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[K-1] 魔裟斗が激戦を制覇/2.11 WORLD MAX 日本代表決定トーナメント (レポ,写真&インタビュー)

K-1 WORLD MAX 〜 日本代表決定トーナメント
2002年2月11日(月・祝) 東京・国立代々木競技場 第2体育館
入場者数:4350人(超満員札止め)
レポート:井原芳徳  写真:飯島美奈子  コメント編集:石動龍

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(試合後の選手のコメントは追って掲載します)

<ルール> K-1トーナメントルール。70kg契約。一回戦、準決勝は3分3R、2ノックダウン制。決勝戦のみ3分3R、3ノックダウン制。延長2回。グローブは8オンスを使用。

第1試合 リザーブファイト 3分3R
×隼人(PHOENIX)
○小次郎(NJKF/ウィラサクレックジム/WMCウェルター級王者)
判定0-3 (28-29,28-29,29-30)

 キックボクシングとは違い、首相撲でこう着するとすぐにブレイクが入るK-1ルールに最初慣れない様子の両者だったが、1R終盤に小次郎がカウンターの右で隼人をスリップさせたあたりから流れは小次郎に。2Rはパンチと膝蹴りで隼人を苦しめ、隼人の鼻から出血が見える。3Rも小次郎のペース。隼人もカウンターの左を当てるがいい場面はそこだけで、小次郎はバックステップで隼人を翻弄。格の違いを見せつけ小次郎が判定勝ちをおさめた。

第2試合 トーナメント一回戦 3分3R
×須藤元気(東京元気大学格闘部GGG)
○小比類巻貴之(チーム・ドラゴン)
3R 1'27" KO(2ノックダウン:右ローキック)

 総合格闘技では恒例となった須藤の派手な入場パフォーマンスはK-1でも健在。非常ベルをかたどった覆面をかぶり、同じふん装の人間を何人も引き連れ花道に登場する。リング上で覆面を取ると須藤は笑顔。そんな須藤に主催者が付けたキャッチフレーズは「だまし討ちのアーティスト」だ。一方の小比類巻は「ミスターストイック」のキャッチ通り、終止引き締まった表情を崩さない。試合でも両者の好対象なキャラが存分に発揮され、トーナメント初戦から大会の成功を予感させる盛り上がりとなる。

 「まともに行かず持ち味のトリッキーさを活かして戦いたい」と語っていた須藤。その言葉どおり斜に構えてのバックハンドブローで小比類巻の意表をつく。鬼ごっこのように小比類巻から離れたかと思えば、接近して飛びつき三角絞めを極めるかのような動きを見せる。そして意外にスピードのある須藤のバックハンド。ついには小比類巻の顔面をとらえ、なんと小比類巻が先にダウンを喫してしまう。「残り1回のダウンで小比類巻選手の負けとなります」というアナウンスが流れると、まさかの須藤の金星の予感に会場は大盛り上がり。その後も須藤はバックハンド中心の攻めを崩さず、2Rには胴回し回転蹴りも披露。

 しかし須藤の攻めは次第にワンパターンとなり、慣れてきた小比類巻の堅実なパンチとローが徐々に須藤の体力を奪う。ところがそこで終わらないのが須藤の格闘家としての実力の高さ。普通の構えにスイッチすると今度は左ストレートをヒットさせる。レフェリーの判断はスリップだったが小比類巻は鼻血を出すようになる。
 だが須藤の見せ場はここまで。小比類巻のローの集中で動きの切れがなくなり、3Rには小比類巻の右ローの連打で2ノックダウンを喫し、ミラクルを起こすことはできなかった。
 試合が終わると小比類巻と須藤は抱き合いお互いを讃えあう。予想を覆す好勝負を演出した須藤に観客から暖かい拍手が送られた。

◆ 元気のコメント
「自分に負けました。打撃だけの動きは疲れますね。総合なら組んだ時とかにうまく休めるんですけど。足を止めない作戦だったんですけどスタミナが切れてしまい、止まったところにローをたくさんもらってしまいました。
 1Rのストレートで(小比類巻選手が倒れたのにスリップと判定されたのは)ダウン取ったと思ったんですけど・・。あれがダウンだったら2回倒しているんで、勝ちだと思うと悔しいですね。最後(3R)の(自分の)ダウンもダウンじゃないと思うんで。
 作戦的にはうまく行ったと思います。打撃の選手からダウン取れたのは自信になりました。満足はしてないけど、これから総合の試合をする時に打撃の部分においては全く怖くないなぁ、と思います」

第3試合 トーナメント一回戦 3分3R
○大野崇(BENEC)
×新田明臣(全日本キック/シンサック・ビクトリージム)
1R 2'28" KO(左ハイキック)

 距離を取っての静かな展開が続いたこの試合。新田のローの弱々しさに一抹の不安が。そしてそんな悪い予感が当たるかのような結末が突如訪れる。大野はジャブで少しずつ新田を下がらせる。最後は新田をコーナーに詰め、左ハイをアゴにクリーンヒット。新田は大の字に倒れ、全く見せ場のないまま初戦敗退してしまった。

◆ 新田のコメント
「あっという間に終わっちゃったな、というのが素直な感想です。ハイキックは見えませんでした。何で倒されたのかもわからなかったです。パンチを警戒しすぎましたね。(大野選手とは)相性が悪いんじゃないですかね? もう1回やろうとは思わないです。妹のことは自分の中では前回の試合で一区切り付いていたので、今回は自分の試合だと思って戦いました。今日のコンディションは悪くなかったです。負けちゃったけど、思ったよりもスッキリしてますね」

第4試合 トーナメント一回戦 3分3R
×村浜武洋(大阪プロレス)
○魔裟斗(シルバーウルフ)
3R 0'30" KO(2ノックダウン:右ストレート)

 リングに立った両者を見るとその体格差は歴然。魔裟斗174cm/70kg、村浜163cm/65.5kg。魔裟斗のハイが軽々と魔裟斗の頭をかすめる。しかし村浜は腕でハイをブロック。体格のハンデを逆に活かし、持ち前のスピードで魔裟斗の懐にスルリと飛び込み左右のアッパーを魔裟斗の顔面に叩き込む。シュートボクシング時代を彷佛とさせるアグレッシブで華麗なファイト、そして観客の「判官びいき」もあってか多くの声援が村浜に注がれる。離れても左右のカウンターパンチを放ち、1Rはなんとジャッジ全員が村浜優位のポイントをつける予想外の展開に。

 しかし魔裟斗の強みは持久力だ。2R序盤のパンチ合戦を過ぎたあたりから村浜の動きが鈍くなる。魔裟斗は前蹴りで距離を取ってペースをつかみ、ローとミドルで追い詰め、終盤にはカウンターの右アッパーと膝蹴りを叩き込む。3Rはあっけない展開で、魔裟斗が左右のカウンターで一度ずつダウンを奪いノックアウト勝ちをおさめた。だが魔裟斗は2R終盤から鼻血を出し、勝ち名乗りを受けると足早に控え室に戻っていった。

◆ 村浜のコメント
「勝とうと思ったんだけど、負けました(笑) 練習の7割はできたかなと思うんですけど残りの3割が出ませんでしたね。(魔裟斗対策は)下がる時は思い切り下がって中に入る時は中に入る、中途半端な距離にいない事を心がけました。サイドに入れたらよかったんですけどね。サイドに入って相手が正面に向き直ったところを殴るっていう。
 1R終わったときはいけるかなあ、と思ったんですけどねえ。2Rにもらった前蹴りが効いてしまい、3Rに入ったら(攻撃を読まれて)パンチを合わされてしまいました。以前よりも体重が上がった分だけパワーはついたし、スピードも落ちてませんでしたね。特にパワーの差は感じませんでした。魔裟斗にはノールールでリベンジしたいですよ。年末の猪木ボンバイエで勝負や!!と(笑) K-1にも来年もう一回出たいですねえ」

第5試合 トーナメント一回戦 3分3R
×安廣一哉(正道会館/新空手中量級優勝)
○後藤龍治(STEALTH)
2R 2'49" KO(2ノックダウン:パンチ連打)

 1R中盤、安廣のカウンターの右ストレートで後藤がダウン。その後も安廣が左右のフックとローで積極的に攻め続ける。しかし2R、後藤が飛び蹴りで安廣をコーナーに追い詰めてからパンチの連打でダウンを奪うと、あとは後藤のペース。安廣も耐えて根性を見せつけたが、最後はパンチの連打をもらいロープにもつれるようにしてダウン。最後は後藤が実力差を見せつけた。

◆ 安廣のコメント
「デビュー戦なんで緊張してましたね。1Rでスタミナが切れてて、ヤバイと思いました。1Rで倒しきれなかったのが敗因ですね。後藤選手はうまかったです、自分より全然キャリアのある方ですからね。キックでは白帯なんで、負けましたけど白帯にしては思ったより頑張れたんじゃないかなあ、と。正道会館という(看板を背負ってという)プレッシャーはなかったですね。そういう以前に男と男の勝負ですからね」

第6試合 トーナメント準決勝 3分3R
×大野崇(BENEC)
○小比類巻貴之(チーム・ドラゴン)
判定0-3 (27-29,28-29,28-29)

 大野が低い構えでロー、左ハイを当てる。さらにコーナーに詰めて左右のフック。小比類巻はなかなか前に出られず、須藤戦のように鼻血が吹き出す。しかし2Rになると小比類巻が左ローの連打で反撃。大野も足下をふらつかせながら左右のパンチとバックハンドブローで応戦するが、破壊力では小比類巻のローが一段上だ。3Rも小比類巻は徹底したロー狙い。だがそれでも倒れずパンチの連打で攻める大野に大歓声が巻き起こる。両者バテバテの終盤、小比類巻のローで大野がスリップ気味のダウン。判定に持ち込まれ小比類巻が僅差で決勝への切符をもぎとった。小比類巻は大野の健闘を讃え、ロープを持ち上げ大野を先にリングから退場させた。

◆ 大野のコメント
「1試合目はうまくいったんですけどね。新田選手がストレートを警戒して、縦の攻撃に備えたのがわかったんで、横からのハイキックを打ちました。準決勝もいけると思ったんですけどね〜。判定もドローだと思ったし、フラッシュダウンは取らないって言われてたので・・。
 ただ、コヒの方が僕より強いってことは感じましたね。左足を集中して蹴られたのは効きました。前に一緒に練習した時に“前足のローが効いたよ”って言ったことがあるんですけど、本当にその通りに狙われてしまいました(笑)。蹴りが強いですね。途中からお互いに熱くなって、僕はパンチで、コヒはキックでそれぞれ倒してやろうと思ってたと思います。
 この大会1本に絞ってやってきたんで、今後のことは今は考えられないです。ゆっくり休みます」

第7試合 トーナメント準決勝 3分3R
×後藤龍治(STEALTH)
○魔裟斗(シルバーウルフ)
3R 2'52" KO(2ノックダウン:左フック)

 両者とも距離を取りフェイントを仕掛けながら鋭いローを打ち込む、ハイレベルで緊迫した攻防が続く。1R中盤、後藤が攻勢となったが、魔裟斗はパンチとローで反撃。2Rも魔裟斗ペースが続き、ミドルキック、左右のパンチの連打を当てる。しかし消耗の激しいはずの後藤もなかなか引かない。3R中盤の激しいパンチ合戦でもなかなか倒れない後藤に「後藤」コールが巻き起こる。だが残り50秒、魔裟斗は左右のストレートで1度目のダウンを奪うと、さらに左ストレートで後藤を棒立ちにさせて最後はパンチの連打で後藤をノックアウト。魔裟斗が死闘を制した。

◆ 後藤のコメント
「トーナメントは難しい・・それだけですね。安廣選手は初参戦としては良かったんじゃないですか。キックに染まらんと、このまま空手家としてやって欲しいですね。
(魔裟斗は)特にパンチが強いとは思わなかったけど回転が早かったです。見えないパンチではなかったけど、そのスピードに頭が付いていきませんでしたね。倒れるほどのパンチではなかったけれど、初戦でもらったローキックのダメージのせいで足がもつれました。そのせいでああなった(ダウンを取られた)んはしゃあないな、と思いますね。
 敗因はトーナメント慣れしてないことかなぁ、やっぱり。3R制とか、2ノックダウン制とかを意識しすぎましたね。いつも通りにやれば良かったです。勝ってたら3時間ぐらい喋りますけど、負け犬なんでほどほどで勘弁してください」

第8試合 トーナメント決勝 3分3R
○魔裟斗(シルバーウルフ)
×小比類巻貴之(チーム・ドラゴン)
判定3-0 (30-28,30-29,30-28)
※ 魔裟斗が優勝

 多くの人の予想どおりK-1ミドル級の二大看板が決勝に駒を進め、期待のゴールデンカードが実現した。しかし一回戦、準決勝の二人の闘いはまさに死闘。ダメージの蓄積が揃って激しく、意外にもこの大会で一番の凡戦に終わった。
 序盤ローの応酬を見せたが、あとは互いに距離を取って単発の蹴りを放つだけの静かな試合。魔裟斗のプレッシャーのほうが強く、手数が多かったせいもあり、1Rの採点は御座岡10-9.5、中川10-10、朝武10-9だったが、決定打はない。
 2Rも同様の展開。だが魔娑斗がじわじわ小比類巻を追い詰めるようになり、小比類巻の鼻血が再発する。魔裟斗の手数がより増え、採点は御座岡10-9.、中川10-9.5、朝武10-9.5。
 3Rも同様。二人に声援が飛ぶが、どちらもなかなか踏み込まない。魔裟斗が左右のミドル、ローを当てるものの単発。小比類巻はカウンターの蹴りをたまに打つものの基本的には下がる一方で、魔裟斗ペースが続く。採点は御座岡10-9.5.、中川10-9.5、朝武10-9。

 結局山場のないまま試合は終了。ポイントが読み上げられ、勝ち名乗りを受けた魔裟斗はガッツポーズでリングを一周。小比類巻は呆然とした表情でマットに立ち尽くしていた延長を予想していた観客も多かったようで、ブーイングこそ飛ばなかったものの、魔裟斗ファン以外の観客は静まり返っていた。

 うつむき加減の小比類巻を背に、魔裟斗はマイクを持つ。「最後はしょっぱい試合になってしまったんですけど、ちょっと(石井)館長にお願いをして、もう一回ワンマッチで、小比類巻選手とやりたいです。トーナメントという形じゃなくで、ぜひ、二人ともダメージがない状態でお願いします」

 そして大会の最後のセレモニーで石井館長はこう語った。「ほんとに場内のお客さんありがとうございました。みなさんの声援のおかげで、選手は持てる力を100%を出し切って戦ったと思いますし、中量級の強豪ひしめく中で、3試合戦うこと、そして最後まで、選手はリングに上がった、そして最後まで、倒れなかった。これはみなさんの声援のおかげだと思います。最後に、魔裟斗選手のそういう希望があるんですが、コヒ選手に一言、コメントを欲しいと思います。」
 小比類巻は静かにリング中央に近寄り、石井館長に背中を叩かれ、マイクを持つ。全ての観客の視線が小比類巻に注がれる。
「俺は...」
 小比類巻はうつむいたまましばらく無言だ。そして顔を上げ、再び話しはじめる。
「もう1回やって...絶対ぶっ殺します」
 そう吐くとマイクをマットに落し、会場からは拍手と歓声。石井館長は「以上です、ありがとうございました!」と話し、波乱の大会を締めくくった。

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◆ コヒのコメント
「悔しいです・・・。(決勝のリングに上がった時の体調は?)見ての通りです。鼻は折れてるみたいですけど、折れてないと思えば折れてないんです。ダメージもないし、不安もありませんでした。『俺は勝つ!』ということしか考えてませんでしたね。準決勝が終わって相当殴られたと思いますけど自分に勝った気がしました。1、2回戦は辛かったですね。
 決勝は(力を)出し切れませんでしたね。効いたのは全くなかったのに・・。相手も来なかったじゃないですか。魂の試合ができませんでしたね。絶対延長だと思ってたので、正直手数で決まったなと。俺、アホなことやっちゃったなあ、って。五月は本当に出るつもりでスケジュールも立ててたのに・・。
 次に試合するなら一番強い奴がいいですね。その位の奴を倒す根性はあります。とりあえず明日からまた普通に生活します。朝6時に起きて、練習しようと思います」

◆ 魔裟斗のコメント
「疲れましたよ、マジで。今日の試合でヤバイなって思ったことはなかったです。最後の試合が一番楽でした。もっと苦しい思いをしたかったですね。
 1試合目が山場でしたね。1Rが終わって、K-1の採点じゃまずいだろうな、と思ってました。試合をやるごとに疲れることによって余計な力が抜けてリラックスできました。
(リング上では控えめなコメントでしたが?)楽勝で余裕だった、って言おうかもう1度万全な状態で対戦したい、って言おうか迷ったんですよ。やりたいというかやってあげようかなと。まだライバルって言われるんですかね? 内容的には圧勝ですよね。
(小比類巻選手の「ぶっ殺します」発言について)負け犬の遠吠えですね。ぶっ殺してみろよと(笑)小比類巻の精神的な弱さが良く見えましたね。心が弱いんじゃないすか。世界大会ではタイの選手と対戦したいです。一番強いと思ってるんで。こっちの攻撃を細かいテクニックでうまくごまかしてくるので、それをどう攻略するかですね」

Last Update : 02/17

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