【FIGHTS SPIRAL】の概念(禁止薬物編)
禁止薬物について
スポーツ界では、
ステロイド、アンフェタミン、エリスロポエチン(EPO)、インシュリンなどの薬物使用が一般的に禁止されている。
それらはどれも肉体や能力向上に役立つ反面、様々な害のある副作用をもたらす。

しかし、ここで言う禁止薬物とは必ずしもその使用が法に触れる物ではなく、
各スポーツの団体や協会などが禁止と指定している薬物を指す。
日本の総合格闘技界は、法に触れない薬物であればその使用を禁じていない。

その格闘技の世界において最も知られているのがステロイドである。

ステロイドは元々、医療の目的を果たすために作られたのだが、医学の進歩と共にステロイドの種類も増え、
男性ホルモンの分泌を促すアナボリック・ステロイド、いわゆる筋肉増強剤が発明される。

格闘家やスポーツ選手など自らの身体能力を資本とする者達にとっては、筋肥大を助けてくれる筋肉増強剤や、
精神面の補助により運動能力の発揮を高めてくれる興奮剤は毒々しい見た目とは裏腹に、
美味しそうに見えて仕方がない「禁断の果実」である。

オリンピックが開催される度に、禁止薬物使用者がメダルを剥奪され問題になるが、
日本人のオリンピックでの禁止薬物使用が発覚した例はない。
この事からも日本人のステロイド使用率は海外に比べて少ないと思われる。

日本人の場合、その精神性や社会通念により、禁止薬物を使用する下地が薄いのは確かであろう。
しかし、格闘家は単身で海外に武者修行に行く事も少なくないため、
外国人選手のステロイド使用と筋肉のつきの違いを目の当たりにすると、
純粋に強さを求めるがあまりステロイドを使用したくなる気持ちも分からないではない。

事実、船木誠勝は自らの著書で、海外でのステロイド使用を告白し、
ステロイドの恩恵とその後の副作用について、
副作用の症状が現れた体の写った写真と共に苦々しい体験談を語っている。
その経験から船木はステロイドに頼らずに強さを追求すべく、
自らのトレーニング理論や精神論を提唱しパンクラスという団体の中に根付かせている。

スポーツマンが常に肉体を最高の状態に維持し、
最高の精神状態で試合に向かうのは並大抵の努力ではできない事である。
そのような難しい事も禁止薬物を使えば楽になるのだが、それは一時的な事で、
長い競技生活や、その後の人生の事を考えるなら決して使用すべきではない。

ステロイドの常習者で、かつてPRIDEで活躍し、その闘い方と、鎧のような筋肉を纏った風貌から
「霊長類ヒト科最強」とまで謳われたマーク・ケアーの強さも長くはもたず、現在の凋落ぶりは周知の通りである。
ケアーはもともと気が弱い性格で、自分を奮起させるため闘うたびにに麻薬まで常用していたと言う。

我々格闘技ファンが求めるのは、ほんの一瞬ロボットのように強い選手ではない。

我々が見たいのは強い選手であり、その選手の背後から垣間見れる人間性や生き様、そして歴史である。

強いからと言って、ポッと出の選手を応援したくなるかと言えばそうではない。
選手とファンが共に時間を共有するからこそ、その選手を好きになったり応援したりするのだ。
そして、その結果としてリングの熱が上がり格闘技界全体が盛り上がるのだ。

現在の格闘技界が皆、かつてのマーク・ケアーのように強かったとしても、
すぐに消えて行ってしまう者達ばかりでは私は今ほど格闘技を好きになっていなかただろう。

「禁止薬物の何が悪いの?」
「激しい試合が見れるなら薬物使っていいじゃん。」
などと考えている人達は考え直してみて欲しい。

私は真に強い格闘家が見たい。

だから禁止薬物はいらない。

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