ。でも経験不足って訳ではないんですよね。でもやっぱり…。まあ、上に行くためには、ちょっと“事故”として、自分の中で整理します。初めて、気合が入って落ち着いてた自分がいたんですよ。でも最後の一発は全然見えませんでした。全然元気なんでそれが悔しいですね。」

−−力を出し尽くす前に終わった?

武田「ハイ」

−−まだ試合できますか?

武田「全然できますよ。これからです。ほんと申し訳ないです、みなさんに。こんなに期待してもらって。」

――相手のパンチは警戒していたんですか?

武田「いや、そんなに。パンチの選手じゃないですからね。A級戦犯ですね。ボロクソ書いてください。」

−−ジュニアミドル級でパワーの差は感じた?

武田「僕、パワーは負けないから。でもジュニアミドルだからどっちかがちゃんと当たったら倒れるという感じで。」

−−相手を過小評価していたという部分は?

武田「いや、それは全くないです。それなりに練習してましたし。」

――7月の後楽園大会に出場が決まってますが?

武田「やりますよ。全然」

−−それやって、タイに行く?

武田「そうですね…。これだけ期待してもらって、体が元気なのが悔しい…。」



第11試合 メインイベント 日本フェザー級タイトルマッチ 5回戦
○小出 智(治政館/日本フェザー級チャンピオン)
×鈴木 敦(尚武会/日本フェザー級1位)
判定3-0 (50-47,49-47,49-47)

 小出の2度目の防衛戦。挑戦者の鈴木はエプロンの下で円陣を組み、気合を入れての入場。ベルト獲得の意気込みを見せる。
 試合はパンチで前に出ていく小出に対して、鈴木はカウンターの肘で迎え撃つ展開となる。しかし、徐々に小出のパンチが鈴木を捕らえ始める。
 終盤に入ると小出は相手を挑発するような仕草を見せながら、左フック、強烈なボディーブローを叩き込む。鈴木は手が出ず失速してしまう。
 最後まで倒れず粘る鈴木だったが、王座への壁は高く、判定で敗れた。

◆小出のコメント
「なかなか倒せないですね。(7月27日の後楽園大会でバンタム級王者の菊地との対戦がありますが?)菊地選手とは同じぐらいのレベルだと思います。タイトルマッチより楽しみです。菊地戦は倒しに行きます。」

第10試合 セミファイナル 日・泰フライ級52kg契約国際戦 5回戦
○深津 飛成(伊原/日本フライ級チャンピオン)
×トーンバンチャン・サックテーワン(タイ/泰国フライ級)
判定2-0 (50-48,50-50,50-47)

 深津にとってトーンバンチャンは昨年12月のタイ・ラジャダムナン興行で判定0-3で敗れている相手。場所を日本に移してリベンジ戦に挑む深津は、序盤距離を取って様子見の展開だったが、1R終了間際に強烈な左ボディを叩き込む。これは本人も「よかった」という当たりで、その後も左ミドル、右ボディを当てトーンバンチャンを苦しめる。しかしトーンバンチャンも距離を取ったりクリンチを活用して巧みにディフェンスし、深津の攻撃を単発にとどめる。
 優勢に試合を運んだとはいえ、一度もダウンを奪えなかった深津は苦い表情。試合が終るとすぐに「どうもすみませんでした」と叫び深々と四方に頭を下げていた。

第9試合 セミファイナル 日・韓ライト級62.5kg契約国際戦 5回戦
○石井 宏樹(藤本/日本ライト級チャンピオン)
×朴 炳圭(韓国・博光/韓国ライト級チャンピオン)
判定3-0 (50-48,50-49,50-48)

 鋭いジャブからローを叩き込んでいく石井。これに対して朴はパンチで応戦していく。朴は時折小野寺をKOに仕留めたこともあるハイキックを繰り出すも、石井はこれを完璧にディフェンスする。終盤になると石井のローが有効に朴を捕らえ始める。5Rには気合を入れながらローを叩き込み、判定で石井が勝利を物にした。

◆石井のコメント
「人を倒す事がこんなに難しい事だと痛感しました。これからは倒せる選手に生まれ変わります。7月の試合でベルト守らないとシャレにならないんで、がんばります。」

第8試合 セミファイナル 68kg契約 5回戦
○北沢 勝(藤本/日本ウェルター級チャンピオン)
×頼信(トーエル/日本ウェルター級3位)
4R終了時点 判定3-0 (40-38,40-39,40-39)

 王者・北沢にとってこの試合は、一昨年10月にKO負けした頼信へのリベンジ戦という位置付け。頼信の左ミドル、膝、ストレートを対処し、右ミドルとローで頼信の脇腹と太腿を赤く腫れ上がらせる。3Rにはカウンターパンチを的確に当てる。
 だが、ラストスパートの期待がかかった5Rにハプニングが起こる。43秒、ブレイクの直後に頼信が肘を放ってしまい、北沢が左目の上をカット。ドクターストップがかかり、規定により4Rまでの試合内容で判定された。頼信はリング上で土下座。北沢はレフェリーの勝ち名乗りを拒否し、頼信に「もう一回やろう」とアピールした。

第7試合 ライト級 5回戦
○マサル(トーエル/日本ライト級2位)
×ジャッカル黒石(治政館/日本ライト級4位)
判定3-0 (50-48,50-48,50-49)

 1月の大会で対戦した両者。この時はお互いの肘打ちにより両者とも出血しノーコンテストとなった。気を取りなおしての再戦となったこの試合。左ミドルから攻めこみ、組んで膝を狙うマサルに対し、ジャッカルはパンチで応戦する。両者ともなかなか攻めきれない展開となるも、結局ミドルを有効にヒットさせたマサルが判定で勝利した。

第6試合 55.5kg契約 5回戦
△小川 和宏(治政館/日本バンタム級2位)
△愉 正善(韓国・博光/韓国フェザー級)
判定0-0 (50-50,49-49,50-50)
※当初発表の金 受煥(韓国・博光)から愉に変更。「愉」の字は正確には「小」の部首が無い文字。

 愉がパンチから肘を狙うのに対して、小川は組んで膝を狙う攻防に。両者決定打に欠きドローとなった。

第5試合 ミドル級 3回戦
○青木 克真(トーエル)
×山崎 康臣(宇都宮尾田)
判定3-0 (30-27,30-28,30-28)

第4試合 ウェルター級 3回戦
○中澤 賢(治政館)
×小林昇平(宇都宮尾田)
3R 1'56" TKO(レフェリーストップ)
※当初発表の山口 隆(横須賀太賀)から小林に変更。

第3試合 ヘビー級 3回戦
△田久保克己(伊原)
△宮崎 隆一(藤本)
判定0-0 (29-29,29-29,30-30)

第2試合 フライ級 3回戦
○山下雄介(伊原)
×林ライス(ホワイトタイガー)
3R 2'23" KO

第1試合 62.5kg契約 3回戦
×ショットガン栗山(野本)
○鈴木 裕(治政館)
1R 2'49" KO


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Last Update : 06/14

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