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[新日本キック] 武田幸三再出発のKO勝利/1.27後楽園 (コメント、レポート追加)

新日本キックボクシング協会 "STRIKE BACK! 〜逆襲〜"
2002年1月27日(土)東京・後楽園ホール

レポート:高田敏洋、薮本直美(第9試合のみ)写真:薮本直美


【→大会前のカード解説ニュース記事】

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第12試合 メインイベント
日・泰ジュニアミドル級国際戦 69kg契約/5回戦
○武田幸三(治政館/前泰国ラジャダムナン・スタジアムウェルター級王者)
×サーイペットノーイ・ギャットシーダー(泰国)
KO 3R 0'19"(ローキック)

 昨年9月のラジャダムナン・ウェルター級タイトル防衛戦でチャーンヴィットに敗れた武田は、来るべき復活の日に向け、11月タイに遠征し修行の日々に入った。遠征中の試合で浴びた急所攻撃で負傷したため、予定を切り上げ帰国したが大事には至らず。しばらくすると回復し、今回の復帰戦に向け準備を整えてきた。

 入場しガウンを脱いだ武田を見てまず目を引いたのが、肉体の充実ぶりだ。武田の階級より一つ上のJr.ミドル級として紹介された対戦相手のサーイペットノーイが、逆に細く見えてしまうほどだ。試合後のサーイペットノーイ本人の弁によると、外国人選手との試合が多いため、相手に応じてウエイトはかなり変動するが、本国ではむしろJr.ウェルターで試合する方が多いという。「武田はそれほど上手いとは思わなかったが、力があった。パワーの差を感じた。」
 もちろんパワーだけではない。この日は内容の濃い好勝負が多かったが、やはり武田のスピードはギアが一段上という印象がある。3試合前のセミファイナルで石井宏樹と対戦したムァンファーレッグもそうだが、武田とムァンファーレッグの動きを見て、これが本場タイのレベルなのか、と改めて認識させられた気がした。

 サーイペットノーイはノーランカーとはいえ、その本場で揉まれてきた選手。ムエタイの世界では全盛期にあたる19歳というだけに、元王者の武田とて油断ならない。実際一つ一つの技の回転力は武田に決して見劣りするわけではない。サーイペットノーイの素早いハイを武田が軽くスウェーバックでかわすだけで、場内からはため息が漏れる。ミドルキックに来ればその脚を武田がキャッチし、そのまま攻め込もうとすれば今度は脚をつかまれたままのサーイペットノーイがカウンター狙いの肘打ちで迎撃する。その間、ゼロ・コンマ数秒。お互い有効打を喰らってもほとんど体勢を崩さず反撃に移るので、攻防の交わる一瞬にはどちらが倒れてもおかしくない緊張感がみなぎる。両者が距離を測って睨み合う僅かな瞬間にも、リング上にヒリヒリ感が漂い続ける。1ラウンドは武田の右ミドルから左ストレートという速いコンビネーションが出たところでゴングが鳴った。

 2ラウンド前半は1ラウンドと同じく、サーイペットノーイの蹴り脚をキャッチして距離を詰めようとする武田に、サーイペットノーイが肘で対抗する展開が2度ほど見られた。だが、徐々に武田の圧力にサーイペットノーイがロープを背負うシーンが増えはじめる。苦しくなったためか、サーイペットノーイがローブローすれすれの蹴りを立て続けに繰り出し、これは武田のアピールもあってジャッジが注意する。さすがにタイ人だけあって弱点らしい弱点は見当たらないのだが、総合力で武田が一回り上を行っている印象があった。
 セコンドから「だませだませ」という指示が飛び、相手を見ながら目でフェイントを入れておいてパンチを繰り出したり、左ジャブでガードをインに誘ってからすかさず左フックで顔の側面を痛打したり...。武田の真骨頂が見え始めた。そして次の瞬間、右ストレートがサーイペットノーイの顔面を捉え、ロープ際にその体が崩れ落ちる。
 立ち上がったサーイペットノーイに詰めにかかる武田の顔にも鼻血が見られるが、これはダメージと思えるほどのものでもない。左ジャブから右ローで、サーイペットノーイが転倒したところでゴング。先ほどダウンさせられたパンチのダメージで、かなりボディ・バランスも狂ってしまっていたようだ。

 3ラウンドはもはや武田のフィニッシュを見るだけのラウンドとなった。先ほどダウンを奪ったのと同じサーイペットノーイ側の青コーナー際で、鋭いローの連打。リングにゴロリと転がったサーイペットノーイには、今度はもう立ち上がる余力は残されていなかった。ダメージの蓄積もあっただろうが、タイ人をこうもあっさりと沈めてしまう武田の破壊力はやはり並大抵ではない。実力未知数のタイの19歳は決して侮れる相手ではなかったが、終わって見れば武田が格の違いを見せつけての快勝であった。

<武田コメント>
「いい感じで試合ができましたね。タイで練習できたことが勉強になりました。今日は期待に応えようと強く考えすぎないように、リラックスを心がけました。タイに行って、(相手の)ミドルキックに免疫ができましたね。前は一撃でひるんでいましたけど。金的を仕掛けられた時に、やり返すぐらいの気迫が必要でしたね。久しぶりの給料なんで嬉しいです(笑)近いうちにまたタイトルに挑戦したいと思いますが、ウェルターでもJrミドルでもどちらでもいいです。結婚したので、嫁のためにも稼ぎたいですね。そのためにももっともっと強くなりたいですね」




第11試合 メインイベント 日本バンタム級タイトルマッチ/5回戦
△菊地剛介(伊原/日本バンタム級王者)
△小川和宏(治政館/日本バンタム級2位)
判定0-1(50-50,48-50,50-50)
※菊地剛介は3度目の防衛

 ノンタイトルながら小川の判定勝利に終わった前回の対戦もあり、菊地にとっては雪辱戦。そして小川には満を持してのタイトル挑戦となる。
 前回首相撲勝負で終盤に菊地のスタミナ切れを誘い、ポイントを奪った小川は、今回も同様の作戦で序盤から徹底した首相撲地獄に相手を引きずり込む。この作戦は菊地も当然予想していた筈で、今回は1ラウンドから積極的に相手の膝蹴り合戦を受けて立った.....ように見えた。
 ところが、試合後の菊地の口からは意外なコメントが出てくる。「首相撲はやりたくなかった。(普段のスタイルの試合が)やりにくくて、仕方なく仕掛けました。」しかし今回菊地が早い段階から首相撲に応じたように感じたのは、客席側から見ていた我々だけでなく、対戦相手の小川も「前回対戦した時よりも積極的に首相撲を仕掛けてきましたね。」と感想を述べている。この微妙な温度差が、今回の試合に対する菊地のフラストレーションを象徴していたと言って良いだろう。勝ちに行くための戦略イメージを固めることが難しく、その結果相手に"お付き合い"するような恰好でのフル・ラウンド首相撲、という経過がこの試合の流れであったとすれば、このことは、ここ2戦ドロー、判定負け、と苦闘の続く現在の菊地が抱え込んでしまった、自分の試合スタイルに対するある種のジレンマを反映していたと考えることもできる。
 試合は最初から最後まで、両者胸を合わせての膝の蹴り合いに終始した。ムエタイのリングではしばしば見受けられる光景である。首相撲を厭がって前のめりに腰を引けば、空いた空間を利用して相手はボディや顔面に膝をぶち込める。首相撲では上体を起こして前に出ていくのが基本的なセオリーだ。こうした技術をマスターした同士の対戦ではこの試合のように相手と胸を合わせて、背中越しに両手のグローブをロックした状態での膝合戦になだれ込んでいく。だがこうなると、離れての打撃戦のように一撃で試合が終わるような展開にはなりにくい。どちらかが体力を使い切ってこれ以上前に出ることが出来なくなった時、均衡は一気に崩れるが、首相撲を仕掛けた小川はもちろん、万事承知で受けた菊地もそうした基本的なミスを犯すようなレベルの選手ではない。試合は徹底した消耗戦の様相を呈した。


 首相撲の長期戦に早い段階で幕を引く唯一の方法は離れ際の肘によるカットである。今回も客席から何度か「肘!肘!」というコールが飛んでいたが、小川は疲れの見え始めた菊地に対してもほとんど肘は使わず、徹底したねちっこい消耗戦を仕掛け続けた。対する菊地は3ラウンド以降徐々に前に出る力を減退させられて、局面打破の狙いもあってか何度か肘打ちを試みる場面もあったが、有効打には繋がらなかった。4〜5Rになると流れを握っているのは小川、という印象もあったが、かといって菊地も一方的に蹴られているわけではなく、菊地の迎撃の膝を数え切れないほど受け続けた小川の腹部も血管が浮き上がっている。こうしてフル・ラウンド終了しての判定は微妙なものとなった。
 結果は0-1のドロー判定により菊地はかろうじてチャンピオン・ベルトを守り抜いた。タイトルの掛かった試合においては、現実的に言えばドローとはすなわちチャンピオンが逃げ切ったことを意味する。しかし試合後の両者の表情の違いが、この対戦の内容を如実に物語っていた。
「若干勝ってたかなぁ、とも思ったんですけどね。追い込みきれなかった。やってみて、勝てない相手ではないと思いました。」(小川)
「ドローにはなりましたけど.....今日は僕の負けですね。やりにくかったです。(試合内容が)まずいですね。出直します。」(菊地)
 

第10試合 メインイベント 日本ウェルター級タイトルマッチ/5回戦
×米田克盛(トーエル/日本ウェルター級王者)
○北沢勝(藤本/日本ウェルター級1位)
判定0-2(48-49,50-50,49-50)
※北沢勝が新王者に
 同じ95年にデビューを飾り、過去の対戦成績1勝1敗で迎えた両者3度目の対決。
しかしこの両選手はある意味で対照的である。しなやかな肉体、クールなポーカーフェースからくりだす攻撃はひとところに偏らない万能型の米田が一種の天才肌ともいえる「柔」の選手だとすれば、分厚い筋肉の鎧でパワフルに攻撃を繰り出す攻撃型の北沢は「剛」の選手。年齢的にも26歳と脂の乗り切った時期にある米田に対して、現在32歳の北沢に残された時間は決して多いとは言えまい。試合はこうした両者の選手色の違いがぶつかり合い、内容の濃い好勝負となった。
 序盤から積極的に仕掛けたのはやはり北沢の方。手数とプレッシャーで相手を上回るが、米田は序盤は見ていこうというムエタイ式の作戦か、ガードと見切りでダメージの蓄積を避けながら様子を伺っている感じがした。しかしこの米田の戦法、この試合に限れば結果的に北沢を勢いづかせる形になってしまったかもしれない。2ラウンドに入ると北沢の回転力が上がり、パンチとローの立て続けのコンビネーションから、首相撲に繋げての膝蹴り。さらには完全に米田の背後に回り込んでしまい、そこからの更なる攻撃が続く。米田はディフェンスの目がよく決定的なダメージに繋がるような攻撃の貰い方はしていないが、後退が増えると印象的に不利かと思われた。


 こうした北沢の先行に対して米田のエンジンがようやく掛かってきたのは3ラウンド以降。パンチや蹴りにも米田独特のしなやかさが加わってくる。が、前2ラウンドでリズムを掴んだ北沢の前進力はなかなか衰えない。米田の蹴り脚をキャッチして飛び膝による反撃を試みたり、接近戦では執拗に右肘を狙ったり。もっとも米田は顎を引いて接近戦での肘対策はきっちり出来ており、上背もあって少しずつ首相撲では米田が北沢をコントロールしはじめているようにも見えた。米田の柔が徐々に北沢の剛を包み込み始めた、といったところか。
 
 4、5ラウンドはこうした両者の力が均衡した激しい(試合後の北沢に言わせれば「グチャグチャの」)打ち合いになった。一つ一つの攻撃の迫力は北沢の方に感じるが、米田のディフェンスの良さもあって時折有効にヒットしているのはむしろ米田の伸びのある攻撃のようにも見える。また首相撲になると相手をロープに押し込みコントロールしているのはどちらかと言えば米田の方だが、しばしば北沢に背後を与えてしまう詰めの甘さがやや気に掛かる、といった一進一退の状態。
 最終ラウンドになると前半ポイントを奪われているのを感じて追い上げを意識したか、米田の攻撃が更にアグレッシブになってきた。しかしそれに対して、若干の打ち疲れを見せながらも最後まで真っ向から勝負した北沢の、勝ちに対する執念が結果的にこの試合の明暗を分けた。
「(米田の)ラジャダムナンでの試合を見た港太郎さんから、『こりゃ勝てねーよ』とのアドバイスを頂いてたんですがー。相手を持ち上げるわけではないけど、米田選手はもしかしたら今日は調子が悪かったのかもしれないですね。」(北沢)
「決してコンディションは悪く無かったです。ジャッジには納得してます。コンビネーション貰って、相手の方がクリーンヒットが多かったんで。(再戦は)すぐにでもやれなくはないけど、じっくり行きたい。」(米田)

第9試合 セミファイナル 日・泰ライト級国際戦 62kg契約/5回戦
×石井宏樹(藤本/日本ライト級王者)
○ムァンファーレッグ・ギャットウィチアン(泰国/元ラジャダムナン・スタジアムフェザー級王者)
TKO 2R 1'01"(出血によるドクターストップ)

 再戦の結末がこのような形になるとは思わなかった。
 この試合は引き分けに終わった2000年のカードのリマッチという形であったが、内容的にはムァンファーレッグの手の内でゲームが進行し、そしてアッという間に終わってしまった。ムァンファーレッグはムエタイの元王者であり、ボクシングの現役王者(ともにラジャダムナン・スタジアム認定)でもある。日本人との試合経験も多い。前回石井との対決でドローという結果になったときも、充分に強さのインパクトを残した。勝つのは至難の技、ということはわかっていた。だがそれは100パーセント不可能ではない筈だった。

 1ラウンド、ムァンファーレッグはこの試合をスパーリングかエキジビションと思っているのでは、とリングサイドの我々がいぶかるような緊張感のないフォームでゆらゆらとリング中央に進み出る。ところがひとたび攻撃を繰り出すと、一転してその切れ味、破壊力たるや凄まじい。この元ラジャダムナン・チャンプが客席と対戦相手の石井に「格の違い」を見せつけようとしているのだ、という思いを抱かせるに充分の迫力だった。
 石井とて、黙って再戦の日を迎えたわけではない。前回の対戦後、タイ修行を経てラジャダムナンスタジアムのリングに上がり、成長の証を随所に見せた。タイ人を相手にコンビネーションの連打をヒットさせ、首相撲でも渡り合った。結果は僅差の判定負けに終わったが、内容と、判定結果にうちひしがれ、悔しがる石井の姿は「今日は負けたけれど、明日こそは」という希望を残すものだった。


 だが眼の前の石井はムァンファーレッグに翻弄されている。勢いに押し込められているといったほうがいいだろうか。ムァンファーレッグのパンチの一発一発が重く、それがコンビネーションとなって的確に石井の顔面を襲う。離れればムチのようにしなる蹴りが石井のボディに鈍い衝撃音を響かせる。ムァンファーレッグのリズムにまだ対応できないだけだ。石井自身がリズムを取り戻せば、と後半の展開に期待をかけながら観客は試合を見守ったのではないだろうか。
 だが2ラウンドの首相撲、元々フェザー級のムァンファーレッグが、上背に優る石井をいとも簡単にトップロープ越しに場外に投げ出してしまったのだ。このシーンは圧巻であった。そしてその次の瞬間、両者の間にレフェリーが入り、コーナーに待つドクターの元に向かった石井が、再びリング中央に戻ってくることはなかった。 結果はカットによるストップ。無情な結果に見える。まだ試合をさせてもらってない。チャンスはこれからだったのに。そう声をかけてやりたくなる。が、それはリングの上ではありえないことを誰も知っている。リズムを取らせないのも、チャンスを断つことも、勝負での王道であり、この試合の結果である。こうしてあっけなく、勝者と敗者は分けられた。
 石井の道も希望も閉ざされたわけではない。これも過程として打倒ムエタイに進んでいくだろう。だがムァンファーレッグさえもムエタイの壁のひとつにしか過ぎないことを考えると、石井は途方もない道を歩いているのだ、ということを実感させられる。日本王者になった以上、この道は外れることはできない。どう進んでいくのかは、これからを見守るしかない。石井にとって----打倒ムエタイという立場にいる者にとって----あの敗戦は必要であった、と振り返れるところまで歩んでいってほしいと願うしかない。

「ヒジは狙っていた。ストップになるとは思わなかったし、まだまだ試合を続けたかった。今回は試合に備えて1ヶ月は練習したし、寒くない日は外を走ったりもしたよ」
リングを下りたムァンファーレッグの人一倍ひとなつっこい笑顔が、逆に戦慄的ですらあった。


第8試合 セミファイナル 日・韓フェザー級国際戦 58kg契約/5回戦
○小出智(治政館/日本フェザー級王者)
×趙 在燮(韓国/石井/韓国フェザー級1位)
判定3-0(50-45,50-45,50-47)

 小出の「キックボクサー殺し」なボクシング戦法が、対戦相手を完全に封じ込めてしまった一戦。
 ボクサー出身の小出のスタイルは、全てが左フックに収斂していくように組み立てられている。ボクシングの中でもいわゆる「レフト・フッカー」「スモーキング・スタイル」と言われる、どんどん前に出て相手のインサイドに入り込みながらその勢いを左フックやボディ・ブローに乗せて叩き付けるスタイルだ。これは「遠間の間合いで蹴り合い、接近すれば首相撲と肘、膝」というキックやムエタイの世界では異端に属する。いわばロングとショートの二つの距離の中間に属するパンチ領域という真空地帯、それが小出のテリトリーだ。
 この「異文化」に対する対処法を知らない選手は、まともに試合すらさせて貰えない。今回の対戦相手の趙がまさにこの状態に陥ってしまった。蹴ろうとしてもその前に小出がどんどん前に出てくる。ならば首相撲と近づけば、カウンターで重い左右が顔面、ボディへと突き刺さる。5ラウンドに渡って数え切れないほど小出のパンチを浴びながら、顔面を腫らせることもマットに這うこともなかった趙がトレーニングを重ねた打たれ強い選手であることは充分感じられたが、いかんせん小出と闘うにはあまりに戦略が欠けていた。



第7試合 ウェルター級/5回戦
×庵谷鷹志(伊原/日本ウェルター級2位)
○鷹山真吾(尚武会/日本ウェルター級4位)
判定0-3(42-48,42-48,42-49)

 
 モノスゴイものを見せつけられてしまった!
 この一戦については、もうそう語るしかないだろう。元ライト級王者の鷹山、現チャンプ米田と王者を争った庵谷、共に技術的にもしっかりしたものを持っているのは言うまでもない。だがこの試合は、小賢しい技術論や戦略論など入り込む余地のない、凄まじい「どつきあい」の世界であった。その激しさは、試合終了と同時にリング上に飛び込むように入ってきた伊原代表からその場で両者に与えられた敢闘賞が物語っている。
 共に負けん気の塊のような両者は1ラウンド早々からお互いを正面に捉えての殴り合いに突入。鷹山の連打が庵谷の顔面を捉えれば、庵谷は「効いてない」とばかりに舌を出して挑発し、更にそこに鷹山の追撃を浴びながら、反撃のパンチを打ち返す。
挑発する庵谷が本当に効いていないかといえばそんな筈はない。完全に脚に来ているのがリング下から見ていても分かる。棒立ちでパンチの連打を浴びて1R、2R、3Rで計3回のスタンディング・ダウンを取られ、ポイント的には鷹山の勝利は早い段階で確定的になったかとも思われたが、庵谷は最終ラウンドまで舌を出し、笑いながら首を突き出してわざとパンチを打たせるパフォーマンスをやめようとはしなかった。それどころか庵谷のパンチも終始鷹山の顔面を捉え、最終ラウンドではあわやと
思わせるような反撃のパンチで鷹山がよろめくシーンすらあった。
 この激しい乱打戦の最中、両者は笑いながら「楽しいなー」と会話していたというのだから恐れ入る。タイトルマッチではなく派手な記録には残らないかもしれないが、決して観戦した者の記憶からは消えない試合であったと言えよう。



第6試合 ライト級/5回戦
−マサル(トーエル/日本ライト級2位)
−ジャッカル黒石(治政館/日本ライト級4位)
ノーコンテスト 3R 2'53"(カットにより両者試合続行不可能)

 

第5試合 フェザー級/4回戦
×小原祥寛(藤本/日本フェザー級)
○遠藤心平(治政館/日本フェザー級)
判定0-3(38-39,38-40,39-40)

第4試合 ライト級/3回戦
−乙幡耕一朗(尚武会)
−一眼レフ夫(ホワイトタイガー)
ノーコンテスト 3R 0'31"(ローブローにより一眼レフ夫試合続行不可能)

第3試合 フェザー級/3回戦
△高 修満(伊原)
△プルトニュウム鉄(ホワイトタイガー)
判定1-0(30-29,30-30,30-30)

第2試合 ウェルター級/3回戦
○松崎勇気(治政館)
×小林昇平(尾田)
TKO 1R 1'22"(出血によるドクターストップ)

第1試合 52kg契約/3回戦
×朱雀正浩(野本)
○山下雄介(伊原)
判定0-3(28-30,28-29,28-30)



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Last Update : 02/11

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