(結果) [正道会館] 9.4 大阪:外岡、重量級を制し三階級制覇
正道会館 "第7回ウェイト制オープントーナメント全日本空手道選手権大会2005" 2005年9月4日(日) 大阪・大阪府立体育会館第一競技場
レポート:仲村直 今回は選手の選定基準も厳しくなり、全出場選手数も昨年の153人から83人へと約二分の一に絞り込まれた狭き門となった。
また競技面でも、選手には更に勝ちにこだわり、創意工夫することが求められている印象を受けた。
今年からほぼ互角な勝負の判定に関しても、トーナメントという性質を考えて無闇に延長戦を課すのではなく、ボクシングの「マスト判定」に近い感覚での判定を盛り込み、勝ち上がった選手に余分な負荷を与えないという工夫などが取込まれたからだ。
そのためか、本戦で勝負を決めなければならないという意識が選手の側にも徹底したようで、緊迫した好勝負が続出し、再延長試合が激減。「僅差」勝負の象徴でもあった“試割”勝負が一つもなかったという現象もみられた。選手の勝負感覚に対する影響にくわえて、大会進行もスピーディになっており、新機軸として評価に価するのではないだろうか。
【重量級】
この階級の決勝の常連であった加藤は、準決勝で外岡に道を阻まれる形になった。かくて決勝は去年と同じ二人の対決。ただ今年の外岡はこれまでの“巧い”組み手に加え、勝ちにこだわる気持ちを溢れた闘いを見せついに3階級制覇を達成した。
優勝 外岡真徳(総本部) 準優勝 沢田秀男(東大阪本部) 三位 加藤達哉(東京本部) 徳原泰禎(総本部)
<決勝> 沢田秀男(東大阪本部)vs外岡真徳(総本部) 本戦1−0 延長戦0−0 再延長戦0−3
突進する沢田の攻撃を巧みにかわし、ときにあおるように声をだす外岡、後半疲れのみえた沢田に得意の下段の蹴りを打ち込み、試合をまとめていった。
「今回試合に出られなかった選手の思いや、少年部の生徒の「先生がんばれ」の声を背負って出たことが自分の力になった。醜くてもいいから勝とう、勝たなければ意味が無い。準優勝なら去年と同じですから」と語り、正道空手を背負う責任感を露にしていた。転向二年目にして“正道の顔”でもある最も重い階級を制覇した外岡。華麗な技の切ればかりがクローズアップされてきた外岡だが、この階級の二強である加藤、沢田を下した背景には、この“覚悟”とこれまでにない気迫があった事は間違えない。
<準決勝> 沢田秀男(東大阪本部)vs徳原泰禎(総本部) 本戦3−0
外岡真徳(総本部)vs加藤達哉(東京本部) 本戦1−0 延長戦3−0
一昨年の王者に対し、距離をつぶす闘いを展開。直線的な攻めを躱した外岡が勢いを見せつけた
<準々決勝> 沢田秀男(東大阪本部)vs近藤正将(東京本部) 本戦5−0
徳原泰禎(総本部)vs山下敦央(内田塾) 本戦0−0 延長戦5−0
外岡真徳(総本部)vs松田典人(四国本部) 本戦4−0
加藤達哉(東京本部)vsサンティアゴ・ガロ(ウルグアイ支部) ※上段膝蹴りで技あり、左下突き技ありの合わせ一本勝ち
【軽重量級】
昨年に続き板谷の二連覇。決勝での福永との技のラッシュは今日一番の迫力
優勝 板谷泰志(東京本部) 準優勝 福永規男(中部本部) 三位 小西雅仁(総本部)吉見直喜(四国本部)
<決勝> 板谷泰志(東京本部)vs福永規男(中部本部) 本戦3−0
<準決勝> 板谷泰志(東京本部)vs小西雅仁(総本部) 本戦5−0
福永規男(中部本部)vs吉見直喜(四国本部) 本戦5−0
<準々決勝> 板谷泰志(東京本部)vs梶原知之(北九州本部) 本戦4−0
小西雅仁(総本部)vs亀島航(如水会館) 本戦5−0
福永規男(中部本部) vs王丸由博(百道会) 本戦4−0 吉見直喜(四国本部)vs望田将人(東京本部) 本戦1−0 延長戦4−0
【中量級】
力ののった突きと蹴りで、闘志が前に出る戦いぶりで村尾が九州勢をおさえ優勝を飾った。
優勝 村尾健司(南大阪本部) 準優 勝後藤康広(大分支部) 三位 安田誉志人(北九州本部)松島佑典(北海道支部)
<決勝> 村尾健司(南大阪本部)vs後藤康広(大分支部) 本戦5−0 終了間際に左下段回し蹴りで村尾に技あり
<準決勝> 村尾健司(南大阪本部)vs安田誉志人(北九州本部) 本戦5−0
後藤康広(大分支部)vs松島佑典(北海道支部) 本戦 上段膝蹴りで後藤の一本勝ち
<準々決勝> 安田誉志人(北九州本部)vs前田行哉(義心塾) 本戦1−1 延長戦5−0
村尾健司(南大阪本部)vs吉田裕幸(真盟会館) 本戦0−0 延長戦3−0 松島佑典(北海道支部)vs石塚一睦(東京本部) 本戦4−0
後藤康広(大分支部)vs工藤健太郎(埼玉支部) 本戦3−0
【軽量級】 ※大渡の牙城に東大阪勢が迫る。朴の今後が楽しみ。
優勝 大渡博之(東京本部) 準優勝 川本信広(東大阪本部) 三位 朴明洙(東大阪本部)嘉志摩匠(中部本部)
<決勝> 大渡博之(東京本部)vs川本信広(東大阪本部) 本戦1−0 延長戦5−0
<準決勝> 大渡博之(東京本部)vs朴明洙(東大阪本部) 本戦 上段膝蹴りで大渡の一本勝ち
川本信広(東大阪本部)vs嘉志摩匠(中部本部) 本戦 左中段突きで川本の一本勝ち
<準々決勝> 大渡博之(東京本部)vs椙村祐亮(中部本部) 本戦5−0
朴明洙(東大阪本部)vs杉野圭祐(中部本部) 本戦5−0
嘉志摩匠(中部本部)vs鯉渕拓(東京本部) 本戦2−0 延長戦0−0 再延長戦4−0
川本信広(東大阪本部)vs下垣内利幸(豊中支部) 本戦3−0
【個人賞】
技能賞 村尾健司(南大阪本部) 審議委員特別賞 大渡博之(東京本部) 殊勲賞 板谷泰志(東京本部) 最優秀選手賞 外岡真徳(総本部)
※階級ごとの選手層の充実を本意とするウェイト制大会だが、中本本部長の総括によれば「将来的に無差別での戦いも行っていきたい」との発言があった。三階級制覇の偉業をなしとげた外岡にしても、これまで無差別を目指したいという意味の発言を行って来ており、その方向性とぴったり軸を同じくしている事は決して偶然ではあるまい。
これまで競技として階級制を採用し、一つの完成形に達したようにも見える正道空手。しかし、あえて今、無差別を再び目指すという方向性は、再度空手の原点に戻ろうという“揺り返し”現象なのかもしれない。いずれにせよ、個々の選手は今日を通過点にさらなる精進の道を歩んで行く事になる。
Last Update : 09/05 06:18
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