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(レポ&写真) [PRIDE GP] 7.1 埼玉:シウバ、藤田を粉砕。吉田も敗退

DSE "PRIDE無差別級グランプリ2006 2nd ROUND"
2006年7月1日(土) 埼玉・さいたまスーパーアリーナ 観衆:44,606人

  レポート&写真:井原芳徳  【→カード紹介記事】 【→掲示板スレッド】
 
◆無差別級GP二回戦

第9試合 1R10分・2-3R5分
×吉田秀彦(日本/吉田道場/102.0kg)
○ミルコ・クロコップ(クロアチア/チーム・クロコップ/101.5kg)
1R 7'38" TKO (タオル投入:右ローキック)


 吉田が胴タックルと払い腰でテイクダウンを奪いそうになるが、ミルコはギリギリのところで持ち直し、腰の強さを発揮する。スタンドの打撃戦でミルコは左ハイや左ミドルを当てるが、吉田も相手が打つ前に右フックを振り回す積極的なファイトで応戦する。
 吉田の戦略は、ある程度打撃で応戦した後、ミルコのスタミナ切れを待って得意のグラウンドに持ち込むというもの。吉田が延髄斬りのような捨て身の右ハイを放った後、ミルコは防御の際に勢い余るように吉田の上に。ガードポジションの吉田はこの時、ミルコの息が荒く、休んでいたことに気づき、「いける」と感じたという。

 だがミルコが立ち上がりブレイクがかかり、スタンドの攻防に戻ると、ミルコの右ローに吉田が痛そうな表情を見せる。ミルコは序盤に初めて右ローを打った際、吉田がブロックできないことを見切り、「下を蹴っていくことで、怪我をせず安全に試合ができることに気づいた」と明かす。一方の吉田は試合後「左ハイや左ミドルの対策をしていたけど、右ローは予想していなかった」と話した。大技ばかりに目が行き、逆にそれにつなぐ、あるいは着実に効かせていく小技への目配りが足りなかったようだ。
 その後ミルコは右ローを効かせつつ、左アッパーで吉田をダウンさせる等圧倒。吉田がマットに倒れても、ミルコは深追いせずブレイクを要求する。最後は右ローで吉田がダウンした後、島田レフェリーがスタンドを命じても立ち上がれなくなったところで、セコンドからタオルが投入され終了となった。

 大会後の共同インタビューで、ミルコは準決勝について「3人(ノゲイラ、ジョシュ、シウバ)とも戦ったことがあり、別々に長所があり、それぞれ危険な相手だ」「戦う順番はどうでもいい。とにかくベルトが欲しい」と話した。
 代理人の話によると、今回はいつもより早めに来日し、時差ボケ対策がうまくいかなかったとのこと。9月の準決勝〜決勝の大会ではさらに早めに来日。「スタミナが無いわけじゃないことを本人が証明したがっている」とのことだ。

 敗れた吉田は「自分に腹が立つ。打撃がまだまだだった。先のことを考える余裕が無い」と話し、ガックリとうなだれていた。吉田と藤田が敗れ、準決勝を前に日本人全滅となったが、榊原信行DSE代表は「日本のファンが求めるファイトをした。敗れたがPRIDEという場を生き続けさせてくれた。準決勝のリザーバーに考えたい」と二人を高く評価した。
 準決勝の組み合わせはこれまで同様、会場とPRIDEオフィシャルサイトでのファン投票をもとに決定される。各選手ともそれぞれ戦いたい相手はいるが、投票結果に一任する考えだという。
 

第8試合 1R10分・2-3R5分
×マーク・ハント(ニュージーランド/オシアナ・スーパーファイタージム/126.5kg)
○ジョシュ・バーネット(アメリカ/AMCパンクレイション/パンクラス無差別級王者/112.0kg)
1R 2'02" チキンウィングアームロック


 ジョシュはパンチを振りながら組み付いてテイクダウンを狙う。1度目は突き放されたが、2度目はテイクダウンに成功。ハーフからあっさりサイドに回ることに成功すると、アームロックを極めタップを奪い無傷の完勝を果たした。
 マイクを持つと、「アター!ホクトシンケンハ、ムテキダ!」と絶叫。紹介VTRでもジョシュの好きなアニメ・北斗の拳のネタがふんだんに盛り込まれ、完全にそのイメージが定着したようだ。
 一夜明け会見では、準決勝で戦いたい相手について「誰とでもやりたい。トーナメントが終わっても彼らとは再び戦うことになる。今誰と戦うかはあまり重要なことではない」とコメントしていた。

第7試合 1R10分・2-3R5分
×藤田和之(日本/「Team Japan」藤田事務所/107.0kg)
○ヴァンダレイ・シウバ(ブラジル/シュートボクセ・アカデミー/PRIDEミドル級王者/99.7kg)
1R 9'02" TKO (タオル投入:サッカーボールキック)


 開始早々、シウバがパンチと膝でチャンス。藤田は膝をつかんで倒して上になるが、キープに失敗しシウバの下からの腕十字につかまってしまう。藤田は辛くも逃れるも、上で休むのがやっと。シウバも足をフックし動かず、両者に膠着イエローが出されスタンドに戻る。
 その後は度々パンチが激しく交錯するが、着実さではシウバだ。右ローを効かせて下に意識を向けさせた後、右ストレートで藤田をダウンさせる。藤田は足に組み付いて防御しようとするが、ここぞというチャンスでのシウバのラッシュを食い止めることができない。何発も強烈な蹴りを頭に浴び、島田レフェリーが止めるのを躊躇していると、ようやくタオルが投入され試合終了となった。

 マイクを持ったシウバは、ファンに感謝の意を述べると共に、3週間前に肋骨を折り十分な準備ができなかったことを明かした。準決勝で戦いたい相手に関しては「あえて選ぶならミルコ。前回は特別ルールの試合だったので、今度こそ決着をつけたい」と一夜明け会見で語っていた。
 敗れた藤田はシウバの腕十字で左肘を負傷。シウバによると「ミシミシ音がしていた」という。榊原代表は9月大会のリザーバーに日本人選手を抜てきしたい考えだが、怪我の程度によっては藤田の出場は困難となりそうだ。
 

第6試合 1R10分・2-3R5分
○アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ(ブラジル/ブラジリアン・トップチーム/111.0kg)
×ファブリシオ・ヴェウドゥム(ブラジル/チーム・クロコップ/105.0kg)
判定3-0 (ヒューム=ノゲイラ/小林=ノゲイラ/三宅=ノゲイラ)


 柔術のテクニシャン同士の対決だったが、試合は大半が打撃戦に。ノゲイラはヴェウドゥムの寝技を警戒し、相手より勝る打撃で勝負する。パンチでダウンさせた後も、一瞬ギロチンを狙っただけで、深追いせずスタンドに戻す。
 その後も数度ダウンを奪い主導権。1R終盤にはまぶたを切り、2Rにはドクターチェックが入るが、タックルを切り続ける等、ヴェウドゥムになかなかチャンスを与えない。
 3Rにはギロチンでチャンスを作り、ようやく寝技勝負が増えるが、極めにいくというより判定まで逃げ切るといったほうがいいような展開。ヴェウドゥムの肩固めやチョークといった仕掛けを難なく防ぎタイムアップ。文句無しの判定勝ちで準決勝に駒を進めた。
 ノゲイラはバックステージでのインタビューで、シウバとの準決勝での対戦を希望。「誰でもいいが、選ぶならシウバ。彼とはいい試合ができるだろう。関節技で仕留めたい」と話していた。

 
◆ワンマッチ

第5試合 ミドル級 1R10分・2-3R5分
○中村和裕(日本/吉田道場/92.9kg
×エヴァンゲリスタ・サイボーグ(ブラジル/シュートボクセ・アカデミー/91.7kg)
1R 4'49" V1アームロック


 中村の入場時、吉田道場のスポンサーであるディスカウントストアのドンキホーテのマスコットキャラが花道でダンスを踊る。フジテレビの放映中止により、このような演出も可能になったのかもしれない。
 試合は終始中村ペース。タックルでテイクダウンに成功すると、ハーフガードの体勢からパンチを連打。パスガードするとさらにパンチを浴びせ、最後はアームロックでタップを奪った。試合後はマイクを持ち、「PRIDEは好きですか?僕も大好きです」とPRIDE愛をアピールした。

第4試合 1R10分・2-3R5分
○アントニオ・ホジェリオ・ノゲイラ(ブラジル/ブラジリアン・トップチーム/94.6kg)
×アリスター・オーフレイム(オランダ/ゴールデン・グローリー/94.9kg)
2R 2'43" TKO (タオル投入:スタンドのパンチと膝の連打)


 1R、アリスターが長いリーチを活かして右ハイ等を当て主導権。左ローでサウスポーのホジェリオがバランスを崩す場面も。終盤にはホジェリオが組み付いて上になるが、攻めあぐねてしまう。
 だがホジェリオは2Rになると、1Rから当てていたジャブに加え、ストレートやフックも当てだすように。アリスターもパンチを返し、消耗戦の様相を呈してくると、チャンスをつかんだのはホジェリオだった。左ストレートでアリスターを後退させると、パンチと膝のラッシュを仕掛けたところでアリスターのセコンドがタオルを投入。ホジェリオは見事返り討ちに成功した。
 アリスターは試合前に首を負傷する等、万全では無かったというが、タオル投入には不満を示していた。

第3試合 ミドル級 1R10分・2-3R5分
×高橋義生(日本/パンクラス/92.9kg)
○ビクトー・ベウフォート(ブラジル/フリー/92.8kg)
1R 0'36" KO (左フック)


 高橋がリズムよく左ローを当てた後、タックルを試みる。だがベウフォートが突き放すと、直後にパンチが交錯し、ベウフォートの左フックがクリーンヒット。高橋がダウンしあっけなく決着がついた。

第2試合 ヘビー級 1R10分・2-3R5分
○中尾“KISS”芳広(日本/フリー/104kg)
×イ・ウンス(李 恩秀)(韓国/CMA KOREA/97kg)
1R 4'16" TKO (ドクターストップ:膝蹴りによる左目下の負傷)


 紹介VTRからキスネタ満載の中尾戦。ゴング前には中尾がキスしようと前に出て、セコンドの矢野卓見が制止しようとする一幕も。中尾がレスリング仕込みの低空タックルで上になっても、観客から「中尾、チャンスだ!」「奪え!」といったヤジが飛ぶ。
 とはいえ試合運びは正統派。コーナーにウンスを寝かしてパンチを連打し、着実にダメージを与える。ウンスの腕十字狙いを逃れると、四つん這いになったウンスを両手で制して、頭に膝を連打する。この後中尾がまた上になると、ウンスの左目下が腫れ上がりドクターストップ。ややあっけなかったものの、ポテンシャルの高さを感じさせる内容だった。
 試合後はセコンドについていたファビアーノ・サイクロンの頭にキス。マイクを持つと、「このリング、サイコー!」と叫んだ。

第1試合 ヘビー級 1R10分・2-3R5分
×エジソン・ドラゴ(ブラジル/ブラジリアン・トップチーム/104.0kg)
○パウエル・ナツラ(ポーランド/高田道場/104.8kg)
1R 4'33" 腕ひしぎ十字固め


 開始すぐ、先に上を取ったのはドラゴだが、ナツラが下から腕十字を狙いチャンス。脱出を許したものの、今度はテイクダウンに成功するとマウントに。右のパンチを着実に当てダメージを与える。ドクターチェック後、リバーサルを許したが、今度の下からの腕十字は極まり一本。念願のPRIDE初勝利をもぎ取った。

榊原代表「今までと違う部分も、続ければ新しい魅力になる」

 フジテレビの契約解除後、初開催となったPRIDE。大会の進行に大差は無かったものの、大手企業の広告が激減し、紹介VTRの独特のアクも薄まる等、一昔前のPRIDEに戻ったかのような雰囲気だった。
  榊原代表は大会終了直後、PRIDE継続への自信と不安を聞かれると「不安ばっかですね」と苦笑いを浮かべた。だが一夜明けての会見では「今までと違う部分も、続けていくことで新しい魅力になる」「フジの放映中止をあえてポジティブに受け止め、今まで普通になっていたことを、いい意味で変化させるきっかけにしたい」と発言。ある程度の手応えを得たようにも感じられた。
 「今だに放送中止の理由がはっきりしない。僕が(社長を)辞めて済むなら辞める」。地上波中継再開についてこう語る一方、「格闘テレビ番組を作る気はない。ライブを中継したいと思っている局にやって欲しい。各局に放映して下さいと言って回る気はない」と強気の姿勢は崩さなかった。
 10月21日のアメリカ大会に関しては「1週間から10日のうちに、アメリカでサプライズをお伝えできる」とコメント。発表を待ちたい。

Last Update : 07/03 11:46

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