(レポ&写真) [IFL] 4.29 米国:チーム対抗戦大会が大々的に旗揚げ
IFL "Legends Championship 2006" 2006年4月29日(土) 米国ニュージャージー州アトランティックシティ:トランプ・タジ・マハール・ホテル&カジノ
レポート:シュウ・ヒラタ 写真:リカルド・ペレズ 【→掲示板・プロ総合スレッド】 ※大会のその他の写真はBoutReview USAの記事をご参照ください
IFL(International Fight League - インターナショナル・ファイト・リーグ)が遂に開幕した。 旗揚げ前に、全米ケーブル・テレビFSN(Fox Sports Net)とテレビ放映契約し、SUZUKIやXBOXなどの企業スポンサーシップを獲得するという異例のマーケティング・フレーム構築に成功した総合格闘技の新プロモーション。 エミー賞にも輝いたプロデューサー、ピーター・ラッセーにテレビ中継を仕切らせ、解説者にはクィントン・ランペイジ・ジャクソンを迎えた。スポーツ番組としてのクオリティ、そして総合格闘技ファンへのアピール。どちらの面でも及第点以上のエキスパートを揃えた。 更には日本市場としては絶対に無視できない存在、アントニオ猪木をリングサイドに座らせ、休憩明けにはリングの中に招き入れ「世界大使(Global Ambassador)」というタイトルを与えイベントを盛り上げた。 東海岸のギャンブルのメッカ、アトランテック・シティーのトランプ・タジ・マハール・ホテル&カジノでスタートしたこの新プロモーションの「枠作り」は、アメリカの総合格闘技史上では、今まだに類をみないスケールと称しても過言ではない。
そして何よりも「異例」といえるのは、このプロモーションが設けたシステムである。IFLでの試合は、男と男の果たし合いだけではない。チーム対抗戦によるリーグ戦フォーマットが全てを決めるのだ。 最終的には12チームを予定しているらしいが、各チーム、それぞれライト、ウェルター、ミドル、ライトヘビー、ヘビーの5人とリザーブ選手1人計6人の選手を揃える。そして4チームずつ各階級の5試合対抗戦でトーナメントを行う。各トーナメントの優勝チームが一年の終わりにプレーオフで当たり、優勝したチームがチャンピオンとなるのだ。 つまりNFL(National Football League - ナショナル・フットボール・リーグ)と似たようなシステム。選手のセレクションもプロモーションではなく各チームのコーチが行う。だからIFLにはベルトというものは存在しない。優勝チームの選手たちにはトロフィーと、チームスポーツでは恒例のチャンピオンシップ・リングが与えられるのだ。
(※補足:リザーバーは試合1ヶ月前のラインアップ発表の時点で正式に組み込むか、試合当日や前日に、あくまでもやむを得ない理由で選手が試合に出れないときにのみ出場が許される。戦略として、試合直前になって選手を引っ込めリザーバーの選手に試合をさせるという事もできなくはない。ライト級の選手でもヘビー級の試合にでることは可能なため、IFL公式サイトのメンバー表を見てみると、4チームともリザーバーはライト〜ウェルターの選手が登録されている。)
そのIFLの第1回トーナメントが4月29日に行われたレジェンズ・チャンピオンシップ2006である。 今回登場したのは4チーム。 各チームのヘッドコーチはヘンゾ・グレイシー、モーリス・スミス、バス・ルッテン、パット・ミレティッチである。 このチーム対抗戦というシステムの良し悪しは別として、テレビといいスポンサーといい、そしてこの4人のコーチたちといい、IFLは最高の布陣でリングの脇を固めたのは紛れもない事実である。
しかし肝心の選手たち、そう、リングの上で試合をする選手たちに関しては、最高のメンツと呼ぶには程遠い顔ぶれであった感が否めない。 この日行われたのはトーナメント10試合とスーパーファイト1試合。大会の第一部はルッテン率いるチーム・アナコンダスとミレティッチのチーム・シルバーバックスの対抗戦。この後に6月3日の第二回大会からサイドレポーターとしてTV中継チームに参加することが決定しているジェンズ・パルバーのスーパーファイト、そして第二部はヘンゾのチーム・ピットブル対スミスのチーム・シルバーシャークス。対抗戦はそれぞれの階級で5試合。つまり3試合勝ったチームが決勝に進むルールとなっている。 結果は4対1で圧勝したチーム・シルバーバックスと3対2で接戦を制したチーム・タイガーシャークスが、6月3日に行われる決勝への進出を決めた。
さて選手たちのラインアップだが、総合戦績34勝11敗2敗の大ベテラン、デニス・ホールマンもいれば、この大会が総合デビューとなるエリック・オーウィングスという選手も含まれているので、一体どういったガイドラインに沿って選手の選出をしたのかがあまりにも不透明だ。このIFLというのは、次世代のスターを発掘するリーグなのか、それとも世界中のスター選手を揃えるリーグなのか、何を目指しているのか理解しているファンはまだ少ない。
コーチが選手を選ぶ。しかもファイトマネーも全て一度コーチに支払われ、コーチが選手たちにギャラを支払うというシステムになっている。 一体どの世界のプロ・スポーツが、ヘッド・コーチひとりにそこまでの権限を持たせているのだろうか? フットボールでもベースボールでも、欧米のプロのアスリートというのは必ず選手ひとりひとりにエージェントがついており、そのエージェントがチームのジェネラル・マネージャーと交渉するのが常識となっているが、このIFLはチーム対抗戦という他のチームスポーツのフォーマットだけを真似、それ以外は全部コーチに任せるというシステムにしているのだ。
このシステムはどう考えても異常である。 コーチをコントロールし、必要となればそのコーチを解雇できるフロントがいなければ、ただ単に独裁者を作るだけなのではないだろうか? しかもリングで闘うのは選手であり、コーチではない。選手が常にファイトマネーを貰うべきであり、それをコーチが決めるのはどう考えても今のプロスポーツの流れからして逆行しているのではないだろうか? コーチがファイトマネーから選手の選出まですべての権限を持つ。これは総合格闘技に限らず、世界中のどのプロスポーツをみても類をみないシステムである。 IFLはすべての面で「異例」のスタートを切った。しかしその中でも本当の意味で「異例」なのは、試合をしないコーチにそこまでの権限を与えることではないだろうか。
【チーム・アナコンダス vs. チーム・シルバーバックス】
第1試合 ライト級 4分3R ×ジョン・シャッケルフォード(アメリカ/チーム・アナコンダス) ○バート・パラスゼウスキー(アメリカ/チーム・シルバーバックス) 2R 1'31" TKO (レフェリーストップ:左フック)
第2試合 ヘビー級 4分3R ×Krzystif Soszynski(カナダ/チーム・アナコンダス) ○ベン・ロスウェル(アメリカ/チーム・シルバーバックス) 1R 3'59" TKO (レフェリーストップ:パンチ)
第3試合 ライトヘビー級 4分3R ○アレックス・ショウナワー(アメリカ/チーム・アナコンダス) ×トラビス・ビュー(アメリカ/チーム・シルバーバックス) 2R 3'23" 一本 (ヒールホールド)
第4試合 ミドル級 4分3R ×Amir Rahnavardi(アメリカ/チーム・アナコンダス) ○ライアン・マッギバーン(アメリカ/チーム・シルバーバックス) 判定0-3 (27-30/27-30/27-30)
第5試合 ウェルター級 4分3R ×Mike Pyles(アメリカ/チーム・アナコンダス) ○ローリー・マーカム(アメリカ/チーム・シルバーバックス) 1R 0'44" KO (右ストレート→グラウンドパンチ)
※チーム・シルバーバックスが4勝1敗で勝ち越し、6/3開催のファイナルに進出
【スーパーファイト】 ライト級 4分3R ○ジェンス・パルバー(アメリカ/チーム・エクストリーム) ×コール・エスコベード(アメリカ/カマリロ柔術) 1R 0'56" KO (左フック)
【チーム・ピットブルズ vs. チーム・タイガーシャークス】
第1試合 ライト級 4分3R ○エリック・オーウィングス(アメリカ/チーム・ピットブルズ) ×ジャスティン・ジョーンズ(アメリカ/チーム・タイガーシャークス) 1R 2'50" 一本 (フロントチョークスリーパー)
第2試合 ウェルター級 4分3R ×グスタボ・シム・マチャド(ブラジル/チーム・ピットブルズ) ○ブラッド・ブラックバーン(アメリカ/チーム・タイガーシャークス) 判定1-2 (28-29/29-28/28-29)
第3試合 ミドル級 4分3R ×デウソン・ペジシュンボ・ヘレノ(ブラジル/チーム・ピットブルズ) ○デニス・ホールマン(アメリカ/チーム・タイガーシャークス) 1R 3'59" 反則 (グラウンド状態の相手の顔面への蹴り)
第4試合 ライトヘビー級 4分3R ○ジャマール・パターソン(アメリカ/チーム・ピットブルズ) ×アンディ・リース(アメリカ/チーム・タイガーシャークス) 1R 2'57" 一本 (フロントチョークスリーパー)
第5試合 ヘビー級 4分3R ×カルロス・クライン(アメリカ/チーム・ピットブルズ) ○デビン・コール(アメリカ/チーム・タイガーシャークス) 判定0-3 (28-29/27-30/27-30)
※チーム・タイガーシャークスが3勝2敗で勝ち越し、6/3開催のファイナルに進出
Last Update : 05/02 11:33
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