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[UFC 34]宇野薫、恐怖の秒殺に散る。レポート追加

UFC 34 "High Voltage"
2001年11月2日(金)米国ネバダ州ラスベガス MGMグランド

レポート&写真:井田英登

▼ボクシングをはじめとした格闘技にとって“約束の土地”であるラスベガスに本拠地を移し、新たな飛躍を目論んだUFCだが、プロモーターのズッファにとって多くの誤算が生じたのではないだろうか。
 まず第一点は興行的に客足が鈍ったこと。客席の埋まり具合は欲目にみて八割前後。大盛況に終わったラスベガス初進出の前回と比べ、まだまだエースのティト・オーティスを欠いた興行ではブランドパワーが万全とは言い難いのを露呈したと言えよう。
 第二点は試合でのどんでん返しの続出。ヘビー級とウェルター級のダブルタイトルマッチの結果、ヘビー級では世代交代が成功せず38歳の現役王者クートゥアの君臨を許してしまったこと、またウェルター級ではスター候補生として大きくフィーチャーされていたカーロス・ニュートンが防衛に失敗してしまった事などが揚げられるだろう。無論リアルファイト興行である以上、こうしたことは当然起こる。しかし、マッチメイクを通し「かくあって欲しい」と望むプロモーターなりの未来図は別個に存在するのが当然だ。とはいえ、こうした陥穽(かんせい)に対しても現場のズッファ関係者はポジティブに捉え、熱戦の相次いだ大会の内容を高く評価していたことが心強い。

メインイベント ヘビー級タイトルマッチ 5分5R
○ランディー・クートゥアー(チーム・クエスト:王者)225ポンド
×ペドロ・ヒーゾ(ファス・ヴァーリトゥード:挑戦者)235ポンド
3R 1'38" TKO (インサイドガードからのパンチでレフェリーストップ)

 モーリス・スミスとの特訓でスタンドテクニックを磨いたクートゥアは、本来ストライカーであるヒーゾの得意分野で付け入る隙を与えず、逆にローキックを多用してプレッシャーを掛け続けた。腰の引けたヒーゾは、得意のローキックもほとんど出せないままにクートゥアのタックルにテイクダウンされ、グラウンドパンチで流血。結局、レフェリーストップで「三度目の正直」も実らなかった。
 年齢的ハンデを物ともせず、レスラーながらもスタンドファイトに新境地を見いだし、MMA内ストライカー最強と言われたヒーゾを返り討ちにしたクートゥアは、逆に王者としての説得力を増したとも言えよう。
 今後ジョシュ・バーネットやリコ・ロドリゲスといった新鋭が、この牙城をどう崩していくかがUFCヘビー級戦線のテーマとなりそうだ。

セミファイナル ヘビー級 5分3R
○リコ・ロドリゲス
×ピート・ウィリアムス(ライオンズ・デン)
2R 4'02" レフェリーストップ(バックマウントでのパンチ攻撃)

 例によってテイクダウン最優先で、銀行レースを狙うリコは、派手さのない展開ながらも、きっちりと実力者ピートを完封。ヘビー級王座挑戦に向け一歩駒を進めた。

第6試合 ウェルター級タイトルマッチ 5分5R
×カーロス・ニュートン(ウォリアーマーシャルアーツセンター:王者)169ポンド
○マット・ヒューズ(ミレティッチ・ファイティング・システム:挑戦者)169ポンド
2R 1'27" K.O.

日本でも修斗、PRIDE等で活躍、馴染みやすいキャラとドレッドへアで“褐色のサムライ”と呼ばれ人気のカーロス・ニュートンもこの日、自己の保持するウェルター級のベルトを掛けて、マット・ヒューズとの防衛戦に挑んだ。サブミッション巧者のニュートンと、パワフルなパンチが売り物のヒューズの激突は好カードとして大会前から人気を呼び、大会ポスターやCMにもフューチャーされていた。試合は一進一退の攻防が進む中で、グラウンドで三角絞めを決めようとしたニュートンを、そのまま担ぎあげたヒューズが、そのまま失神、勝負あったと思われた直後、ぶら下がったニュートンを故意か、それとも失神したためかマットに叩き付ける展開となり、後頭部から落とされたニュートンが逆にノックアウトを宣告されるという、皮肉な展開になった。ニュートン陣営は、コミッションにノースコア、もしくはダブルダウンを主張しているというが、公式的には王座移動となった。ヒューズはアイオワ出身の28歳。奇しくもニュートンが王座を奪った相手パット・ミレティッチの弟子にあたり、師の敵をとった形になる。

第5試合 ライト級 5分3R
×宇野薫(和術慧舟会)153ポンド
○BJ・ペン(ノヴァ・ウニオン)154ポンド
1R 0'11" レフェリーストップ(フェンス際で一方的にパンチ連打)

オクタゴンの金網に、宇野が釘付けにされた。
左右の連打で飛び出してきたぺンのストレート、そしてアッパの連打を浴びて、あっという間に金網までふっ飛ばされてしまったのだ。
試合開始からまだ五秒と経っていない。

試合開始のブザーとともにダッシュを掛けた宇野は、ひらりと宙に舞った。例によって試合開始の瞬間相手の度肝を抜こうという奇襲攻撃だった。しかし、ペンは落ち着き払ってこれをかわし、冒頭の連続パンチで宇野を圧倒したのだ。フェンスに詰められた宇野には後ろがない。まるで、不良に恐喝される高校生のように為す術もなく、パンチを浴び、気が付くと虚ろな目でマットに腰を落としていた。
たった11秒の惨劇。
うつろな目で宙を眺める宇野の横に立ったペンは、一瞬その呆けたような宇野の顔を見下ろすと、突然恒例の選手インタビューも受けずに楽屋へ走り去っていった。入場も駆け足、そして去るときも。まるで嵐のような男に、宇野は何も出来ないまま蹂躙されてしまったのだった。予想もしなかったKO負けの悲劇を目の当たりにした、セコンドの高阪剛もあまりに突然の惨劇に、苦笑いを浮かべるしかなかった。

今年二月にUFC初出場を果たして以来、三戦目。並み居る世界の強豪と対等に渡り合い、今やUFCのレギュラー的日本人選手として順調に評価を高めてきた宇野薫。

だが、今回は相手が悪すぎた。
今回の対戦相手であるBJペンは、まだ22歳と若く世界的にはまだまだ無名だが、2000 年のブラジリアン柔術世界選手権(ムンディアル)黒帯アダルト・ぺナ級に突然彗星のように現れ、ブラジル人以外で初めて黒帯世界チャンピオンになったことで旋風を巻き起こした選手である。元はハワイ出身で17歳の頃から柔術を学び、97年にはハウフ・グレイシーの門下生となってアメリカ本土へ渡った。たった4年で世界の頂点に立ったシンデレラストーリーは格闘技ファンの注目の的となったが、そもそも彼の闘いのルーツは、それ以前の不良少年時代に培われたケンカ度胸と、まれに見る運動能力にあると言われる。それだけにオクタゴン入りしてくるときの目付きは気迫は、通常の選手の比ではない。まさに悪霊が乗り移ったようなその鋭い眼光には、普段の温和な笑顔からは想像もつかないような狂気を宿していると言われる。
世界一の柔術家にまでなりながら、「俺は殴って勝つのが好きなんだ」と豪語、新生UFCのスター候補としてスカウトされたのが今年の五月。7月UFC32では、現UFCライト級チャンピオン、ジェンズ・パルヴァーを唯一破った男、ディン・トーマスを2分でノックアウトして、この世界でも最短距離で世界の頂点に立とうとしている。近年はフランク・シャムロックやジョン・ルイスといった綺羅星のようなスターとともにトレーニングを重ねており、その野望を果たす日も決して遠くはないだろう。

無言でオクタゴンを後にした宇野の真意は知るべくもないが、この悪夢のような敗北は格闘技選手としての進路に掛かった大きな障害となるのかも知れない。。日本で一番より、世界で一番になりたいと、修斗王者の栄光を捨てたあの日から一年、ついに世界の壁の厚さを身体で知る男との激突が残した傷跡は、けっして小さなものではないだろう。

第4試合 ヘビー級 5分3R
○ジョシュ・バーネット(AMCパンクレーション)245ポンド
×ボビー・ホフマン 254ポンド
2R 4'25" TKO(ハーフガードからの顔面パンチでタップ)

 グラウンド技術に長けたジョシュは、スタンド攻撃に一切付き合わず、テイクダウンを奪ってじわじわパンチでポイントを稼ぎ、顔へのヒジ打ちでカットを狙う作戦を展開。クレバーな試合運びで見る者をうならせた。

第3試合 ライトヘビー級 5分3R
○エヴァン・タナー
×ホーマー・ムーア[Homer Moore]
2R 0'55" 腕ひしぎ十字固め

第2試合 ミドル級 5分3R
×フィル・バローニ
○マット・リンドランド
判定3-0 (29-28, 29-27, 28-28)

第1試合 ヘビー級 5分3R
×ホベルト・トラヴェン(ファス・バーリトゥード)
○フランク・ミア[Frank Mir]
1R 1'05" 腕ひしぎ十字固め

Last Update : 11/11 01:19

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