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(レポ&写真) [極真会館] 11.5-6 全日本:22歳初段 内田義晃が優勝

国際空手道連盟極真会館 "第37回オープントーナメント全日本空手道選手権大会"
2005年11月5日(土)、6日(日) 東京・東京体育館

  レポート&写真:高田敏洋  【→掲示板スレッド】

優勝  内田義晃(185cm100kg22歳初段 京都支部)
準優勝 塩島 修(162cm72kg30歳2段 下総支部)
第3位 徳田忠邦(180cm100kg30歳2段 大阪南支部)
第4位 加藤達哉(187cm98kg29歳初段 正道会館)
第5位 沢田秀男(180cm90kg26歳2段 正道会館)
第6位 田ヶ原正文(162cm70kg40歳3段 大阪なみはや支部)
第7位 市村直樹(175cm87kg39歳3段 城西下北沢支部)
第8位 田中健太郎(180cm90kg24歳2段 川崎中原支部)

敢闘賞 塩島 修
技能賞 田ヶ原正文
試割賞 内田義晃(26枚)
新人賞 内田義晃


【各試合結果】(第1日目の一回戦〜二回戦は割愛します)

■三回戦
徳田忠邦○-×トロイ・フリーマン(本戦5-0)
清水賢吾×-○大塚裕樹(本戦0-5)
別府良建×-○沢田秀男(本戦0-0、延長0-4)
佐久間俊行×-○尾崎 亮(本戦0-4)

松岡朋彦○-×近藤博和(本戦・延長・再延長全て0-0 体重判定)
荻原 強×-○内田義晃(本戦0-5)
市村直樹○-×谷口 誠(本戦5-0)
渡辺理想×-○木立裕之(本戦0-5)

田ヶ原正文○-×小沼隆一(本戦3-0)
佐藤 賢×-○森善十朗(本戦0-4)
金森俊宏×-○加藤達哉(本戦0-5)
バジリ・ティモフィエフ×-○鈴木雄三(本戦0-5)

香原琢巳○-×里山義和(本戦3-0)
アルテム・プーカス×-○塩島 修(本戦0-1、延長0-4)
池本 理○-×ファブリス・フォーメン(本戦4-0)
井野真孝×-○田中健太郎(本戦0-3)


■四回戦
徳田忠邦○-×大塚裕樹(本戦5-0)
沢田秀男○-×尾崎 亮(本戦5-0)

松岡朋彦×-○内田義晃(本戦0-5)
市村直樹○-×木立裕之(本戦4-0)

田ヶ原正文○-×森善十朗(本戦0-2、延長4-0)
加藤達哉○-×鈴木雄三(本戦、左中段回蹴一本)

香原琢巳×-○塩島 修(本戦0-4)
池本 理×-○田中健太郎(本戦0-2、延長0-3)


■準々決勝

徳田忠邦○-×沢田秀男(本戦0-0、延長3-0)

 腰の重い構えで相手に圧力をかけながら圧倒する重戦車徳田と、正道勢が得意とする超接近戦で下突き膝蹴りのコンビネーションを多用する沢田。4回戦まで沢田はこの膝蹴りで相手を押し込んで優勢を得る場面が目立ったが、体重で約10kg沢田を上回り受け腰の強い徳田はこれまでの対戦相手のように後退してくれない。
 両者は共通して残り30秒で一気に追い込んで優勢を決定づける戦法を用いるが、本戦ではこのラッシュの張り合いに決定的な優劣が出ず判定は引き分け。
 しかし延長に入ると徐々に体力差が現れ始め、後半息が上がって苦しそうな表情を覗かせる沢田に対してポーカーフェースで押し続けた徳田が判定勝利を得た。


内田義晃○-×市村直樹(本戦5-0)

 将来を嘱望される期待の新鋭内田と、1年間のブランクを経て帰ってきたベテラン市村。「世代闘争」をテーマとして掲げる本大会を象徴する一戦である。
 懐を深く構え相手の攻撃を着実に捌きながら「ショッ」「ショッ」と一発一発に気合いを込めて攻撃する内田が、徐々に市村の動きを封じ込める。コンスタントな手数と攻勢で着実に相手を上回った内田が本戦5-0と予想以上に明確な差を見せて準決勝に駒を進めた。


田ヶ原正文×-○加藤達哉(本戦0-4)

 4回戦で新進気鋭の鈴木雄三を相手に、187cm・98kgの巨体を存分に生かして中段回し蹴り一本の圧勝で勝ち上がってきた正道会館の加藤は、鈴木同様軽量級の田ヶ原も体にものを言わせて「圧殺」する戦法に出た。業師田ヶ原はステップワークで距離を取りヒットアンドアウェーの「巨漢料理法」を試みるも、自身の制空権にズカズカと一直線に踏み込んでくる加藤にほとんど一方的に追いかけられるような展開になってしまう。
 加藤の攻撃にも目立った有効打は見当たらなかったが、手数と攻勢の差は認めざるを得ないところ。結果4-0で勝利した加藤が他流派として四強の一角に食い込む一大事をやってのけた。


塩島 修○-×田中健太郎(本戦0-0、延長0-1、再延長3-0)

 本大会の最大エポックとなったのが本戦。
 前年王者にして極真新世代をリードするエース田中は、ここまで殆ど危なげのない戦いで着実に勝ち上がってきた。懐の深い大きな構えから、全く重心をぶらすことなく相手の攻撃を捌ききってカウンターを合わせていくそのスタイルは、早くも爛熟の気配すら漂わせる。この泰然自若とした王者を「動かせる」か、それが対戦相手が勝利をもぎ取れるかどうかの分かれ目と思われた。
 そしてそれをやってのけたのが塩島だった。162cm・72kg。軽量級である。だがその戦法は他の軽量級選手と一線を画する。ある程度組み手スタイルが洗練された現在の空手では、体力的に上回る相手には前後のヒットアンドアウェーと左右の回り込みのステップワークを用いてスピードを活かして攪乱するのが常道だ。しかし塩島は相手の懐深くまでステップインし、そこから全体重を乗せた突きと蹴りでいわば「正面突破」を仕掛ける。言葉で言うのは簡単だが、実際には体力差をカバーするスタミナと、相手の攻撃圏内に踏み込み突破する度胸が無くては実践し得ない戦法である。闘志のこもった塩島の攻撃に、正確無比な田中の捌きが少しずつズレ始めた。塩島のラッシュに、田中が場外へ押し出される場面も。館内からも期せずして塩島コールが沸き起こる。
 本戦、延長と一歩も下がらず田中と対峙し続けた塩島は、遂に再延長で3-0の判定をもぎ取り、体重判定を待たず堂々の勝利を収めた。


■準決勝

徳田忠邦×-○内田義晃(本戦1-0、延長0-2、再延長1-3)

 本戦、徳田は体を活かしてジリジリと前に出、ラスト30秒でラッシュして押し切るこれまでどおりの戦法を狙うが、徳田同様に体格もあり懐の深い組み手をする内田は下がらず、戦いは長期化する。掌を合わせての攻撃で両者が注意を受けるような拮抗した展開が再延長まで続くが、最後まで全く息を上げることなく攻防バランスの取れた戦いを続けた内田が僅差の判定で勝利した。


加藤達哉×-○塩島 修(本戦2-0、延長0-5)

 田中戦で本大会の台風の目となった塩島に対し、期せずして敵役を引き受ける恰好になってしまった加藤は、これまで同様の「圧殺」戦法。しかし塩島はここまでの加藤の対戦相手と違って、プレッシャーに晒されてもステップワークを使って回り込む動きは見せず、むしろ自分から踏み込み距離を潰して鋭いローで対抗する。これに対して加藤は前蹴りと膝蹴りで押し込み、徹底した左ローで塩島の奥脚を潰しにいく。さすがに塩島もこの加藤の攻撃には徐々にダメージを蓄積していったかに見えたが、本戦判定は2-0、まさに首の皮一枚で生き延びた。
 これで勢いを得た塩島は、延長に入ると気力を振り絞った反撃に出る。一方本戦での勝利を予想していた感のある加藤はやや集中力を切らしてしまったか、攻撃が雑になり時折息が上がったかのような苦しそうな表情も浮かべる。
 結果、延長は5-0で塩島。加藤はすんでの所で他流派による決勝進出という大魚を射止めることが出来なかった。


■三位決定戦

徳田忠邦○-×加藤達哉(本戦4-0)

 共に巨体を利した戦いを得意とする両者だが、相手が誰であっても腰の重い構えでジリジリ前進する徳田に対し、ここまで軽量級選手との対戦が続いた加藤は下段突きと膝で相手を押し込む自分の戦法を貫き通すことが出来なかった。その結果判定は4-0で徳田へ。


■決勝

内田義晃○-×塩島 修(本戦2-0、延長4-0)

 体格差のある塩島を押し潰すような内田の戦法は、準決勝で加藤が塩島に対して用いたのと相似形をなしていた。本戦判定も塩島の準決勝戦と同様の2-0。だが加藤と異なり内田はこの判定にも全く集中力を途切れさせることはなく、延長に入っても、これまでの戦いでダメージが蓄積していたであろう塩島の右脚に下段回し蹴りを叩き込み続ける。
 塩島も何とか攻撃を返そうとするが体力的に限界に来ていた。動きにやや精彩を欠き、準決勝までのような鋭い下段や重さと回転力のある突きのラッシュが見られず、延長の判定で遂に力尽きた。

 表彰式、泣き腫らした目を空手着の裾で何度も拭う塩島の姿が印象的であった。
 一方優勝に合わせて新人賞さらに試割賞まで掌中にした内田は、喜びの中にもどこか穏やかさすら感じさせる平常心の表情。この新人離れした落ち着きが、次代を担う。
 

Last Update : 11/07 22:49

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