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[PRIDE.21] 6.23 さいたま (5):大山峻護 vs ヘンゾ・グレイシー


DSE "明治生命L.A. presents PRIDE.21" 6月23日(日) さいたまスーパーアリーナ [ → カード一覧に戻る]

第5試合 「崖っぷちからの復帰。大山、グレイシーとの死闘に光明見いだす」
○大山峻護(日本/フリー)
×ヘンゾ・グレイシー(ブラジル/ヘンゾ・グレイシー柔術アカデミー)
判定3-0

 網膜剥離という絶望的な負傷から、奇跡の復帰を果たした大山がいきなりヘンゾ・グレイシーとの対戦という大一番を迎えることになった。
 いつもの真っ白な柔道着に身を包んだ大山は、入場エレベーターの上で大きく吼え、リングの上では天を仰いだ。まさに溜まりに溜まったものを吐きだそうとする心の緊張がそこここに見て取れる。一方歴戦の35歳、グレイシー一族の先頭に立って着実に実戦を重ねてきたヘンゾはポーカーフェイスだ。

【1R】
 試合は大山の緊張をそのままに映し出した展開で幕をあけた。遠い間合いに構えた両者は、牽制のローを投げあう。その緊張を押さえ込むためか、大山はいきなりバックソバットという大技を出す。しかし間合いは相変わらず遠い。その一瞬の隙をついたヘンゾは、チャンスを見逃さず胴タックルを敢行。そのままロープに詰め、引き倒してしまう。大山はサイドへ出たヘンゾの首をフロントネックロックに捉えようとしたが、ヘンゾはすぐ引き抜く。そしてそのままガードに取った大山の胸を右の肘で制して、左のパンチを落としていく。さらにヒップスローで抜け出そうとする大山の動きを制し上を守ると、また左右のパンチを顔面に落とす。このあたりの細かい動きはヘンゾペースだが、全般には大きな動きはない。野口レフェリーは両者にイエローカードを提示し、ブレイクを命じる。

 スタンドに戻った両者だがロングディスタンスは変わらず。まるで練習でのそれを思い出すように、ショートフックやヒザのモーションを見せながら攻め込みはしない大山。焦れたのかヘンゾはハイをカラ振って、自分から尻餅をついてしまう。襲い掛かった大山の顔面にかかとを飛ばそうとしたモーションの水際だったその動きをみると、あるいは計算した動きだった可能性も否定できない。アリ・イノキ状態の攻防だが、ヘンゾのかかとのサイクリングキックを警戒して飛び込めない大山。かつて、ヘンゾはエクストリーム大会でこの蹴りを武器に、オレッグ・タクタロフをKOしたこともあるからだ。再びブレイクが命じられスタンドへ。

 ここでタックルにでるヘンゾだが、大山は試合前から「ヘンゾのタックルは全部切る」と豪語していた予告通り、これを受け止めた。離れて、大振りの右フックで巻き込んで抱きついたヘンゾ。そのまま引き込んでのサイクリングキックを狙うが、果たせず。再びブレイク。
 大山は序盤に失敗したバックソバットやハイを繰りだすが、距離の遠さもあって効果的な攻撃とはならない。以前の突貫小僧ぶりとは違い、慎重になったのはいいのだが、この一歩の踏み込みの無さは逆に勝負を決める武器に欠くことにもなる。ヘンゾはそうした心の隙を見逃さない。一瞬、呼吸を整えたのか、ガードを下げた大山にむけて左フックをたたき込み、そのまま抱きついてくる。大山は逆に首投げを仕掛けるのだが、汗で滑ってすっぽ抜けしてしまう。
 再びスタンドの攻防となり、ボディーへの浅いパンチ、バックソバットと繰りだす大山。対するヘンゾも同じソバットを返して見せる。スタンドでも劣っていないことを、こうしたやり取りで見せるのがこの選手の特徴だ。右フックからタックルを仕掛けるヘンゾをフロントチョーク気味に受け止める大山。突き放してバックブローを打ちかけたところで、ゴング。

【2R】
 1Rのグラウンドのパンチのせいか、右目の腫れた大山。ボディパンチやかかと落としなどでリズムを変えようとしてか、先手を出していく大山。パンチをだしながら、大山のプレッシャーを受け流し下がりながらリズムを詠み、コーナーに詰まると左右のワンツーで押し返すヘンゾ。大山のパンチを誘っておいてタックルを仕掛けるヘンゾ。受け止められると、前ラウンド同様引き込んでアリ・イノキ状態に持ち込むヘンゾ。周りながら蹴る大山だが、ここでブレイク。

 距離を詰めてワンツーを放つ大山だが、見きってよけるヘンゾ。逆に大山は胴タックルをしかけてロープに詰めたが、そのまま抱きついて引き込んでしまったヘンゾ。ふたたびサイクリングキックで蹴り離して、コーナーでのアリ・イノキ状態になる。ローを蹴り込んだものの、なかなかこの状態が攻略できない大山。再度、再度のブレイク後も、引き込みを狙うヘンゾ。アリ・イノキの攻防が続く。大山は側転やスタンドターンなど変則的なパスガードを狙うが果たせず。またもブレイク。左右のフックを振ってくるヘンゾに頬を出して、挑発する大山。その動きにむかついたか、つばを吐くヘンゾ。両手を広げてさらに挑発する大山。ここでタックルを仕掛けるヘンゾだが大山は落ち着いて切る。攻め手に欠けるが守りとしてはほぼ完ぺきなところを見せた大山だった。

【3R】
 モモへの右ロー、続けてハイと攻撃にでる大山だが、相変わらず“最後の一歩”が踏み込めない。ローを返すヘンゾに、再び両手を広げて挑発する大山。プレッシャーをかけて追い込んでいく。ヘンゾは下がりながらタックルを仕掛け、胴を取ってまさかのバックドロップを見舞う。大山がそのまま膝立ちになってこらえると、バックからがぶって足を狩ってくる。それでもこらえて立ち上がった大山は逆に、足をかけて捻り倒して上になる。だがまたもやこれを蹴り離しアリ・イノキになるヘンゾ。かかと落とし風の動きを見せる大山だが、まもなくブレイク。こうなってくると年齢的にもヘンゾは疲れをごまかしているような状況だ。直後のタックルも切られ、アリ・イノキ状態からブレイクという流れが続く。結局、大山もこのヘンゾの動きを攻略しきれず、グラウンドでのもみ合いの中でゴングを聞いた。

 引き込みの悪印象と、支配率を評価してか、三者の判定は大山の頭上に輝いた。
四方のコーナーに登り勝ち誇る大山は、マイクを取って「今日のリングに戻って来れたことをうれしく思います。また今日の勝利はみんなのおかげです。ありがとう」と叫んだ。

 ついに三戦目で初の勝利をグレイシーからの金星で飾った大山。今回の試合で何が自分に足りなかったかは、大山自身がいちばんよく知っているだろう。この欠点=攻めきれなかった「最後の一歩」をどう克服するかが、今後このゴールデンルーキーの明日を左右するに違いない。

■ヘンゾ・グレイシー 「判定には納得できません」

「今までの私の戦いや態度を見てきて、皆さんは私が、素直に負けを認め、対戦相手を祝福する人間だという事をご存知だと思います。しかし、今回の試合の判定に関しては納得できません。相手のパンチや攻撃も一切受けていないし、グランドに行った 時、すぐにブレイクが掛かってしまって残念だった。わざとではないと思いますが、ブレイクが早すぎたと思います。また、ダニエル選手が、あきらかに圧倒的に勝っている内容だったのにも関わらず、杉浦選手を勝ちとしたジャッジが一人いた事にも大変疑問を持っています」

■大山 「今日がスタート。今はホッとしています」

「最初にテイクダウンされた時に、前回のヴァリッジ(・イズマイウ)戦を思い出して弱気になり掛けましたが、すぐ強気に戻れました。今回は本当に気持ちの勝負になったので、自分に負けなかったのが自信になりました。これからはマリオ(・スペーヒー)やハイアン、そしてシウバともう一度戦いたいです。
(休養期間に関して)アメリカでデビューしていきなり脚光を浴びて、生活が一変してしまったので慢心があったと思いますが、今回の休養で平常心が取り戻せたと思います。
(試合を振り返って)もっとアグレッシブに行くべきだったという反省はありますが、あれが今の僕の精一杯です。支え釣り込み足で2回投げる事が出来たので、柔道家として嬉しいです。(ヘンゾの印象)カウンターでパンチやタックルを狙ってるのが分かったので、あと一歩踏み込めなかったです。凄く頭の良い選手だと思います。やっぱり上手かったです。(目に関して)右目に何発かもらいましたので、後で検査します。(PRIDE初勝利の感想は?)やっとプロとしての階段を昇れたと思います。今日がスタート。今はホッとしています。9ヶ月間本当に苦しかったので、とりあえず今は自分を褒めてから反省したいと思います。 ありがとうございました。」

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Last Update : 06/24

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