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(レポ&写真) [UFC] 8.6 ベガス:マーコート勝利もブーイングの雨

UFC "ULTIMATE FIGHT NIGHT : LIVE ON SPIKE TV!"
2005年8月6日(土) 米国ネバダ州ラスベガス:コックス・パビリオン

  レポート:シュウ・ヒラタ(BoutReview USA)  Photo by Dave Mandel
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第8試合 ミドル級 5分3R
○ネイサン・マーコート(アメリカ/ハイ・アルティチュード)
×アイバン・サラベリー(カナダ/AMCパンクレイション)
判定3-0 (30-27/30-27/29-28)


パンクラス王者マーコート、膠着デビューにブーイングの雨

 いつもの通り左ジャブで自分の距離を保ちながら相手の様子を伺うマーコート。対するサラべリーも横にまわりながらローキックで揺さぶりをかける。しかし一発一発の威力はマーコートの方が上だ。重いローキックをサラベリーの外股、内股へと叩き込み、自分のペースを全く崩さない。
 スタンディングでの打撃のさぐり合いが4分ほど続いたあと、サラベリーのキックを掴んだマーコートは右ストレートを合わせそのままグラウンドへ。マーコートはここで足関節にいくがそれをサラベリーが蹴り上げながらスタンディングに戻したところで1ラウンド終了。

 2ラウンドも同じ展開が続く。マーコートは左ジャブとローキックでリズムをとりながら右ストレートを狙い、サラベリーはローキックをあてながらのタックル狙い。サラベリーは何度かタックルを仕掛けるが、懐が深いマーコートはそれをすべて切りグラウンドへ押しつぶす。グラウンドでの攻防に長けているサラベリーは巧くガード、そして攻めあぐねたマーコートはスタンディングに戻す。
 なかなか距離を詰めてラッシュをかけない両者に場内からブーイングが浴びせられる。

 3ラウンド、サラベリーのキックを捕らえて倒したマーコートだが、今度はグラウンドへ付き合わずアリー猪木状態からキックをサラベリーの足に叩き込む。しかしそれも次に続かず、レフェリーがブレイクに入りステンディング。
 サラベリーのタックルを切り、フロントチョークに入ったり、上から押さえたままスタンディングに戻し膝蹴りを頭部に当てたりしたマーコートの方がペースを握ってはいたが、大半は2ラウンドと全く同じ展開に終始。

 文句無しの判定勝ちだったが、キング・オブ・パンクラス、マーコートのオクタゴン・デビューは、この日一番の凡戦となってしまった。「勝ちにいく」という気持ちよりも「負けられない」というプレッシャーに縛られた二人の闘いに、正直なアメリカのファンは惜しみない(?)ブーイングを浴びせていた。
 

第7試合 ミドル級 5分3R
×パトリック・コート(カナダ/BTTカナダ)
○クリス・レーベン(アメリカ/チーム・クエスト)
判定1-2 (28-29/29-27/27-30)


傍若無人なレーベン、自己分析は意外とクール

 SPIKE TVのリアリティ番組「ジ・アルティメット・ファイター(TUF)」のシーズン1では、酔っぱらってルームメイトのベッドに小便したり、試合でKO勝ちしたことのある選手(マイク・スウィク)にちょっかいを出したりなど普段は傍若無人そのものだが、自分の父親が誰なのか知らないことを仲間に罵られて落ち込んでしまうセンシティブな一面もみせ、番組の話題をさらった感のあるリーベン。相手がカナダのコーテイということもあってか、場内の声援はリーベンに集中する。

 いつもはすぐに殴り合うリーベンだが、スタートと同時にコーテイをフェンスに押し付け、足を踏み付けたりなどしてから片足を取りテイクダウンを狙う。しかし腰の低いコーテイは持ちこたえ、首相撲からのエルボー、パンチの攻防が続く。
 やっとフェンス際から離れたところにコーテイの右ストレートがクリーンヒット、しかしリーベンは後ろに下がるどころか前へ出ての得意の左フックで応戦。両者一歩も譲らない打撃の攻防が続く。

 2ラウンドに入ってからもリーベンは前に前へと出る。コーテイは下がりながらも、ティト・オーティズに膝をつかせたあの重い右ストレートをヒットさせるが、打たれ強いリーベンをそれをもともせずに、左、右のフックで応戦。確実にパンチを当てているコーテイだが、どうしても押されフェンス際まで下がってしまう。
 しかしフェンス際で組み合った所を巧く内股をひっかけ何とかリーベンを倒したコーテイ。だがパンチに入るために少しコーテイが上体を起こした瞬間、リーベンは体を後方に一回転させ、すぐに立ち上がってしまう。もちろんその動きに合わせコーテイはパンチをリーベンの頭部に叩き込むのだが、とにかくリーベンは頭が硬い。何事もなかったように立ち上がってしまう。
 ラウンド終了前10秒の時点でリーベンが左ハイ・キックに合わせたコーテイの右ストレートがヒット。場内にバシッと音が響き渡ったこのストレートでリーベンは倒れたが、すぐにガードに入る。そのリアクションの早さからして、あまり効いているようにはみえない。

 2ラウンドでのダウンを何とか取りかえしたいリーベンは3ラウンドに入ると、コーテイをフェンスに押し付け、ボディショットや踏み付けから片足タックルにいくがコーテイはこれをカット。
 しかし勝利の女神はリーベンに微笑んだ。
 2分過ぎ、コーテイはリーベンの腕を脇に抱え投げを放つが汗で滑ってしまいそのままグラウンドで下になってしまう。リーベンは上からパンチの連打。もちろんコーテイも下からパンチを当てていくが、やあり手数では上から振りおろすリーベンに分があった。試合はそのまま終了となりリーベンの判定勝ちとなった。

 試合後、ミドル級タイトル挑戦についてリーベンは「みんなもわかっていると思うけど、俺の闘いにはまだまだ穴がある。俺はバシバシ打ち合うのは大好きだし、グランドでの技術もまぁまぁだと思うんだ。でも上達しなくてはいけない所がまだまだたくさんある。だからタイトル挑戦は3、4年後だと思う」とかなり謙虚に、そして冷静に自分を分析した発言をして関係者を驚かせた。
 

第6試合 ライトヘビー級 5分3R
○ステファン・ボナー(アメリカ/カーウソン・グレイシー柔術)
×サム・ホウガー(アメリカ/ミレティチ・マーシャル・アーツ)
判定3-0 (30-27/30-27/30-27)


馬力のボナー、ライトヘビー級王座戦線へ猛進

 ホウガーの打撃、特に左ハイを警戒していたようにみえるボナーは、試合開始とともにいきなり相手の懐に入り込みフェンス際でテイクダウン。しかしLSU(ルイジアナ州立大学)のブラジリアン柔術クラブ創始者でもあるホウガーのルーツはやはりグラウンドでの攻防だ。ボナーをフル・ガードに捕らえるとすぐに下からアームロックや三角絞めで反撃に転じる。更には下からの肩固めで追い込むがこれを耐えたボナーが何とか上体を起こし、上からパンチと膝の連打。肩固めで決めようと1分近くもボナーを締めつけていたせいか、この時点からマウスピースが見えるほど口が開いてきたホウガー。明らかにスタミナ切れだ。
 それでもボナーの上からのパウンドを凌ぎ、何とかスタンディングに戻したホウガーだが、リアクションの早いボナーはすぐにホウガーの首を抱え込むと顔面に膝蹴り、そしてワンツーのコンビネーションを当てる。

 2ラウンドでもホウガーは要所要所で高度なグラウンド・テクニックをみせるが、スタミナ切れでどうしても押さえきれずにボナーに逃げられてしまうという展開が続く。ボナーがタックルにきた所をうまく潰して上になってもそこから追い込めないし、逆にテイクダウンを奪われても綺麗にスイープするのだがその後が続かない。ラウンド終了真際には、下にいたボナーに腕を決められたまま逆にスイープされ、すぐにマウントを取られパンチの連打を浴びてしまったボナー。

 3ラウンドに入ると、ホウガーはスタンディングの状態でかんたんにボナーにバックをとらせてしまうほどの、ほとんどガス欠状態。そのまま後ろから潰すようにテイクダウンされ、下になり何とかハーフガードで逃げ切った所で試合終了。グラウンド技術ではホウガーの方が魅せてくれたが、若さとスタミナと馬力でボナーが圧勝したといえる内容だった。

 ボナーは、これからも自慢のキャンピングカーで、ボストン、ミルウォーキー、シカゴなど出稽古ロードを続けながらライト・ヘビーのタイトルを狙っていくそうだ。
 

第5試合 ミドル級 5分3R
○ネイト・クゥオーリー(アメリカ/チーム・クエスト)
×ピート・セル(アメリカ/セラ・ロンゴ・コンペティション・チーム)
1R 0'14" TKO (レフェリーストップ:スタンドパンチでダウン後)


早すぎるストップにブーイング

 マット・セラの一番弟子でブラジリアン柔術茶帯のピート・セルは、現在PRIDE武士道で活躍中のフィル・バローニから一本勝ちを奪った唯一の選手。
 対するネイト・クォーリーはTUFシーズン1では練習中に怪我をしたため、番組途中で涙のリタイヤとなった悲劇のヒーロー。もともとはサブミッション系の選手だったが、最近の二試合をパンチの連打で制したせいか、打撃の巧さが俄然クローズアップされているチーム・クエスト期待のホープだ。

 試合は両者とも打撃での勝負に出た。
 低い体勢から素早いステップで踏み込み左ジャッブや右フックをネイトの顔面に的確に当てていくセル。しかし次ぎの瞬間ネイトの放った左フックがセルのアゴにクリーンヒット。セルが倒れネイトが追い討ちの右ストレートを振りおろそうとしたその瞬間、レフェリーのセシル・ピープルズが慌てて試合をストップ。場内はブーイングに包まれた。
 ネイトの最後の右ストレートを頭部に受けながらも明らかに相手をガードに引き込んでいたセルは、下からネイトをがっちりと捕らえたままレフェリーに「WHY!」と激しく抗議。しかし判定が覆ることはなくネイトのTKO勝ちとなった。

 試合後のインタビューでネイトは「(ストップは)レフェリーの判断だから何とも言えない。(自分が放った右フックは)クリーンヒットしたから、すぐにセルはリカバーしたのかもしれないし、僕にはわからないです」とコメント。
 一方のセルは両親指を下に向け判定への不服をアピールしていたが、プロ7戦目にして初めて喫した黒星という現実にやや茫然自失気味でもあった。
 

第4試合 ウェルター級 5分3R
×ピート・スプラット(アメリカ/チーム・ジャンジリ)
○ジョシュ・コスチェック(アメリカ/アメリカン・キックボクシング・アカデミー)
1R 1'53" タップアウト (チョークスリーパー)


クートゥア&リデルも認める逸材が圧勝

 元全米レスリング王者のコシュチェックはいきなり片足タックルを狙うが、ここはスプラットも何とか持ちこたえる。しかしコシュチェックはあきらめずにそのままじりじりとフェンスにスプラットを押し付け、今度は両足を持ち上げテイクダウンに成功。スプラットはすぐに立ち上がるが、素早くバックにまわりこんだコシュチェックはスプラットの背中に飛びつきそこからゆっくりと時間をかけてチョークスリーパーを決めそのまま後ろに引き落とし勝負を決めた。

 「TUF」シーズン1でコーチを務めたランディ・クートゥアーとチャック・リデルが、口を揃えて「(16人の参加選手の中で)素材という点ではピカイチ」とコシュチェックを称していたが、その才能の片鱗をみせた圧勝劇だった。
 TUFのシーズン1ではミドル級(83.99キロ以下)の選手として番組に出演していたが「これからはウェルター級(771.18キロ以下)で闘っていく」予定だそうだ。
 

第3試合 ミドル級 5分3R
×ギデオン・レイ(アメリカ/ハックニーズ・リアリティ・コンバット)
○マイク・スウィック(アメリカ/アメリカン・キックボクシング・アカデミー)
1R 0'22" KO (グラウンドパンチ)


二試合連続の秒殺勝利

 本来はウェルター級の選手であるレイは試合開始から積極的に前に出る。しかし明らかに身長と体重で勝っているスウィックが左フック、右ストレート、左フックのコンビネーションで倒れたレイに追撃のパンチを数発当てたところでレフェリーが試合をストップ。「TUF」シーズン1のフィナーレでも20秒でKO勝ちしたスウィックは二試合連続の秒殺勝利。
 

第2試合 ウェルター級 5分3R
×アレックス・カラレクセス(アメリカ/サウスショア・スポーツ・ファイティング)
○ケニー・フロリアン(アメリカ/ボストンBJJ)
2R 2'52" TKO (レフェリーストップ:鼻の負傷)


フロリアン、肘打ちで敵の鼻を破壊

 「TUF」シーズン1のミドル級ファイナリストだったフロリアンは、スタートからミドルキック、組み付いてからの顔面への膝蹴りでペースを握る。防戦一方だったカラレクセスもやっとフロリアンの変則的な動きに慣れてきたのが、4分過ぎあたりから得意のパンチで反撃。フロリアンが後ろに下がる場面が多くなってところでラウンド終了のゴング。
 2ラウンドに入るとアグレッシブにパンチで前に出るカラレクセス。もともとは打撃よりもグラウンドが得意のフロリアンはカラレクセスの猛攻をかわし何とかテクダウンに成功する。しかしカラレクセスのしっかりとフロリアンをガードに捕ら何もさせない状態が1分ほど続いたところでレフェリーがブレイクに入り両者スタンディング・ポジションから試合再開。
 ここからパンチの打ち合いになるが、フロリアンが放った右のエルボーがカラレクセスの鼻を直撃。大量の血が流れたところでドクター・チェックが入り、そのまま試合ストップとなった。
 

第1試合 ウェルター級 5分3R
×ジョシュ・ニアー(アメリカ/ミレテッチ・マーシャル・アーツ)
○ドリュー・フィケット(アメリカ/アリゾナ・コンバット・スポーツ)
1R 1'35" タップアウト (スタンディングチョークスリーパー)


フィケット、ディアズとの再戦を要求

 フィケットが差し合いの状態からニアーを内股でテイクダウン。ニアーもしっかりと下からガードし、フェンス際で何とかスタンディングに戻すが次ぎの瞬間フィケットが後ろに回り、そのままチョークスリーパーを決めた。ニアーはパンチひとつも出せずに完敗。
 試合後フィケットは、「ニック・ディアズはこの階級では世界でもトップの選手。でも俺には秘策がある」とUFCデビュー戦で負けたディアズとの再戦を要求した。
 

Last Update : 08/11 12:10

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