BoutReview
記事検索 by Google

(レポ&写真) [全日本キック] 6.12 後楽園:TOMO、ミドル級王者に

全日本キックボクシング連盟 "EVOLUTION"
2005年6月12日(日) 東京・後楽園ホール  観衆:1,420人(満員)

  レポート:井原芳徳、永田遼太郎(前田×前沢、小宮×藤牧) 写真:井原芳徳
  【→カード紹介記事】 【→掲示板】


◆ 全日本ミドル級王者決定トーナメント

第1試合 準決勝 肘無し サドンデスマッチ(3分3R+延長1R)
○中村高明(藤原ジム/2位)
×小松隆也(建武館/7位)
3R 1'16" TKO (レフェリーストップ:膝蹴りによる右まぶたのカット)


 開始早々、中村がパンチと膝でラッシュ。2Rも序盤は中村優勢だったが、次第にクリンチが増え、終盤に小松が右フックや右ハイで巻き返す。だが3Rは中村が序盤からラッシュで再び主導権。膝蹴り一発で小松の右まぶたを切り裂くことに成功する。ドクターチェックの後、試合は再開したが、傷は深く、中村がパンチと膝を連打したところでレフェリーストップとなった。

第2試合 準決勝 肘無し サドンデスマッチ(3分3R+延長1R)
○TOMO(正道会館/1位)
×江口真吾(AJジム/3位)
2R 1'38" KO (3ダウン:右ハイキック)


 パンチとローを的確に当てるTOMOが、右ハイでダウンを奪取。その後しばらく一進一退の攻防となったが、2Rに入るとTOMOが立て続けに右フックでダウンを奪う。最後は豪快な右ハイで江口を沈めた。

第8試合 決勝戦 3分5R
○TOMO(正道会館/1位)
×中村高明(藤原ジム/2位)
判定3-0 (朝武50-47/大成50-48/梅木49-48)

※TOMOが第9代王者に

 互いに距離を取り、プレッシャーをかけながら単発の攻撃を当て続ける展開が続く。TOMOは中村の半身の構え、ふところの深さ、蹴りのタイミングに合わせた立ち位置の移動に苦戦。1Rには警戒していた肘打ちで左耳の中を切り出血。威力もあり、激痛が走ったという。だがTOMOは少しずつ距離感をつかむようになり、左ジャブが少しずつ当たり出す。さらに左ハイも何度かクリーンヒット。連打をまとめ大きなダメージを与えることはなかったが、4,5Rと主導権を握り判定勝ち。伝統の全日本ミドル級ベルトを腰に巻いた。(下写真中央はTOMOの父親)

第7試合 CROSS BOUT フェザー級 サドンデスマッチ(3分3R+延長1R)
○前田尚紀(藤原ジム/全日本フェザー級1位)
×前沢カピラ義徳(カピラヴァッツ/元MA日本Sフェザー級王者)
2R 0'45" KO (3ダウン:右ローキック)

※1R右ローで前沢に2ダウンあり

「五回戦の選手はローで負けちゃいけないよ」
 これはかつて前沢が指導を受けていたMA土浦ジム山本幸司会長が教え子たちに常々口にしている言葉である。かつてMAスーパーフェザー級のタイトルを保持していた事がある前沢がもちろんこの事を知らない訳じゃない。
 敗因にブランクを囁く声もあるが決してそんなことはない。「今回はしっかり練習してきましたから」。そう試合前に話す前沢の顔はどこか自信ありげでもあった。それだけ好調な自分を練習から、感じ取っていたのかもしれない。
 前回の再起戦、谷山ジムの駿太との一戦では約一ヶ月というブランクから考えれば短かすぎる練習時間で臨み、前半はやはり苦戦。しかしそれを乗り切ると見事に逆転し勝ちを収めた。前述した山本会長がかつて前沢を「20年に一人の男」と称した実力を証明した。
 「全然動けませんでしたね。ブランク?それはありましたよ」
 前回の試合後はそう漏らしていた前沢だったがどうやら今回は違うようだ。期待が持てる。僕は内心そう思っていた。前評は圧倒的前田有利だった。「乗ってるみたいなので食ったら美味しいよね」。前沢はかつての輝きを取り戻す為、復帰2戦目にしてはやや無謀すぎる賭けに出た。
 ゴングがなると、前沢はかつての自分の動きをまるで確認するかのようにインロー一発、外側へ一発と前脚に打ち込んでいった。かつてないくらいの立ち上がりだった。「行ける」。時折、前田にカウンターを貰いながらも前沢はそう確信していた。
 しかし前沢が左に回った所を前田の強烈なローが打ち抜いた。減量すると一番肉が薄くなる膝上の部分に、前田の右足が縦にピンポイントでヒットしたのだ。この一発で前沢に異変が起きる。動きがぴたっと止まり前田の続けざまのローに異常なまでの痛がりようを見せた。ある意味、ここで試合は決まったのかもしれない。
 それでも意地を見せ2ラウンドには飛び膝を狙いに行ったが前田にかわされ、さらに容赦ないローを食らってKO負けを喫した。それにしてももはや誰にも止まられそうにない前田の強さ、これには脱帽するしかない。もはや他団体に相手を務まるような敵も見当たらない。
 試合後、控え室では負傷した左足を異常に痛がる前沢の姿があった。定例のドクターチェックでは骨に以上はないという話だったが、しばらく時間がたつにつれて痛みが増し、前沢抱えのドクターによれば骨を折っているかもしれないということだった。試合後、勝利の余韻に浸ることなく同僚の応援にかけつけた前田とは対象的に、前沢はやりきれないほどの悔しさで全身を奮わせていた。(永田遼太郎)

第6試合 CROSS BOUT ライト級 サドンデスマッチ(3分3R+延長1R)
×藤牧孝仁(はまっこムエタイジム/全日本ライト級3位)
○小宮由紀博(レグルス池袋/J-NETWORKライト級2位)
4R 判定0-3 (朝武9-10/野口9-10/梅木9-10)

3R 判定0-1 (朝武30-30/野口30-30/梅木29-30)

 小宮由紀博がこの半年間で描いた出世カーブは、間違いなく業界トップ3に入るものだろう。半年前、グライガンワーンと対戦した当時はまだ一若手ホープに過ぎない実績だった小宮が、今や日本ライト級全体を見渡してもトップ集団が無視できない位置に食い込みはじめている。この7月でやっとデビュー2年目を迎えるといった辺りに末恐ろしさを感じさせる。その小宮の今回の相手は全日本ライト級3位はまっこムエタイの藤牧孝仁。首相撲と肘打ちが得意な小宮にとってはこれ以上ない難敵だ。

 試合はやはり小宮にとって苦しい展開になる。
 小宮得意の肘を警戒する藤牧はガードを固め、首相撲でも腕を挿しに行って空間を作りたい小宮に、その隙を与えない完璧なディフェンスを見せる。
「肘を警戒してくるのは分かっていたのでそれに拘るつもりはなかった」という小宮は、焦る事無くローからパンチへ上下のコンビネーションを使って活路を見出す。そのコンビネーションの切れ・バランスともに日頃の練習の成果が感じ取れる。藤牧も小宮へカウンターで右ストレートをあわせるなど応戦し、試合は一進一退の好勝負になっていく。3ラウンドに入り小宮は飛び膝を狙う等、決定打を狙いに行くが藤牧も冷静にこれを対処し、試合は延長へ。
 延長開始早々、小宮のセコンドに立った増田博正から「肘を縦に入れろ」と指示が出ると、小宮も藤牧の際を狙った縦肘で一発を狙うが、これも藤牧に致命傷を与えられない。それでもアグレッシブに勝負に出た小宮が終始優勢に攻め続け判定で勝利。6連勝を飾った。

 試合後の小宮はこの勝利に浮かれる事なく「もっと上の選手とやって行くには、自分に何が足りないか課題がはっきり見えた。場数もそうですが、もっと一杯練習してもっともっと強くなりたい」と気を引き締めなおした。ランキング3位の藤牧に勝った事で浮上しそうなタイトル挑戦に関しては「タイトルとかに拘るのではなく強い選手と今はどんどんやって行きたいです」と話し、今後も試合で自分を成長させていきたいと意気込みを語った。
 急カーブを描いた出世街道にも焦らず、小宮は一歩一歩、確実に自分の道を進んでいく。(永田遼太郎)

第5試合 ランキング戦 ウェルター級 サドンデスマッチ(3分3R+延長1R)
×宝樹まもる(勇心館/5位)
○箱崎浩康(TEAM-1/7位)
3R 2'57" TKO (レフェリーストップ:肘打ちによる右まぶたのカット)

※1R右フックで宝樹に1ダウンあり

 1R、打ち合いでカウンターの右フックをもらいダウンした宝樹だったが、2Rになるとパンチの連打で反撃。しかし箱崎の左肘で右まぶたを切られ大出血。さらに3R、パンチの連打を浴びるが、宝樹は不屈の闘志を発揮。観客を熱狂させる。最後までパンチで応戦したが、最後は出血が激しくなり、レフェリーストップがかかった。宝樹の熱闘にはTOMOの試合の応援で訪れた武蔵も「凄かった」と感激していた。

第4試合 CROSS BOUT ライト級 肘無し サドンデスマッチ(3分3R+延長1R)
×藤井 徹(湘南格闘クラブ)
○ファイヤー原田(レグルス池袋/J-NETWORKライト級10位)
2R 2'27" KO (右フック)


 ファイヤーは恐れ多くも立嶋篤史のテーマ曲「HERO」で入場。腕を高く上げた構えでゴングを待ち、独特の雰囲気を試合前から漂わせていたが、試合後にその特異なキャラクターが大爆発する。
 比較的淡々とした展開が続いたが、ファイヤーはカウンターの右フックで藤井をノックアウトすると、リング上を走りまわりロープによじ登り、ベルトを取った選手でもそんなに喜ばないだろうというぐらい喜びを体全体で表現する。果ては自分で絶叫し手拍子しながら「原田!原田!」とコール。異様なテンションの高さで、観客の度肝を抜いた。
 最後はマイクを持つと、当初対戦予定だった凱斗亮羽と7月大会で対戦を希望するアピールを行った。

第3試合 CROSS BOUT 67kg契約 3分3R
○大輝(JMC横浜GYM)
×NIIZUMAX!(クロスポイント吉祥寺)
判定3-0 (30-27/30-27/30-27)

オープニングファイト第3試合 58kg契約 3分3R
○水落洋祐(はまっこムエタイジム)
×デンジャー高山(TEAM-1)
1R 2'38" KO (3ダウン:パンチ連打)
※高山の戦績は20戦1勝17敗2分に

オープニングファイト第2試合 フェザー級 3分3R
○尾田兼次(S.V.G.)
×瀬尾平次郎(TEAM-1)
判定3-0 (30-27/30-27/30-28)

オープニングファイト第1試合 ライト級 3分3R
○濱島康大(はまっこムエタイジム)
×タロウ・ソーチタラダ(月心会)
判定3-0 (30-27/30-27/30-27)

Last Update : 06/24 16:29

[ Back (前の画面に戻る)]



TOPPAGE | REPORT | CALENDAR | REVIEW | XX | EXpress | BBS | POLL | TOP10 | SHOP | STAFF

Copyright(c) 1997-2005 MuscleBrain's. All right reserved
BoutReviewに掲載の記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。
著作権はマッスルブレインズに属します。