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(レポ&写真) [修斗] 7.21 後楽園:外薗が新王者に。松根・リオン苦戦

サステイン "プロフェッショナル修斗公式戦 supported by Crymson"
2006年7月21日(金) 東京・後楽園ホール
認定:インターナショナル修斗コミッション

  レポート:徳永崇(外薗戦・松根戦・田澤戦)、本庄功志(その他の試合)
  写真:井原芳徳  【→カード紹介記事】 【→掲示板スレッド】

第10試合 メインイベント 修斗フェザー級世界王座決定戦 5分3R
○外薗晶敏(フリー/世界1位) 
×大沢ケンジ(和術慧舟會A-3/世界2位)
判定3-0 (菅野30-27/横山30-28/鈴木29-28)

※1R大沢に左フックで1ダウン
※外薗が第4代王者に

 元シュートボクシング王者の吉鷹弘氏に指導を受ける外薗と、ボクシングのJBスポーツジムのトレーナー・山田武士氏が率いる「チーム黒船」で練習を行っている大沢。2年前の対戦は外薗のスリーパーで決着したが、再戦は予想通りの打撃戦になった。

 大沢は周りながらジャブ、ワンツーを連打。外薗は下がりながらアゴをしっかりと引いてガードに徹し、時折打ち終わりを狙ってフックを放つ。大沢は前に出て左アッパーからの右ストレート、ワンツーをリズム良く放つが、クリーンヒットはなく、大きなダメージを与えられない。ほとんど手を出さない外薗だが、終了間際に飛び込んでの左フックをクリーンヒット。先制のダウンを奪い、形勢を逆転させる。

 2Rに入っても大沢が前に出る。歯を食いしばってコンビネーションを打ち込み、何発かパンチを当てる。だが外薗は下がって距離を取り、ジャブ、ストレートを再三ヒット。あっという間に大沢の右目が腫れ上がり、ドクターチェックが入る。
 何とか試合は続行したが、その後も前に出る大沢をさばき、外薗がパンチを当てる。手数では大沢が勝るが、打撃の正確性で外薗が勝る。大沢は左まぶたからも出血し、ほとんどグラウンドの展開がないまま試合は最終ラウンドを迎える。

 3R開始前、山田トレーナーが大沢に「チャンピオンになろうよ!」と激励すると、大沢は笑顔で「全然大丈夫です!」と応える。後がない大沢はゴングと同時にパンチで突っ込むが、外薗は勢いを受け流すように組み付き、バックを奪ってオンブ状態に。時間がない大沢は振りほどこうとするが、外薗はバランス良くバックをキープしてパンチを連打。大沢は右まぶたからも出血し、3度目のドクターチェックが入る。
 大沢は大逆転を狙ってコンビネーションを打ち込むが、外薗は冷静にさばいて無情のゴング。戴冠が決まると外薗はガッツポーズでマットに突っ伏し、喜びを露わにした。セコンドについていた三島★ド根性ノ助も弟子の戴冠に涙を流した。

 試合後のインタビューで、「これから追われることになるが、どんなチャンピオンになりたいか」という質問に「追われないチャンピオンになりたい」と答えた外薗。だが、水垣のほか、ダニエル・リマなどの外国人勢、試合カンを取り戻した松根が調子を上げることも予想され、休むことは許されない。人材がそろい、混沌とすることが予想されるフェザー級戦線は、好カード続発が期待できそうだ。

◆外薗「(ベルトを巻いた感想は?)色んな意味で重いですね。大沢選手はものすごく強かった。いつもより緊張もプレッシャーもあったので、ベルトを取れた喜びよりも、試合が終わったことでほっとしている気持ちが強い。少し休みたいですね。
(試合を振り返って)前の植松戦を見て、大沢選手は相当スタミナがある思うてました。テイクダウン対策は徹底的にしてきたやろうし、4つの攻防になったらヤバいんちゃうかなって。打撃で行くつもりはなかったけど、練習してきたことがそのまま出ました。本当に吉鷹さんのミット通りでした。
(グラウンドは考えなかった?)打撃は自信無かったんで、セコンドから『効いてるぞ』と声が聞こえてびっくりしました。(大沢の打撃は?)強いと思っていたけど、連打で来るタイプやったんでやっかいでした。何発かもらいましたが、正直効きませんでした。
(試合前の作戦は)始まるまでプランが本当に無くて『負けんのちゃうかな』と思うぐらいでした。(1Rはじっくり見ていたようだが何を考えていたのか)何も考えてなかった。『どうしようかな〜』と思っていたらフックが当たった(ベルトを狙って色んな選手が挑んでくるが)迷惑です。なるべくほっといてほしい。せっかく巻いたので(笑)」

 

第9試合 セミファイナル 66kg契約 5分3R
○リオン武(シューティングジム横浜/世界ライト級王者)
×コール・ミラー(アメリカ/アメリカン・トップ・チーム)
判定3-0 (鈴木29-28/横山30-28/若林29-28)


 リオンは5月に世界王者となってから初めての試合。今回は絶対に落とせない。セコンドにはバンタム級王者のマモルが付く。対するミラーはライト級にも関わらず187cmと長身で、MMA戦績は9戦8勝と決して侮れない相手だ。

 1Rはミラーが長い手足を生かしたハイにミドル、ストレートのようなジャブでリオンを圧倒。組み付くとヒザがリオンの顔面にまで届き、何発も打ち込んでいく。リオンは「身長差15cmはやりづらかった。打撃のリーチがわからなかった」と試合後話しており、規格外の身長に予想以上に苦戦している様子だ。

 2Rに入って、若干疲れの見えるミラーだが、スタンド打撃での優位は変わらない。しかし、リオンはテイクダウンを奪うと、得意のパウンドでコツコツダメージを与えていく。だが、ミラーは長い足を利かせ上手く殴らせてくれない。リオンはKOパンチが打てず、グラウンドでも若干苦戦。途中三角絞めを取られそうな場面も。

 3Rは完全なリオンペースに。組み付いてから押し倒すようにテイクダウンを奪うと、ほとんどグラウンドで上の状態をキープ。強烈なパウンドを落として確実にダメージを与える。ミラーはスタミナ切れか、下のポジションを返せず、いいようにパウンドをもらってしまう。リオンがパウンドを打ち続け試合終了。リオンが苦戦しながらも判定勝利を手にした。

 王者になってから初戦ということの緊張と身長差。「試合内容は30点。身長差を甘く見ていた。気合で乗り切った」ということから、予想以上の苦戦ということだろう。また「プロとしてKOできなかったことが悔しい」と語っており、チャンピオンとして観客を意識することも忘れない。
 リオンのチャンピオンとしての道はまだ始まったばかり。前王者ペケーニョが打ち立てた6度の王座防衛のように、リオンにも前王者に劣らない修斗の歴史に残る、偉大な選手になってほしい。

第8試合 フェザー級 5分3R
△松根良太(パラエストラ松戸/世界5位・前王者)
△水垣偉弥(シューティングジム八景/世界10位・05年新人王MVP)
判定0-1 (横山29-29/菅野29-30/鈴木29-29)


 ヒザの怪我でベルトを返上したフェザー級前王者の松根が、1年8か月ぶりにリングに帰ってきた。昨年2月のデビュー以来、破竹の連勝でクラスAに昇格した新鋭・水垣との対戦は、新王者が誕生し、新たな展開を迎えるフェザー級戦線を占う1戦となる。
 松根の入場曲「ミサイルマン」のイントロが響くと、会場は松根コールに包まれて大歓声。固い表情でコールを受けた松根は、ヒザにしっかりとテーピングを巻いており、長いブランクを作った負傷の重さを伺わせる。

 ゴングが鳴ると、水垣が突進。右ストレートで突っ込み、松根が組み付くが、水垣は片手で頭を抱えて重そうなアッパーとフックをたたき込む。何発か被弾した松根だが、跳びつき腕十字で反撃。回転してグラウンドに持ち込み、腕を伸ばしかけるが、水垣は腕を引き抜いて脱出する。

 下になった松根は腕十字からスイープを狙う柔術的な動きを見せ、水垣を浮かせてスタンドに戻る。その後も水垣はスタンドでパンチを狙い、松根がパンチをさばいて組み付く展開が続き、1R終了。松根はパンチがなかなか出ず、水垣のシャープなパンチに押されているように見える。

 2Rに入っても水垣が前に出てパンチを連打する。松根はカウンター狙いに徹し、間合いに入った水垣に大振りの右フックで応戦するが、両者ともクリーンヒットはない。
 中盤に、バックを狙った水垣を振り落とし、松根が初めて上になる。寝技の実力差は明らかで、松根はあっさりハーフになると足を抜いてパス。サイドに移行する瞬間に肩固めを狙うが、水垣はタイミング良く立ち上がる。
 打撃戦に戻ると水垣が優勢。スタンドは水垣、グラウンドは松根が優位に立ち、試合は最終ラウンドへ。

 3Rも打ち合いを望む水垣はパンチ、右ハイで前に出る。松根は何発かパンチをもらうが、効いているそぶりは見せず、差し合いでコーナーに押し込む。さらに外掛けでテイクダウンし、足を抜いてハーフ、サイドとポジションを奪うが、水垣も足を戻して立ち上がる。
 その後も松根は執拗に何度もテイクダウンするが、そのたびに水垣はしぶとく立ち上がってスタンドに戻す。試合終盤、松根のタックルを水垣が切ると、松根はスタミナが切れたかフラフラに。ノーガードになった松根に水垣がパンチを連打し、松根が応戦したところで終了のゴングが鳴った。

 判定は水垣に1票のドロー。結果が読み上げられると、松根は苦笑いで水垣の肩をたたいた。寝技のポジショニングや、相手の突進を避けてグラウンドに持ち込む試合巧者ぶりなど、松根は実力が錆びていないことを証明した。だが、この日目立ったのは、前王者に真っ向勝負を挑み、スタンドでプレッシャーをかけ続けた水垣の方だった。

◆水垣「(判定は?)ドローは妥当だと思う。スタンドの攻防では自分、ポジショニングでやられたのでドローかな。打ち合いで当たった数は自分の方が多かった。向こうの打撃は力があるけど大振りなので、ガードの上からも感触はあったけど、クリーンヒットはなかった。(寝技は)向こうを上にするとやられてしまった。最後は粘ったけど、技術には差があった。
(どんな心境で試合に臨んだ?)フェザー級のトップにたった人間はどれくらい強いんだろうと楽しみな気持ちが強かった。手堅くくると思っていたが、どんどん攻めてきたので印象とは違った。(結果は)満足はしていないけど、おもしろい試合ができた。素直に喜べなかったし、勝てなかったので何とも言えない。
(足を痛めたようだが?)何でやったかはわからないけど、1Rの途中で足首を痛めた。試合中だから気にならなかったけど、終わったらドッと痛みが来た。(今後は?)勝ったらすぐにでもタイトルマッチをやりたかった。勝てなかったので、なるべく早くたどり着きたい」

第7試合 バンタム級 5分3R
×生駒純司(直心会/世界1位) 
○阿部マサトシ(AACC/世界4位)
1R 2'06" TKO (ドクターストップ:スタンドパンチによる左目周囲の負傷)


 お互い入場時に大きな声援を浴びる。さすが世界1位と4位の試合は、入場から緊張感がある。観客が「絶対勝て!」「信じてるぞ!」と言うと、生駒は静かに頷き声援に応える。35歳という年齢が、独特の渋さを醸し出す。この対戦は過去に阿部が1勝1分と勝ち越し。お互い世界王座挑戦が視野に入っている為、負けられない一戦だ。
 ところが試合はあっけない形で終わってしまうことに。お互い左右のパンチ、生駒は前蹴り有効に使う。顔には笑みを浮かべ、なんとも不気味だ。スタンドの展開から、お互い少しずつパンチが当たり始め、緊張感ある戦いが続く。阿部が組み付いてコーナーに追い込むと、生駒に異変が。左目が腫れてほとんど塞がれている。すぐさまドクターチェックが入るが、ドクターが生駒の背中を軽く叩くと、会場からは嘆きの声が。どのパンチがフィニッシュに繋がったのかは不明だが、お互い不完全燃焼な試合となってしまった。

第6試合 フェザー級 5分3R
×田中寛之(直心会/環太平洋10位)
○田澤 聡(GUTSMAN修斗道場)
判定0-3 (鈴木27-30/横山28-30/若林27-30)


 田澤は就職によるブランクのため、昨年2月の小塚誠司戦以来の復帰戦となる。田澤は開始から、休養以前と同様に、ワンツーと左フックを中心にした打撃で前に出るが、右のガードが低く、田中の右フックをもらってしまう。差し合いになっても外掛けなどでテイクダウンし、ハーフ、バックとポジションを奪うが、田中は冷静に対処してリバーサルする。上下が目まぐるしく入れ替わり、1R終了。
 2Rも田澤が積極的に前に出るが、スタミナ切れかパンチにキレがない。田中も右フックで応戦するが、単発になってしまい、お互いに大きなダメージを受けない。田澤は首投げや差し合いからテイクダウンし、アームロックを狙っていくが、極めには至らない。
 3Rに入ると両者ともスタミナが切れるが、常に前に出るのは田澤。田澤は最後まで攻勢を崩さず、判定ながら復帰戦を白星で飾った。

第5試合 ウェルター級 5分3R
○遠藤雄介(GOKITA GYM/04年ウェルター級新人王)
×クレイ・グイダ(アメリカ/アメリカン・トップ・チーム/米大陸8位)
1R 2'47" 一本 (腕ひしぎ十字固め)


 グイダがリングインすると、気合注入の為かセコンドが両頬に張り手計6発。会場からは驚きの声が上がる。気合も十分なグイダは、開始早々相手に組み付き、そのまま持ち上げて、強引にテイクダウンしようとする。
 しかし、遠藤はフロントチョークを捕らえ、ガッチリと極めにかかる。マットに叩き落とされ外されてしまうが、グラウンドの状態で下になっても、すぐさま三角絞めをキャッチし極めにかかる。グイダは相手を持ち上げて外そうとするが、遠藤は腕十字に上手く移行。今度は極めて見事一本をものにした。

 PRIDE武士道&UFCで活躍しているジョシュ・トムソンに勝利し、修斗世界ランカーのギルバート・メレンデスと判定1-2の接戦を演じたグイダ。日本では無名に近いが、未知の強豪と言える。グイダも遠藤も修斗のランキングでは下位で、この試合がタイトル戦線に直結するとは考えにくいが、遠藤の勝利の価値は関係者も無視できないだろう。

第4試合 ライト級(新人王決定トーナメント準決勝) 5分2R
○石澤大介(パラエストラ札幌)
×中村浩士(東京イエローマンズ)
2R 4'26" TKO (レフェリーストップ:右フック)


 中村のセコンドには奇人・朝日昇が付く。朝日同様寝技の得意な選手だ。試合は中村の寝技中心に進み、途中腕十字を取りかける場面もあった。だが極められず、石澤が得意の立ち技に戻すと、一気に形勢逆転。2R、石澤の左ミドル一発で中村ダウン。なんとか立ち上がり、苦し紛れにタックルに行くが、石澤はなんなく切る。ほどなくフィニッシュブローの右フックが炸裂し万事休す。石澤が逆転勝ちを収めた。

第3試合 フェザー級(新人王決定トーナメント一回戦) 5分2R
×田村和也(マッハ道場)
○松本輝之(シューティングジム大阪)
1R 1'55" 一本 (チョークスリーパーホールド)


 田村は桜井“マッハ”速人率いる「マッハ・カルテット」の一人。セコンドにはもちろんマッハの姿が。マッハが認める選手だけに期待は高いが、試合は松本の一方的な展開に。
 1R早々松本がタックルでテイクダウンを奪う。一度スタンドに戻されるが、バックを取りグラウンドになると、相手の胴に足をしっかりクロスさせコントロール。そのままスリーパーを極め田村に何もさせず勝利した。

第2試合 バンタム級(新人王決定トーナメント二回戦) 5分2R
×神戸崇行(ALIVE)
○森 卓也(パラエストラ札幌)
判定0-2 (菅野19-20/横山19-20/鈴木19-19)


 試合はお互いアグレッシブに攻める展開。森がグラウンドで上をキープし、試合をコントロール。2Rに神戸(かんと)が右ストレート、フックとヒットさせる場面もあったが決定打には至らず。判定ではグラウンドで優位に立っていた森に軍配が上がった。

第1試合 ウェルター級(新人王決定トーナメント準決勝) 5分2R
×野口ヨシキ(パラエストラ札幌)
○児山佳宏(パラエストラ松戸)
判定0-3 (菅野18-20/横山17-20/鈴木17-20)


 野口は今回プロデビュー戦。緊張による硬さもあってか、試合は終始児山に押される展開に。打撃をもらいテイクダウンを奪われると、コツコツとパウンドをもらってしまう。
 2Rに入っても児山優位は動かない。落ち着いてテイクダウンを奪うと、サイドに回りパウンド。効いた感のある野口だが、下から相手を上手く蹴って脱出しスタンドに戻す。しかし児山はすぐにテイクダウンすると、あっさりマウントに。そのまま試合終了。
 終始攻められた野口の顔は真っ赤になっていた。判定は文句なしで児山。一方的に試合を制した。

Last Update : 07/24 11:42

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