(レポ&写真) [全日本キック] 4.15 後楽園:石川×梶原引分。大輝初黒星
全日本キックボクシング連盟 "New Deal" 2007年4月15日(日) 東京・後楽園ホール 観衆:1850人(満員)
レポート&写真:井原芳徳 【→カード紹介記事】 【→掲示板スレッド】
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第8試合 メインイベント(3) 60kg契約 3分5R △石川直生(青春塾/全日本スーパーフェザー級王者) △梶原龍児(チームドラゴン/J-NETWORKライト級王者) 判定0-1 (和田49-50/豊永49-49/朝武50-50)
かつての全日本キックの看板選手・前田憲作氏が、チームドラゴンを率いて全日本キックに戻って来た。梶原は前田氏の現役時代のトランクスを借りて登場。これを履いたのはJ-NET新人王戦の時以来だといい、梶原にとっての勝負パンツといえよう。 だが先手を取ったのは全日本をホームリングとする石川のほうだった。1R、右前蹴りとローを積極的に当てプレッシャー。カウンターパンチ狙いの梶原を攻めさせない。「距離感の戦い」と話していた石川の戦略どおりだ。とはいえ1Rから前田氏は常に梶原に肘と膝を警戒させるアドバイスを飛ばしていたため、石川はやりにくかったという。このあたりの心理戦も、チードラ勢の試合を見慣れている石川の想定内だった。
3R、石川の左肘打ちで梶原の右眉にコブができる。やはり当たれば石川の肘は怖い。だが「血が見えると雑になる」と石川が振り返ったように、このあたりから梶原の距離になり、右フックとストレートのヒットが増加。4Rはやや優勢で、石川がスリップする場面も。5Rには前田氏から「相手目見えてないぞ」という声も飛んだように、石川の反応がおかしい。梶原は度々右フックを当て、主導権を維持したまま試合は終了。判定は梶原に1票が入ったものの、決定打に欠いたせいもあってか、ドローという結果となった。 判定について石川は「僕は取ったと思ったけど、ドローは仕方ない」、梶原「ドラゴンはフリーなので仕方ない」と、両者とも複雑な気持ちを抱えつつも納得した様子。とはいえ得意のボディブローをほとんど当てさせてもらえなかった梶原は「キックのジャッジは今だによくわからないけど、今回はこっちに運が向いた。5R肘有りは甘く無い」と苦戦を認めていた。
試合後、梶原は「もっとデカいところでやろうぜ」と石川に声をかけ、石川は「ウン」と答えたが、石川は満員の観衆が判定を聞く前に帰り始めてしまったことが悔しかったといい、半ば空返事だった様子。今回の内容と結果自体をまだ消化しきれておらず、まだ先のことは考えられないのだろう。 梶原の言う「デカいところ」は当然、近いうちに始動しそうなK-1の60kg級。だが、肘無しで膝の規制が多く、基本的に3R以内に決着をつけないといけないK-1ルールだと、石川の戦い方は大きく変わって来る。普段どおりの戦い方を貫いた石川を、K-1関係者がどのように捉えるかは気になるところだ。 K-1も意識している梶原だが、全日本キックへの再上陸にも前向き。「選手の身内だけじゃなく、キック自体を観に来ているファンが多く、活気があってやりやすかった」と話し、同じライト級の増田や大月との試合にも興味を示した。
第7試合 メインイベント(2) スーパーウェルター級 3分5R ×大輝(JMC横浜GYM/全日本ウェルター級前王者・ラジャダムナンウェルター級9位・WBCムエタイ世界ウェルター級3位) ○望月竜介(U.W.F.スネークピットジャパン/全日本スーパーウェルター級1位) 判定0-3 (野口47-49/梅木47-49/和田46-50) ※2R右ストレートで大輝に1ダウン
1R、両者とも右のローとストレート主体の攻防だが、望月は随所で前蹴りをうまくヒット。大輝のリズムを崩し、2R、大輝の右ローに右ストレートを合わせ、ダウンを先取する。 大輝も右アッパー等で応戦するが、望月の右ストレートをもらい続けると鼻血。左のボディストレートにも嫌そうな表情を見せる。3R終盤には右ロー、右ストレート、左ミドルをもらい、後ずさりしてしまう。 4Rも序盤劣勢だった大輝だが、中盤、右ストレートと右アッパーで反撃。場内は大輝コールに包まれる。とはいえ望月はくじけず、右ストレートと前蹴りで反撃し立て直す。望月の師匠の大江慎氏からは度々前蹴りの指示が飛んでいたが、前蹴りが大輝攻略の鍵となったようだ。 最終ラウンドも激しい攻防が続く。ポイントで差をつけている望月だが、大輝の攻撃を単に受け流すだけでなく、前蹴りとパンチで痛めつけ応戦。最後までKO勝ちをあきらめない。 結局大輝は逆転の糸口をつかめないまま終了のゴングを聞く。プロデビュー以来の連勝記録は12でストップした。勝った望月は「大輝選手は強くて、やる前はびびってたけど、皆さんの応援で勝てました。勝ち続けて、また山内選手の王座に挑戦したいです」とマイクアピールした。
第6試合 メインイベント(1) 55kg契約 3分5R ×藤原あらし(S.V.G./全日本バンタム級王者) ○コムパヤック・ウィラサクレック(タイ/元ルンピニースタジアム・バンタム級4位) 3R 2'19" KO (右ローキック)
全日本キックとウィラサクレックの対抗戦は、全日本側が2連勝し勝ち越しを既に決めたが、元気戦以来1年半ぶりに全日本に参戦したコムパヤックは、その分を取り返すような衝撃的なKO勝ちをおさめた。 1R、サウスポーのあらしに対し、コムパヤックは右ミドルを連打した後、右ハイでダウンを奪取。あらしは10カウントギリギリで立ち上がるほどのダメージ。さらにコムパヤックは肘打ちであらしの右目尻を切り裂く。 その後の右ハイにあらしは反応しブロックできたが、逆に右ローをもらう回数が増えるように。あらしは表情を崩さないが、足の動きからすると効いているのがわかる。2R中盤には、コムパヤックの右ハイをあらしはブロックしたにも関わらずダウンを喫する。あらしも左ハイを放つが、コムパヤックは完全に見切っており、しっかりブロック。3R、ローをもらい続けたあらしは、強烈な右ロー一発で、操り人形の糸が切れたように突如ダウン。レフェリーストップとほぼ同じくタオルも投入された。 あらしは「さすがタイで2回タイトル戦をやってるだけあって、ゲームメイクが巧い。初めてローを効かされてKO負けした。昔小林(聡)さんがサムゴー戦の後に『鉄の棒で殴られているかのよう』と話したけど、そんな感じだった」と、ムエタイの恐ろしさを語った。だが3月の山本真弘戦との2連戦で多くを得た様子。しばらく休養した後の再起戦に期待しよう。
第5試合 セミファイナル フェザー級 サドンデスマッチ(3分3R+延長1R) ○前田尚紀(藤原ジム/全日本フェザー級2位) ×赤羽秀一(ウィラサクレック・フェアテックスジム) 2R 終了時 TKO (ドクターストップ:パンチによる右目尻のカット)
3月の小林聡引退興行で野良犬魂を注入された前田。開始から勢い良くパンチとローで攻めるスタイル自体は変わらないが、これまで以上に気合を感じる。コンビネーションを度々決め、1Rは手数で圧倒。2Rにはパンチの連打からの右フックでダウンを奪う。赤羽は右目尻をカット。ドクターチェック後も出血が止まらず、ラウンド終了時にドクターストップがかかった。
第4試合 スーパーバンタム級 サドンデスマッチ ○寺戸伸近(BOOCH BEAT/全日本バンタム級1位) ×長崎秀哉(ウィラサクレック・フェアテックスジム) 3R 判定2-1 (梅木30-29/朝武29-30/勝本30-29)
パンチで打ち合う場面もあったが、威力を発揮したのは寺戸の右ロー。ところが長崎は左肘で寺戸の右眉を斬ると、流れを変えるきっかけに。寺戸のドクターチェックの後、セコンドの指示を聞き長崎はサウスポーにスイッチ。寺戸のローを封じつつ、肘と膝の攻防で主導権を握る。3Rには左ストレートも当て鼻血を誘う。 だが寺戸は底力を発揮。頭を下げさせ膝蹴りを当て、最後のパンチの打ち合いでは右ストレートを当てダウン気味に倒す。レフェリーはダウンと認めなかったが、この攻撃が良かったようで、辛うじて勝利をものにした。敗れた長崎にも観客は暖かい拍手を送った。
第3試合 スーパーフライ級 サドンデスマッチ ×魂叶獅(はまっこムエタイジム/J-NETWORKフライ級王者) ○割澤 誠(AJジム/全日本バンタム級2位) 3R 判定0-3 (豊永27-30/和田26-30/梅木27-30)
1R、ローの打ち合いの後、距離を詰めた魂叶獅に割澤が軽く右ストレートを合わせると、魂叶獅はスリップ気味ながらもダウン。2Rには偶然のバッティングで割澤の額が切れ、魂叶獅に減点1。後が無い魂叶獅は必死で攻めようとするも空回りが続き、惜しくも判定負け。割澤は真後戦に続きはまっこ勢から2連勝を果たした。
第2試合 第10代全日本ミドル級王座決定トーナメント準決勝 サドンデスマッチ ×佐藤皓彦(JMC横浜GYM/前全日本スーパーウェルター級4位) ○白川裕規(S.V.G./前全日本スーパーウェルター級6位) 3R 判定1-2 (野口27-28/勝本28-27/和田27-28)
1R、佐藤が右ミドルの直後に右ハイを当てダウンを先取。だが2R、白川が接近戦で強引にパンチの連打を当てると、アッパーとストレートの連打でダウンを奪い返す。3Rも白川がパンチで主導権。佐藤は組んで防御するのがやっと。終盤に肘で白川の額を切ったため、ジャッジの評価は割れたが、2票獲得したのは白川。これまで2連続KO勝ちをおさめ相性のいい新宿FACEでの決勝戦に進出した。
第1試合 フェザー級 サドンデスマッチ ○水落洋祐(はまっこムエタイジム/全日本フェザー級6位) ×上松大輔(チームドラゴン/J-NETWORKフェザー級5位) 1R 0'56" KO (左フック)
第1試合で珍事が起こった。開始1分足らず、両者左フックで相打ちとなり、同時にダウンする。先にもらいダメージの少なかった水落はすぐさま立ち上がり、10カウントになっても立ち上がれなかった上松にKOが宣告された。
◆オープニングファイト
第3試合 ライト級 3分3R △鈴木真治(藤原ジム) △翔太(S.V.G.) 判定0-0 (29-29/30-30/30-30)
第2試合 ミドル級 3分3R △ドラゴン司(勇心館)※木塚龍司よりリングネーム変更 △入月健一(S.V.G.) 判定0-1 (29-29/29-29/29-30)
第1試合 フェザー級 3分3R △藤井基文(月心会) △甲野裕也(S.V.G.) 判定0-0 (29-29/30-30/30-30)
Last Update : 04/15 23:49
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