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[PRIDE.21] 6.23 さいたま (4):アイブル vs ホーン


DSE "明治生命L.A. presents PRIDE.21" 6月23日(日) さいたまスーパーアリーナ [ → カード一覧に戻る]

第4試合 「ホーンの鉄壁の防波堤にハリケーン不発」
×ギルバート・アイブル(オランダ/ゴールデン・グローリー)
○ジェレミー・ホーン(米国/ミレティッチ・マーシャルアーツ・センター)
判定3-0

【1R】
 問題児VS優等生の対決と言うべきだろう。
 どうやって持ち込んだかは知らないが、オランダから持参したという触れ込みの、特大のイエローカードを両手にかざして入場パフォーマンスを見せたアイブル。前回のドン・フライ戦では目突きの反則で失格扱いを受けるなど、PRIDE参戦以降はその無法暴走ぶりが目立つ。それを逆手にとったヒール表明宣言なのだろう。対するホーンはそっけない無地の黒シャツに淡々と花道を歩むのみ。ファイトスタイルも破天荒なアイブルと、地味でセオリーに徹したホーン。どこまでも対照的な両者である。

 ゴングと共にアイブルが放った渾身のローを両手で受け取ると、そのまま引き倒しにいくホーン。身体バランスに長じたアイブルはケンケンでこらえ、両手でロープを掴んででも倒れまいとするが、体ごと抱え上げて叩き付けてテイクダウンするホーン。クロスガードから三角狙いにくるアイブルを他所に、がっちり押さえ込んで、ボディパンチを浴びせるという“教科書通りの”攻撃に徹する。足取りに来ると立ってスカし、フロントネックで押さえ込みと、荒れ狂うアイブルの攻めを、片っ端から“鎮火”していくホーンの技術の引き出しは地味ながら着実である。そこからの攻めも肩固めや、サイドに出てのヒザなど、あくまでけれん味が無い。体力に任せて立とうとするアイブルを、腰の粘りで捻り倒すと、また肩固め。ターンして逃れようとする暴れ馬アイブルのバックに回って裸締め。必ず展開を有利に持っていくセオリーで、試合が展開していく。

 しかし爆発力に長けたアイブルは、逆に非セオリーの固まりだ。裸絞めをターンで躱すと、そのまま立ち上がり、瞬間にホーンの頭部を蹴り上げてくる。これをガードされ、アリ・イノキ状態になったとみるや、引っ込めた蹴り足をそのままはねあげて、顔面踏み付けに飛ぶ。まったく倍速回しのビデオのようなスピードで凶悪な攻撃を次から次に繰りだしていく。だが、その足を何食わぬ顔で取ると、サブミッションに取ろうとするホーンの盤石さなディフェンスは脅威的だ。そのまま起きあがって上になったホーンは、またもや肩固めを敢行してくる。こうなると地味さも一種の美学かもしれない。
 だがアイブルは、ロックした手を持ち帰る一瞬の隙をついてごろんと横に転がってスィープに成功。しかし、ホーンは何食わぬ顔で下から腕を取ると、腰を上げ、下からの腕十字の要領で一回転、そのままマウントを奪ってしまった。アイブルの派手な動きとの対比もあってか、こうした動きに誰も驚きはしないが、大した技術ではないか。マウントパンチをかいくぐって、ブリッジですっくと立ち上がったアイブルの方が華麗に映るのは致し方の無いことなのだが、スタンドでもぶんぶん振り回すアイブルの至近のパンチをすべてガードし、タックルで押し込んでしまったホーンは、やはり誰がなんと言おうと上手い。タックルを切ったアイブルを、さらに押し込んでテイクダウンしてしまうなど腰の粘りもいい。アイブルがフロントネックに取っても抜き、強引に体を起こしてきても足で制し、さらにその足を取りに来ても取り返すなど、すべて堂に入った対処で、先に攻撃を進めさせない。結局、足の取り合いに根負けしたアイブルがせっかちに立ち上がっても、それを制してコカし上でゴングを聞いたのはホーンだった。

【2R】
 ローの打ちあいから素早くタックルに入って先手をとるホーン。粘るアイブルを飛行機投げの様にして倒す。ハーフガードにとったアイブルをまたもや、“地味の定番”肩固めに捕らえようとするホーン。ヒップスローで抜け出して、股抜きで立ち上がるザマにパンチを一発ぶち込んでおいて、くるりとターンすると、またもやサッカーボールキックで頭部を狙うという、流麗で色気のある動きそ見せたアイブル。対するホーンは“平成の風車の理論”とでもいいたげな柳に腕押しの動きで、すべての攻撃を受け流す。アリ・イノキ状態と見て、すばやくブレイクを命じた塩崎レフェリー。
 息のあがりつつあるアイブルに、見せパンチを振るととっととタックルを仕掛けるホーン。なんとかこれを切って見せたアイブルだが、掴んだ足を離さないホーンはそのままもう一度足を狩りテイクダウン。股を割ってすばやくマウントに持ち込んだホーン。ターンをねらったブリッジは、逆にホーンにバックを与えてしまい、裸締めにまで持ち込まれてしまう。何とかこれは抜け出して、通常のマウントに戻ったものの、もうこうなると、いじめっ子が、優等生のねばりに根負けして半泣きに追い込まれてしまったかのようでもある。がっちり肩固め風に押さえ込まれて、ボディへのパンチで苦痛に顔をゆがめるアイブルは、完全に光りを消された風情だった。

【3R】
 ラストラウンド、アイブルはいきなりのヒザをボディに打ち込み、再び攻勢にでる。腰からくずれたホーンはなんとか、アリ・イノキの構図でダメージを隠すが、かなり効いた風情がみられた。下がって見下ろすアイブルは完全にスタンド勝負しか考えて居ない。塩崎レフェリーはブレイクでホーンを立たせ、試合再開。ハイを放ち、カウンターの右パンチをよけると、自分からグラウンドに転がるホーン。しかし、アイブルは見下ろすのみ。ここらあたりで両者の狙いは明確になった。
 タックルと飛びヒザが正面激突し、粘りに粘ったホーンがフロントネックをとられたままアイブルをテイクダウンする。サイドからマウントを奪うとべったりと押さえ込んだホーンだが、逆に慎重になりすぎて、何もしないうちにアイブルのブリッジで上下逆転されてしまう。めずらしく押さえ込みに徹していたアイブルだが、これも結局何も出来ずじまいで、ホーンに立たれてしまう。すばやくタックルを打ち込むホーンに、カウンターのヒザが襲い掛かる展開が2度続くが、足を離そうとしなかったホーンの粘りが勝り、再度テイクダウンに成功。小さなパンチが何発もお互いの間を行き交うが、結局試合を決するような攻撃はどちらにもないままに、ゴングが鳴った。

 徹底したセオリーで、暴風雨と称されるアイブルのスピードとバネを封じきったホーンのスタイルの勝利と言えるかもしれない。しかし、この試合を会場で満喫したという観客は実際少なかったのではないだろうか。

■ホーン 「アイブルはフェアでクリーンな試合をしていました」

「勝ててうれしいです。極められると思った時も何回かありましたし、自分のポジショニングも良かったんですけど、アイブルのディフェンスが凄く上手かったです。アイブルは今回はフェアでクリーンな試合をしていました。確かに彼は感情に流されて負けそうになると反則をすることがありますが、今回はそんなことはありませんでした。」

■アイブル 「試合に集中しすぎて反則するのを忘れた」

「なんで負けたのか分からない。彼は寝技で押さえ込んでばかりで、私は彼のチョークやタックルも防いだし、私の方がアグレッシブでダメージを与えていたのに。テイクダウンの数だけで負けた。
(今回はクリーンファイトだったが?)今回もイエロー カードを出させるつもりだったが、試合に集中しすぎて反則するのを忘れた(笑)。本当の事を言うと、前回、ドン・フライがロープを掴みながら押して来たので、ドンの顔を押し返そうとしたら汗で滑って目に指が入ってしまった。皆、私だけを悪人のように言うが、彼は頭突きもして来たし、他の選手も同じような事をしている 。
(次回、K-1のリングで戦う?)まだ分からない。交渉中だ。(もう一度ドン・フライと戦いたい?)YES!今日、前回の試合を裁いたレフェリー(島田裕二)にイエローカードを出す為に(巨大な)イエローカードを用意してきた。あのレフェリーは駄目なレフェリーだから(笑)。(他に戦いたい相手は?)誰でもいいから連れて来てくれ!」

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Last Update : 06/24

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